【改訂版】英語長文ポラリス3徹底レビュー|旧版との違いを全12レッスン完全比較:早慶出題を徹底検証と1万字の背景知識【買い換えるべき?】
関正生先生の英語長文ポラリスに、10年ぶりの改訂版が出ました。
この記事では英語長文ポラリス3(発展レベル=早慶上智・難関国公立)2016年の旧版と2026年の改訂版の両方を比較して、どこまで変わったのか検証して紹介します。
先に結論を言います。改訂版は英文3問入れ替わりました。
12本のうち9本は英文そのままで、並び順だけが変わっています。
この記事を読むメリット
- 改訂版で新しく入った英文と、旧版から消えた英文がわかる
- 全12レッスンのテーマ・出題大学・出典が一覧でわかる
- 発展レベルの難易度と、始めていい目安がわかる
それでは早速いってみましょう。
改訂版ポラリス3のレベルと難易度
まず、改訂版に収録されている12題の出題大学を並べます。
慶應義塾大学 3題(経済、環境情報が2題)
早稲田大学 4題(政治経済、社会科学、法、理工)
東北大学、名古屋大学、滋賀医科大学、東京外国語大学、同志社大学 各1題
私立最難関の慶應と早稲田だけで7題。旧帝クラスの東北・名古屋、単科医大の滋賀医科、英語最難関の東京外大まで入っていています。
始める目安は、ポラリス2を終えているか、ルールズ3をやり込んでいるあたり。共通テストの英語が安定して8割を超え、単語・文法のは確固たる状態が前提になります。
解いてみて内容理解が半分を切るようなら、無理に粘らず一段下げるか、語彙や解釈の復習を行なってください。
旧版からの改訂ポイント
ここがこの記事の本題です。旧版を持っている人、旧版で勉強してきた人が一番知りたいところだと思います。
差し替わったのは3問で、9問は同じで収録順だけ変わりました。2016年版視点で変化を図にまとめると以下の通りです。
| 2016年版 | テーマ/出題大学 | 2026改訂版での扱い |
|---|---|---|
| 1 | 移民「移民受け入れという使命」/慶應 経済 | L3へ移動 |
| 2 | 宇宙「宇宙での大問題」/早稲田 政経 | L4へ移動 |
| 3 | 男女「女性の社会進出の落とし穴」/横浜国立 | 収録外 |
| 4 | 生物「絶滅種復活はホントによいことなの?」/滋賀医科 | L8へ移動 |
| 5 | 健康・医療「高齢化社会の深い闇」/早稲田 社学 | L5据え置き |
| 6 | 社会問題「貧困の差は必ず生まれる!?」/東京外大 | L2へ移動 |
| 7 | 情報化社会「SNSと性格について」/早稲田 理工 | L12へ移動 |
| 8 | 情報化社会「やっぱりスマホは会話の邪魔!?」/名古屋 | L7へ移動 |
| 9 | 創造力「歩くだけで創造的になる!?」/産業医科 | 収録外 |
| 10 | コミュニケーション「リンガフランカとしての英語」/同志社 | L9へ移動 |
| 11 | コミュニケーション「言語消滅による危機とは?」/慶應 環境情報 | L11据え置き |
| 12 | 教育「子供は教師のどこを見ているか?」/奈良教育 | 収録外 |
新しく入ったのは以下の3本です。
L1「なんでこんなに眠いんだ!?」東北大/Matthew Walker「Why We Sleep」
L6「死者と話せるのはよいことなのか?」慶應環境情報/ニューヨーク・タイムズ 2023年
L10「やりがい搾取を考える」早稲田法/The Atlantic 2021年
その結果、慶應が2本から3本、早稲田が3本から4本に増えました。
設定時間の見直し
細かい部分では、2016年版で「貧困の差」だったのが、2026年改訂版で「貧富の差」に変わりました。
他にも、本番想定時間も一部で詰められていて、スマホの英文は35分から28分へ、リンガフランカは35分から30分へ。どちらも演習目安(練習としての設定時間)は変わっていないので、「本番ならこの速さで」という関先生の要求水準が上がった格好です。
改訂版の設定時間は後述します。
2016年旧版から改訂版に買い替えるべき?
