関正生の英語長文ルールズ3:難易度・レベル・出題大学や英文出典まで徹底分析
この記事では、関正生先生のTheRules3(入試難関)を、実際に全問解いた上でレビューします。
早稲田の政経、九州大、法政、立命館など、名実ともに「難関大」の名前が並ぶのがルールズ3です。
難易度の実感値から全12レッスンの出典、元記事がネットで読める問題の一覧まで、購入前に知りたい情報をまとめました。
この記事を読むメリット
- ルールズ3の対象レベルと、始めていい目安がわかる
- 収録英文の総語数と全12レッスンのテーマ・出典がわかる
- 元記事がWebで無料公開されている問題がわかり、購入前にレベルを確認できる
2025年夏に関先生の動画が公開されたので紹介までいたします。
それでは早速いってみましょう!
ルールズ3のレベルと難易度
TheRules3の公式設定レベルは国公立標準〜私大難関となっています。
では、実際に収録されている出題大学と問題数をみてみましょう。
<国公立>
- 九州大学 1題
- 大阪府立大学(現:大阪公立大学) 1題
- 信州大学 1題
- 福島大学 1題
- 宇都宮大学 1題
<私立>
- 早稲田大学 1題
- 中央大学 1題
- 法政大学 1題
- 学習院大学 1題
- 立命館大学 2題
- 関西学院大学 1題
合計11校の12題。国公立大学から5題、私立大学から7題のバランスです。
MARCH志望者や中堅国公立志望者向けの問題集と言える一方で、九州大学や早稲田大学の問題も収録されており、最難関大学への橋渡しも目指していることが伺えます。
- 単語や文法の標準レベルは超えている
- 共通テストは安定して7割超えている
- ルールズ2はやりこんで完璧
こんな受験生にオススメできそうです。
取り組んで難しすぎると感じたら、2に戻って土台を固め直してからでも遅くありません。目安は内容理解や生徒率が50%切るなら戻ってください。2と3の段差は、1と2の段差より大きいです。
ルールズ3の出題大学と語彙数
以下がTheRules3に収録されている問題の詳細です。
| レッスン | 出題大学 | 語数 | 目標時間 |
|---|---|---|---|
| 1 | 中央大学 | 944語 | 23分 |
| 2 | 関西学院大学 | 622語 | 18分 |
| 3 | 宇都宮大学(国立) | 667語 | 27分 |
| 4 | 福島大学(国立) | 467語 | 22分 |
| 5 | 大阪府立大学(国立) | 716語 | 30分 |
| 6 | 学習院大学 | 749語 | 26分 |
| 7 | 信州大学(国立) | 470語 | 12分 |
| 8 | 九州大学(国立) | 541語 | 25分 |
| 9 | 法政大学 | 963語 | 28分 |
| 10 | 立命館大学 | 814語 | 25分 |
| 11 | 立命館大学 | 851語 | 25分 |
| 12 | 早稲田大学 | 892語 | 24分 |
ルールズ③の合計語彙数は8696語。語数だけで言えばTheRules4よりも多いシリーズ最長です。ルールズ①が4,688語、②が6,113語だったので、1冊で読む量が着実に増えているのがわかります。
900語級が3本(中央大944語、法政963語、早稲田892語)も待っています。さらに、テーマが抽象的になります。認識と現実、美とは何か、私的言語といった、現代文の評論に近い骨のある内容が増えてきます。
ルールズ3とポラリス2の違い
よく「ルールズ3とポラリス2のどちらを使ったらいいですか?」と聞かれますが、どちらかと聞かれればルールズ3をオススメします。
大前提どちらも良い長文問題集ですが、ポラリスはテーマや背景知識に重きを置いているのに対して、ルールズは問題の解き方を重視しています。
ここまで詳細に解き方を解説した参考書は類を見ないので、ルールズを推奨しています。
難易度的には、ルールズ3の方がやや難しいぐらいですが、使い始めるレベルは同じくらいです。
「レイアウト的にポラリスシリーズが好き」であれば、ポラリスを使って全く問題ありません。
ルールズを使うにしてもポラリスを使うにしても、キチンと精読して何度も音読するのが大事です。
ルールズ3で法政大学はいける?
