慶應文学部2024年英語:出典解説と解答速報 / 機械仕掛けのトルコ人

2024年2月15日に行われた、慶應義塾大学文学部一般選抜の英語入試問題の解答速報を紹介しています。

あくまで速報ですので、間違い等に気がつかれた方は、ご一報ください。

慶應文学部2024:出題形式と傾向

例年通り、出題英文は一つ。分量も2,000字程度でした。

大きく変わったのは英作文の形式です。

例年は(慶應としては)簡単な和文英訳が出題されていましたが、2024年は自由英作文の形式で「あなたが習得したスキル」について書かせる問題でした。

2025年入試から英検利用が導入されますが、その伏線かのような出題で、英検対策がそのまま慶應文学部対策になります。

動揺した受験生もいたかもしれませんでしたが、本文と関連付ける必要もなく、落ち着いて取り組みたい問題でした。

文学部の英文というと古典的な英文が出題されるイメージがあるかもしれませんが、そんなことはありません。

2024年は2023年出版のエッセイ本からの出題

2023年も2021年出版の本から出題と、例年、最新の英文が採用されています。

慶應文学部2024:出題英文 / 熟達のコツ - 新しい技術を学ぶにはどうすればいいか

  • 題名:The Real Work: On the Mystery of Mastery
  • 著者:Adam Gopnik(2023)/ アダム・ゴプニク
  • 単語数:2,000語程度

アメリカの作家、アダム・ゴプニク氏の著書「The Real Work」から出題。

多くの人を騙したチェスマシン「Turk」の話から始まるが、展開されるのは「新しい技術を学ぶにはどうすればいいか」という王道の話です。

出題の先の展開では、「Turk」の話から教訓を得て、著者自ら体当たりで挑戦を行います。

以下が出典元の紹介文と、今回の出題にも関わる重要箇所です。

人気作家で『ニューヨーカー』誌のライターでもあるアダム・ゴプニック氏は、おそらく最も古くて根源的な問いである「私たちはどのように新しいスキルを習得するのか」について、独創的な探求に乗り出します。

ゴプニック氏は長年にわたって、アート、食、フランスなどについて鋭い洞察力を持つ評論家として、読者から愛されてきました。しかし最近、彼はある根源的な問題に執着するようになりました。それは、彼が執筆している人々が、ヌードを描くことやサワードゥブレッドを焼くことなど、常人離れしたスキルをどのように習得したのかということです。

『The Real Work』(マジシャンが偉業を成し遂げるための蓄積された技を指す言葉)の中で、ゴプニック氏は画家、ダンサー、ボクサー、さらには(自動車免許局の)運転教官など、様々な分野の達人に弟子入りし、中年後半になってから、自分が不得手だと思っていたことに挑戦します。

彼は、スキルを習得するというのは、物事を一つ一つ 体系的に分解し、積み上げていくプロセスであり、どの分野においても真の達人になるには、他人の心も理解することが必要なのだと気づきます。活気に満ちていて奥深い『The Real Work』は、そもそも私たちが絶え間なく自分を向上させようとする理由を、最終的に考察しています。

どんな分野であれ「真の習得には他人の心を理解することが必要」という件は、出題英文の最終段落でも少し示唆されています。

【問題文冒頭】

The power of the machine lay in how it urged people to project onto it powers that it never possessed, but that, by the act of sympathetic imagination, became possible, and, in a wonderful natural joke, eventually realized. Crediting the machine with more than it could do, the audience made the machine more credible. Who was inside the machine? You were.

機械の力は、人々が決して持ち得ない力をそこに投影させようという衝動をどのように生み出していたかにあった。そして、共感的な想像力によって、そのような力が可能になり、皮肉にも見事な自然の冗談として、最終的には実現されたのだ。機械ができないことを過大評価することで、観客は機械をより信頼できるものにした。機械の中は誰だ? あなただったのだ。

見た目の派手さや神秘性といった演出によって、観客は機械が優れたチェスを指していると "共感的な想像力" を働かせてしまう。

そして、観客が機械の実力以上のものを想像することで、機械の信頼性が高まってしまったという皮肉な結果を生む。つまり、機械の中にいるのは、観客の想像力そのものだった、ということです。

タイトル「The Real Work」の意味

タイトルの「The Real Work」を直訳すれば「本当の仕事」ですが、これはマジシャンが使う用語で、大きく2つの意味があります。

一つはマジックのタネ。観客が知り得ない、トリックや技術を指してReal(みんなが知らない"本当"の)と呼んでいます。

もう一つは、プロとしての姿勢。観客の前に出る前の準備、日頃の練習を指します。こうした、人目に触れない、真に大事な部分を指してReal("本物"のプロの)と捉えることもできます。

まとめてしまうと、真に価値ある部分、と言い換えることができそうです。

ちなみに、出題箇所は第1章の冒頭でした。

機械仕掛けのトルコ人

【問題文冒頭】

Doing begins by doubting. That's one of the great lessons we inherit from the scientific tradition. So before we start to do, let us start to doubt. And we can doubt by considering the case of one of the great doubt-provokers of the Enlightenment: the Turk.

