慶應SFC総合政策2024英語:解答解説と全文和訳 / ファストファッションの不都合な真実

2024年2月17日に行われた、慶應義塾大学総合政策学部一般選抜の英語入試問題の解答と長文の全文和訳を紹介しています。

ご参考までにどうぞ。

SFC環境情報学部2024年の合格最低点

環境情報学部2024年の入試結果は次表の通りです。

低い順から、数学受験の合格最低点が263点情報受験の合格点最低点が267点外国語受験の合格点最低点が270点数学+外国語受験の合格点最低点が280点でした。

400点満点のため、60~70%の得点率が合格に必要なのことがわかります。この結果は、概ね例年通りです。

慶應一般選抜 得点状況(2024年度)より

ただし、得点調整は行われているのでその点ご注意ください。

それでは、各大問の内容と解答をみていきましょう。

大問1:フリーランスの明と暗

  • 題名:Is freelancing the future of employment? / フリーランスは未来の働き方か?
  • 著者:Anthony Hussenot / アンソニー・ユッセノ
  • 分量:850語程度


フランス、コートダジュール大学のアンソニー・ユッセノ教授の記事から出題。

コロナ禍もあり、近年日本でも増えているフリーランサーについての記事。稼げる人はいい生活できるけど、その他大勢のフリーランサーは大変よね、という話。

Is freelancing the future of employment?

Freelancing is hardly the glamorous, coffee-fueled industry shown on TV. In OECD countries, most gig workers are in the service sector.

【大問1英文冒頭】

Today, freelancers represent 35% of the United States workforce. In the European Union, the rate is 16.1 %. Both figures demonstrate the same global trend: from creative entrepreneurs to those paid by the task, freelancing is on the rise worldwide.

フラットホワイト経済とヒップスター

フラットホワイトは、エスプレッソやカフェオレと同様、コーヒーの飲み方の一種です。前年2023年の総合政策英語大問3にも登場するので、過去問演習していたら知っていたかもしれません。

フラット・ホワイト経済:ロンドンの東部を中心に、クリエイティブなフリーランサーやスタートアップ企業が集まる経済圏を指す。このエリアでは、多くのカフェやレストランが立ち並び、フラット・ホワイトと呼ばれるコーヒーが人気であることから、このように名付けられた。

ヒップスター:2000年代後半から2010年代にかけて、主に都市部で流行したサブカルチャーおよび人々。ヴィンテージの服やレコード、インディー音楽などを好み、カフェやバーで過ごすことを好む傾向がある。

プロフィシャン:本文ではヒップスターを指す用語。ヒップスターたちは高度な教育を受け、専門的なスキルを持っているため、「プロフィシャン」と呼ばれる。

フラットホワイト経済は、フラット・ホワイトを飲みながら仕事をする姿から転じて付けられた名称です。プログラミング、動画作成・編集、音楽、アート・エンタメなど、デジタル・クリエイティブ分野のスタートアップ・人材によって形成される経済を指します。

無理やり日本語にしてみれば「スタバでMacドヤー経済」ぐらいの意味です。

ヒップスターは、流行に敏感だけど文化の保守本流にはいない人たちを指す言葉です。日本にも、サブカル系、裏原系、アキバ系、ブクロ系、トー横系、ぴえん系、地雷系など、特定の属性を持つ人たちをまとめて指す言葉があります。