旧版をすでに持っている人へ、正直なところを書いておきます。
9問は同じ英文なので、そこを解き直す意味は薄いです。買い直す価値があるとすれば、新規3本の最新テーマ、SFC・早稲田法という出題の変化、そして時間設定の変化にお金を出すかどうかです。
買い直すなら、そのお金で買って第1志望の過去問を買って、気合い入れて読み込んだ方が効果が高いと思います。
旧版を既にやりこんでいるなら、無理して買い替えなくてもいいスタンスです。
改訂版ポラリス3の出題大学・出題年度・語数
改訂版の全12題を一覧にしました。
ポラリスは旧版・改訂版ともに語数を載せていないので、本文語数は当塾で実際に数えています。
旧版から引き継いだ9本はいずれも2015年の入試からの収録で、新しく入った3本がL1東北大2025年、L6慶應SFC環境情報2025年、L10早稲田法2023年です。
| 問題 | テーマ | 出題大学 | 出題年度 | 本文語数 | 時間:本番/演習 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | なんでこんなに眠いんだ!? | 東北 | 2025年 | 1186語 | 25分/32分 |
| 2 | 貧富の差は必ず生まれる!? | 東京外国語 | 2015年 | 604語 | 12分/18分 |
| 3 | 移民受け入れという使命 | 慶應義塾(経済) | 2015年 | 698語 | 24分/36分 |
| 4 | 宇宙での大問題 | 早稲田(政治経済) | 2015年 | 781語 | 23分/35分 |
| 5 | 高齢化社会の深い闇 | 早稲田(社会科学) | 2015年 | 870語 | 22分/34分 |
| 6 | 「死者と話せる」のはよいことなのか? | 慶應義塾(環境情報) | 2025年 | 840語 | 40分/45分 |
| 7 | やっぱりスマホは会話の邪魔!? | 名古屋 | 2015年 | 668語 | 28分/35分 |
| 8 | 絶滅種復活はホントによいことなの? | 滋賀医科 | 2015年 | 756語 | 35分/40分 |
| 9 | リンガフランカとしての英語 | 同志社(全学部) | 2015年 | 911語 | 30分/35分 |
| 10 | 「やりがい搾取」を考える | 早稲田(法) | 2023年 | 816語 | 25分/35分 |
| 11 | 言語消滅による危機とは? | 慶應義塾(環境情報) | 2015年 | 1210語 | 60分/80分 |
| 12 | SNSと性格について | 早稲田(理工) | 2015年 | 891語 | 20分/32分 |
本文語数は当塾によるカウントで、ポラリスの公表値ではありません。
収録英文の語彙数は1万
当塾で全12本を数えたところ、いちばん短いのが貧富の差の604語(東京外大)、いちばん長いのが言語消滅の1210語(慶應SFC)でした。新しく入った睡眠(東北大)が1186語で、2番目の長さです。
12本を合計するとおよそ1万語。1冊やり切る読書量としては、なかなかの分量です。
改訂版ポラリス3の使い方と音読
解いて丸付けして終わり、では発展レベルの英文がもったいないです。ポラリスの英文は一本ずつが読み物として面白いので、内容を人に説明できるところまで読み込んでほしいと思います。
その上で音読です。解説に書かれた読み方を意識しながら、同じ英文を何度も声に出す。最低30回、目標100回。
ポラリス3は後半に長い英文が控えているので、丸ごと100回がきついなら段落単位で回してください。音読は回数を稼ぐ作業ではなく、英語の語順のまま意味が流れる感覚を体に入れる作業です。フレーズが勝手に口から出るようになったら、その英文は自分のものになっています。
改訂版ポラリス3の次にやるべき参考書
発展レベルを終えたあとは、志望校と残り時間で分かれます。
早慶を第一志望にしているなら、ここからは過去問です。ポラリス3で身につけたテーマ知識と読解体力を、そのまま志望学部の過去問にぶつけてください。
過去問は薄い問題集ではありません。真面目に数年分を回すとかなりの分量になるので、直前に慌てて詰め込むより、早めに着手して「分厚い参考書」として付き合うのがオススメです。
もう少し同レベルの演習を積みたいなら、同じ関先生のルールズ4、慶應文学部志望で記述対策がしたいなら「記述トレーニング」、SFC志望で語彙強化したいなら「頻出ポラリス3」あたりがオススメです。
学部別のオススメは以下にまとめたのでご参照ください。ただし、新しい問題を雑に解くより、改訂版ポラリス3の12本を音読で仕上げきるほうが、結果として点数が伸びる可能性があることは心に留めておいてください。。
>>> 偏差値65→70|学部別対策と過去問演習で、慶應の合格点を取り切る最終参考書ルート