"The Turk at Schoenbrunn, 1809" by antoni uniechowski

1~4段落で登頂するTurkに関して、著者が読んだ本はこちら。

この話をまとめると概ね以下の話になります。

1769年、ハンガリーの貴族、ヴォルフガング・フォン・ケンペレンは、機械化された自動チェスを発明し、その驚異的な性能でヨーロッパ中を驚かせました。彼の創造した「トルコ人」と名付けられた等身大の木製マネキンは、毛皮をあしらったローブとターバンで装飾され、キャビネットに収められてヨーロッパ各地を巡業し、ベンジャミン・フランクリンやナポレオン・ボナパルトなどの著名な対戦相手と戦いました。

ケンペレンは、疑う余地のない証拠を観衆に提供するために、キャビネットの扉を開け、内部には歯車やバネから成る複雑な構造を見せました。これにより、彼の発明が人工知能による意思決定を行う機械であることを観衆に納得させたのです。

しかしながら、「Mechanical Turk(機械仕掛けのトルコ人)」の内部には、巧妙に身を潜めたチェスの達人が操る手があることを観衆は知る由もありませんでした。

慶應文学部2024:各段落のおまかな意味

全体の大まかな流れを書いています。

第5段落で話の展開が変わり、教訓めいた話題へ変化します。

  • 行動を起こす前に疑ってみよう(自分がこれからしようとすることの前に、疑惑を払拭しておこう)。そのために、チェスマシンTurkをを例に考えてみる。
  • Turkの開発者ケンペレンは、機械仕掛けのチェスマシンを開発し、1770年ウィーンで観客に披露した。
  • その後Turkは世界中を巡り、1850年代に焼失するまで時の権力者やチェス名人とも対戦した。
  • もちろん実態はペテン…というより巧妙なマジックである。実際には人が入っていたのだ。
  • この出来事は、人の理性について多くの気づきをくれるので、非常に興味深い。
  • 常識的に考えれば、チャスマシンはあり得ないとわかるのだが、人間には一度思い込むと実態が見えなくなる傾向がある。
  • 人々がTurkに騙されたのは、実際はタネは泥臭いものであったとしても、そこにエレガントで即効性のある解答を求めたからだ。
  • 人は謎に対して、正しい解答ではなく、美しい解答を求める。しかし、その謎を解決するためには、不格好で醜く、独創的な方法が必要になるのだ。
  • 作家エドガー・アラン・ポーやそのTurk探偵たちは、その仕組みには気がついていただろうが、不可解な謎があった。あんなに強いチェスプレイヤーをどうやって用意したのかという問題だ。
  • その正体は、仕事に困っている一流ではないが強いチェスプレイヤーたちだった。ケンペルンはチェス喫茶に出かけて、強いがニ流のチェスプレイヤーを集めていた。
  • この方法は実に素晴らしく、発明に匹敵する発想である。この手法のおかげで、ケンペルンは差したる苦労もなくTurkの中の人を安全に確保することができた。
  • ケンペレンの凄さは、マシンを作った点ではない、熟練したチェスプレイヤーがあらゆる場所にいるのを理解していた点にある。
  • 私たちは、超一流を過大評価し、一流を過小評価してしまう。ケンペレンやメルツェルのように、その非対称性を把握している人は、そこから大きな利益を得ることができる。
  • 社会学者のハウイー・ベッカーの見解によれば、「創造性」について特徴的なのは、それが希少であることではなく、非常にありふれていることである。
  • 一握りの極みにいる人たちをそうたらしめているのは、彼ら自身の特異性にある。ボブディラン、ボビーフィッシャー、マイケルジャクソン、誰もが欠落を抱えている。(超一流と一流に、技術的な差はそこまでないという話)
  • Turkについてもう一つ重要なことは、Turkを取り巻く演出によって、中の人の力が上昇した点にある。Turkという物理的な箱がそうさせたのではなく、一連の演出を含む心理的“フレーム”がそうさせたのである。
  • Turkの出来事が教えてくれるのは、期待される役割を与えられた時、人は実力以上のパフォーマンスを発揮できるということだ。

慶應文学部2024:解答速報

あくまで速報ですので、間違い等に気がつかれた方は、ご一報ください。

1:C (名詞節を作る接続詞that)

2:チェスマシンに感動してしまい、それがどんな原理について推論を重ねて考えることを放棄してしまった。

3:ポーや、より抜け目のない他のタークの真相に迫った人たちを困らせたのは、解答の不格好さではなく、潜んでいたチェス・プレイヤーの特異性だったように思える。

4:ア

5:d

6:どんなスポーツでも、最も偉大な監督とは、重要な役割を果たす新しい 「劣った」選手で良ければいつでも見つけることができる、と知っている人たちである。

7:平凡なチェスプレイヤーであっても、タークの中に入ると名人級の腕前に思えてしまう。つまり、人々がタークの中に見出しているのは、実際の打ち手ではなく、タークという演出に刺激された、見物客自身の期待や想像力そのものなのである。(110字)

B

I believe I am a master of playing the piano. I have been learning and practicing it for many years. Being able to play the piano well means a lot to me. It brings me joy and allows me to express myself through music. It also gives me a sense of accomplishment when I master a new piece or improve my skills. Overall, playing the piano is something I am passionate about and something I continuously strive to improve upon. (80 words)

I consider myself a master at drawing. I've dedicated a lot of time to practicing and refining my skills. Drawing allows me to express my creativity and imagination. It's like a form of communication for me, where I can convey ideas and emotions visually. Mastering this skill has given me a sense of satisfaction and confidence in my abilities. It's something I enjoy doing in my free time and I'm always eager to learn new techniques to improve my drawings even further.(82 words)

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GOKO編集室
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