それのイギリス版という感じです。

大問1:解答

問題解答
312
322
331
341
352
問題解答
363
371
381
393
401
問題解答
413
422
431
442
452

33:pull in 引き込む、お金を稼ぐ

34:end up Ving 結局Vすることになる、最終的にVする

36:幅広い顧客層、ぐらいの意味

39:it stands to reason that (that以下)は理にかなっている、道理が通る

40:outcomeだと「仕事の未来を示す重要な"結果"」となり不自然なので、indicatorにする

大問1:全文和訳

以下が課題英文の全文和訳です。

  • 今日のアメリカ合衆国では、労働人口の35%がフリーランサーを占めています。欧州連合においてもその割合は16.1%に達しています。どちらも、世界的な同じ傾向を示しています。クリエイティブな起業家からタスク報酬型労働者まで、フリーランスは世界中で増加しているのです。そして、ジャーナリスト、社会学者、人事スペシャリスト、ライフコーチ、さらにはフリーランサー自身さえも、この現象の分析に乗り出しています。彼らは皆、フリーランシングについての「真実」を探ろうとしているのです。なぜなら、いわゆる「ギグエコノミー」は、(ローマ神話の神)ヤヌスのような二面性を持っており、絶え間なく変化し続ける現象だからです。フリーランスは、自由でやりがいがあり、華やかですらあるとよく表現されますが、現実はずっと複雑なのです。
  • OECD加盟国における研究では、フリーランサーの活動分野は主にサービス業であることが示されています (男性の50%、女性の70%)。残りはオンラインアシスタントから建築家、デザイナー、写真家など多岐にわたります。2017年の調査によると、OECD加盟国におけるフリーランサーの多くは「スラッシャー」と呼ばれるタイプで、契約業務がパートタイムやフルタイムの別の仕事と組み合わされていることがわかりました。こうした追加収入は大きく異なります。自宅で数時間かけてマニュアルの編集を行うフリーランサーは、月収数ユーロになるかもしれません。一方、需要が高まる業界でフルタイムで働くフリーランスの作業療法士であれば、収入はその10倍にもなるでしょう。
  • フリーランスの中でも特に華やかなのが、いわゆる「クリエイティブクラス」と呼ばれる人々です。彼らは、コミュニケーション、メディア、デザイン、アート、テクノロジーなど、様々な分野で専門性を持ち、機敏で、情報に詳しく、高度な教育を受け、グローバルに活躍する人材です。建築家、Webデザイナー、ブロガー、コンサルタントなどがこのクリエイティブクラスに含まれ、常に最新のトレンドを把握することが求められます。その中でも最先端を行く者たちは、ソーシャルメディアにおける「インフルエンサー」としての役割を果たすことも少なくありません。
  • ロンドンでは、このグループが、経済学者ダグラス・マクウィリアムズが「フラット・ホワイト経済」と呼んだものの一部を担ってきました。これは、創造性に基づく活況ある「コーヒー燃料」市場であり、革新的なビジネスとライフスタイルのアプローチを組み合わせています。「プロフィシャン」とも呼ばれるこのようなヒップスターたちは、フリーランスとして比較的成功している可能性があり、多数の仕事と幅広いクライアントのポートフォリオを持っています。マクウィリアムズ氏にとって、彼らはまさに英国の繁栄の未来を代表しているのかもしれません。一方、「プレカリアート」と呼ばれる人々も、はるかに地味な方法で懸命に働いています。彼らは、Amazon Mechanical Turkのような単一のオンラインプラットフォームで、長時間、単調なタスクをこなします。彼らの仕事の多くは高度な専門知識や創造性を必要とせず、簡単に代替できます。
  • こうしたオンライン上の仕事仲介者たちは、雇用保障がなく、社員と同じように一企業のために働いていても、福利厚生はほとんどないのが実情です。クリエイティブクラスと生活のために必死に複数の仕事を掛け持ちしている人たちの間には、様々な中間層が存在します。情熱を持って執筆に励むものの、満足な収入を得るのに苦労しているブロガー、以前は失業状態だったけれど、今のオンラインアシスタントの仕事に満足している人、週に数時間グラフィックデザインの仕事をして数ユーロ稼いでいる学生などです。
  • フリーランサーは、多様な職種で働く人々で構成されています。彼らの学歴、モチベーション、野望、ニーズ、そして働く意欲は一人ひとり異なり、コメンテーターが正確に多様性を表現しようとすると、どうしても誇張に陥ってしまうのが実情です。フリーランスは、「9時から5時までの勤務」から逃れるための手段として次第に選択されるようになっています。多くのフリーランサーは、仕事内容に関係なく、当初は自由を求めてこの雇用形態を選択したのかもしれません。その自由とは、いつでも (場合によっては) どこでも仕事ができる自由です。現在の米国フリーランサーのわずか37%だけが、必要に迫られてギグワークをしていると答えています。2014年にはこの数字はもっと高く、47%でした。
  • もちろん、サラリーマン制度が完全に消滅するわけではありません。ほとんどの西側諸国やロシアにおいて、フルタイムで企業に所属する働き方が依然として雇用のスタンダードとなっています。しかしながら、テレワークや自動化の台頭、そしてクラウドソーシングの無限の可能性を考えると、今後ますます多くの企業が、大幅に少ない従業員数で事業を運営し、さらには成長させていくことが考えられます。必ずしも失業率の増加を意味するわけではありません。むしろ、様々なプロジェクトを中心に流動的で変化し続けるネットワークの中で、フリーランサーが増加し、プロジェクトごとにチームが結成・解散していくことになるでしょう。
  • フリーランスの増加は、今後の働き方、特にコラボレーションのあり方を示す重要な可視的な指標と言えるでしょう。フリーランサーたちは既に、プロジェクトの共同管理を促進させています。近い将来、企業、顧客、さらには社会全体と、制作、コミュニケーション、コラボレーションを行うようになっていくでしょう。しかしながら、フリーランサーは均一な職種ではなく、ハウスクリーナーやタクシー運転手から建築家やニュース編集者まで、様々な職種の人が含まれています。このような新しい「管理者」たちをマネジメントすることは容易ではありません。現時点では、ハウスクリーナーやタクシー運転手から建築家やニュース編集者まで、全てのフリーランサーに当てはまる包括的な社会保障制度は存在しません。これらの個人はどのようにグループ化し、連携して、自分たちの多様な雇用上の利益を促進し、擁護していくことができるのでしょうか?きっと、野心を持ったフリーランサーが今まさにその課題に取り組んでいるに違いありません。

