慶應商学部2024年英語:解答解説と全文和訳

2024年2月14日に行われた、慶應義塾大学商学部一般選抜の英語入試問題の解答と長文の全文和訳を紹介しています。

ご参考までどうぞ。

慶應商学部の英語の特徴と時間配分

慶應商学部の特徴は大問の多さです。2024年も大問8まで出題されました。

大問1~3が800語を超える長文問題3題。大問4~8は空所補充や内容一致など比較的短い英文が様々出題されました。

試験時間は90分。時間配分は得意分野にもよるかもしれませんが、大問1~3を50~60分(長文1つ20分以下)、大問4~8を30分程度で解答する必要があります。

「時間があれば解けるのに!」では通用しないので、分からない問題は解答だけして、取れる問題を確実にゲットしながら最後まで解ききりましょう。

参考までですが、2024年は以下が想定時間配分です。

  • 大問1~3:60分
  • 大問4:3分
  • 大問5:5分
  • 大問6:8~10分
  • 大問7~8:6~10分

慶應商学部2024年の合格最低点と受験生平均点

2024年の入試結果は以下の通りです。

数学受験の合格最低点が250点地歴選択の合格点最低点が290点です。

慶應一般選抜 得点状況(2024年度)より

そもそもの募集人数が異なることに由来する差ではありますが、地歴受験生は全体で7割を超える(得点調整を考慮すればさらに高い)得点率が求められます。

それでは、各大問の内容と解答をみていきましょう。

大問1:責任のあるビジネス / 価値観主導型リーダーシップの世界史

  • 題名:A Higher Degree of Responsibility - On the history and potential of values-driven enterprises / より高い責任 - 価値観主導型企業の歴史と可能性について
  • 著者: Geoffrey Jones / ジェフリー・G・ジョーンズ
  • 単語数:850語程度

下記の通り、出題英文は原文を大幅に改変したもので、原文よりかなり読みやすくなっています。

【問題文冒頭】

On june 4, 1927, a crowd of 4,000 gathered for a ceremony to open the new Harvard Business School campus. This was the “roaring twenties,” a prosperous time for the United States.

【原文冒頭】

ON JUNE 4, 1927, a crowd of 4,000 gathered for a large ceremony to inaugurate the new Harvard Business School (HBS) campus, set apart from the historical Harvard campus in Cambridge across the Charles River in Boston. This was the “roaring twenties,” a prosperous time for the United States,

出典は、ハーバード・ビジネス・スクール経営史部門長ジェフリー・G・ジョーンズ氏の記事から出題。

内容を乱暴に要約すると「企業は自身の利益だけではなくて、ステークホルダー(利害関係者)関係者の利益も追求して、社会的責任を果たそうね」って話です。

著者は意外に日本にも縁のある方で、学習院大学や立命館大学の客員教授も務めています。

A Higher Degree of Responsibility | Harvard Magazine

On the history and potential of values-driven enterprises

今回のテーマをまとめた本もあり、タイトルは"Deeply Responsible Business: A Global History of Values-Driven Leadership"で「責任のあるビジネス:価値観主導型リーダーシップの世界史」ぐらいの意味です。

SFC環境情報学部2023年英語の大問3も似たテーマを扱っており、複数学部に渡る近時の過去問演習の意味を感じさせてくれる英文でした。

▶️環境情報学部 2023年 英語:解答解説と各問要約 / スタサプ、スタバ、イケてる会社にある魂

大問1:解答

問題解答
13
21
32
44
52
問題解答
64
71
81
94
103

大問1:各段落要約

  • 1927年のハーバード・ビジネス・スクール開校式にて、当時のドンハム学部長がビジネスリーダーたちへ社会的責任を求めるスピーチを行った。
  • ドンハム学部長のが求めていたのは、寄付金を増やすことではなく、責任あるリーダーシップのギャップを埋めることで「文明」を救うことであった。
  • ビジネスは数千年もの昔から存在しており、利益を生み出す以上の社会的貢献をビジネスリーダーに求める動きも同様に古くからある。逆に言えば、貪欲な商人や金融家も、常に存在してきた。
  • アダム・スミスは「国富論」の中で、自己利益を追求と自由市場を支持していた。しかし一方で、"異常な利益"を求める貪欲な投資家に対しては法的規制を促していた。
  • 21世紀になると、企業の社会的責任に対する要求は、アメリカの大企業の経営者の中でも論じられるようになった。
  • 企業のスキャンダルを見ると、これらの呼びかけが適切に対応されているかは疑問が残る。しかし、一方で社会問題に向き合う若い起業家も生まれている。
  • 歴史に目を向けると、社会貢献を目指した企業が必ずしも成功してきたわけではない。しかし、社会が大きな課題に直面している今、高い責任感は理想主義的な空想ではなく、未来への必須の道筋である。
ドンハム学部長:PHOTOGRAPH COURTESY OF HBS ARCHIVES PHOTOGRAPH COLLECTION: FACULTY AND STAFF, BAKER LIBRARY, HARVARD BUSINESS SCHOOL (OLVWORK374328)

