慶應法学部2023年英語:解答解説と各問講評 / TikTokの人気の秘密

この記事では、慶應義塾大学法学部の2023年入試の英語について紹介していきます。

全体分析

大問1で新形式が出題され、語数は増えて全体で2,000字程度でしたが、慶應法学部と考えれば全体としてはやや易〜標準の難易度でした。

大問2と大問4は苦戦する受験生が多いと思うので、よく復習してください。

慶應法学部は試験時間80分とタイトなので、形式に慣れて(=自分なりの各大問の解放を確立して)サクサク解いていく必要があります。たまに難問が入ることがあるので、一旦解答だけして先に進む意識も大事です。

年次にもよりますが、大問1~3を20~30分、大問4~5を50~60分で解くイメージです。

法学部2023合格最低点

法学部2023年の合格最低点は、247点と252点でした。

順当合格を目指すのであれば、英語と歴史合わせて7割(210点)取りたい年でした。

慶應義塾大学ガイドブック2024 より

大問1:語彙問題

新形式の語彙問題。2語の共通部分を補って単語を完成させる問題。

他大学ではあまり見ない形式ですが、落ち着いて確実な単語から埋めていけば正解できるので、標準的な難易度と言えそうです。

大問1解答

問題解答
11
23
34
46
55
68
77
82
99
100

大問2:小説 / 難語類推問題 「不思議なランプ」

下線部の単語の意味を答える問題。

英検1級相当(やそれ以上)の語彙も含まれており、受験生が覚えるべき単語レベルを超えています

そのため、単語の知識を問う問題ではなく、話の流れや品詞から"推測"する問題であると言えます。

【問題文冒頭】

Having inveigled his way into the old lady's home and confidence, John took advantage of her going into the kitchen to put the kettle on, to explore what lay behind the mysterious-looking door to his right.

受験生レベルでは単語を推測していくしかないので断定は難しく、7~8割の確信度で一つ一つの解答を作ることになります。

その意味で、やや難易度の高い問題でした。

大問2解答

問題解答
112
129
136
148
154
167
173
180
195
201

大問3:会話問題「成人年齢引き下げ」

高校生2人が成人年齢引き下げについて話している会話文問題。

特別難解な表現もなく、話の流れを押さえながら解答すれば解ける問題です。

慶法受験生的には、標準的な難易度といえます。

【問題文冒頭】

[Situation: high school students Hiro and Yuri strike up a conversation after class.]

Hiro: What do you think about the government having lowered the age of adulthood to 18?

Yuri: Well, it only came into effect a year ago, so it is a bit too early to tell really. Why?

大問3解答

問題解答
214
223
235
241
252
265
273
284
292
301

大問4:英国俳優ベン・キングズレーへのインタビュー

https://the-talks.com/interview/ben-kingsley/
  • 題名:: I LOVE THE NOW, IT IS ALL WE HAVE
  • 話者:ベン・キングズレー / BEN KINGSLEY (2015)
  • 文字数:700字程度

イギリスの俳優ベン・キングズレーへのインタビュー記事から出題。

質問に対して、回りくどい返答をしている箇所がいくつかあるので、そこは注意が必要です。

意外かもしれませんが、設問31~38の質問文は元のインタビューと同じ順番です。順番を不自然と感じた受験生もいたかもしれませんが、大きな流れ自体は元ネタ通りです。

2023大問4:解答

問題解答
313
327
331
344
352
366
370
385

2023大問4:英文和訳と解説

(31) Is it still fun to be in front of the camera?

(3) Yes, of course, because the moment between “action” and “cut” on a film set is, paradoxically, one of the most private places in the world. In that privacy between me and the camera, there is no judgment whatsoever. The only astonishment comes afterwards when I am in the cinema, and I watch something and think, “That’s not me,” but I did that.

(31) カメラの前にいるのは今でも楽しいですか?

(3) ええ、もちろんです。なぜなら、映画の撮影現場での「アクション」と「カット」の間の瞬間は、逆説的ですが、世界で最も私的な場所の一つだからです。私とカメラの間のそのプライベートな空間には、何の判断もありません。唯一の驚きは、後で映画館で、何かを見て「これは私ではない」と思う時ですが、私がやったのです。

(カメラの前での特別な感覚について述べているので、(31)への回答の可能性が高いと考える)

(32) Would you say that acting is a question of instinct and talent rather than something you can be taught?