改訂版ポラリス3についてよくある質問
Q. 旧版を持っていますが、改訂版に買い替えるべきですか。
既出の通り、無理に買い換える必要はないと考えます。
Q. ルールズ3とポラリス3、どちらを先にやるべきですか。
読み方の型がまだ固まっていないならルールズ3が先です。読めるんだけど背景知識不足を感じる、という状態ならポラリス3から入って大丈夫です。狙いが違う本なので、時間が許せば両方やってもいいです。
ポラリス3:全12レッスンの出題大学と出典
ここからは12題を一本ずつ、出典と背景知識を添えて紹介します。
英文の中身をなぞるのではなく、その英文を読んだあとにもう一段面白くなる話を中心に置きました。
合計1万字の気合いを入れたコラムです。背景知識をゲットすると思って、演習後にぜひ読んでみてください。
| 問題 | テーマ | 出題大学 | 出題年度 | 本文語数 | 時間:本番/演習 |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 | なんでこんなに眠いんだ!? | 東北 | 2025年 | 1186語 | 25分/32分 |
| 2 | 貧富の差は必ず生まれる!? | 東京外国語 | 2015年 | 604語 | 12分/18分 |
| 3 | 移民受け入れという使命 | 慶應義塾(経済) | 2015年 | 698語 | 24分/36分 |
| 4 | 宇宙での大問題 | 早稲田(政治経済) | 2015年 | 781語 | 23分/35分 |
| 5 | 高齢化社会の深い闇 | 早稲田(社会科学) | 2015年 | 870語 | 22分/34分 |
| 6 | 「死者と話せる」のはよいことなのか? | 慶應義塾(環境情報) | 2025年 | 840語 | 40分/45分 |
| 7 | やっぱりスマホは会話の邪魔!? | 名古屋 | 2015年 | 668語 | 28分/35分 |
| 8 | 絶滅種復活はホントによいことなの? | 滋賀医科 | 2015年 | 756語 | 35分/40分 |
| 9 | リンガフランカとしての英語 | 同志社(全学部) | 2015年 | 911語 | 30分/35分 |
| 10 | 「やりがい搾取」を考える | 早稲田(法) | 2023年 | 816語 | 25分/35分 |
| 11 | 言語消滅による危機とは? | 慶應義塾(環境情報) | 2015年 | 1210語 | 60分/80分 |
| 12 | SNSと性格について | 早稲田(理工) | 2015年 | 891語 | 20分/32分 |
レッスン1:東北大学 / なんでこんなに眠いんだ!?
- 原題:Why We Sleep: Unlocking the Power of Sleep and Dreams
- 著者:マシュー・ウォーカー / Matthew Walker(邦題「睡眠こそ最強の解決策である」)
- 出題大学:東北大学(前期・2025年)
- 語数:1186語
元ネタは、神経科学者マシュー・ウォーカーの世界的ベストセラー。邦題は「睡眠こそ最強の解決策である」です。
「睡眠を削る人ほど早死にする」という強い主張をした本で、隠さず言えば、後に批判も浴びました。2019年に研究者のアレクセイ・グゼイが、本書には事実誤認や誇張、都合のよいデータの切り取りが目立つと検証を公開し、ウォーカー自身も一部の誤りを認めています。
科学書としては割り引いて読む必要があるかもしれませんが、「睡眠は削るものではなく守るもの」というコアメッセージは変わってません。
11日間連続で眠らなかったアメリカの高校生
眠らないとどうなるのか、という極端な実験も歴史に残っています。1960年代、アメリカの高校生ランディ・ガードナーが自由研究として264時間、11日間ぶっ通しで起き続けた記録があります。
後半の彼は幻覚を見て、記憶も感情も壊れかけていました。本文に出てくる、数か月まったく眠れないまま死に至る「致死性家族性不眠症」という難病とあわせて、睡眠の重要性を教えてくれる事件です。
日本人には耳の痛いテーマでもあります。本文でも、睡眠時間がとりわけ減った国としてアメリカ、イギリス、日本、韓国が名指しされています。OECDの調査で、日本の平均睡眠はおよそ7時間半、加盟国で最短です。
「睡眠負債」が2017年の流行語になったのも、この慢性的な寝不足が背景でした。負債という比喩が絶妙で、週末の寝だめでは完済できず、利子のように心身にたまっていく。徹夜で詰め込むより眠ったほうが記憶は定着する、というのはいまや睡眠科学の常識です。
受験生こそ、まず寝てください。
レッスン2:東京外国語大学 / 貧富の差は必ず生まれる!?
- 原題:Is Inequality Approaching a Tipping Point?