大問1:全文和訳

以下、出題英文の全訳ですが、あくまで大意であることを念頭にご参照ください。

  • 1927年6月4日、4,000人もの人々がハーバード・ビジネス・スクールの新キャンパス開校式に集まりました。これは「狂乱の20年代」と呼ばれる、アメリカにとって繁栄した時代でした。過去5年間、ニューヨーク証券取引所は驚くべき上昇を経験しており、富の集中は2000年代になるまで再び見られない水準に近づいていました。しかし、ウォレス・B・ドンハム学部長が行った短いスピーチは、お祝いというよりも警告の色が強かった。科学の進歩は「幸福のための新たな可能性」を開いたと彼は述べましたが、それは「より高い責任感」なしには確保できないものでした。ビジネスリーダーたちは「社会意識」を発達させる必要があり、それに伴い「鋭い知性と広い視野」が求められる。さらに彼はこうも述べました。「もしもビジネスリーダーたちが、コミュニティ内の他のグループに対する責任感を持って、その力を適切に行使することを学ばなければ、我々の文明は衰退期の一つに向かうことになるでしょう。」
  • ドンハム学部長は、恵まれない人々への慈善活動に寄付金を増やすよう求めたわけではありませんでした。むしろ、彼が指摘した責任あるリーダーシップのギャップを埋めることで「文明」を救うように求めたのでした。学部長の重大な脅威に対する警告は、活況を呈していた1920年代においてはあまり注目されませんでしたが、彼の言葉は予言的でした。1929年末、ニューヨーク証券取引所の暴落は、アメリカだけでなく世界中で大規模な経済不況を引き起こし、その後の10年間は深刻な経済的・政治的影響を受けることになりました。
  • ドンハムは、利益を生み出す以上の社会的貢献をビジネスリーダーに求めた最初の人でも最後の人でもありませんでした。何らかの形のビジネスは数千年もの昔から存在しており、企業倫理や責任に関する疑問も同様に古くからあります。商人や金融家の貪欲さは、どの社会でも常に懸念されてきました。例えば、18世紀のイギリスで近代産業が登場した頃には、息を呑むほどの不正行為や道徳的失敗、そして派手な金融詐欺の事例がありました。欺瞞や裏切りは日常茶飯事でしたが、同時に社会意識を高めようという動きもまた存在したのです。
  • スコットランドの社会哲学者アダム・スミスは、金銭欲にまみれた慣行の破壊的な側面に対する懸念を退けたと考えられています。1776年に出版された「国富論」の中で、彼は、ビジネスパーソンが自分自身の利益を追求する場合、意図的に社会貢献しようとするよりも社会に貢献できることが多いと示唆しました。したがってスミスは、多くの個人にとっての自由市場を支持していましたが、"異常な利益"を求める貪欲な投資家に対してはそうではありませんでした。彼らの活動を抑制するため、彼は金利の法的規制を支持し、また著しい不平等に対する軽蔑の念も明らかにしました。「大部分の国民が貧しく惨めな社会は、決して繁栄したり幸福になったりすることはできない」と彼は述べています。
  • 21世紀になると、企業の社会的責任に対する要求は、迫りくる環境危機、社会的不平等、リーマンショック後の民主主義の危機などの文脈で頻繁に論じられるようになりました。世界最大の資産運用会社ブラックロックの最高経営責任者であるラリー・フィンク氏は、2018年のCEO宛ての年次報告書で、「企業は株主、従業員、顧客、そして事業を営むコミュニティなど、すべての利害関係者の利益を図るべきだ」と宣言しました。同様に、プライベート・エクイティ投資会社リープフロッグ・インベストメンツの会長ドミニク・バートン氏は、四半期報告書だけに執着し、他の重要な目的を見失っている企業の短期思考を批判しています。2019年には、アメリカの大企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルの最高経営責任者181名が、"顧客、従業員、サプライヤー、地域社会、株主などすべての利害関係者の利益のために" 企業を運営することを約束する声明に署名しました。
  • これらの企業責任強化の呼びかけが、ドンハムの訴え以上に真摯に受け止められるかどうか疑問が残ります。現代のグローバルビジネスは利益追求に明け暮れ、政府や法制度を企業利益に奉仕するように歪曲させています。21世紀初めの数十年は、アメリカをはじめとする多くの国で、驚くべき一連の企業スキャンダルが起き、倫理的逸脱が繰り返されたという明白な証拠が数多くあります。しかし、オルタナティブなムーブメントの一部として、多くの若い起業家が環境問題や社会的不正義に取り組むことを約束しており、自分たちのビジネスモデルの中心に目的と社会的責任を置いています。
  • 民間企業の歴史には、様々な時代や状況で活躍した、高度な責任感を持つ経営者の実例が数多く存在します。しかし、これらは資本主義のような複雑なシステムを根本的に変革するための公式ではありません。むしろ、個々の努力がどのように責任感を高めようとして成功または失敗したのか、その理由を提示することで役立ちます。高度な責任感を持つ経営者も、一般の人間と同じように人間的な欠点を持っています。中には刺激的な人物もいますが、社会貢献を目的とした試みの中には、成功しなかったり持続可能でなかったりするものもありました。善意が必ずしも成果に繋がるわけではないことも、このような企業の歴史が示しています。利益追求と社会貢献の両立は決して簡単ではなく、時には相反する目標になることもあります。しかし、経済、環境、そして社会が大きな課題に直面している今、高度な責任感は理想主義的な空想ではなく、むしろ未来への必須の道筋なのです。