(7) I think you can learn to say something with one gesture instead of nine. I told a director once, “On take one I give you something, on take two if I am really doing my job I give you less, on take three even less than in take two.” I don’t mean in terms of generosity, I mean in terms of fiddling around as an actor. I bet with you that take three is the best take, because all the energy is going into fiddling around, but if you can dare to be still, you can be more focused. I think you can learn stillness like with certain painters. A painter is doing something with one brushstroke that is brilliant, but if he would add something, he is lost. It is that economy that we can learn.

(32) 演技は、教えられるものではなく、むしろ天性の才能や直感の問題だと思いますか?

(7) 9つのジェスチャーの代わりに1つのジェスチャーで何かを表現することを学べると思います。以前、ある監督に「テイク1では何かを与え、テイク2では、もし私が本当に仕事をしているなら、テイク1よりも少なく与え、テイク3ではテイク2よりもさらに少なく与えます。」

寛大さという意味ではなく、俳優としていじくり回すという意味です。すべてのエネルギーがいじくり回すことに費やされているので、テイク3が最高のテイクだと断言しますが、あえて静止していれば、より集中できます。特定の画家のように静止を学ぶことができると思います。画家は1つの筆致で素晴らしいことをしていますが、何かを付け加えると、彼は道に迷います。私たちが学ぶことができるのは、その無駄のなさです。。

(演技における無駄を省くことの重要性について述べている。「教えられるものではなく、むしろ天性の才能や直感の問題だと思いますか?」(32)への回答、または「演劇や映画で、一般的に『演技』が多すぎると思いますか?」(34)への回答の可能性が高いと思いながら解く。)

(33) When you do three or sometimes more takes, how do you live with the fact that it is still the director that decides in the end?

(1) What I do is I try and take responsibility for the ones that I offer them. I think the actor has to learn that although choices are made in the editing room, choices are made with what lens is being used. If you are absolutely in character and faithful to that character in every take, whatever they do in the editing room, it will be there. So, the task between “action” and “cut” is to be completely and privately at one with that character, and provide it.

(33) 3回、あるいはそれ以上のテイクを撮る時、最終的に決定するのは監督だという事実をどのように受け止めていますか?

(1) 私がしているのは、自分が提供するテイクに責任を持つように努めることです。編集室で選択が行われるとはいえ、どのレンズが使われているかで選択が行われることを、俳優は学ばなければならないと思います。もしあなたが完全に役に入り込み、すべてのテイクでその役に忠実であれば、編集室で何をしようと、それは残ります。ですから、「アクション」と「カット」の間で行うべきことは、完全に個人的にその役と一体になり、それを提供することです。

(34) You called it "fiddling around." Do you have the feeling that there is generally too much "acting" around in the theater and in the movies?

(4) All I know is that the camera doesn’t like it. The camera likes behavior. It’s okay to act on stage, otherwise no one can hear you or see you, but the camera doesn’t like acting very much. It will see it, so you have to be well motivated. What comes out comes out in front of the camera because you are motivated. You have to understand the series of gestures, mannerisms, voices — the wishes and dreams that make your character. You have to be very conscious.

fiddle around:いじくり回す

(34) あなたはそれを「いじくり回す」と表現しました。演劇や映画で、一般的に「演技」が多すぎると思いますか?

(4) 私が知っているのは、カメラはそれを好まないということです。カメラは行動を好みます。舞台で演技をするのは構いません。そうでないと、誰もあなたの声を聞いたり、姿を見たりすることができませんが、カメラはあまり演技を好みません。

カメラは見抜いてしまうので、十分に動機付けされていなければなりません。動機付けされているからこそ、カメラの前で出てくるものが出てくるのです。あなたは、自分のキャラクターを構成する一連のジェスチャー、癖、声、願望、夢を理解しなければなりません。非常に意識する必要があります。

(過剰な演技を批判しているので、「演劇や映画で、一般的に『演技』が多すぎると思いますか?」(34)への回答と推測する)

(35) Tom Stoppard famously said that actors are the opposite of people. How much of that is true? When you are playing different parts how do you retain your center of gravity?

(2) It is a struggle. There is a law of physics called “the point of elasticity.” Apparently, if you stretch something, it will shrink back to its original shape. But if you stretch it beyond its point of elasticity and let go, it will not shrink back to its original shape. It is permanently distorted. So, I have to stay within my limits of elasticity, otherwise it can drive me insane.