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大問2:情けは人のためらなず

  • 題名:Manners matter—philosophy tells us why
  • 著者:Julian Baggini / ジュリアン・バジーニ
  • 分量:850語程度

イギリスの哲学者、ジュリアン・バジーニの記事から出題。

マナーについて書かれた文章ですが、現代文的に「マナーと倫理」の二項対立に注意しながら読んでいきましょう。

Manners matter—philosophy tells us why

Most of the time we have a moral obligation to observe social etiquette. Occasionally we have a moral obligation to flout it

大問2が読みにくい理由と復習法

後に和訳を掲載しますが、語彙レベル以上に読みにくい印象です。それは、指示語や代名詞の多さに起因すると推察しています。

(どの英文もそうですが特に)it、they、theseといった代名詞が何を指しているか、この英文であれば「倫理」と「エチケット」のどちらの話をしているのか、を意識して英文を読み進めてください。

なぜか読めない人は、すべての代名詞に何を指しているか一々記入した上で、改めて英文を読み返してみてください。

【大問2英文冒頭】

For as long as anyone can remember, each generation has seen its successors as being ruder, lewder and cruder than they were themselves. Laments over the decline of civility are more common than those over the decline of civilization, with the latter sometimes attributed to the former. But even if the old codgers are right, there is a philosophical question worth teasing out in the way society understands manners, and it concerns their moral status.

一言でまとめると

エチケットを守らないのは罪ではないが、社会生活を円滑にするためには重要

と述べた文章です。

大問2:解答

問題解答
463
471
481
493
501
問題解答
512
522
533
542
552
問題解答
563
574
584
593
601

(59)の設問を日本語にすると以下の通りです。

エチケットの特徴は...?

  • .不快感を与えることなく、時には無視されることもある。
  • 私たちが生き方の一般的な枠組みを定義する。
  • 特定の目標を達成するために、無視することができる。
  • 深刻な哲学的問題とは考えられていない。

最終7段落と合致するので選択肢3が正解になります。

大問2:全文和訳

各段落の大意は以下の通りです。

【第1段落】

歴史上、どの世代の人間も自分たちの後継世代を、自分たちよりも無礼で下品で野蛮だと見なしてきました。文明の衰退を嘆く声よりも、礼儀の衰退を嘆く声がよく聞かれます。後者は前者のせいにされることもありますが、たとえ年寄りのぼやきが正しかったとしても、社会がマナーをどう理解しているかという点で、掘り下げる価値のある哲学的疑問が一つあります。それは、マナーの道徳的地位に関するものです。