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大問2:UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)について誰もが知っておくべきこと

  • 題名:Universal Basic Income:What Everyone Needs to Know
  • 著者: Matt Zwolinski & Miranda Perry Fleischer
  • 単語数:830語程度

【問題文冒頭】

A lot of confusion about the concept of a Universal Basic Income (UBI) results from people talking about it as though it were a single, precisely defined social benefit policy. It's more helpful to think of the UBI as a family of proposals.

Universal Basic Income:What Everyone Needs to Know

ベーシックインカムについての議論が始まって久しいですが、新しい時代の社会保障として未だ結論が出ていないテーマでもあります。

今回の英文を乱暴にまとめると、以下の通りです。

UBI の基本的な考え方や共通点は理解しておいても、具体的な設計や運用方法によって、その効果や影響は大きく異なる。そのため、UBI の是非を議論する際には、これらの詳細な部分についても十分に検討する必要がある。

そんなベーシックインカムへの疑問について、法律と哲学の専門知識の著者が、あらゆる側面を概観する内容。著者はサンディエゴ大学の哲学科マット・ツヴォリンスキー教授とミランダ・ペリー・フライシャー教授です。

元ネタはこちらですが、複雑な議論になりがちなテーマですが、簡潔でシンプルな回答に落とし込もうとする著者の意気込みが伺える内容でした。

UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)自体は2021年の上智大学の英文に出るなど、今後も注目のキーワードです。

大問2:解答

問題解答
112
124
134
問題解答
144
152
164
171
183
194

大問2:各段落要約

  • ユニバーサルベーシックインカム(UBI)は単一の概念ではなく、一連の提案の集合として考える べきであり、「UBI を支持するか」と問うのではなく「どのような種類の UBI を支持するか」と問うべきである。
  • ベーシックインカム (UBI) の提案には3つの共通点がある。無制限の現金給付 、無条件の現金給付、そして、普遍的現金給付である。
  • 3つ目の「普遍的」には問題があり、全員に支給する UBI は、運営が不可能なほど高額になるか、必要とする人にとっては実質的に役に立たないほどの少額になってしまう。
  • ある程度まとまった金額を、最も必要としている人々に支給するためには、入口で所得水準を設けるか、出口で課税する必要がある
  • UBI には様々なバリエーションがあり、UBI の良し悪しは、これらの詳細設計によって大きく左右される可能性が高い。
  • UBI の金額設定は重要な論点の一つであるが、適切な UBI の額は、その目的によって部分的に決まる。
  • UBI の財源確保方法も重要な論点の一つである。仮に全員に毎月500ドルずつ支給すると、年間で1650億ドルの巨額の費用がかかり、財源捻出のために増税かその他の社会保障制度の削減が必要になる。
  • 以上のように、UBI はいくつかの共通点を持つ、関連する政策提案の集合体として理解することができある。

