慶應学部別小論文の出題傾向と対策のための推薦図書

この記事では、慶應義塾大学の小論文対策として、各学部の傾向やデータ、そのための推薦図書を紹介します。

随時追記していきますが、まずはSFCの総合政策学部と環境情報学部について紹介します。

推薦図書は、参考書のようにゴリゴリ読まなくても大丈夫です。隙間時間に少しずつ読んでいきましょう。ただし、一読で終わらせることなく2周、3周と繰り返し読んでください

総合政策学部の小論文:傾向と対策

配点:英語or数学200点 / 小論文200点(配点率:50%)

出題数:大問1~2題

出題形式:4~8個の複数資料型

記述量:1200~1400字程度

試験時間:120分

総合政策の傾向

SFCは小論界の東大と言われているだけあり、入試問題の難易度は高いです。

総合政策の難易度の原因は、課題資料や記述の量にあります。

課題文や資料自体は、現代文の対策していればそこまで難しいものではありません。問題は量です。

全ての課題を精読していたら、かなり厳しい戦いを強いられます。そのため、メリハリをつけて読み、求められている解答をまとめなければなりません。

求められているのは、官僚やコンサルタントのような、大量の資料を分析して課題を"適切に"発見する能力です。

総合政策の過去の出題テーマ

テーマ記述量
2023大学教育と知への態度1,400字程度
2022トレードオフ1,360字程度
2021定性的分析 1,200字程度
2020民主主義の後退1,200字
2019リスク予測1,000字程度

SFCの精神に「問題発見・問題解決」がありますが、適切に解決するための課題発見プロセスがより重視されている傾向を感じます。

その証拠に、直近の入試問題では、わざわざ数ページを割いて課題発見プロセスの講義を行い、それに沿って課題解決をさせる設問を儲けています。

残念ながらわかりやすい講義とは言えませんが、大学として、学問的研究(分析)ができる人材を求めていることの表れだと思います。

総合政策の対策

総合政策対策としては以下2点です。

  • 大量の資料の素早い読み取り
  • 課題分析と解決案提示

前者に関しては、過去問の読み込みが一番です。知らない単語や用語は調べて何度も音読してください。

あるいは、普段使っている現代文の問題集でもいいので、100~200字程度で要約してください。その上で、先生にみてもらうといいでしょう。

前者に対して特別用意する必要なく、日常の学習の延長で力をつけていきましょう。

問題は後者です。総合政策の小論文では、毎回何か足らの社会的問題が提示され、それに対する解決案が求められます。

解決案自体は無難な内容でも大丈夫ですが、課題分析ができないと無難な案も出せません

総合政策の推薦図書

そこで、コンサル出身者が大量に出してる"問題解決"と評される本を読んでみましょう。

当たり前ですが、問題を解決する大前提に課題発見があります。そのため問題解決系の本を読めば、自然と課題発見の力も高まっていきます。

問題解決の本は大量にありますが、そんな中でSFC志望にオススメなのが、高松智史さんの「暗記する戦略思考」です。

数学に公式があるように、思考にも公式があります。

思考のフレームワークと言ったりもしますが、ゼロから考えるのではなく、思考フレームを活用することで一見難しい課題も解決してしまおうという本です。

以下の12の題材を使って、全12回の講義が行われます。

大学1年生の英語留学、カインズ(駐車場)、車の教習所、コインランドリー参入問題、スギ花粉、打倒セブンイレブン、フランスのスーパーマーケット、QBハウス、定員割れ大学問題、フェルミ推定、すごい素材、年間パスポート

「問題解決って言われても、どうアプローチしていいのかもわからない...」

そんな受験生も多いと思いますが、まずは本書で問題解決のための思考フレームを学び、SFCの小論文で使える武器を身につけてください。

環境情報学部の小論文:傾向と対策

配点:英語or数学200点 / 小論文200点(配点率:50%)

出題数:大問1~2題

出題形式:4~8個の複数資料型 or 変則的出題

記述量:1200字程度

試験時間:120分

環境情報の傾向

SFCの双子の学部として"総合政策とほぼ同じ"と評される環境情報学部ですが、小論文は毛色が異なります。

総合政策が官僚やコンサル的な分析能力が求められると言いましたが、環境情報学部はエンジニアやデザイナー、仕組みやシステム自体を作るアーティスト的人材を求めているように感じます。