英文全体のテーマを表しているパラグラフです。ここからテーマが「マナーの意味」や「マナーの価値」であることが読み取れます。

old codgers:年寄り(を指す皮肉的な表現)、老害

lewd:猥褻な、淫らな

civilization: 文化、文明

civility:礼儀

teasing out:慎重に分析する

【第2段落】

「社会的不公平から実存的脅威まで、もっと深刻な心配事があるのに、なぜ礼儀作法にこだわるのか」と疑問に思う人もいるでしょう。 本当にマナーがなくなっても問題ないのでしょうか? これは当然の疑問であり、私たちの世界観の多くに影響を与えている宗教の影響によって、ある程度の説得力が与えられています。 この伝統では、倫理は創造主に負う義務についてのものです。 神の法は、その起源と結果の両方において、世俗を超越したものです。 神の意志が命じ、私たちの永遠の救済は従うかどうかによって左右されます。 これに比べれば、エチケットは取るに足りない、単なる慣習であり、道徳的根拠を欠いているように思えます。

しかし、宗教的な視点から離れれば、倫理とエチケットは密接に結びついていることがわかります。どちらも、私たちが互いにどのように接するべきかについての規範に関わっています。

おそらく第2段落がこの英文の山場です。第2段落を読解できたかどうかで正答率も大きく変わります。日本語訳例を参考に、正しく読めるまでなんとも復習しましょう。

第1段落で登場した「マナー」に対し、「マナーはそんなに大事か?」と問題提起しています。

宗教的な倫理と比べて、マナーは瑣末な事ではないか?と一般を述べた上で、「宗教的な見方から離れると、倫理とエチケットはどちらも、人間同士の適切な関わり方を定める規範である」と著者自身の主張を展開しています。

ここから、英文全体≒筆者の主張として「マナーは大事」の流れになると予想します。

fret about:心配する、気にする

social injustices:社会的不正義

existential threats:人間存在そのものの危機

force : 説得力

religious on many of our worldviews:私たちの多くが持つ世界観に宗教の影響がある

God's law:神の掟

otherworldly:世俗を超えた

eternal salvation:永遠の救済

divine will:神の意志(助動詞のwillではなく名詞のwillに注意)

obey:従う

etiquette:エチケット、礼儀作法

trivial:些細な

convention:慣習

step away from:離れる

【第3段落】

世俗的な枠組みの中では、倫理は神聖な目的よりもずっと実用的な機能を果たします。 昔の人々にとっては、倫理は自分たち自身が繁栄するため、そして社会が繁栄するための、最良の共同生活の方法に関するものでした。 ほとんどの人は、これを可能にするために守るべき最重要な規則について同意しています。 それは、殺さない、傷つけない、盗まない、嘘をつかないということです(少なくとも日常的には)。 しかし、善良な人々は、このような悪質な悪行を避ける以上のことをします。 感謝の気持ちを伝えたり、他人のためにドアを開けたり、話を遮らないなどです。

第2段落の主張をサポートする段落です。

宗教的な世界観とは異なる、世俗的な観点から倫理の重要性を強調しつつ、善良な人々は倫理にプラスしてエチケットを遵守することを説明しています。

secular framing:世俗的な枠組み

pragmatic function:実用的な機能

divine purpose:神聖な目的

flourishing:繁栄

egregious wrongdoings:悪行

【第4段落】

このような小さな行いは、私たちの社会的な交流を円滑にし、誰もがより快適に過ごせるようにしてくれます。 これらは、他人への気遣い、善意、協力する意思、そして小さな利己主義の欠如をサインとして伝えています。

エチケットの一つの特徴は、倫理とは異なり、その多くが恣意的であることです。 握手は、お辞儀をすることや拳を突き合わせることよりも、本質的に礼儀正しいというわけではありません。 逆に、身体的危害を加えることは、文化によって善悪が変わるものではありません。(≒身体的危害を加えることは、どの文化でも普遍的に悪い行為だ)

lubricate:円滑にする

social interactions:社会的交流

arbitrary:恣意的

inherently:本質的に

bowing:お辞儀する

bumping fists:拳を合わせる

wrongness:間違い

physical harm:身体的危害

culturally relative:文化的な相対性

petty selfishness:小さな利己心

【第5段落】

一見エチケットと倫理は根本的に異なるように見えるかもしれません、しかし実際は、エチケットは倫理の重要度が低い側面に過ぎません。 確かに、重大な道徳問題になると、社会通念も影響を及ぼします。 本来自分のものではないものを取ることは普遍的に悪いことだと考えられていますが、私有財産とみなされるものは大きく異なります。 暴力を禁じることは普遍的ですが、その内容はそうではなく、ある社会では正当性のない私刑と見なされるものが、別の社会では許容される、または義務づけられた報復手段になることもあります。 同様に、どの文化も当然の敬意を示すことを重要視しますが、最も敬意を示すに値するものと考える点のみが異なっています

