慶應経済2023年英語:内容解説と解答速報
慶應義塾大学経済学部の2023年入試の英語について、順次解説していきます。
*本記事で公開しているのはあくまで速報です。その後変更される可能性もございますので、その点ご留意ください。

大問1:子育てに支援を:少子化対策としての政府財政
- 題名:Cash for Kids: Government Finance as Fertility Solution
- 著者:Aphra Disiac (2020)
- 文字数:700字程度
それっぽい著者名を出しているが、全編通しておそらく慶應のオリジナル問題である。
著者名は、愛と生殖の神である「アフロディーテ(Aphrodite)」を語源に持つ単語「媚薬(aphrodisiac)」と似た人名である。
おそらく、作問者の遊び心だろう。
テーマ的にも「少子化対策」「子育て支援」なので、わからないでもない著者名である。
【問題文冒頭】
Across the world, governments are increasingly concerned about falling fertility rates. To ensure stability in any population, the total fertility rate (TFR), which is the average number of children each woman gives birth to over her lifetime, needs to be 2.1.
第5段落からフランスの政策例が紹介されます。
子どもが多いほど税制的に優遇される政策をN分N乗方式(えぬぶん・えぬじょう・ほうしき)と言います。
NHKのわかりやすい解説があったので、参考までに紹介します。
次に、文章全体を通した、筆者の主張を読み取ってみましょう。
大問1の筆者の主張
大問1の筆者の主張をまとめると
政府は、少子化問題に対して積極的に政策を打ち出すべきだ
となります。
慶應経済は大問を超えて意見をぶつけ合うのが通例なので、大問2では反対の意見が出る可能性が高いです。
そのため大問1が終わった時点で、大問2は少子化に対する財政支出へのネガティブな意見かな?とあたりを付けながら読んでみましょう。
大問1各パラグラフ要約
各パラグラフをざっくりまとめると以下の通りです。
- 安定した人口を確保するための合計特殊出生率は2.1であるが、世界的に見れば2.4である。
- しかし、東アジアにおいて、合計特殊出生率の低下は顕著である。
- 出生率を上げる取り組みは歴史的にも多々あり、ある程度成功した。しかしCOVID-19で少子化が世界的な現象になった。
- 合計特殊出生率の低下には、多くの要因がある。しかし、社会制度に負担をかけていることを考えると、政府の対応は極めて重要である。
- フランスの成功している家族政策モデルをみると、政府の政策がいかに違いをもたらすかよくわかる。
- フランスの家族政策制度の根幹の一つとは、家族の人数が多ければ多いほど税金の負担が軽くなる、税制上の優遇措置である。
- 保育制度の整備や週35時間の時短勤務制度などが、フランスの出生率上昇に影響を与えている。
- フランス以外にも、カナダやエストニアなど、手厚い支援政策をした国の出生率は上昇している。出産や子育て支援のない社会は、政府の義務の放棄である。
大問1の全訳
参考までですが、全訳はこちら。
- 世界各地で、出生率の低下に対する政府の懸念が高まっている。どのような人口であっても、安定を確保するためには、1人の女性が生涯に産む子どもの平均数である合計特殊出生率(TFR)が2.1である必要がある。2020年の世界のTFRは2.4であり、アフリカでは依然として高い水準にある(最も高いのはニジェールでTFRは6.8)。
- しかし、他の地域では、TFRの低下を心配するような例は少なくない。特に東アジアでは、その傾向が顕著である。現在、中国は1990年代に見られた1.2前後の低水準のTFRを再び経験することになりそうである。2020年には、シンガポールのTFRは1.1、韓国は0.84に達している。日本は1.36とややましだが、人口を安定的に維持するために必要な率をはるかに下回っていることを考えると、どの国も楽観視はできないだろう。
- このような状況は、決して新しいものではない。ローマ時代にも、シーザー・アウグストゥスが未婚の男性に税金をかけ、Lex Papia Poppaeaという法律を作り、明らかに出生率を上げようとしたことがある。1927年にはアメリカのミズーリ州で、1933年にはカリフォルニア州で、同様の措置がとられた。旧ソ連では、スターリンが第二次世界大戦で被った壊滅的な損失を回復するために、子無し税を制定した。これらはいずれも、たとえ限られた範囲内であっても、ある程度の成功を収めている。しかし、総計では憂慮すべき事態に陥っている。2020年、少子化は世界的な現象となり、COVID-19の壊滅的な影響によってさらに進行している。
- この憂慮すべき傾向の背後には、多くの要因があります。経済的な不安やパンデミックは、その中でも最も目に見えるものに過ぎない。公害などの環境要因も影響している可能性がある。また、女性の社会進出などの社会的な変化も影響しているかもしれない。いずれにせよ、医療から年金に至るまで、社会システムに甚大な負担を強いている以上、政府の対応は不可欠である。