(35) トム・ストッパードは、俳優は人間の正反対だと言いました。それはどの程度本当ですか?異なる役を演じる時、どのように自分の中心を保っていますか?

(2) 葛藤はあります。「弾性」と呼ばれる物理法則があります。何かを伸ばすと、元の形に戻ろうとする力です。しかし、弾性点を超えて伸ばして放すと、元の形に戻りません。永久に歪んでしまいます。

ですから、私は自分の弾性点の範囲内にとどまらなければなりません。そうしないと、気が狂ってしまう可能性があります。

(36) Are there warning signs?

(6) Yeah. Maybe exhaustion for no particular reason. Usually, it means that I am doing too much, you know. I am not being economical like I said earlier. If I become economical and just stick within the essence of the story and the character, then I’m not stretching myself too much. But it is a risk.

(36) 危険信号はありますか?

(6) ええ。特に理由もなく疲労を感じることがあります。たいてい、やりすぎているということです。先に述べたように、私は無駄が多い役者です。もし私が無駄をなくし、物語とキャラクターの本質の中にだけ留まれば、自分を無理に伸ばしすぎることはありません。しかし、それはリスクもあります。

以下、少し解説を加えます。

原文では、選択肢6の以下のマーカー部分が省略されています。

選択肢6

原文:Yeah. Maybe exhaustion for no particular reason. I do have warning signs and I pull back. Usually it means that I am doing too much, you know.

問題文:Yeah. Maybe exhaustion for no particular reason. Usually, it means that I am doing too much, you know.

設問36「Are there warning signs?」の解答は選択肢6ですが、残ったままだと即答できてしまうので、省略して難易度を上げています。

同じく選択肢6から。「economical」が使われていますが、経済の話や自身を倹約家であると言っているわけではありません。

選択肢6

I am not being economical like I said earlier. If I become economical and just stick within the essence of the story and the character, then I’m not stretching myself too much. But it is a risk.

「役者としてやり過ぎてしまう」「役に入り込んでしまう」性格を、ここではnot economicalと表現しています。

(37) Marlon Brando showed that you can give your best performances in extreme situations.

(0) Yes. Me too. When I am almost snapping. It is like tuning a violin. You want that note from a string, so you tune it until it almost breaks — but then you get that note. It is dangerous, but it is also sublime.

sublime:崇高な

(37) マーロン・ブランドは、極限状態の中で最高の演技ができることを示しました。

(0) ええ、私もそうです。ほとんど切れてしまいそうな時です。バイオリンの調律のようなものです。弦から音を出したいので、ほとんど切れるギリギリに弦を調律します。そうするとその音が出るのです。危険ですが、崇高でもあります。

最後に設問37から。設問37の設問は以下の通りですが、原文では「Marlon」の部分が省略されています。

設問37

原文:Brando showed that you can give your best performances in extreme situations.

問題文:Marlon Brando showed that you can give your best performances in extreme situations.

「Marlon Brando」と言われたところで多くの受験生が「誰だよ」感じでしょうが、有名な往年の俳優さんです。

マーロン・ブランドは、雑誌TIMEで「20世紀の最も影響力がある俳優のひとり」とされたアメリカの俳優で、名作映画「ゴットファーザー」で主演を主演もつとめた俳優です。

元記事の対象読者的には、「Brando」といえば「マーロン・ブランド」しかいないよね、ということで「Marlon」部分が省略されてると考えられます。

(38) Is there anything in your artistic life that you regret?

(5) No. Because life is good now; it is beautiful. I think we have to face the fact that everything in the past has brought us to my sitting here with you now, and I am so happy to be here now. I love the now, it is all we have.

(38) あなたの芸術人生で後悔していることはありますか?

(5) いいえ。なぜなら、人生は今、素晴らしく美しいからです。過去のすべてが、今の私があなたとここに座っていることに繋がっているという事実を受け止めなければならないと思います。そして、私は今ここにいることをとても嬉しく思っています。私は「今」を愛しています。それが私たちが持っているすべてです。

大問5:TikTokが日本で成功したワケ

Attention Factory: The Story of TikTok and China's ByteDance
  • 題名:: Attention Factory: The Story of TikTok and China's ByteDance
  • 話者:マシュー・ブレナン / Matthew Brennan (2020)
  • 文字数:1,000字程度

