【英検1級】2026年第1回試験:リーディング解答と単語覚えのヒント

この記事では、2026年度 英検1級試験 第1回(F日程・5/31実施)の解説を記載します。

直近3回の過去問と解答は公式サイトで手に入ります。

お持ちでない方は、以下のURLから入手してください。

1級の過去問・試験内容 | 英検 | 公益財団法人 日本英語検定協会

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大問1語彙・イディオム問題:解答解説と全文和訳

各設問の正解と単語覚えのヒントをいれました。

番号正解語源・覚え方他の選択肢
(1)2 equivocate /ɪˈkwɪvəkeɪt/ 言葉を濁す・あいまいに言うequi(等しい)+voc(声、voice/vocalと同根)。「どちらとも取れる声を出す」→はぐらかす。1 consolidate 強固にする、3 alleviate 緩和する、4 emanate 発する
(2)2 bolster /ˈboʊlstər/ 強化する・支える元の意味は「長枕・支え物」。枕で下から支える→(防衛や主張を)後押しする。ヨガや表膜剥がしで使うあの筒状のやつもボルスター。1 mutter つぶやく、3 lament 嘆く、4 spar 言い合う
(3)1 defer /dɪˈfɜːr/ 延期するdif(=dis 離れて)+fer(運ぶ、transfer/ferryと同根)。differ と同語源の二重語で、「別々に運ぶ」→先送りする。「委ねる」の defer は de-+ferre の別語。2 elucidate 解明する、3 solicit 懇願する、4 dissipate 消散させる
(4)4 envoy /ˈenvɔɪ/ 使節・特使仏語 envoyer(送る)から「送られた人」。語源は in viam「道に乗せる」で、voy はラテン語 via(道)。voyage と同語源。1 torment 苦悩、2 busker 大道芸人、3 vestige 痕跡
(5)3 incumbent /ɪnˈkʌmbənt/ 現職者in+cumb(横たわる、recumbent/succumbと同根)。「その席にのっかっている人」→今の職にいる人。1 stooge 手先、2 extraterrestrial 宇宙人、4 pilgrim 巡礼者
(6)3 auspicious /ɔːˈspɪʃəs/ 幸先の良いラテン auspex(鳥占い師=avis鳥+spec見る)。鳥の飛び方で吉兆を占った。1 inherent 本来備わった、2 eccentric 風変わりな、4 ornate 華美な
(7)2 contrite /ˈkɑːntraɪt/ 深く反省したcon(強め)+trite(すり潰す)。「心が砕かれた」状態→悔いている。1 pertinent 適切な、3 dubious 疑わしい、4 lucrative もうかる
(8)1 obliterate /əˈblɪtəreɪt/ 跡形もなく破壊するob+liter(文字 letter)。「書いた文字を消し去る」→完全消去。映画にもなった「オブリビオン(Oblivion)」も「忘却」なので、雰囲気似てるよね。2 concoct でっち上げる、3 acclimate 順応させる、4 deduce 推論する
(9)2 staunch /stɔːntʃ/ 忠実な・確固たるstanch「止血」と同根。しっかり止まって動かない→揺るがない。1 queasy 吐き気がする、3 porous 多孔質の、4 scruffy みすぼらしい
(10)2 gist /dʒɪst/ 要点・大意古仏語「(核心が)ここに存する」から。物事の肝が置かれた場所。1 ditch 溝、3 omen 前兆、4 loot 略奪品