まどろっこしい言い方をしているので、もう少し整理してみましょう。

  • エチケットは倫理の一部に過ぎない(本質的に同じものだ)
  • 窃盗は普遍的に悪いことだが、何が財産かは文化によって異なる
  • 暴力は普遍的に悪いことだが、何が暴力かは文化によって異なる
  • 敬意を示すことは普遍的に大事なことだが、何が敬意を示すかは文化によって異なる(≒何がエチケットかは文化によって異なる)

「エチケットは倫理の一部」「何がエチケットか文化によって異なる」、この2点が読めればどうにかなる段落です。

social mores:社会通念

rightfully:正当に

enormously:非常に

prohibitions:禁止

lynching:私刑(リンチで覚える)

retribution:報復

due respect:正当な敬意

merits:値する

【第6段落】

エチケットは、倫理のあらゆる側面と同様に、時代や場所によって変化します。しかし、その目的は常に一定しています。それは、社会が調和をもって機能し続けるために、広く理解され、受け入れられている一連の共有ルールを提供することです。もちろん、ほとんどの人がほとんどの場合、これらのルールに従うことが前提です。

ですから、無礼に対し憤慨するのは愚かなことではありません。 エチケットを無視することは、せいぜい小さな罪であり、最悪の場合でも深刻な悪行(罪ではない)です。 エチケットを拒否することは、社会における自分の居場所を拒否し、社会交流の歯車に砂を噛ませるようなものです。 ポイ捨てやちょっとした万引きのように、少数が稀にやっても害はないものが、大多数が日常的に行うようになれば害になるのです。

冒頭で問題提起された「エチケットの意味」が語られる段落です。

Indignant :怒りを感じ、憤慨する

grit :砂利、小石

littering:ポイ捨て

Petty shoplifting :ちょっとした万引き

Harmless :害のない、無害な

【第7段落】

一方で、無礼は社会生活を乱す行為であるからこそ、重要な積極的な機能を果たし得る。誰かに対し、彼らが当然だと考えている敬意を示さないことを明確にする必要がある場合がある。例えば、君主の前で跪かないのは失礼なことかもしれないが、仮に私がチャールズ国王に会うことがあれば、共和主義の原則を守るために、あえて無礼を働くであろう。ボリス・ジョンソンはさらに低い敬意を期待すべきです。政治における彼の行動に対する嫌悪感を、礼儀の規範を守りながら伝えるのは難しいです。

礼儀正しさは市民としての基本的な義務である。しかし、現状がもはや敬意に値しない時、マナーを守ることは好意的な協力ではなく、悪意に満ちた共犯関係を意味します

いきなる国王や元首相が出てくるので驚くかもしれませんが、乱暴にまとめると「より重要な目的のために、時には無礼が肯定される場合がある」と述べた文章です。

rudeness: 無礼、失礼

positive functions: 肯定的機能、好ましい役割

disruption: 乱れ、妨害

entitled: 当然受けるべき権利がある、資格がある

kneel: 跪く

monarch: 君主

republican: 共和主義者

principles: 信念、原則

offend: 不快にさせる、怒らせる

stand up for: 擁護する、主張する

disgust: 嫌悪、不快感

observe: 守る、遵守する

civility: 礼儀正しさ、文明社会における礼儀

beneficent: 好意的な、慈悲深い

maleficent: 悪意的な、有害な

complicity: 共謀、結託

status quo: 現状、現状維持

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大問3:ファストファションの不都合な真実

  • 題名:The Not-So-Hidden Ethical Cost Of Fast Fashion
  • 著者:Syama Bunten

雑誌フォーブスの2020年の記事から出題。

ファストファッションの裏にある、搾取構造について書かれた文章。日本でも、ユニクエがウイグル自治区での強制労働問題が取り上げられるなど、話題自体は聞いたことがあったかもしれません。

The Not-So-Hidden Ethical Cost Of Fast Fashion: Sneaky Sweatshops In Our Own Backyard

For all the preaching on caring about the human worker, does the average consumer even really care?