- 著者:マーク・ブキャナン / Mark Buchanan(Bloomberg、2014年)
- 出題大学:東京外国語大学(前期・2015年)
- 語数:604語
ポラリス3では最もワード数の少ない英文です。
書き手のマーク・ブキャナンは物理学者出身のサイエンスライターで、この英文の面白さは経済を物理的な目で見るところにあります。
全員が同じ元手から出発し、公平でランダムな取引を繰り返すだけのシミュレーション世界を作っても、富はごく一部に集中していく。運がいい者ほど多く投資でき、勝ちが勝ちを呼ぶからです。
経済物理学では「ヤードセール・モデル」と呼ばれる考え方で、たとえ毎回コイン投げのように公平な取引でも、確率だけで最後はひとりが全部をさらっていく。気体分子のエネルギーの散らばりを、そのまま富の散らばりに読み替える発想です。格差は陰謀でも能力差でもなく、ただの確率過程の帰結だと述べています。
経済格差とパレートの法則(8対2)
格差を語るとき避けて通れないのが「パレート」です。
19世紀末のイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートは、自国の土地のおよそ8割を、人口の2割が握っていることに気づきました。ここから生まれたのが、あの「8対2の法則(パレートの法則)」です。
上位2割が全体の8割を占めるという偏りは、土地でも富でも売上でも恋愛でも、格差と名がつくとこには大抵顔を出します。
同じ2014年前後には、ピケティ「21世紀の資本」が世界的に読まれていました。その後の現実はモデルの予言どおりで、世界の富の偏りはむしろ広がっています。
2026年の世界不平等レポートでは、上位10%が世界の富のおよそ4分の3を握り、下位半分の取り分は2%ほど。オックスファムも毎年ダボス会議に合わせて、ほんの一握りの富豪が人類の下半分と同じだけの資産を持つ、と告発しています。きれい事なしで格差の正体に踏み込む、東京外大らしい骨のある一本です。
ピケティの理論を庶民が応用するならば、NISAなどを利用して全世界株式を少しずつ買い、資産が資産を生む状況を少しでも早く作ることです。大学生になったら本格的に資産形成の勉強を始めてみてください。
レッスン3:慶應義塾大学(経済) / 移民受け入れという使命
- 原題:Immigration: Fulfilling Our Global Obligations
- 著者:Lemmy Inne(2013年)*慶應オリジナル英文
- 出題大学:慶應義塾大学 経済学部(2015年)
- 語数:698語
舞台はフランス北部サンガットの移民キャンプ。ドーバー海峡を渡って英国を目指す人々が集まる一帯です。英文が書かれたあと、現実を見てみましょう。
フランス北部の港町カレー近郊の巨大キャンプ「ジャングル」は2016年に強制撤去され、同じ年、英国は移民問題を一因の一つとしてEU離脱(Brexit)を選びました。
その後も英国は迷走します。海峡を渡ってきた人をアフリカのルワンダへ送るという強硬策が2022年に打ち出されましたが、法廷闘争で一度も実行されないまま、2024年に発足した労働党政権が即座に撤回しました。それでも密航は止まらず、2024年だけで約3万7千人が海峡を渡っています。
世界的な流れは移民抑制
2026年現在の雰囲気としては、移民を大量に受け入れてきた国にですら移民抑制に舵を切り始めた、印象です。
移民と難民の異なりますが、難民を「強制的な移動を強いられる移民」と捉えれば、広義の意味でどちらも移民になります。具体的な事例として、ドイツ、スェーデン、スイスのニュース記事を紹介します。(タイトルだけでも何となく雰囲気が掴めるはずです)
- 「寛容の国」ドイツ、移民・難民政策を転換 極右政党の躍進も背景に
- 「人道大国」の仮面を脱いだスウェーデン、社会に溶け込んだ若者を排除する新制度がはらむ矛盾
- カナダ、移民受け入れ抑制へ 住宅・社会サービス逼迫受け
また日本の移民受け入れは、認定される割合が先進国のなかでも際立って低いことで知られます。海の向こうの話に見えて、実は日本の姿勢が問われるテーマでもあります。
移民・難民は今こそ狙われやすいテーマなので、押さえておく価値があります。
レッスン4:早稲田大学(政治経済) / 宇宙での大問題
- 原題:Space Junk Rivals Weapons as a Major Threat
- 出典:space.com
- 出題大学:早稲田大学 政治経済学部(2015年)
- 語数:781語
宇宙ゴミ(スペースデブリ)の話です。地球のまわりを秒速数キロで回る無数の破片が、いつか宇宙開発そのものを止めかねない。読みどころの一つに、本文中でスターウォーズのハン・ソロが引き合いに出される場面があります。硬い科学記事に混じる、遊び心です。
鍵になるのがケスラーシンドローム。元NASAのドナルド・ケスラーが1978年に唱えた説で、デブリ同士の衝突がさらなるデブリを生み、連鎖的に増えていくという悪夢的なシナリオです。
2009年の米ロ衛星衝突、2007年の中国による衛星破壊実験、そして2021年のロシアの対衛星ミサイル実験は、いずれもこの連鎖に薪をくべました。映画「ゼロ・グラビティ」でもここら辺が描かれています。
宇宙ゴミ問題はSFC2026年でも出題
その後の現実として明るい話も出てきました。デブリを実際に片づけにいくミッションが動き始めていて、その最前線に日本企業のアストロスケールがいます。