(11)3 dearth /dɜːrθ/ 不足・欠乏dear(高価な)+-th の名詞形。「高くつくほど品が乏しい」→欠乏。1 sentiment 感情、2 coup クーデター、4 ward 病棟/被後見人
(12)1 entail /ɪnˈteɪl/ (必然的に)伴う・必要とするen+tail(切る、tailor/detailと同根)。切り離せない形で付随する。2 placate なだめる、3 mull 熟考する、4 avert 回避する
(13)3 convergence /kənˈvɜːrdʒəns/ 集まること・収束con(共に)+verge(向かう・傾く)。一点へ集う。反対語は diverge。1 alacrity 機敏さ、2 prevarication ごまかし、4 nostalgia 郷愁
(14)4 coax /koʊks/ うまく説得する・なだめすかす相手をなだめ、おだてながら少しずつその気にさせるイメージ。語源的には「間抜け」が言いくるめられて来た感じ。無理矢理なゴロで覚えるなら「コークを飲ませて上手く説得する」1 flout 軽視する、2 deify 神格化する、3 ferment 発酵させる
(15)4 boisterous /ˈbɔɪstərəs/ 騒がしい・にぎやかな口に出したときの響きや感覚で覚えるしかない。無理やりゴロにするなら「ボイストレーニングが騒がしい」とか。1 pungent 刺激臭の、2 ambivalent 相反する、3 lustrous 光沢のある
(16)4 perennial /pəˈreniəl/ 長年続く・絶えないper(通して)+ann(年、annual/anniversaryと同根)。一年中・毎年続く。園芸の「多年草」も同語。1 disheveled 乱れた、2 incisive 鋭い、3 suave 物腰柔らかな
(17)1 clemency /ˈklemənsi/ 寛大な処置・恩赦ラテン clemens(穏やか)。clement weather(穏やかな天気)と同根の「穏やかさ」。「赦してクレメンシー」で覚えるのがおすすめ。2 solvency 支払能力、3 tenure 在職(権)、4 censure 非難
(18)1 unruly /ʌnˈruːli/ 手に負えない・無法なun+rule+y。文字どおり「ルールに従わない」。2 stolid 無感動な、3 lackluster 精彩を欠く、4 nebulous 曖昧な
(19)1 identify with /aɪˈdentɪfaɪ wɪð/ 〜に共感する・感情移入するidentify(identityと同根で「同一とみなす」)+with。相手と自分を重ねる。2 reel in 引き寄せる、3 polish off 平らげる、4 black out 意識を失う
(20)4 churn out /tʃɜːrn aʊt/ 次々と量産するchurn はバターを撹拌する機械。ぐるぐる回して大量に吐き出す。1 turn up 現れる、2 grow on 次第に好きになる、3 build in 組み込む
(21)1 tamper with /ˈtæmpər wɪð/ 勝手にいじる・手を加えるtemper(粘土をこねる)の変形とされる単語。「こねていじる」感覚から「勝手に手を加える」へ。2 ease off 緩める、3 trump up でっち上げる、4 branch out 手を広げる
(22)4 pluck up /plʌk ʌp/ (勇気を)奮い起こすpluck は「引き抜く」(pluck a flower 花を摘む)。勇気を引っ張り出すイメージ。名詞 pluck「度胸」は食肉の内臓を指す語から生まれたが、別の語源ルート。1 dole out 分配する、2 clam up 黙り込む、3 mete out (罰を)科す