環境情報の過去の出題テーマ

テーマ記述量
2023「生きる」と定性的研究1,400字程度
2022フェルミ推定 / 未来からの留学生1,360字程度
2021代数問題 / 世の中の不条理1,200字程度
2020環境と情報と人間性1,200字
2019SFCの問題発見と問題解決1,000字程度

出題形式も総合政策と同じような複数課題が出題される年(上記だと2023、2020年)、課題資料はほとんどない年(上記だと2022、2021年)もあります。

その他、オリジナリティーの強い課題が与えられる年もあります。

近年だと、以下の課題がありました。

2019年:SFCのキャンパスマップが与えられ、改善点を指摘する

2018年:絵とセリフが与えられ、物語を創作する

2017年:SFCの研究会(ゼミ)のシラバスが与えられ、履修したい研究会と理由を答える

数年は似たような傾向が続くことがあり、2~3年ごとに作問担当者が変わっている印象です。

その他、2016年や2008年のように、プロダクトデザインに寄った問題が出題がなされた年もあります。冗談ですが8年周期を感じます。

環境情報の対策

出題テーマや形式は様々ですが、概ね一貫して問われているのは「SFCに入って何がしたいか?」です。

SFCに入って探究したいテーマ、研究したい領域、解決したい課題、理想の社会像、それらを準備するのが対策になります。その意味で、AO入試に出願した人は併願もしやすい学部です。

もちろん学問の場である以上、社会性が求められます。自分1人が楽しければいい願望は不適切です。少なくとも建前上は。

環境情報の推薦図書

そこで推薦図書として、社会の仕組みを変えた近年の起業家の本をオススメします。

起業家がテーマの名著は多いですが、共感できるように近著にしました。(豊田佐吉のトヨタ、藤田田の日本マクドナルド、柳井正のユニクロなど、日本社会を変えるほどのインパクトを与えましたが企業は多いですが、当時とは社会状況もことなるため受験生がイメージしずらいと判断しました)

これからの社会を考える上でにはやや同世代を生きている人が、どんな想いで、どんなシステムで、社会をどう変えようとしたのか。そこを読み取ってください。

\ ちょっと休憩 /

SFC生が全員起業家になれとは思いませんが、少なくとも入試では起業家的な精神(社会に変革をもたらすマインド)を求めているように感じます。

実際、2023年の英語の大問3は、ズバリ起業家精神がテーマの英文でした。

▶️ 環境情報学部 2023年 英語:解答解説と各問要約

モデルケースに感化されたら、今度は自分のキャリアについて考えてみましょう。

自己分析や自分探しの本も大量にありますが(それだけ需要がある)、「物語思考」をオススメします。著者自身も(すんごい成功している)起業家で、優しく語りかけてくれるのが特徴の本です。

出題傾向が異なり小論文に使えなかったとして、SFCに入学する目的が明確になれば、勉強姿勢にも好影響が生まれるはずです。

文学部の小論文:傾向と対策

配点:英語150点 / 歴史100点 / 小論文100点(配点率:28.6%)

出題数:大問1題

出題形式:課題文型

記述量:700~800字程度

試験時間:90分

出題傾向と形式

例年同じ形式で出題されます。

長めの課題分1つに対して、問1で300~360字の要約問2で課題文を踏まえた320~400字の意見論述が出題されます。

論述も短く、出題形式も安定しているので、慣れてさえしまえば対策しやすい学部です。

最近の出題テーマ

設問形式や記述量は例年決まっているので、ここでは問2の論述問題と、課題文の出典を紹介します。

問2の意見論述テーマ課題文出典
2023人間の創造性について大嶋義実「演奏家が語る音楽の哲学」
2022正解の出ない問題に取り組むことの意義について川平敏文「徒然草」
2021正しさについて荒谷大輔「使える哲学」
2020集団に属するということについて峯陽一「2100年の世界地図」
2019「能力」について中村高康「暴走する能力主義」

やはりというか、社会科学的なテーマより、人文科学寄りのテーマが多いです。

慶應文学部では、2年生から各専攻に分かれますが、その専攻の研究対象がテーマになっているといっても過言ではありません。

https://www.flet.keio.ac.jp/about/feature/index.html

あえて3つに絞るとすれば、

  • 人間とは何か(文化人類学・心理学など)
  • 言葉とは何か(言語学)
  • 現代はどんな時代か(社会学・人間科学など)