ルールズ3に限っての質問で、「ルールズ3で法政大学は合格できますか?」となぜかよく聞かれます。
結論から言えば、法政対策として十分なレベルです。ルールズ3をやり込んだら、学んだ解法を使って法政大学の過去問をガンガン解いてください。
もう一つはルールズ3のレッスン9(出題:法政大学)が難しいというという質問です。
確かにルールズ3の中では難しい方ですが、難関大を目指す受験生としては理解してほしい問題なので、解説を熟読してぜひ壁を越えてください。
お知らせ
ルールズ3の音声の使い方とダウンロード先
やることは1・2と同じです。解いて丸付けして終わりでは勿体ないです。
大事なのは復習です。解説に書かれていることを人に説明できるレベルで読み込んでください。
その上で、解説に書いてある読み方を意識しながら何度も音読を繰り返してください。最低30回、目標100回です。
ただ3は900語級が3本あるので、大変なのは認めます。挫折しそうなら段落単位で回してください。音読は回数稼ぎではなく、読み方を体に入れる作業です。
英文を覚えてしまって、勝手にフレーズが出てくるようになったらグッドです。
音読に使用する音源は旺文社のアプリでもできますし、こちら↓からダウンロードすることもできます。
ルールズ3の11ページに書かれているパスワードを入力すれば、音声がダウンロードできます。
ルールズ3の次にやるべき参考書
ルールズ3の次にやるべき参考書ですが、志望校のレベルや時期によって異なります。
例えば以下の通りです。
- 早慶旧帝大を目指している → ルールズ4へ進む
- MARCH志望で受験まで半年以内 → 過去問演習をやる
- 時間に余裕があり同レベルの演習をもっと積みたい → ポラリス2をやる
早慶や旧帝大志望の受験生なら、順当に次のルールズ4に進んでください。ただし、先に挙げた使い方の注意に気を付けてください。
GMARCH志望で、受験まで半年を切っていたら過去問へ進んでください。過去問を直前期に詰め込む受験生もいますが、真面目に取り組めばかなりの分量になります。過去問は分厚い参考書と思って、余裕を持って取り組んでください。
比較的時間に余裕があり、同レベルの演習を積みたければ、ルールズ3と同じ関先生のポラリス2をやってください。その際、ルールズで身につけた解法を思い出しながら解いてみてください。
ルールズ4の詳細レビューはこちらです。
>>>関正生の英語長文ルールズ4:レベルや使い方、出題大学や出典まで徹底レビュー
お知らせ
ルールズ3:全12レッスンの出題大学と出典まとめ
ここからは収録されている12問を、出題大学や出典元も含めて紹介していきます。
ルールズ3の出典はニュースメディアと一般書が中心で、元記事がそのままWebで読める問題がいくつもあります。
読んでみたけどよくわからなかった、この話が面白かったから続きを読みたい、という時にご活用ください。
レッスン1:中央大学 / 睡眠を改善する最良の方法は「運動」
- 原題:The healthiest way to improve your sleep: exercise
- 著者:サンディー・ラモット / Sandee LaMotte(CNN、2017年)
- 出題大学:中央大学 経済学部 2019年 大問7
CNNの2017年の記事が元ネタ。
睡眠の重要性が説かれて久しいですが「睡眠障害に苦しむ人は運動がいいですよ」という話です。
全文が下記から読めます。
>>>The healthiest way to improve your sleep: exercise
日本人にとっては耳の痛い話もあります。OECDの調査で、日本人の睡眠時間は加盟国の中で最短クラス。世界平均より1時間近く短い状態が常態化しています。「睡眠負債」という言葉が数年前に流行語になったのも、この慢性的な寝不足が背景でした。
負債という比喩が絶妙で、週末の寝だめで完済できず、利子のように心身に溜まっていく。運動でその返済を助けられる、というのが本文の希望的な部分です。
睡眠不足が世界的な健康問題だと知らしめたのは、神経科学者マシュー・ウォーカーの『睡眠こそ最強の解決策である』でした。
「睡眠を削る人ほど早死にする」と説いて世界的ベストセラーになった一冊で、この記事の主張とも地続きです。