同社の実証機ADRAS-Jは2024年に打ち上げられ、2009年に打ち上げられた日本のロケット上段(重さ約3トン、路線バスほどの大きさ)に、商業機として世界で初めて約15メートルまで近づきました。JAXAと組んだ後継機では、そのゴミを実際につかんで大気圏に落とす、世界初の除去に挑みます。宇宙ゴミの掃除がビジネスになる時代です。
この辺は、SFC総合政策の2026年過去問解説で詳しく紹介しています。
>>>慶應SFC総合政策2026年英語:過去問解答解説と全文和訳 / 宇宙ゴミとサブカル起業家
数字で見ると、事態の深刻さがよく分かります。ESAの2025年の報告では、10センチを超えるゴミだけで約5万4千個、1センチ以上なら120万個超、1ミリ以上の微小片にいたっては1億3千万個。どれも弾丸より速い秒速数キロで飛び交っています。そこへ、イーロン・マスクのスターリンクが約1万機もの衛星を低軌道に並べ、混雑に拍車をかけました。ESAは2030年までにゴミを増やさない「ゼロ・デブリ憲章」を掲げましたが、道のりは険しいのが現実です。
レッスン5:早稲田大学(社会科学) / 高齢化社会の深い闇
- 原題:Caring for dementia sufferers(社説)
- 出典:The Japan Times(2014年5月21日)
- 出題大学:早稲田大学 社会科学部(2015年)
- 語数:870語
社説の背景にあるのが、愛知県大府市の事件です。
2007年、愛知県大府市で認知症の男性が徘徊中に列車にはねられ、JR東海が遺族に損害賠償を求めた裁判があります。一審・二審は家族の責任を認めましたが、英文が書かれたあと、2016年に最高裁が判断をひっくり返しました。この状況で家族に賠償責任を負わせるのは酷だ、という結論です。
認知症の人と暮らす家族を、社会がどこまで支えるのか。英文が問いかけた論点に、最高裁が一つの答えを出した形になります。
>>>列車にはねられた認知症の父 事故訴訟後に新聞から消えたあの2文字
日本の認知症は1,000万人?!
認知症高齢者の数は当時から増え、徘徊する人を地域で見守るSOSネットワークも各地に広がりました。「認知症2025年問題」で長く語られてきた700万人という数字は、近年の推計では下方修正され、2025年時点で約470万人ほどとみられています。それでも軽度認知障害まで含めれば1千万人規模です。
国も動きました。2023年に認知症基本法が成立し、認知症になっても本人にできること・やりたいことがあるという「新しい認知症観」を掲げた基本計画がまとまりました。かつて家族に賠償を迫った大府事件から、社会全体で支える方向へ動いていると見ることもできます。
薬物研究の方でも動きがありました。2023年、エーザイが開発したレカネマブ(商品名レケンビ)が日本で承認されます。症状をやわらげるだけだったこれまでの薬と違い、アルツハイマー病の進行そのものを初めて遅らせた薬で、長年の停滞を破る一歩とされました。
ただし効くのは早期の患者に限られ、根治薬ではありません。それでも、打つ手がほとんどなかった病に光が差したのは確かです。暗い気持ちになる英文だと関先生も認めていますが、こういう現実から目を逸らさないのも難関大の英語と言えるかもしれません。
レッスン6:慶應義塾大学(環境情報) / 死者と話す技術
- 原題:Using A.I. to Talk to the Dead
- 著者:レベッカ・カルバロ / Rebecca Carballo(The New York Times、2023年12月11日)
- 出題大学:慶應義塾大学 環境情報学部(2025年)
- 語数:840語
故人が生前に残した声や語りをAIに学習させ、遺族が「話しかけられる」ようにするサービス。本文にはHereAfter AIやStoryFileといった実在の企業が登場します。2016年の旧版には、存在しようがなかった英文です。
この記事が出た2023年以降、生成AIの急速な進化で、いわゆる「グリーフテック(悲嘆のためのテクノロジー)」は一気に現実味を帯びました。故人のチャットボット、通称デッドボットを作ることは、もはや技術的に難しくありません。
2024年のドキュメンタリー「Eternal You」は、この産業の光と闇を追った作品で、本文にも登場するHereAfter AIを使って亡き父と話す女性が実名で出てきます。2025年にはアメリカで、あおり運転のトラブルで撃たれて亡くなった男性をAIで再現し、その「本人」が加害者の量刑審理で意見を述べる、という出来事まで起きました。
死者と話せる会社は倒産しました
皮肉な後日談もあります。本文に登場するStoryFile社は、2024年に破産を申請しました。故人を「生かし続ける」はずの会社自身が、あやうく消えかけたのです(その後2025年に別の会社に買われて再建しています)。
もし契約先が潰れたら、遺族の手元に残ったアバターはどうなるのでしょうか?デジタルの故人は、2度目の死を迎えてしまうのでしょうか?技術的に可能だからこそ、論点は倫理に移っています。その意味で臓器移植や出生前遺伝子診断と似ているかもしれません。
本人の同意なく故人を再現していいのか。話しかけ続けることは、癒やしなのか、それとも前に進めなくする足かせなのか。答えの出ていない問いを、そのまま受験生に投げてくるSFCらしい英文です。
原文はニューヨーク・タイムズ(購読者向け)で読めます。この英文が出た2025年のSFC環境情報については、当塾の解答速報でも解説しています。
詳しくは2025年の過去問解説をどうぞ(大問2です)
>>>慶應SFC環境情報2025年英語:解答速報と問題解説 / 炭素回収と死者との会話
レッスン7:名古屋大学 / やっぱりスマホは会話の邪魔!?