この3つが頻出と呼べそうなテーマです。

もちろん、これらを全て含めた哲学(専攻名とは別に「考えることそれ自体」を指す)も対象となります。

対策と推薦図書

いきなり「正義とは?」「創造性とは?」と聞かれても、まともに答えることは難しいです。そのため、普段からそういったテーマに触れ、仮でもいいので自分なりの考えや方向性を決めておくと良いです。

法学や経済学以上にイメージのしづらい抽象的なテーマが多いですが、その本質理解まではいかなくて大丈夫です。そもそも万人に対する絶対の真理などない領域です。

用語やテーマに慣れ、筆者の言いたいことが理解できれば一旦OKです。

筆者の言いたいことが分かれば問1の要約は書けたも同然です。要約が書ければ、それを踏まえた意見論述をするのが問2です。但し、問2で筋違いの(=課題文の論旨を踏まえていない)答案を作成する人が例年多いので、そこだけは注意しましょう。

問2のテーマに対して、筆者なりの主張があるはずです(それを書くのが問1ですが)。その筆者の主張に対して意見を表明してください。「そもそも正義とは〜」「そもそも創造性とは〜」など、そもそも論に行かないように注意です!

文学部の推薦図書

推薦図書の目的は、哲学的テーマや用語になれることを目的とします。

そこで御誂え向き(おあつらえむき)の推薦図書として、以下の2冊をオススメします。

「14歳からの哲学入門」

十四歳をターゲットにした哲学本が世の中に溢れている。なぜ十四歳なのだろうか?

十四歳と言えば、ちょうど中学二年生。幼児のころから刷り込まれた「子供向けの常識」がさすがにもう崩壊する時期である。<中略> 実は、こうした時期において一番学ばなくてはならないものが「哲学」である。なぜなら哲学とは、「古い常識を疑って今までにないものの見方を発見し、新しい価値観、世界観を創造する学問」であるからだ。

<中略>

本書は、いわゆる十四歳本のひとつであるが「十四歳のあなたたちがこれから生きていくために有用な哲学を教えますよ」という本ではない。

「14歳からの哲学入門『今』を生きるためのテキスト」 はじめにより

「14歳からの哲学 考えるための教科書」(池田晶子)

14歳以上の人へ

「哲学」という何かが、自ら考えるより先に存在しているわけではないのですが、哲学史や学説を覚えることが哲学であるという誤解は根深く、あるいはそれらを「やさしく」解説したところで、やはり自ら考えられているわけではなく、さらには自ら考えているかのようで、単なる個人の人生観であったり、そんなこんなを見るに見かねて、とにかく人が素手で考え始めるその生の始まりを伝えるべく、このような教科書の形で書いてみました。

 対象はいちおう14歳の人、語り口もそのように工夫しましたが、内容的なレベルは少しも落としていません。落とせるはずがありません。なぜなら、ともに考えようとしているのは、万人もしくは人類に共通の「存在の謎」だからです。したがって、何らかの答えめいたものを教えているわけではないこの本を「教科書」と呼ぶのは、ひょっとしたらふさわしくないのかもしれませんが、子供とともに、生徒とともに、あるいは一人で、なお謎を考えて知りたいという意欲をおもちのいかなる年齢の人にも、何らかお役に立てるものと思っております。

「14歳からの哲学 考えるための教科書」 あとがき 14歳以上の人へ より

法学部の小論文:傾向と対策

配点:英語150点 / 歴史150点 / 小論文100点(配点率:25.0%)

出題数:大問1題

出題形式:課題文型

記述量:1,000字程度

試験時間:90分→60分

2025年入試から歴史の配点が100→150点に増え、相対的に小論文の配点率が下がりました。

また、名称も「論述力」から「小論文」へ変更されます。もしかしたら、出題傾向も変化するかもしれません。

出題傾向と形式

例年同じ形式で出題されます。

長めの課題分1つに対して、400字の要約それを踏まえた600字の意見論述です。

ただし、2024年入試では設問が2つに分かれ、500字ずつ書かせる形式でした。

与えられるテーマは異なりますが、形式だけ見れば、少し長くなった文学部と見てとることもできます。

最近の出題テーマ

当然というべきか、人文社会系のテーマより、社会科学系のテーマが多いです。

テーマ課題文出典
2024民主主義の意義と課題モーリス・クランストン「政治的対話篇」
2023政治経済の課題と新情報技術鈴木健「なめらかな社会とその敵」
2022道徳問題としての戦争と平和田中美知太郎「直言、そして考察 : 今日の政治的関心」
2021個人と社会の緊張と対立福田恆存「一匹と九十九匹と」
2020アジアと近代化石川忠雄「私の夢 私の軌跡」