受験生こそ、徹夜より睡眠を選ぶ科学的根拠がここにあります。944語で本書2番目に長い英文ですが、身近なテーマなので読み進めやすいはずです。
レッスン2:関西学院大学/ 脳は「ものの見方」で進化する
- 原題:Deviate: The Science of Seeing Differently
- 著者:ボー・ロット / Beau Lotto(The Orion Publishing Group)
- 出題大学:関西学院大学 2020年 全学部入試2月2日 大問1
レッスン2は関西学院大学の2020年の入試問題(全学部入試2月2日 大問1)から。
元ネタは、ロンドン大学教授で世界的にも有名な神経科学者ボー・ロットの著書。日本語版も出ています。
ロンドン大学の神経科学者ボー・ロットの著書からの出題。「私たちは世界をありのままに見ていない、見ているのは脳が作った解釈だ」という一見するとSFの様な話で、日本語の著書もある方です。
この「脳は現実を作っている」という話、じつは身近な目の錯覚で理解できます。
数年前に世論を二分した「あのドレスは白金か青黒か」論争を覚えているでしょうか。同じ画像なのに人によって色が違って見えたあの現象です。脳が光の条件を勝手に補正して、見る人ごとに違う「現実」を作っていたわけです。
抽象的で難しい第2段落も、この錯覚を思い浮かべながら読んでみてください。
著者はTEDに登壇しており、幸いにして今回の英文と同じテーマで講演しています。英文だけではなく、その背景知識を学ぶ良い機会です。勉強の隙間の息抜きにご視聴ください。
レッスン2プチ解説
【英文冒頭】
When you open your eyes, do you see the world as it really is?
Do you see reality?
Humans have been asking themselves this question for thousands of years.
Deviate: The Science of Seeing Differently
第2段落が最も読みにくかった印象です。
具体例も多く、概ね何の話をしているか掴みやすいですが、第2段落は脳処理(認知)の話で、イメージできなかった人も多いと思います。
各段落(パラグラフ)で言いたい事をまとめると以下の通りです。
- 私たちの目は、現実を見ているのか?太古からあるこの疑問に、神経科学が答えを出している。
- 私たちは現実をありのまま見ていない。その原因は脳の知覚処理にある。
- 私たちの知覚能力になぜ疑問を持つ必要があるのか?人間の脳の力で、我々は今の文明を築いてきた。仮に現実を正しく認識していないとして何が問題なのか?
- 知覚が重要なのは、それが全ての意識の土台になるからだ。死を恐れるのは、肉体が動かなくなるからではなく、知覚の消失を恐れるからだ。私たちは知覚について知らないことがまだ多い。
- 幸いにも、知覚神経科学が解決策を提示してくれる。次の革新は、技術ではなくものの見方である。
*要約というより「つまり言いたいことはこういうこと」のまとめです
レッスン3:宇都宮大学 / 時間・地域・民族を超えて響き合う文化たち
- 原題:TRANSCULTURE:Transcending Time,Region and Ethnicity―多元文化論エッセイ 響き合う文化たち
- 著者:クリストファー・ベルトン&小田島恒志 / Christopher Belton and Koshi Odashima(金星堂、2017年)
- 出題大学:宇都宮大学 2019年 前期試験 第1問
栃木県にある国立大学、宇都宮大学2019年の英語から出題。
元ネタは、英語学習教材「TRANSCULTURE:Transcending Time,Region and Ethnicity―多元文化論エッセイ 響き合う文化たち」から。
テーマは「美となにか?」、文学部をはじめ入試頻出テーマの一つ。「美は見る人の目の中にある」という諺から始まり、古代ギリシャの黄金比と、日本の"わびさび"という対照的な美意識を並べて論じます。
教科書が元ネタだけあって、割とお堅い内容です。ちなみに共著の小田島恒志先生は、早稲田大学の教授で英米学研究の権威の1人です。
【英文冒頭】
Beauty is in the eye of the beholder.