中国のネット技術とイノベーションを専門分野とするイギリス人作家、マシュー・ブレナン氏が2020年に出版した本から出題。

日本語版はこちら。

語彙は1,000字と多いですが、TikTokという受験生には身近で取り組みやすい話題でした。

慶應法学部としては平易で大意を掴みやすく、素直に読んで解答していけば良い、点数を稼いでおきたい問題でした。

大問5解答

問題解答
392
403
414
424
432
問題解答
447
45 / 461 / 3
475
484
491

大問5:各パラグラフ要約

【問題文冒頭】

When Chinese internet companies begin internationalization, they typically first look towards their backyard, Asia, home to over half the world's population. Many Asian countries share broad similarities with China, with mobile-first users who skipped the 1990's and 2000's Web 1.0 and 2.0 desktop internet eras.

各パラグラフをざっくりまとめると、以下の通りです。

*内容理解を優先して、一部大幅に意訳している箇所もあります。あくまで概要ということをご了承ください。

  • 中国発のTikTokがアジア進出にするにあたり、日本が最も難しい市場であった。
  • TikTokの初海外拠点はファッションのメッカ渋谷であったが、狭いシェアオフィスに5人ほどのチームからスタートした。
  • TikTokはユーザーの顔出しを期待していたが、日本人はSNSで実名を使ったり顔出しすることに抵抗がある。
  • 2つ目の課題は、中国の無名企業が優秀な日本人労働者を雇うこと。3つ目の課題は、日本人がアジアのインターネットサービスに対して慎重であることである。
  • 東京チームはTikTokにふさわしいインフルエンサーを特定しアプローチすることに注力した。しかし、インフルエンサーはタレント事務所に所属しており、どの事務所も真剣に取り合ってくれなかった。
  • 転機が訪れたのはタレントの木下優樹菜の事務所と契約に至った時であった。その後、さまざまなインフルエンサーをTikTokに迎え入れることができた。
  • Tik TokがTwitterでプロモーションをした際に流した動画は、若者向けのダンスやリップシンクであった。TikTokが日本で成功を収めた主な理由は、他に似たようなコンテンツがなかったからだと言える。
  • 顔出しを嫌う日本文化に対応するため、グループで参加できるチャレンジや、顔を認識しにくくするフィルターなど、自意識の低下や外見への不安を払拭する施策を用いた。
  • TikTokジャパンが成功するにつれ、運営の決定権も北京本社から日本に移っていった。その後の広告戦略の効果もあり、2018年にはほぼ毎日テレビで取り上げられるようになった。

TikTokの歴史

本文では、時系列でTikTokジャパンの歴史が紹介されますが、記述されていない部分も含めて振り返ると以下の通りです。

<TikTokの歴史>

  • 2016年9月:ByteDance(中国の企業名)が中国本土でDouyin(中国でのTikTokのサービス名)開始
  • 2017年5月:日本でTwitterアカウント解説
  • 2017年10月:日本でTikTokのサービスを開始
  • 2018年10月:Avexと業務提携
  • 2018年12月:新語・流行語大賞で「TikTok」がノミネート

こうしてみると、2018年が一気に流行した様子が伺えます。サービス開始してわずか1年の出来事で、信じられないスピードです。

Twitterアカウントも確認してみましたが、確かに2017年の5月にアカウントが開設されていました(運用を開始したとは言っていない)。

https://twitter.com/tiktok_japan

TikTokの日本での課題と対応

本文では、日本における課題が3つでてきました。

<TikTokの日本での課題>

  • 課題1:ユーザーがSNSで顔出しをしない
  • 課題2:優秀な日本人スタッフを雇えない
  • 課題3:アジア発のネットサービスに対して慎重

課題1に対しては、グループで投稿する企画やフェイスフィルターで対応。確かに友達と一緒に出ている動画が多い印象で、実に巧みなマーケティングだと思いました。

課題2と3に対しては、とにかく実績を作り、その実績をもとに好循環を生み出していった感じです。

本文では、

  • 木下優樹菜の事務所と契約→それを実績に他のインフルエンサーと契約
  • 上記の実績をもとに大規模なマーケティングを実施、知名度を上げ、日本人スタッフも雇いやすくする

といった流れが説明されていました。

追記:2023年入試問題が掲載された赤本や青本が発売されました。詳細な解説がされていると思いますので、他年度も含めてぜひ紙面もご活用ください。

慶應は青本は多くはないので、せっかくなので青本をオススメしておきます。

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