- 原題:Are smartphones killing our conversation quality?
- 著者:ケリー・ディッカーソン / Kelly Dickerson(Live Science、2014年)
- 出題大学:名古屋大学(前期・2015年)
- 語数:668語
改訂版で本番想定時間が35分から28分に詰められた問題です。テーマは、スマホがそこにあるだけで対面の会話の質が下がる、という話。
核になるのが、バージニア工科大学のシャリニ・ミスラの実験です。カフェの客をペアにして会話させ、テーブルにスマホを置いたか置かなかったかで、会話後の満足度や相手への親近感を比べました。結果は、置いただけで下がる。手に取らなくても、視界にあるだけで人は少しだけ上の空になる、というわけです。
この英文の翌年、シェリー・タークルが「一緒にいてもスマホ」で同じ問題を深掘りし、
そして2024年、社会心理学者ジョナサン・ハイトの「不安の世代― スマホ・SNSが子どもと若者の心を蝕む理由」が世界的なベストセラーになります。スマホとSNSが子どもの脳を作り替え、若者の不安やうつを急増させた、という主張で、アメリカでは校内スマホ禁止の動きが一気に広がりました。
ただし、それは相関であって因果ではない、と反論する研究者も少なくありません。スマホと不調が連動して見えても、原因かどうかは別の話。本文が扱っているのも、まさにその境目です。スマホを裏返してポケットにしまう。それだけで会話が変わる、と思わせる一本です。
ドパガキに相当する英語
相手の目の前でスマホをいじる行為には「ファビング(phubbing)」という名前が付けられています。(電話phoneと冷遇snubbingを合わせて造語)
「ファビング」という言葉自体、2012年にオーストラリアの広告会社が辞書会社と組んで、名もなき新現象に名前を付けようと仕掛けたキャンペーンから広まりました。名前が付くと、人はその行動を意識し始めます。
そして2024年、オックスフォード英語辞典が選ぶ「今年の単語」に輝いたのが brain rot(脳の腐敗)でした。低俗なネット動画を浴び続けて頭がぼんやりする、あの感覚を指す言葉です。もとは1854年にソローが「ウォールデン」で使った古い表現で、スマホ時代に新しい意味を得てよみがえりました。
日本でも「ドパガキ」というネットスラングがありますが、お国変われど事情は似ています。
原文はLive Scienceで読めます。
レッスン8:滋賀医科大学 / 絶滅種復活はホントによいことなの?