This proverb was first recorded in the English language in its current form in the 19th century. However, the concept of people viewing beauty differently from their own points of view has been around in most cultures of the world since ancient times. But what exactly is beauty, and is it really subjective?
TRANSCULTURE:Transcending Time,Region and Ethnicity
背景知識として黄金比の話を少し。
1.618という黄金比は、パルテノン神殿やミロのヴィーナスに宿る「神の比率」として長らく崇められてきました。ところが近年、パルテノン神殿の設計者が黄金比を意図的に使った証拠はない、という指摘が美術史の側から出ています。
人間が美しいと感じる比率を、後世が神話化して数字に押し込めた可能性がある。「美は主観か客観か」という本文の問いにも関わってきます。
レッスン4:福島大学/ 発音の神話 第二言語研究の授業への応用
- 原題:Pronunciation Myths: Applying Second Language Research to Classroom Teaching(p56~)
- 著者:リンダ・グラント / Linda Grant(University of Michigan Press、2014年)
- 出題大学:福島大学 2019年人文社会学群(人間発達文化学類人文科学コース)前期 大問3
福岡大学でも福井大学でもありません。東北地方の国立大学、福島大学から出題です。
福岡大でも福井大でもありません。東北の国立大学、福島大学からの出題です。
元ネタはアメリカの言語研究者による第二言語習得の専門書。「英語の発音に力を入れると、これぞスピーキングだ!と生徒ウケが良くなった」話から、専門的な議論へ展開します。
【英文冒頭】
Most learners at every level are keen to learn how to speak as well as how to read and write in English, and beginners are no exception. They are very keen to learn how to pronounce English in a way that makes themselves understood easily.
Pronunciation Myths: Applying Second Language Research to Classroom Teaching p56
タイトルの"Pronunciation Myths: Applying Second Language Research to Classroom Teaching"を直訳すると「発音の神話:第二言語研究の授業への応用」ぐらいの意味になります。
第二言語習得(SLA)とは、人が母語以外の言語をどう身につけるかを科学する分野です。
ここで受験生に役立つ知見をひとつ。SLA研究で有名なのがクラッシェンの「インプット仮説」で、少しだけ背伸びした理解可能なインプットを大量に浴びることが習得の鍵だとされます。
ルールズで丁寧に読んだ英文を何度も音読するという勉強法は、この仮説にきれいに合致しています。実は当塾GOKOの英語指導もこの第二言語研究に基づいた教授法で実施しています。
レッスン5:大阪府立大学/ コミュニケーションはなぜ今最も重要なスキルなのか?
- 原題:Why Communication Is Today's Most Important Skill
- 著者:グレッグ・サテル / Greg Satell(Forbes、2015年)
- 出題大学:大阪府立大学(現:大阪公立大学)2019年 前期 大問1
大阪府立大学の2019年の英語から出題。
コンサルタントのグレッグ・サテル氏がフォーブスに寄稿した記事が元ネタ。「頭がいいだけでは足りない、人を巻き込む力があって初めて有能なのだ」という主張です。
コラムなので読みやすく、内容も面白い。全文が下記から読めます。
若い時は能力さえあればいいと思い込みがちですが、人間社会は意外と複雑です。
そんな中で一定の成功を収めるためには、人を巻き込んだり協働する力は超重要です。
コラムなので読みやすく、興味深い内容でした。
【英文冒頭】
When I was in high school, a man came to speak about Winston Churchill. Mostly, it was the usual mix of historical events and anecdotes, which in Churchill’s case was a potent mixture of the poignant, the irreverent and the hilarious. But what I remember best was how the talk ended.