大問2:全文和訳

以下、出題英文の全訳ですが、あくまで大意であることを念頭にご参照ください。

  • ユニバーサルベーシックインカム(UBI)という概念をめぐっては、多くの人々がまるで単一の、厳密に定義された社会保障制度であるかのように論じているため、混乱が生じています。より有益なのは、UBI を一連の提案の集合として考えることです。どの提案にも共通する3つの要素がありますが、それ以外の要素に関しては提案ごとに大きな違いがあり、単に「UBI を支持するか」と問うのはほとんど意味がありません。真の質問は、「どのような種類の UBI を支持するか」です。
  • ベーシックインカム (UBI) の提案には共通の特徴がいくつかあります。第一に、無制限の現金給付 を伴う点です。政府のプログラムはたいてい、お金そのものではなく、さまざまな種類の物品やサービスへの無料もしくは割引されたアクセスを提供します。現金を提供するプログラムであっても、その使い道が制限されることがよくあります。一方、UBI では、人々が自由に使える現金が支給されます。第二に、UBI の現金給付は 無条件 である点です。つまり、受給資格が働く・働かない、仕事を探す努力をしている・していない、働けない理由などによって左右されないということです。これが、UBI が他の社会保障制度と大きく異なる点の一つです。最後に、UBI は ユニバーサル(普遍的) である、つまり富裕層も貧困層も全員が受け取れるとよく言われます。実際、これは UBI の中心的な特徴であると考えられています。そもそも UBI の "U" は "Universal" (普遍的) の頭文字ですから。
  • 3つ目の要素である「普遍性」ですが、実は少し厄介な問題をはらんでいます。 これまでに検討されてきた UBI 提案で、実際に全員への支給を推奨しているものはありません。例えば、非市民や子供は支給対象から外されることが多いです。また、UBI 支持者の多くは受給資格が所得や資産に依存しないと言いますが、誰もが本気でそう考えているわけではありません。なぜなら、全員に支給する UBI は、運営が不可能なほど高額になるか、必要とする人にとっては実質的に役に立たないほどの少額になってしまうからです。
  • ある程度まとまった金額を、最も必要としている人々に支給するためには、受給対象を特定の所得水準以下の方に限定する必要があります。所得制限線と呼ばれる線引きを設けることで、特定の世帯や個人だけを対象とした給付にしなければなりません。いくつかの提案では、この所得制限線を「フロントエンド」(初回の審査)で行い、一定の所得水準を下回る人々にのみ現金が支給されます。しかし、もし「フロントエンド」で受給者制限を行わないのであれば、「バックエンド」(事後的な調整)で行う必要があります。つまり、全員にお金を支給するものの、その後、一定の所得水準を超える人々からの一部または全部を税金として取り戻すのです。このようなプログラムは、ある意味ではユニバーサル(普遍的)であると言えるでしょう。しかしながら、完全な普遍性とは言えないということもできます。
  • 上記3つの共通点に加え、UBI 提案には様々なバリエーションがあります。まさに「悪魔は細部に宿る(神は細部に宿る)」と言えますが、UBI の良し悪しは、これらの詳細な設計によって、共通する広範な特徴よりも大きく左右される可能性が高いでしょう。
  • UBI の金額設定は重要な論点の一つです。例えば、月額500米ドルの UBI はよくある提案ですが、それよりずっと高額なものや、少額なものも提案されています。適切な UBI の額は、UBI の目的によって部分的に決まってきます。UBI の目的は、低賃金の仕事を続ける人々の収入を補助することでしょうか? それとも、一時的に失業した人々への安定した収入源でしょうか? あるいは、人々が一生涯働く必要のないように、基本的なニーズを満たすための恒久的な収入源でしょうか? 最初の二つの目的であれば、比較的少額の UBI でも十分でしょう。しかし、三番目の目的を達成するには、より手厚い支給額が必要となります。
  • UBI の財源確保方法も密接に関連する問題です。現在アメリカ合衆国にはおよそ3億3千万人もの人が住んでおり、全員に毎月500ドルずつ支給すると、年間で1650億ドルの巨額の費用がかかります。この費用を賄うには、個人所得税、法人税の増税、あるいは他の社会保障制度の削減などが必要になってきます。言うまでもなく、UBI の額が大きくなるほど、この問題はより切迫したものとなり、解決が困難になります。
  • 受給資格という問題に戻りましょう。多くの提案では、UBI は個々人に対する権利として考えられています。つまり、UBI は家族や世帯ではなく、個人に対して支給されるというイメージです。しかし、子供にも支給すべきでしょうか? それとも大人だけでしょうか? 国内に在住している全員に支給すべきでしょうか? 市民権保持者や永住権保持者だけにすべきでしょうか? 殺人犯にも支給するべきでしょうか? 所得制限はあるべきでしょうか? これらの質問は今後検討していく必要があります。今のところは、UBI は直接的、無条件的、そしてある程度普遍的な現金給付を伴う、ゆるやかに関連する政策群として理解できます。