- 出典:Nature 509, 261(2014年)
- 参考文献:A.W. Schorger『The Passenger Pigeon』(1955年)
- 出題大学:滋賀医科大学(前期・2015年)
- 語数:756語
絶滅した種を現代の技術でよみがえらせる「脱絶滅(de-extinction)」がテーマです。
象徴として出てくるのが、旅行鳩(リョコウバト)。かつて空を覆うほどいたのに乱獲で消え、最後の一羽マーサが1914年にシンシナティ動物園で死にました。本文にはギリシャ神話のプロメテウスへの言及もあり、「人間が神の領域に手を伸ばすこと」への警戒が通奏低音(つうそうていおん)になっています。
この英文が書かれたあと、脱絶滅は思考実験からベンチャーの事業になりました。2021年に設立されたコロッサル・バイオサイエンシズが、マンモスやフクロオオカミ、ドードーの復活を掲げ、評価額1兆円超まで資金を集めています。
2025年4月には、1万年以上前に消えた「ダイアウルフ」の子どもを誕生させたと発表し、世界的な話題になりました。ただし中身は、遺伝的にほぼ同じ灰色オオカミに20か所ほど手を入れたもので、同社の主任科学者すら「20か所を編集した灰色オオカミ」と認めています。これは復活と呼べるのか、それとも精巧な作り物でしょうか。
マンモスは2028年に最初の子を、と予告されていますが、はたして。
じつは「復活」の最初の例は、ずっと前にありました。2000年に絶滅したスペインのピレネーアイベックスというヤギです。凍結保存しておいた細胞から2003年にクローンが生まれましたが、肺の異常で生後わずか数分で息絶えました。
一度絶滅し、よみがえり、再び死んだこのヤギは、世界で唯一「二度絶滅した」動物として知られます。
コロッサル社がダイアウルフの前に披露した、マンモスの毛並みを持つ「ウーリーマウス」(2025年)も、その愛らしさばかりが先に拡散されました。派手な話題の裏で、倫理的な問いは残り続けています。
>>>金色でふさふさのマウスが誕生。“マンモス再生”目指すスタートアップが手がける
レッスン9:同志社大学 / リンガフランカとしての英語
- 原題:The Acquisition of Sociolinguistic Competence in a Lingua Franca Context
- 著者:メルセデス・ダーラム / Mercedes Durham(2014年)
- 出題大学:同志社大学(全学部・2015年)
- 語数:911語
これも本番想定時間が35分から30分に詰められています。リンガフランカ、つまり母語の異なる人同士が意思疎通に使う共通語としての英語がテーマです。
英語を母語とする話者はおよそ4億人。ところが英語を使う人は世界で15億人を超えるとも言われ、非ネイティブがネイティブを大きく上回ります。英語を国際語にしたのはネイティブではなく、非ネイティブの数だ、という視点が軸になります。
この考え方は現在、English as a Lingua Franca(ELF)という一つの研究分野に育ちました。ネイティブの発音や語法を絶対の基準にしなくてよいのではないか、という問い直しにもつながっています。近ごろは、DeepLや生成AIによる同時翻訳、その場で訳してくれるイヤホンまで登場し、そもそも共通語はもう要らないのでは、という声も出てきました。それでも、相手の文化や間合いを読んで言葉を選ぶ仕事は、当分は人間の側に残りそうです。
ラテン語が学問、フランス語が外交
そもそも「リンガフランカ」という言葉自体が、歴史的な言葉です。もとは中世の地中海で、イタリア語を土台にアラビア語やギリシャ語が混ざった、商人や船乗りの間に合わせの共通語を指しました。直訳すれば「フランク人の言葉」。
かつてはラテン語が学問の、フランス語が外交のリンガフランカでした。いまその座に英語が座っているだけで、王座が交代してきたのが歴史の常です。ネイティブでなくても通じればいい、という発想を突き詰めて、フランス人のネリエールは基本1500語だけの簡易英語「グロービッシュ」まで提唱しています。
日本の受験生にとっても他人事ではありません。私たちが英語を学ぶのは、必ずしもアメリカ人と話すためではなく、世界中の非ネイティブと渡り合うため。そう考えると、完璧なネイティブ発音より「通じる英語」を優先する力の抜き方も見えてきます。
レッスン10:早稲田大学(法) / 「やりがい搾取」を考える
- 原題:Loving Your Job Is a Capitalist Trap
- 著者:エリン・チェック / Erin Cech(The Atlantic、2021年)
- 出題大学:早稲田大学 法学部(2023年)
- 語数:816語
「情熱を持てる仕事に就こう」という一見まっとうな助言に、社会学者エリン・チェックが冷や水を浴びせます。その理想は、低賃金や長時間労働を「好きでやっているんだから」と正当化する装置になっていないか、と。
日本語には、これにぴったりの言葉があります。「やりがい搾取」です。好きや情熱を口実に、正当な対価を払わずに働かせる構図。どことは非常に言いづらいですが、人気の割に低賃金なあの業界が日本でも当てはまります。
やりがい搾取と「逃げるは恥だが役に立つ」
この「やりがい搾取」という言葉には、名付け親がいます。東大の教育社会学者・本田由紀教授がが2007年前後から使い始めました。世に広めたのは、意外にもテレビドラマ。2016年の「逃げるは恥だが役に立つ」で、新垣結衣演じるみくりが「正当な賃金を払わないやりがい搾取に、断固として反対します」と啖呵を切った場面が、大きな反響を呼んだのです。
エリン・チェックの英文がアメリカで話題になる前から、日本にはこの構図をひと言で表現する言葉があったわけです。
記事が出た2021年は、アメリカで人々が一斉に仕事を辞める「大量離職(Great Resignation)」が起きた年でした。2022年には5千万人が職を離れたと言われ、同じ年、必要最低限しか働かない「静かな退職(quiet quitting)」が世界的な流行語になります。
ところがすぐ逆へ振れました。2024年以降は、景気の不安から誰も辞めない「大滞留(Great Stay)」の時代です。離職率は2%台に落ち、多くの人が好きでもない仕事に「行き詰まったまま」しがみついている。
情熱で仕事を選べという理想が、いかに景気次第の贅沢品だったかが分かります。働くことと自分の価値をどう切り離すか、豊か?になった今だからこそのテーマです。
The Atlanticの原文は、月に数本まで無料で読めます。
レッスン11:慶應義塾大学(環境情報) / 言語消滅による危機とは?