Why Communication Is Today's Most Important Skill
本文には偉人が何人か登場するので、二人だけ深掘りします。
ファインマンの「針の先にブリタニカ百科事典を書く」
著名な学者が複数登場しますが、いくつか解説したいと思います。
まずは、物理学者ファインマンの話です。「ブリタニカ百科事典を針の先の面積に収める」という、何とも荒唐無稽な話が出てきます。
この元ネタは1959年12月の講演「There's Plenty of Room at the Bottom」(直訳:底には十分な空間がある、意訳:ナノスケール領域にはまだたくさんの興味深いことがある)です。
針の頭を2万5千倍に拡大すれば百科事典の全ページ面積に等しくなるから、書き込みを2万5千分の1に縮小すればいい、それは原子のスケールで十分可能だ、という論で、講演では以下通り話しています。
なぜ百科事典ブリタニカ全24巻を針の頭に書き込むことができないのでしょうか?何が関わってくるのか見てみましょう。
ピンの頭は直径約1/16インチです。これを25,000倍に拡大すると、ピンの頭の面積は Encyclopædia Britannica の全ページの面積に等しくなります。したがって、必要なのは 百科事典のすべての書き込みを25,000分の1に縮小することです。それは可能でしょうか?
人間の目の解像力は約1/120インチ、つまり 百科事典の細かいハーフトーンの再現に見られる小さな点の直径にほぼ等しいです。これを25,000分の1に縮小すると、直径は80オングストローム、普通の金属で32個の原子分です。言い換えれば、その点一つにまだ1000個の原子が入ります。
したがって、各点は写真製版によって必要なサイズに容易に調整でき、百科事典ブリタニカの全巻をピンの頭に収めるのに十分な空間があることは、疑いようがありません。
ナノテクノロジーの出発点として名高い講演で、この思想は今まさに「21世紀の石油」と呼ばれる半導体産業の土台になっています。2024年に熊本へ誘致されたTSMCが騒がれたのも、この延長線上の話です。
ファインマンは専門家でない人との対話を大事にした人でもあり、その人柄は「ご冗談でしょう、ファインマンさん」に活写されています。息抜きにどうぞ。
ウィトゲンシュタインの「私的言語」
もうひとつ厄介なのが、哲学者ウィトゲンシュタインの「私的言語」です。
ものすごーく雑に言えば「自分だけにしか理解できない言葉 ≒ 他人に理解されてない言葉」のことで、彼はそんな言語は論理的に成り立たないと論じました。
意味を確かめる客観的な基準がなく、ルールを他人と共有できず、間違いを正す仕組みもないからです。以下少し解説です。
ウィトゲンシュタインの「私的言語」とは、自分だけの感覚や感情を表現するために使う、誰も理解できない言語のことです。
例えば、「赤」という言葉を、自分だけが感じる特別な赤色を表すために使うと想像してみてください。このような言葉は、外から観察可能な行動と明確に結びついていないため、他人には理解できません。
問題点
ウィトゲンシュタインは、このような私的言語は論理的に成り立たないと主張しました。その理由は以下の通りです。
- 意味の基準がない: 私的言語の言葉は、客観的な基準で意味を定めることができない。
- 規則の共有がない: 私的言語は、自分一人でルールを決めて使うため、他人と共有できない。
- 修正の仕組みがない: 私的言語の間違いを指摘したり修正したりする仕組みがない。
ウィトゲンシュタインは英語を始め、現代文や小論文の課題文中に登場します。
ここまでのことは忘れてもいいので、「語りえぬものについては、沈黙せねばならない。」という名言を残した言語哲学の巨人、とだけ覚えておきましょう!
ご尊顔はこちら。
レッスン6:学習院大学 / 忙しすぎて食事の時間もない!
- 原題:Are we really too busy to eat well?