大問1:全文和訳

空所に入る正解語にあたる部分を太字にしています。また、多少意訳している箇所もあります。

番号和訳
(1)市長は税制案について尋ねられると、言葉を濁した。その結果、彼の政策が実際どのようなものなのか、誰にも分からなかった。
(2)将軍は軍の防衛を強化するため、国境にさらなる部隊を送ることを決めた。力を誇示すれば、これ以上の攻撃を防げると考えたのだ。
(3)長い議論の末、役員たちは合意に達することができなかった。そこで、決定を次回の会議まで先延ばしにすることになった。
(4)歴史を通じて、他国へ使節を送ることは、貿易協定の交渉や関係の改善に常に不可欠であった。
(5)選挙戦の現職として、ダヴェンポート市長は、これまで公職に就いたことのない対立候補に対して大きく優位に立っている。
(6)英語の試験当日の朝、ラファエルが目を覚ますと雨が降っていたが、天気はまもなく晴れた。彼はこれを一日の幸先の良い始まりだと受け止めた。
(7)弟からおもちゃを取り上げたことで罰を受けると告げられ、その幼い少女は深く反省していた。彼女は謝り、二度としないと約束した。
(8)戦争中、その都市には非常に多くの爆弾が落とされ、半分近くが跡形もなく破壊された。壊された数多くの建物を再建するには何年もかかった。
(9)その女性は市長の忠実な支持者で、彼を取り巻くスキャンダルにもかかわらず投票し続けた。
(10)ペドロの英語のリスニング力は高くないが、相手がゆっくり話せば、たいてい会話の要点はつかむことができる。
(11)世界中の民主主義国家がその国との貿易を拒否した結果、その国は医薬品をはじめとする生活必需品の不足に苦しむことになった。
(12)当初スティーブは、その翻訳の仕事は簡単だろうと思っていた。ところが実際には、事実確認など時間のかかる作業を数多く伴った
(13)異なる文化の集積によって(=異なる文化が交わることで)、その都市は多種多様な文化イベントやレストランを楽しめる、暮らすには魅力的な場所となっている。
(14)A: 息子さんに野菜を食べさせられましたか。
B: ええ、あとでデザートをあげると約束して、うまく説得して食べさせました。
(15)そのパーティーはあまりに騒々しくなったため、近所の住人が騒音の苦情を言おうと警察に通報した。
(16)その都市の交通渋滞という長年続く問題は、ここ数か月でいっそう悪化した。市長は解決策を見つけるよう圧力を受けている。
(17)大統領は、非暴力の犯罪を犯した囚人たちに恩赦を与えた。彼らにはもう一度機会が与えられてよいと考えたのだ。
(18)サッカーの試合の観衆が手に負えなくなり始めたため、暴徒化したファンを落ち着かせようと警察が呼ばれた。
(19)その少年は小説の登場人物の誰にも感情移入できなかったため、読んで楽しむのが難しいと感じた。
(20)その作家は、次から次へと本を量産する能力で知られている。一年に三冊もの本を出版することも多い。
(21)整備士は車の所有者に、エンジンを勝手にいじらないよう警告した。訓練を受けていない人がエンジンを修理しようとすると、益よりも害をもたらすことが多いという。
(22)緊張してはいたものの、メアリーは勇気を奮い起こして上司に昇給を願い出ることにした。

大問2-1:ヤーコポ・リゴッツィとインコの絵

16世紀イタリアの画家ヤーコポ・リゴッツィを題材にした、美術史の文章です。

ヤーコポ・リゴッツィは1547年頃、北イタリアのヴェローナに生まれました。1570年代後半にフィレンツェへ移り、メディチ家の宮廷画家として半世紀近くを過ごします。彼を重んじたのが、科学と錬金術に熱中したことで知られるフランチェスコ1世でした。

植物や鳥、魚を写した博物画が百数十点も現存していて、あまりの精密さから、後世には「後期ルネサンス期フィレンツェのオーデュボン」と評されることもあります。

なお、今回の元ネタは、2025年に美術メディア Hyperallergic に載ったエッセイでしょう。(あくまで推測ですが)

記事と件のオウムの絵を埋め込んでおきます。

>>>The Artist Who Ushered Us From Medieval to Modern

Jacopo Ligozzi - Psittacus Ararauna - WGA13011

大問2-1:設問解説

正解は(23)4、(24)2、(25)4です。

(23) 正解 4 helped inject authenticity into art(芸術に本物らしさを吹き込む一助となった)

第1段落全体が根拠です。空所の直後から、それまでの動植物の描写が寓意的・神話的だったのに対し、リゴッツィの絵は「新たに出会った種をありのままの姿で捉えることを目指した」と述べられます。

つまり彼は、空想ではなく現実に即した描き方を美術に持ち込んだ人物として紹介されています。この流れに合うのは、芸術に authenticity(本物らしさ)を注ぎ込んだとする4です。

(24) 正解 2 characterized by realism(写実によって特徴づけられていた)

空所を含む文は This is not to say, however, that ... で始まります。「もっとも、だからといって〜というわけではない」という譲歩の型です。

直前の段落で「ありのままに描いた」と述べたばかりなので、ここでは「とはいえ、すべてが〜だったわけではない」と一歩引く流れになります。続く例では、精密に描かれた鳥が現実の生息地ではなく白い余白に置かれている、という非現実的な処理が挙げられます。したがって空所には「写実一辺倒」にあたる語が入り、2 characterized by realism が正解です。