「低賃金の服飾労働者は海外の途上国の話と思っているかもしれないけど、それは今や国内で起こっているだよ」と展開します。

途中で出てくるメルセデス・コルテスさん、最後報われて?よかったです。

大問3:解答

問題解答
611
623
633
642
653
663
672
681
691
702
問題解答
713
721
731
741
753
762
772
783
792
801
問題解答
812
821
833
844
852
861
873
881
894
901

大問3:日本語訳

大意としては以下の通りです。

【第1段落】

Welcome to 2020 — everyone has a voice and consumers aren’t afraid to use theirs. And two of those loudest voices are shouting about hot button issues: purchasing fashionable items on a tight budget and the ethical do-good, feel-good awareness factor of the clothes that are made.~

2020年へようこそ。誰もが声を持ち、消費者はそれを恐れることなく使っています。そして、その中でも特に大きな声で叫ばれているのが、2つの重要な問題です。一つ目は、限られた予算(低予算)で流行のアイテムを購入すること、もう一つは、衣服の製造における倫理的で善意に基づく意識の問題です。

ファッション業界における労働条件や倫理的な生産源に対する懸念は、新しいことではありません。「 sweatshop(劣悪な労働環境の工場)」という用語が存在する限り、それに反対する活動家も存在してきました。しかし、人間の性質は二面性を持っており、時には嘘もついてしまいます。労働者のことを気にかけているという主張にもかかわらず、一般的な消費者は本当に気にかけているのでしょうか?

hot button issue: 重要かつ議論の的となる問題

sweatshop:劣悪な労働環境で低賃金で働かせる工場

do-good, feel-good: 倫理的で、気分の良い

awareness factor: 意識を高める要素

duality: 二面性、二重性

preach: 説教する

average consumer: 平均的な消費者

【第2段落】

Fashion Nova, a company that has perfected fast fashion for the Instagram era, illustrates this fact. The mostly online retailer leans on a vast network of celebrities, influencers, and random selfie takers who post about the brand relentlessly on social media.~

Instagram時代におけるファストファッションの典型、ファッションノバはまさにこの事実を物語っています。主にオンライン販売を行うこの企業は、有名人、インフルエンサー、そして無数の一般利用者によるソーシャルメディアでのブランド投稿という広大なネットワークに依存しています。同社は、オンライン志向の顧客層を満足させるために構築されており、高価に見える安い服を大量生産しています。

「彼らはたくさんの異なるスタイルを購入し、おそらくそれぞれを数回しか着ないでしょう。そうすることで、彼らのインスタグラムフィードを新鮮に保つことができるのです」と、ファッションノバの創設者、リチャード・サジアン氏は昨年行ったインタビューで述べています。

その購買習慣を可能にするために、彼は常に新しい選択肢を提供し、売れる価格で設定しています。ファッションノバのスキンタイトデニムは24.99ドルです。そして、サジアン氏は、同社は「2週間以内に」服を作ることができ、多くの場合、本社から車で少しの距離にある、ロサンゼルスのメーカーによって作られていると述べています。

このモデルは、ブランドの成功の裏にある醜い秘密を示唆しています。連邦労働省は、ファッションノバの多くの衣料品が、米国で違法な低賃金で働かされている労働者によって縫製されていることを発見しました。しかし、ニューヨーク・タイムズがこのニュースを報じたとき、誰も本当に目を向けませんでした。それは、目新しいニュースではない、忘れられたニュースだったのです。

このモデルは、ブランドの驚異的な成功の裏にある、醜い秘密を示唆しています。連邦労働省は、ファッションノバの多くの衣料品が、米国で違法に低賃金で働く労働力によって縫い合わされていることを発見しました。しかし、ニューヨーク・タイムズがこのニュースを報じたとき、誰も驚きませんでした。それは、目新しく衝撃的なニュースではなかったのです。

読み取れること

  • ファッションノバの大量生産・低価格・SNSを活用したブランド戦略
  • 消費者の購買習慣とブランドの生産サイクル
  • 価格の安さと生産スピードが早いこと
  • 連邦労働省の調査結果により、ファッションノバの製品が低賃金労働によって作られていることが明らかになった
  • ニューヨーク・タイムズの報道は大きな反響を呼ばなかった

runaway success: 大成功

lean on: 依存する

hints at: 示唆する

blink an eye: 驚く

breaking news: 最新ニュース

【第3段落】

For clothes so cheap, sweatshops are kind of expected. The revelation that these are American sweatshops, though, probably should've ruffled a few more feathers.