- 著者:ビー・ウィルソン / Bee Wilson(Financial Times、2019年)
- 出題大学:学習院大学 2020年 文学部コア・理学部プラス 大問1
イギリスの経済紙フィナンシャル・タイムズの2019年の記事が元ネタ。
書いたのは食を専門とするイギリスのフードライター、ビー・ウィルソン氏。人間と食事をテーマにした作家さんで、日本でも翻訳された著書多数です。
中国の高校がわずかな勉強時間を捻出するため食堂から椅子を撤去した、という強烈な導入から始まります。
そして本文の結論、「忙しくて食べる時間がない」の正体は、「現代人が食事以外に価値を置くようになったから」というオチです
便利になると時間がなくなる
ここで興味深いのが、便利になるほど時間に追われるという逆説です。
洗濯機も電子レンジも、家事を楽にするために生まれたのに、実際には家事の時間はさほど減りませんでした。技術が浮かせた時間の分だけ、私たちは「もっときれいに、もっと手早く」と要求水準を上げてしまうからです。(慶應文学部2022年の英文はまさにこれでした)
日本に引きつけると、この話は「孤食」の広がりと重なります。かつて家族で囲んだ食卓が、塾や仕事の都合でバラバラになり、一人で手早く済ませる食事が当たり前になりました。食事は栄養補給の作業になり、誰かと味わう時間ではなくなっていく。
忙しさは時間の量ではなく優先順位の問題だ、なぜか時間がないという受験生のあなた、、、勉強を最優先にしてますか...?
レッスン7:信州大学/ 準備できてる?災害に備える徹底対策マニュアル
- 原題:Are You Ready? An In-depth Guide to Citizen Preparedness
- 著者:アメリカ合衆国国土安全保障省(連邦緊急事態管理庁 FEMA)
- 出題大学:信州大学
アメリカ合衆国の役所が2013年に国民向けに出した災害マニュアル「Are You Ready? An In-depth Guide to Citizen Preparedness」が出典となっています。
アメリカ政府が2013年に国民向けに配布した防災の手引き「Are You Ready?」からの出題。
竜巻の性質と、どこへ逃げれば助かるかを説く実用文書です。役所配布のマニュアルなので、エンタメ性はありません。竜巻から生き延びたい人は熟読の価値ありです。
トルネードとオズの魔法使い
なぜアメリカでこんなマニュアルが必要かというと、竜巻の桁が違うからです。
日本の竜巻は年25件ほどですが、アメリカでは年1,300件前後。世界の竜巻の大半がアメリカに集中しています。理由は地理にあって、北からの寒気と、メキシコ湾からの暖かく湿った空気が大平原でぶつかり、竜巻が生まれやすい。
中西部の一帯は「トルネード・アレイ(竜巻街道)」と呼ばれるほどです。映画「オズの魔法使い」でドロシーが竜巻に飛ばされる舞台がカンザスなのも、この地理を踏まえた設定でした。
レッスン8 :九州大学 / 筆記体がまさかの復活!
- 原題:Cursive writing is making a comeback in classrooms in several states -- and Texas is the latest
- 著者:ライアン・プライヤー / Ryan Prior(CNN、2019年)
- 出題大学:九州大学 2020年 前期 大問3
福岡県の国立大学、九州大学2020年の英語から出題。
元ネタはCNNの2019年の記事で、アメリカで筆記体を必修に戻す州が相次いでいる、という話です。テーマは筆記体ですが、一段抽象化すれば「消えゆく技術をどう扱うか」という話でもあります。
全文が下記から読めます。
>>>Cursive writing is making a comeback in classrooms in several states – and Texas is the latest
本文の面白いところは、この議論を歴史の縦軸に置くことです。
古代ギリシャではソクラテスが「書き言葉」に反対しました。文字に頼れば記憶力が衰えるという理由で、口承こそ優れていると考えたのです。
中世では宗教学者が活版印刷に抗いました。手書き写本の美が失われるからです。
口承が手書きに、手書きが活版に脅かされ、いままた手書きがデジタルに脅かされている。技術の交代のたびに「失われるもの」を惜しむ声が上がる、その最新版が筆記体だというわけです。
ChatGptで人間はバカになるか?