- 原題:Endangered speakers - Catching disappearing languages
- 著者:ロス・パーリン / Ross Perlin(n+1、2014年)
- 出題大学:慶應義塾大学 環境情報学部(2015年)
- 語数:1210語
演習目安80分の、この本で最も重い英文です。
舞台はニューヨークで、世界で最も多くの言語が話される都市だと言われます。移民が持ち込んだ無数の言語が、そこで少しずつ混ざり、消えていく。その消滅寸前の言語を記録しようとするのが、Endangered Language Alliance(危機言語同盟)です。
書き手のロス・パーリンは、この同盟の共同ディレクター。英文が書かれたあと、彼は2024年に「Language City」(未邦訳)という本を出し、ニューヨーク・タイムズなどで大きく取り上げられました。
>>>ロバート・A・ジェフとエリザベス・R・ジェフによる都市史特別講演「言語都市」
ニューヨークで消えゆく言語を追い続けた記録で、この英文の10年後の続編とも言える内容です。同盟はニューヨークで話される言語を地図に落とし込む取り組みも続けていて、その数は700を超えるとされます。世界にはおよそ7000の言語があり、そのうち半分が今世紀中に消えるとも、平均して2週間に1つ消えているとも言われます。
日本で消えつつある8つの言語
消滅の危機は、海の向こうだけの話ではありません。ユネスコは2009年、日本国内でも8つの言語が消えかけていると発表しました。北海道のアイヌ語、東京・八丈島の八丈語、そして奄美・国頭・沖縄・宮古・八重山・与那国という6つの琉球諸語です。
とりわけアイヌ語は深刻で、母語として流暢に話す人は、もう数えるほどしか残っていません。標準語に押されて、その土地の言葉が静かに消えていく。本文が描くニューヨークの事情は、じつは日本の南の島々でも起きているのです。
原文はn+1(Issue 19、2014年)で読めます。
レッスン12:早稲田大学(理工) / SNSと性格について
- 原題:A tale of two sites: Twitter vs. Facebook and the personality predictors of social media usage
- 著者:Hughes, Rowe, Batey, Lee(Computers in Human Behavior, Vol.28 Issue2、2012年)
- 出題大学:早稲田大学 理工学部(2015年)
- 語数:891語
テーマは、性格とSNSの使い方の関係。心理学でおなじみのビッグファイブ(外向性・神経症傾向など5因子)を使って、TwitterとFacebookで人の性格の出方がどう違うかを論じます。2012年の論文なので、まだInstagramもTikTokも存在していません。
この英文を今読むと、その後の事件が想起されます。
SNSデータを政治に活かす
2018年のケンブリッジ・アナリティカ事件です。同社はおよそ8700万人分のFacebookデータを不正に集め、ビッグファイブの性格分析と組み合わせて有権者を細かく色分けし、2016年のアメリカ大統領選やブレグジットの広告に使ったとされます。
本文の「性格をSNSから読み取る」という学術的試みが、10年経たずに世論操作の道具に転じたわけです。ケンブリッジ・アナリティカは事件の年に廃業し、Facebookは翌年、アメリカ当局から50億ドルの制裁金を科されました。
「いいね」で性格を当てる研究
この事件には、学問的な素地があります。同じケンブリッジ大学の心理学者ミハル・コジンスキーが、2013年に発表した研究です。
人がFacebookで押した「いいね」を並べるだけで、その人の性格や政治的立場、本人が隠している性的指向まで、かなりの精度で言い当てられる、というものでした。
善意の学術研究が、数年後には世論操作の設計図になる。技術に善悪はなく、使う人間の側にある、というあるあるの教訓を、この英文からも学べます。
元論文はResearchGateで読めます。
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