慶應文学部2024年英語:出典解説と解答速報

2024年2月14日に行われた、慶應義塾大学商学部一般選抜の英語入試問題の解答速報を紹介しています。

あくまで速報ですので、間違い等に気がつかれた方は、ご一報ください。

慶應文学部2024:全体概観

例年通り、出題英文は一つ。分量も2,000字程度でした。

変更は英作文です。今までは和文英訳が出題されていましたが、2024は自由英作文の形式で「あなたが習得したスキル」について英語で書かせる問題が出されました。

動揺した受験生もいたかもしれませんでしたが、本文と関連付ける必要もなく、落ち着いて取り組みたい問題でした。

文学部の英文というと古典的な英文が出題されるイメージがあるかもしれませんが、慶應文学部に関してはその限りではありません。

2023年は2021年出版の本、2024年は2023年出版の本が出典と、最新の英文が採用されています。

慶應文学部2024:出題英文 / 熟達のコツ - 新しい技術を学ぶにはどうすればいいか

  • 題名:The Real Work: On the Mystery of Mastery
  • 著者:Adam Gopnik(2023)/ アダム・ゴプニク
  • 分量:2,000字程度

アメリカの作家、アダム・ゴプニク氏の著書「The Real Work」から出題。

多くの人を騙したチェスマシン「Turk」の話から始まるが、展開されるのは「新しい技術を学ぶにはどうすればいいか」という王道の話です。

出題の先の展開では、「Turk」の話から教訓を得て、著者自ら体当たりで挑戦を行います。

アーティスト、ダンサー、ボクサー、運転教官。自分では無理だと思い込んでいたことに、割といい年齢?で挑んだ記録です。

結論として、どんな分野であれ、真の習得には他人の心を理解することが必要みたいです。その点は、出題英文の最終段落でも少し示唆されています。

【問題文冒頭】

Doing begins by doubting. That's one of the great lessons we inherit from the scientific tradition. So before we start to do, let us start to doubt. And we can doubt by considering the case of one of the great doubt-provokers of the Enlightenment: the Turk.

タイトル「The Real Work」の意味

タイトルの「The Real Work」を直訳すれば「本当の仕事」ですが、これはマジシャンが使う用語で、大きく2つの意味があります。

一つはマジックのタネ。観客が知り得ない、トリックや技術を指して"Real(みんなが知らない"本当"の)"と呼んでいるのでしょう。

もう一つは、プロとしての姿勢。観客の前に出る前の準備、日頃の練習を指します。こうした、人目に触れない、真に大事な部分を指して"Real("本物"のプロの)"と呼ぶのでしょう。

まとめてしまうと、真に価値ある部分、と言い換えることができそうです。

ちなみに、出題箇所は第1章の冒頭でした。

機械仕掛けのトルコ人

"The Turk at Schoenbrunn, 1809" by antoni uniechowski

1~4段落で登頂するTurkに関して、著者が読んだ本はこちら。

この話をまとめると概ね以下の話になります。

1769年、ハンガリーの貴族、ヴォルフガング・フォン・ケンペレンは、機械化された自動チェスを発明し、その驚異的な性能でヨーロッパ中を驚かせました。彼の創造した「トルコ人」と名付けられた等身大の木製マネキンは、毛皮をあしらったローブとターバンで装飾され、キャビネットに収められてヨーロッパ各地を巡業し、ベンジャミン・フランクリンやナポレオン・ボナパルトなどの著名な対戦相手と戦いました。

ケンペレンは、疑う余地のない証拠を観衆に提供するために、キャビネットの扉を開け、内部には歯車やバネから成る複雑な構造を見せました。これにより、彼の発明が人工知能による意思決定を行う機械であることを観衆に納得させたのです。

しかしながら、「Mechanical Turk(機械仕掛けのトルコ人)」の内部には、巧妙に身を潜めたチェスの達人が操る手があることを観衆は知る由もありませんでした。