口頭伝承が手書きになり、手書きが活版印刷になった、同じように「筆記体も失われた技術となりうるのか?」今回はコミュニケーション手段の変遷でしたが、同様のことは他ジャンルにもいえます。
デジタルデバイスの歴史でいえば、大型コンピューター➡︎パーソナルコンピューター➡︎ラップトップコンピューター(ノートPC)➡︎スマートフォンへと移行しました。
メディアの歴史も、新聞➡︎ラジオ➡︎映画➡︎テレビ➡︎ネットと変遷しています。
さらに最近はChatGptを代表とする生成AIの登場で、人間の思考力を危ぶむ声がますます高くなっています。
あなたがパソコンやスマホを使ってネット上でこの文章を読んでいるということは、紛れもなくあなたもその歴史の中にいるのです。
レッスン9:法政大学 / 本当のアメリカンドリーム
- 原題:The End of Average
- 著者:トッド・ローズ / Todd Rose(HarperCollins、2016年)
- 出題大学:法政大学 文・経営・人間環境学部 2019年 A方式I日程 大問2
発達心理学者トッド・ローズの著書「平均思考は捨てなさい」からの出題。日本でもよく売れて文庫版も出た本です。
タイトルから推測できるように「これからは欠点のない人材より、尖った人材がウケる時代だ!」的な内容です。
出題部分は「平均が評価される時代が終わるよ」といった話で、「アメリカンドリーム」の本来の意味は物質的な成功ではなく、一人ひとりが持って生まれた可能性を最大限に発揮できること、という主張が軸になります。
著者トッド・ローズの経歴を知ると、この主張の重みが少し変わります。
彼は高校を中退し、成績最低ランクの落ちこぼれでした。それがのちにハーバード大学教育大学院の教授になる。「平均から外れた人間を測るものさしが間違っている」という彼の論は、机上の理屈ではなく人生そのものです。
個性を伸ばせ、好きを深めろ、3教科でいいじゃない
「平均は存在しない」という本書のもうひとつの主張には、アメリカ空軍のコックピット設計の逸話が有名です。
数千人のパイロットの平均寸法で座席を設計したら、誰の体にも合わなかった。平均という架空の人間に合わせた結果、全員が不便を強いられた。だから座席を可動式にした、という話です。
同著者の似たような別著作もありますが、一貫して「個性を伸ばせ、欠点があってもいい、好きを深めろ」といった主張です。
国公立ではなく私立3教科受験を目指すものにとっては、非常に心地の良い話です。
確かに受験勉強は大変かもしれません。しかし、これを読んでる慶應志望の受験生諸君!
私大は所詮3教科、自分選んだ受験3科目ぐらいサクッと勉強して突き抜けよう!!
レッスン10:立命館大学 / スピーチ中に「あー」とか「えー」とか言ったらダメなの?