対策と推薦図書

ある程度の現代文読解力があれば、いきなり過去問を読んでも大丈夫です(「解く」ではない点に注意)。

法学部といえば憲法や刑法の条文を覚えるところ、と思われるかもしれませんが、そういうわけでもありません。もう少し抽象的な「法律とは何か」「法律はかくあるべきか」みたいな分野も学んでは行きます。

細かい条文は入学後でも身につくので、入試で出やすいのは後者の部分です。

その分野に慣れておくための2冊を紹介します。

「キヨミズ准教授の法学入門」(木村草太)

「高度な内容を分かりやすく」を信条に首都大学東京で教鞭をとる若手憲法学者の木村草太准教授が、進路に迷う高校生や法学に拒絶反応を示す文学部生にも分かるように、物語の手法を用いて生き生きと、そして最高に面白く語る「日本一敷居の低い法学入門」誕生!

「キヨミズ准教授の法学入門 」紹介文より

「これからの『正義』の話をしよう」

1人を殺せば5人が助かる状況があったとしたら、あなたはその1人を殺すべきか? 

哲学は、机上の空論では断じてない。金融危機、経済格差、テロ、戦後補償といった、現代世界を覆う無数の困難の奥には、つねにこうした哲学・倫理の問題が潜んでいる。

この問題に向き合うことなしには、よい社会をつくり、そこで生きることはできない。

アリストテレス、ロック、カント、ベンサム、ミル、ロールズ、そしてノージックといった古今の哲学者たちは、これらにどう取り組んだのだろう。彼らの考えを吟味することで、見えてくるものがきっとあるはずだ。

「これからの『正義』の話をしよう」 紹介文より

経済学部の小論文:傾向と対策

配点:英語200点 / 選択150点 / 小論文70点(配点率:16.7%)

出題数:大問1題

出題形式:課題文型

記述量:600字程度

試験時間:60分

経済学部と特徴は、課題文の短さにあります。試験時間が短いこともあり、SFCや文学部と比べて圧倒的に短いです。

そのため、小論文初心者であっても過去問を演習用教材として使うことができます。

対策

先ほど説明した通り、経済学部の小論文はそこまで難しくありません(その分配点も低いですが)。そのため経済学部の過去問を少しずつ解き、10年分ぐらいを目標にしてみましょう。

推薦図書

経済学部を受験するのであれば、経済とはそもそも何かを知りましょう。

「経世済民」から来ているといわれるように、お金を移動させることによって世の中全体を豊かにするのが本来の意義です。

それが楽しく学べる2冊を推薦図書とします。

現代の「お金の不安や疑問」を物語で楽しく理解!

ある大雨の日、中学2年生の優斗は、ひょんなことで知り合った投資銀行勤務の七海とともに、謎めいた屋敷へと入っていく。そこにはボスと呼ばれる大富豪が住んでおり、「この建物の本当の価値がわかる人に屋敷をわたす」と告げられる。その日からボスによる「お金の正体」と「社会のしくみ」についての講義が始まる。

「きみのお金は誰のため」紹介文より

単行本発売から約20年。65万人以上の方に読み継がれてきた超ロングセラーです。

発行当時、「だんご3兄弟」などで話題のメディアクリエーター佐藤雅彦氏と、小泉内閣で経済財政政策担当の特命大臣に就任した竹中平蔵氏。

様々なトピックから経済とは何かを追求していく2人の軽妙な対談をライブ感覚で収録した本書は、時代が変わった今も決して色褪せない、経済の考え方を理解できる入門書の古典です。

「経済ってそういうことだったのか会議」紹介文より

その他学部の推薦図書ダイジェスト

その他学部は現在作成中です。

そのため、詳細の前に、各学部の推薦図書のみ紹介します。

商学部

元気が出る数学I・A(特にデータ分析と確立)

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GOKO編集室
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