- しかし、政府の取り組みは本当に効果的なのだろうか。フランスは、政府の政策がいかに違いをもたらすかを示す良い例である。フランスの合計特殊出生率は2019年に1.9に迫り、この点で欧州で最も成功した国の一つとなっています。家族生活と子どもの幸福を明確に目指した政府の政策(スウェーデンのような男女平等を強調した政策とは異なる)が、この成功の中心となっている。フランスの家族政策モデルは、社会階層に関係なく、家族への手厚い現金給付と充実した保育の提供によって成り立っている。
- フランスでは、これらの現金給付は出産を促進する性格を持ち、何よりも大家族に向けられたものである。しかし、間接的なアプローチが最も生産的であることが分かっている。したがって、減税はフランスの家族政策システムの基礎の一つとなっている。つまり、家族が多ければ多いほど、税金の負担が軽くなる。また、2人以上の子供を持つ親には家族手当を、貧困家庭には特別手当を、さらに住宅手当を支給している。
- フランス人が子供を産むことに消極的でないのは、保育制度が整っていることが大きい。この制度によって、より多くの女性が労働力として参加することができるようになった。また、週35時間を標準とする短時間勤務制度も、保育制度に役立っている。フランスの週休二日制は主に失業率を下げるために行われたが、この改革の副次的な成果は仕事と家庭の両立を改善することであった。
- フランスの一貫した手厚い家族政策パッケージは、相対的に高い出生率の重要な理由と考えることができる。さらに、フランスは唯一の政府として成功を収めているわけではありません。カナダやエストニアも、ベビーボーナスや "母親給与 "を支給することで、緩やかな出生率の上昇を経験している。同様に、他の政府も行動を起こす必要がある。子供を産み育てることに何の支援もない社会を放置することは、政府の統治義務を放棄することであり、政府が代表していると主張する社会の将来に対して責任を負うことを拒否する悲惨なことである。
大問1解答速報
問題 | 解答 |
---|---|
1 | 3 |
2 | 1 |
3 | 2 |
4 | 2 |
5 | 1 |
6 | 4 |
7 | 4 |
大問1は以上です。
次に、大問2を見てみましょう。
大問2:政府に家族政策を求めるのは無理?
- 題名:Asking the Impossible? Government Campaigns for Larger Families
- 著者:Cole Schauer (2020)
- 文字数:800字程度
【問題文冒頭】
Governments should choose carefully which issues to tackle in society. Jobs, crime, healthcare, and education are all examples of legitimate government concerns. This is because in each case, citizens' behavior in the public sphere is at issue. The total fertility rate, however, is not an issue that governments should try to tackle. How citizens conduct their lives in private should never be a target for state intervention.
パラグラフ1の「The total fertility rate, however, is not an issue that governments should try to tackle.」から、大問1と反対の意見であることがわかります。
訳としては「しかし、合計特殊出生率は、政府が取り組むべき問題ではない。」ぐらいです。
大問2の筆者の主張
大問2の主張を短くまとめると次の通りです。
少子化問題は、政府が取り組むべき問題ではないし、私たちは人口減少を受け入れるべきだ。
大問1で出てきたフランスに例にもキッチリ反論し、最終的には人類増えすぎ論を展開しています。
大問2各パラグラフ要約
各パラグラフをざっくりまとめると以下の通りです。
- 政府は取り組むべき問題を慎重に選択すべきであるが、合計特殊出生率は国家の介入事項ではない。
- 確かに、多くの国が少子高齢化の問題に直面しているが、結局は国民の選択であり、政府はその選択を尊重する義務がある。
- 確かに、国家の積極介入としてフランスの例が引き合いに出されるが、それは移民の出生率が高いことに起因する。
- シンガポールは2000年代以降、出生率対策にかなり大きな税制優遇措置を実施したが、2013年に0.79の最低記録を出した。
- 成功例があれば失敗例もある。財政的な観点からいえば、政府の財政支出はほとんど意味をなさない。
- 人口を増やすことは本当にいいことなのか、広い視野で改めて問う必要がある。
- 失業問題を例に取れば、人口が減ることで就職難がなくなり、経済が再活性化するかもしれない。
- 結局、私たちは人口過剰の世界に生きている。環境問題やその他の問題を考えると、人口減少は悪いことではなく、受け入れるべき未来なのである。
大問2解答速報
問題 | 解答 |
---|---|
8 | 2 |
9 | 1 |
10 | 4 |
11 | 3 |
12 | 1 |
13 | 3 |
14 | 3 |
15 | 4 |
16 | 2 |
17 | 2 |
18 | 3 |
19 | 1 |
20 | 2 |
大問2は以上です。
次に、大問3を見てみましょう。
大問3:ケアワーカーへのケアは誰の責任?