- 原題:Your Speech Is Packed With Misunderstood, Unconscious Messages
- 著者:ジュリー・セディヴィ / Julie Sedivy(Nautilus、2016年)
- 出題大学:立命館大学 2020年 全学部入試(2月3日実施) 大問2
言語学者ジュリー・セディヴィ氏のネット記事が元ネタ。
話の途中で「あー」や「えー」ということはあると思いますが、欧米圏では「動物っぽい」ということで避けられている行為です。
日本でも「自信がない」「自分の気持ちを言語化できていない」印象を与えるため、人前に出る人は矯正トレーニングを受けることもあります。
...なんて言われてるけど、実はそんなに悪い行為じゃないんだよ!!!というお話。
全文が下記から読めます。
>>>Your Speech Is Packed With Misunderstood, Unconscious Messages
本文には映画「ジュラシック・パーク」のジェフ・ゴールドブラム演じる数学者の名場面が引かれています。、フィラーがあるからこそ、彼が難しい考えを絞り出している感じが伝わるシーンですが、映像でみるならこちらです。
立板に水でしゃべると信用できない
面白いのは、フィラーが言語ごとに「方言」を持つことです。英語話者はum, uh、日本語は「えーと」、フランス語はeuh、スペイン語はesteと、国によって口ごもり方が違う。
しかもこれは生まれつきの音ではなく、その言語の話者が後天的に身につける癖だと考えられています。留学して現地の言葉に慣れてくると、口ごもり方まで現地式になる、という報告もあるほどです。沈黙が気まずいという感覚と、それを埋める音の選び方には、文化がにじみます。
そして近年、このフィラーが思わぬ場所で脚光を浴びています。AIの音声合成です。対話型AIの声に、開発者はあえて「えー」や息継ぎ、わずかな言いよどみを混ぜ込むようになりました。
完璧によどみなく喋る声は、かえって不気味に聞こえる。人間らしさの正体が、実は「不完全さ」の側にあると分かってきたからです。この英文が書かれたのは2016年ですが、10年近く経ったいま、AI開発の現場で意味を持ち始めています。
レッスン11:立命館大学 / 生まれた時のこと覚えてる?
- 原題:Can a person remember being born?
- 著者:クリステン・コンガー / Cristen Conger
- 出題大学:立命館大学 2020年 全学部入試(2月2日実施) 大問2
レッスン10に続き、立命館大学の2020年全学部入試から出題(日程は違いますが)。

元ネタは米国人ライターのネット記事。
3歳以前の記憶がなくなる「幼児期健忘」がテーマで、下記より全文読めます。
【英文冒頭】
Think back to your earliest memory. Perhaps images of a birthday party or scenes from a family vacation come to mind. Now think about your age when that event occurred. Chances are that earliest recollection extends no further back than your third birthday. In fact, you can probably come up with only a handful of memories from between the ages of 3 and 7, although family photo albums or other cues may trigger more.
Can a Person Remember Being Born?
自分の記憶を遡っても、確かに3歳以前の記憶はありません。それはなぜか?というところから話が始まります。
誰にでも心当たりがあるという意味で、読みやすくて面白い文章です。
レッスン12 :早稲田大学 / サルが教える公平性
- 原題:What Monkeys Can Teach Us About Fairness
- 著者:ニコラス・クリストフ / Nicholas Kristof
- 出題大学:早稲田大学 政治経済学部 2020年 大問1
早稲田の看板学部こと、政治経済学部の2020年の過去問から出題。

著名なジャーナリスト、ニコラス・クリストフ氏のニューヨークタイムズの2017年の記事が元ネタ。
「おサルさんにも"公平性"の概念があって、そのおかげで社会が保たれているよ」という話。
身近なとこで考えてみましょう。
なぜ私たちは著名人や有名人のスキャンダルや犯罪が大好きなのでしょう?
ワイドショーはもちろん、SNSでも罵詈雑言、誹謗中傷が溢れています。
誰かの悪口や批判をしても、当の本人は全く得をしません。
...が、しかし
悪口や批判は全く無駄な行為かと思いきや、意外にも社会秩序に役に立ってるかも、みたいなオチです。
【英文冒頭】
Monkeys were taught in an experiment to hand over pebbles in exchange for cucumber slices. They were happy with this deal.
Then the researcher randomly offered one monkey — in sight of a second — an even better deal: a grape for a pebble. Monkeys love grapes, so this fellow was thrilled.
The researcher then returned to the second monkey, but presented just a cucumber for the pebble. Now, this offer was insulting. In some cases the monkey would throw the cucumber back at the primatologist in disgust.
What Monkeys Can Teach Us About Fairness
全然関係ないですが、著者のニコラス・クリストフ氏は、いろいろあって一部の日本人からめちゃめちゃ嫌われています。
以上、内容のプチ解説でした。
ルールズ3を隅から隅までやり尽くして、ぜひ第1志望合格を一緒に目指しましょう!💪
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