ここまで安価な服なら、スウェットショップがあるのはある程度予想できます。しかし、それがアメリカの国内にあるスウェットショップだと明らかになったことは、もっと大きな波紋を呼ぶはずでした。それはおそらく、いくつかの単語が結びつくことで生じる、偽善的な感覚があるからでしょう。特に「MADE IN USA」という言葉は、よく使われる流行語ですが、誤った情報を伝える典型例です。「MADE IN USA」の服を見ると、特定の間違った推測(思い込み)をしてしまいます。

・公正な労働慣行で製造されていること。
・倫理的なアメリカ企業を直接支援していること。
・たとえ安価でも、何らかの抜け道のおかげであり、不透明な生産ではないこと

ruffled a few more feathers:事を荒立てる

false sense of righteousness:根拠のない正義感

buzzword:流行語(ここでは皮肉を込めて)

sweatshop: 搾取工場

revelation: 衝撃的な事実

false flag operation: 偽旗作戦、偽装工作

loophole: 抜け道

shady: 怪しい

【第4段落】

In all theories, some of these or all-are sometimes true. But the old adages of "too good to be true" and "having your cake and eating it too" (the clothing being the cake, the peace of mind that comes from ethical business practices being the eating) ring very true here.~

公平を期すために言っておくと、これらの推測の一部、あるいは全部が時々当てはまる場合もあります。しかし、「あまりに良すぎて(≒安すぎて)信じられない」や「ケーキを食べながら持つことはできない(=良いとこ取りはできない)」(アパレル業界は「良いとこ取り=倫理的なビジネス慣行」はできない)という昔からの格言は、この場合に非常によく当てはまります。

悪いことが起こるとき、それは通常、私たちとは遠く離れた世界(距離的にも階級的にも)で起こり、決して私たちのすぐそばでは起こらないという漠然とした共通認識があります。

too good to be true / having your cake and eating it too:どちらも「欲張りすぎることはできない」という戒めのことわざ

in all fairness: 公平を期すために

adage: 格言

ring true: よく当てはまる、真実のようだ

consensus: 共通認識

backyard: 裏庭、身近な場所

【第5段落】

But fast fashion's dark side is happening in our own backyard, and you have to wonder whether or not anyone even cares. Los Angeles is a biting dichotomy: activists and influencers shout about human rights, meanwhile sweatshops are a dirty little secret.

しかし、ファストファッションの暗い面は私たちの身近で起こっており、誰も気にしていないのではないかと思わざるを得ません。ロサンゼルスは皮肉なほど二分されています。活動家やインフルエンサーが人権について叫ぶ一方で、スウェットショップが秘密裏に存在するのです。

それは中国ではなく、アメリカで労働者が12時間の過酷な労働をして、1枚あたり約3セントの賃金で、5ドルから75ドルで売られる衣服を作っているのです。時給5ドルを稼ぐという目標は、実際には彼らにとって夢のまた夢です。カリフォルニア州ヴァーノンにあるファッションノヴァのオフィス近くの埃っぽい工場、ココ・ラブで数ヶ月間ファッションノヴァの服を縫っていた56歳のメルセデス・コルテスさんに聞いてみてください。「ゴキブリがいました。ネズミもいました」と彼女は言いました。「環境は良くありませんでした」。

彼女は毎日働いていましたが、給料は指の動きの速さによって異なりました。コルテスさんはシャツの各部分を縫うごとに賃金を受け取りました。袖1枚あたり約4セント、サイドシーム1つあたり5セント、ネックラインのシームで8セントでした。彼女の平均週給は270ドルで、時給に換算すると4.66ドルに相当する、と彼女は言いました。

dichotomy :二面性 ("di"はギリシャ語の2)

grueling:過酷な(英検準1級の単語帳にも掲載されてる)

pipe dream:夢のまた夢、夢物語(薬物を摂取しながら見る夢だから)

seam (シーム): 縫い目、縫い合わせ

equivalent:相当する

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