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大問3:未来予想と2050年の世界

  • 題名:The World in 2050 - How to Think About the Future / 2050年の世界-未来をどう考えるか(*出典調査中 )
  • 著者: Hamish McRae / ハミシュ・マクレー(ヘイミシュ・マクレイ)
  • 単語数:833語

出典は調査中ですが、内容から察するに恐らく「The World in 2050」です。

書いたのはジャーナリストのハミシュ・マクレー氏。2022年に出版した本で、翻訳版もあります。2000年以降、殆ど著書がなかったことを考えると、かなり久しぶりの出版です。

内容は未来予測系の類で、約30年後の未来を予測しています。

ハミシュ・マクレー氏のライフワークなのか、1996年にも2020年の予測を著書にまとめており、2020年には「その予想は当たっていたのか検証!」の企画が一部で盛り上がりました。

結果は、半分正解、半分ハズレ、ぐらいだった記憶です。

いずれにせよ、思いつきで適当な予測を立てるというより、現在のファクトから予測を立ててみようという姿勢の伺える著者の本でした。

【問題文冒頭】

Most advances are incremental, with each generation of developments gradually building on those of its predecessors. Despite their slower pace, however, over time they can have profound consequences. The falling cost of air travel and transport, for instance, has not just opened up long-distance travel to a wider range of people globally, but it has also made possible complex supply chains, where parts for goods are flown around the world from different locations before final assembly.

Universal Basic Income:What Everyone Needs to Know

大問3:解答

問題解答
204
214
223
232
問題解答
241
253
263
272
282
293

21:Neither V S / Nor V Sで「SもまたVではない」

23:lift A out of Bで「AをBから持ち上げる、取り除く、救い出す」

20~23は文脈も含めた知識問題のため、4問中2~3問正解を目指す。

24~29は素直な選択肢なので、完答か1ミスを目指したい。

大問3:各段落要約

  • 技術革新は、一夜にして起こるものではなく、多くの場合、長い時間をかけて少しずつ進化していく。しかし、そのような漸進的な革新でも、大きな影響を与える可能性がある。
  • 一方、革命的な進歩は、科学的ブレークスルーや既存技術を組み合わせによってもたらられる。
  • 漸進的な進歩は論理的に予測することができるが、革新的な進歩は予測するのが非常に難しい。
  • スティーブ・ジョブズはiPhoneが革新的な製品になることを理解していたが、その革命の規模までは予測できなかった。(第3段落の具体例)
  • 革新的な進歩は予測する2つのヒントがある。一つは物理法則の制約の限界。
  • もう一つは、テクノロジーに求める大きなものはあまり変わらないこと。
  • 物理法則と人間の欲求を組み合わせることで未来予測ができるが、実現可能性とニーズのテストを行う必要がある。
  • テクノロジーに求めるものは時代とともに変化する。歴史的には、テクノロジーはまず基本的なニーズ (食料、住居、暖房など) を満たすために利用されてきた。
  • 人間の基本的なニーズを満たすことは以前として重要だが、今後は地球環境問題に貢献することが、テクノロジーの重要な役割となる。