- 題名:Caring for Care Workers: Whose Responsibility?
- 著者:Seymour Zimmer / シーモア・ジマー
- 文字数:950字程度
トピックが非常に多岐にわたる、読み応えのある内容でした。
女性、人種、テクノロジー、社会、環境、さまざまな問題を引き合いに少子化問題を語っています。
分岐していくトピックに惑わされず、「結局この人何がいいたいの?」と思いながら読んでいくと、話の筋を見失わずに済みます。
【問題文冒頭】
By 2027, the global market for health caregiving is projected to reach $234 billion. Globally, by 2050, over one in five adults will be over the age of 60. Indeed, 80% of those people will live in low and middle-income countries. These people will require increasing support.
大問3各パラグラフ要約
各パラグラフをざっくりまとめると以下の通りです。
- 2050年までに世界人口の5人に1人以上が60歳以上になる。そうなると介護者が不足してくる。
- 需要はあるにもかかわらず、世界ではすでに介護の人手不足に直面している。介護職は給与が低く、魅力的な仕事とは言えない。
- 多くの国では、介護は女性の無報酬労働の上に成り立っている。
- 介護の価値が十分に認識されてこなかった結果、介護施設での虐待が世界中でも問題になってきている。
- 米国やその他の先進国では、介護問題を解消するために移民に頼ることが増えている。国際労働機関によると、世界の6,700万人の家事労働者の内、1,150万人が移民である。
- 移民介護者は、その社会の非支配的な民族や人種であることが多い。アメリカにおける黒人女性など、歴史的にもケアワーカーは非支配階級であった。これは大きな課題である。
- ロボットや遠隔医療などの新しいテクノロジーによって、訓練経験や資格のない人でも介護の助けができるようになれば、家族と医療の両方の負担を軽減できる可能性がある。
- 女性は、働きながら収入を得つつ、子育てと介護も担っている。そのため、社会における女性の役割を見直さざるを得ない。
- 女性は、最も収入の多い時期に介護のために昇進できなかったり、仕事を辞めなければならない。介護へのサポートがあれば、企業はその人が辞める損失を回避できるかもしれない。
- 最後に、家族の介護のニーズにもっと包括的に対応する政策が必要である。米国では、育児や高齢者介護のための介護保険基金の創設を構想している。
大問3解答速報
問題 | 解答 |
---|---|
21 | 1 |
22 | 3 |
23 | 2 |
24 | 4 |
25 | 1 |
26 | 3 |
27 | 1 |
28 | 3 |
29 | 3 |
30 | 1 |
31 | 3 |
32 | 3 |
大問4:介護問題再考-ジマー氏の難しい選択
- 題名:介護問題再考-ジマー氏の難しい選択
- 著者:フクシセイタ (2021)
- 文字数:600字程度(日本語)
日本語の文章を読み、英語の質問に答える問題。
英語の試験であることを忘れる、珍しい出題形式でした。
【問題文】
次の日本語の文章は問題IIIのSeymour Zimmer氏の論考に対するフクシセイタ氏による論評からの抜粋である。 この文書を読んで、それに続く質問 に 答えなさい。
大問4解答速報
問題 | 解答 |
---|---|
a | 1 |
b | 4 |
c | 2 |
d | 1 |
大問5:自由英作文
割愛します。
投稿者

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