慶應文学部2024:各段落のおまかな意味

全体の大まかな流れを書いています。

第5段落で話の展開が変わり、教訓めいた話題へ変化します。

  • 行動を起こす前に疑ってみよう。(自分がこれからしようとすることの前に、疑惑を払拭しておこう)そのために、チェスマシンTurkをを例に考えてみる。
  • Turkの開発者ケンペレンは、機械仕掛けのチェスマシンを開発し、1770年ウィーンで観客に披露した。
  • その後Turkは世界中を巡り、1850年代に焼失するまで時の権力者やチェス名人とも対戦した。
  • もちろん実態はペテン…というより巧妙なマジックである。実際には人が入っていたのだ。
  • この出来事は、人の理性について多くの気づきをくれるので、非常に興味深い。
  • 常識的に考えれば、チャスマシンはあり得ないとわかるのだが、人間には一度思い込むと実態が見えなくなる傾向がある。
  • 人々がTurkに騙されたのは、実際はタネは泥臭いものであったとしても、そこにエレガントで即効性のある解答を求めたからだ。
  • 人は謎に対して、正しい解答ではなく、美しい解答を求める。しかし、その謎を解決するためには、不格好で醜く、独創的な方法が必要になるのだ。
  • 作家エドガー・アラン・ポーやそのTurk探偵たちは、その仕組みには気がついていただろうが、不可解な謎があった。あんなに強いチェスプレイヤーをどうやって用意したのかという問題だ。
  • その正体は、仕事に困っている一流ではないが強いチェスプレイヤーたちだった。ケンペルンはチェス喫茶に出かけて、強いがニ流のチェスプレイヤーを集めていた。
  • この方法は実に素晴らしく、発明に匹敵する発想である。この手法のおかげで、ケンペルンは差したる苦労もなくTurkの中の人を安全に確保することができた。
  • ケンペレンの凄さは、マシンを作った点ではない、熟練したチェスプレイヤーがあらゆる場所にいるのを理解していた点にある。
  • 私たちは、超一流を過大評価し、一流を過小評価してしまう。ケンペレンやメルツェルのように、その非対称性を把握している人は、そこから大きな利益を得ることができる。
  • 社会学者のハウイー・ベッカーの見解によれば、「創造性」について特徴的なのは、それが希少であることではなく、非常にありふれていることである。
  • 一握りの極みにいる人たちをそうたらしめているのは、彼ら自身の特異性にある。ボブディラン、ボビーフィッシャー、マイケルジャクソン、誰もが欠落を抱えている。(超一流と一流に、技術的な差はそこまでないという話)
  • Turkについてもう一つ重要なことは、Turkを取り巻く演出によって、中の人の力が上昇した点にある。Turkという物理的な箱がそうさせたのではなく、一連の演出を含む心理的“フレーム”がそうさせたのである。
  • Turkの出来事が教えてくれるのは、期待される役割を与えられた時、人は実力以上のパフォーマンスを発揮できるということだ。

慶應文学部2024:解答速報

あくまで速報ですので、間違い等に気がつかれた方は、ご一報ください。

1:C (名詞節を作る接続詞that)

2:チェスマシンに感動してしまい、それがどんな原理について推論を重ねて考えることを放棄してしまった。

3:ポーや、より抜け目のない他のTurk探偵たちを困らせたのは、解答の不格好さではなく、論理的に導き出されるチェス・プレイヤーの特異性だったようだ。

4:ア

5:d

6:どんなスポーツでも、最も偉大な監督とは、重要な役割を果たす新しい 「劣った」選手をいつでも見つけられることを知っている人たちである。

7:美しい解決を求める人の心理によって、多くの人がチェスマシン「ターク」にチェス名人を見出し、そのことによって、それなりの腕前のチェスプレーヤーが超一流の打ち手となったように、環境次第で、誰でも名人級の力を発揮できるということ。(112字)

B

I believe I am a master of playing the piano. I have been learning and practicing it for many years. Being able to play the piano well means a lot to me. It brings me joy and allows me to express myself through music. It also gives me a sense of accomplishment when I master a new piece or improve my skills. Overall, playing the piano is something I am passionate about and something I continuously strive to improve upon. (80 words)

I consider myself a master at drawing. I've dedicated a lot of time to practicing and refining my skills. Drawing allows me to express my creativity and imagination. It's like a form of communication for me, where I can convey ideas and emotions visually. Mastering this skill has given me a sense of satisfaction and confidence in my abilities. It's something I enjoy doing in my free time and I'm always eager to learn new techniques to improve my drawings even further.(82 words)

\ お知らせ /

この記事を書いた慶應専門塾GOKOでは、一緒に慶應義塾大学を目指す生徒を募集をしています。

完全マンツーマンで密度の濃い授業を、オンラインで全国の受験生へお届けしております。

慶應を目指す受験生(とその保護者の方)は、以下よりお問い合わせください。

  • 全国どこからでもオンラインで受講可
  • 完全個別のマンツーマンコース
  • 初回面談、体験授業無料

慶應専門塾GOKO
塾長 吉中

初回ご面談は私が担当させていただきます。

以下のお問い合わせページよりご連絡ください!

投稿者

GOKO編集室
GOKO編集室
GOKOでは慶應義塾大学に進学したい受験生のために、役立つ情報の発信をおこなっています。こんな記事が読みたいなど、希望がありましたらお問合せページよりご連絡ください。