大問3:全文和訳

以下、出題英文の全訳ですが、あくまで大意であることを念頭にご参照ください。

  • 大抵の進歩は漸進的なもので、世代ごとに開発が積み重ねられていきます。そのペースは遅いものですが、時間をかけて大きな結果をもたらすことができます。例えば、航空運賃や輸送費用の低下は、世界中の人々が遠距離旅行をするだけではなく、世界各地から部品を空輸して最終組み立てを行うような複雑なサプライチェーンも可能にしました。
  • 一方、革命的な進歩は、突然の科学的ブレークスルーによってもたらされるか、既存のいくつかの技術を組み合わせ、洗練させて、世界中で急速に普及する製品やサービスを生み出すことによってもたらされます。抗生物質の開発は前者の好例であり、スマートフォンは後者の好例です。一つは医療治療を変革し、人間の健康に大きな影響を与えました。もう一つは、人々がグローバルコミュニケーションに関わる方法を変革し、人間の行動に大きな影響を与えました。
  • 革新的な進歩は、技術の方向性や応用を予測しようとする人にとって問題となります。漸進的な進歩が私たちにどのような影響を与えるかについては、論理的な判断を下すことができます。これらの判断が正しかったり間違っていたりしても、少なくとも私たちはすでに観察可能な可能性や起こりそうなことに基づいています。言い換えれば、「既知の未知数」に対処しているのです。一方、革新的な進歩は「未知の未知数」です。つまり、予測するのが非常に難しいことです。
  • その古典的な例が、iPhoneの影響です。スティーブ・ジョブズは2007年にiPhoneを発表した際、「革新的な製品が時々現れ、全てを変えてしまう」と有名な言葉を残しました。もちろん、彼は正しかったのです。iPhoneはまさにそうでした。しかし、ジョブズでさえこの革命の規模を想像できなかったはずです。なぜなら、彼は当時存在しなかったUberのような位置情報サービスへの入り口としてではなく、電話をかけたりインターネットに接続できるiPodとしてiPhoneを紹介したからです。同様に、オンラインマップなどの技術が揃うまで、Uberも存在し得ませんでした。そして、ジョブズは間違いなく「自撮り」の文化的影響を想像していませんでした。初期のiPhoneは、ユーザーが簡単に自分撮りができるように設計されてはいなかったのです。
  • スティーブ・ジョブズのような先見の明があっても、革命的な変化を予測するのは難しいものです。しかし、幸いなことに私たちには2つのよりどころがあります。1つ目は、物理法則は変わらないということです。その法則の範囲内であれば、製品やサービスを改善することができます。より安価で、より良く、より速く物事を進めることができ、これらの改善によって私たちの生活水準は向上します。しかし、限界があり、その限界に近づくにつれてイノベーションのスピードは鈍化していきます。現在、ロンドンからニューヨークまでの大西洋横断飛行にかかる時間は、1960年とほぼ同じです。新しい予測不可能な進歩は、まだ物理学の限界を探索していない分野で起きるでしょう。バイオテクノロジーと人工知能は、そのような分野の代表例です。しかし、そこで何が見つかるかは予測できません。
  • 2つ目のよりどころは、人間としての願望や欲望は時間をかけて徐々に移り変わるかもしれませんが、核となる希望や恐怖は比較的安定しているということです。つまり、私たちがテクノロジーに求める大きなものはあまり変わらないのです。平和、コミュニティ、家族、健康、エンターテインメントといったものが当てはまります。これらの目標達成を助けるテクノロジーは永続的に残っていくでしょう。その一例がソーシャルメディアです。家族や友人は大切であり、WhatsAppグループは家族や友人同士が会話を途切れさせずに繋がり続けることを助けています。テクノロジーの有用性は、経済効率への影響だけではありません。もっと根源的な、それが私たちの基本的な人間的欲求を満たすかどうかということにあります。
  • 物理法則と人間の欲求を組み合わせることで、私たちはテクノロジーが今後どのように進歩していくかについて考える枠組みを得ることができます。その際、以下の2つのテストを実施する必要があります。一つ目は技術的に実現可能かどうか、そして社会が許容できるコストで実現できるかどうか(実現可能性)。二つ目は、人々がその技術を必要とし、望んでいるかどうか(ニーズと欲求)。技術革新が私たちの生活様式を変えるためには、この2つの問いに対する答えが両方とも「イエス」である必要があります。
  • さらに興味深い点があります。テクノロジーに求めるものは時代とともに変化するのです。歴史的大部分を振り返ると、テクノロジーはまず第一に、基本的なニーズを満たすために必要とされてきました。そのため、私たちは徐々に農業方法を改善し、より収穫量の多い作物を作るようになり、食品の貯蔵や保存するための賢明な方法を開発してきました。また、効率的で安全な住宅暖房の方法も編み出しました。さらに最近では、産業革命以降、技術を使って生活水準を大幅に向上させ、世界の人口のより多くの部分を基本的な自給自足から脱却させ、より安全で快適な生活様式へと導くことに成功しています。
  • 以前の目標は今日でも依然として重要であり、世界にはまだ多くの人々が飢餓に苦しんでいます。しかし、未来を見据えると、焦点が再び変化しています。私たちは今、地球に人間が与えた損害を軽減するために、技術的な進歩を必要としています。これは、今後数十年間の大きなテーマの一つとなるでしょう。

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大問4

慶應では珍しい、短文の空所補充問題。

難易度は標準レベルですが、1問20~30秒、合計2~3分で解きたい問題です。

大問4:解答

問題解答
302
311
324
332
問題解答
341
353
361

30:scarcelyとseldomの違いを問う設問かと思いきや、空欄直後に名詞が来るので形容詞と意味からlittleしか選べない問題。

31:draw on(利用する・参考にする)の意味を聞く問題。

32:代名詞が指す箇所を理解しているか試す問題。sculptor(スカルプター)は「彫刻家」

33:表面的にはanotherとdifferentの違いの問いだが、深読みするとanother・others・the other・the othersの違いを聞きたそうな問題。

34:仮定法の基本問題...と思わせて実は奥の深い問題

35:空所前の省略を補完しつつ正解する問題

36:"助動詞の過去形は過去を示すとは限らない"を問いたい設問

大問5

2023年7月のCNNのニュースが元ネタ。

政局のため、交通表記が国家を二分する論争になっている話。英文中に出てくる政治家も登場するので、元ネタの中にある動画も必見です。

How New Zealand's plan for bilingual road signs took an unexpected turn | Newshub

There has recently been public consultation on whether to include te reo Māori on 94 types of road signs.

以下の動画冒頭でも登場するニュースキャスターの口元に注目してください。

日本ではありえませんが、はっきりとしたタトゥーが入っています。これはマオリ族の伝統的なタトゥーで「モコ・カウアエ」と呼ばれるものです。

大問5:解答

語彙問題は慶應受験生なら標準レベルで、文脈問題は多少迷いつつも正解に辿り着けそうな難易度でした。

問題解答
371
381
391
402
411
422

38:マオリ族の1/4がニュージンランドの人口の5%に該当すると分かるか、論理問題。それがわかれば、5%×4×(38)=100%で答えがわかる。

39:語彙問題

40:語彙問題

41:文脈問題

42:文脈問題

大問6~8

大問6:解答

問題解答
433
442
453
461

46はユニークな問題なので少し解説します。

【気圧計で建物の高さを測る方法】

物理の試験でよく出題される古典的な問題として、気圧計を使って高い建物の高さを求める方法があります。本来の解答は気圧が高度とともに変化することを利用するものですが、水平思考(ラテラルシンキング)をする学生たちを私は称賛します。ある学生は、気圧計に糸をつけて建物の頂上からつるし、糸の長さと気圧計の長さを足せばよいと提案しました。別の学生は、建築家を見つけて「建物の高さを教えてくれたら、この素敵な気圧計を差し上げましょう」と言うことを提案しました。

物理の試験における本来の解答は、気圧計が測定する気圧は高度とともに小さくなることを利用して、建物の底と頂上での気圧差から高さを求める方法です。しかし、この英文では、より創造的でユーモアのある解答を称賛しています。

最初の学生的解答は、気圧計の機能を使わずに、単純に糸の長さを測る方法。2番目の解答は、気圧計とは無関係な方法で、建築家から建物の高さを聞き出すというユーモラスな方法です。

ちなみに、最初の解答を実際に行ったのが、ノーベル物理学賞を受賞したニールス・ボーアと言われています。

大問7:解答

問題解答
arisen
bcontinue
cunderfed
dfacing
eadding
fdriving

大問8:解答

問題解答
adetection
bselection
cattack
dgrowth
econfidence

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