(25) 正解 4 were also an expression of power(権力の表れでもあった)

空所の文は It has been argued that ... と問題提起で、その中身は3段落の後半にあります。However 以降に「鳥を孤立させて提示する手法は、支配と統制を及ぼすやり方とも見なしうる」とあり、最後は裕福なフィレンツェ人のコレクションが「世界を支配している感覚を与える」ものだったと締めくくられます。

文中でも、domination、control、a sense of control という語が繰り返され、power(権力)を想起させる話になっています。

大問2-1:全文和訳

大意の箇所もあるので、参考までにどうぞ。空所に入る正解にあたる部分を太字にしています。

また、正式には「コンゴウインコ」かもしれませんが、漢字の方が字面的に好きなので「金剛インコ」で統一します。

第1段落

16世紀後半、イタリアの画家ヤーコポ・リゴッツィは、フィレンツェの宮廷で下絵描きとして手がけたイラストを通じて、芸術に本物らしさを吹き込む一助となった。15世紀から16世紀にかけて描かれてきた自然界の事物、とりわけヨーロッパ人が植民地での活動を通じて南北アメリカで出会い、持ち帰った動植物のそれまでの描写は、おおむね寓意的あるいは神話的な表現だった。リゴッツィの作品は、こうした事物の描き方に一つの転換をもたらした。科学革命がヨーロッパ各地に広まり始めると、リゴッツィの絵は、非現実的で誇張された図像によって驚嘆を誘うのではなく、新たに出会った種をありのままの姿で捉えることを目指すものとなった。

第2段落

もっとも、だからといってリゴッツィのイラストのあらゆる側面が写実に貫かれていたわけではない。たとえば、彼のよく知られた金剛インコ(オウムの一種)の絵は、その鳥を画期的な精密さと細部の描き込みで写し取っているが、周囲は何もない白い余白で縁取られている。これは、科学的な方法が広く採り入れられるにつれて目立ってきたある傾向、すなわち、動植物が本来存在していた文脈から切り離し、自然を客観的に観察・研究しようとする志向を象徴していた。金剛インコの場合、欠けている文脈とはその鳥のアマゾンの熱帯雨林という生息地であり、リゴッツィは鳥の現実の環境を描く代わりに白い余白を用いている。

第3段落

リゴッツィの動植物の描写は、権力の表れでもあったと論じられてきた。むろん、対象を文脈から切り離して白い画面の中に置くことは、実証的な客観性を可能にする。たとえば金剛インコは、美的に鑑賞される芸術作品であるだけでなく、「収集され」観察者によって精査されうる自然の対象にもなる。しかし一部の研究者によれば、鳥を孤立させ、何もない白い広がりで取り囲んで提示するこの手法は、その鳥に対して支配とコントロールを及ぼすやり方とも見なしうる。このように、リゴッツィの自然物のイラストは、多くの裕福なフィレンツェ人が所有していた南北アメリカ産の品々のコレクションと、おそらく似ていた。それらのコレクションは、収集者に世界を支配しているという感覚を与えることを、その目的の一つとしていたのである。

分類がややこしいですが、parrot(オウム)は、インコや金剛インコなども含む鳥の大きなグループ全体を指す総称です。

  • parrot(オウム類)という大きな括りの中に
  • macaw(コンゴウインコ)、cockatoo(オウム)、budgerigar(セキセイインコ)などの種類がある

つまり「macawコンゴウインコ(parrotオウムの一種)」を包含関係で言い換えると、「ポメラニアン(犬の一種)」「任天堂Switch(ゲーム機の一種)」「慶應(大学の一つ)」「英検(英語検定試験の一つ)」みたいな感じになります。

上位語(parrot)と下位語(macaw)です。macawをカタカナにすると「マコー」とか「マコゥ」に近いです。

大問2-1:単語熟語リスト

準1級レベルは極力排して、1級レベルで押させておきたい語彙をリストにしています。(出てきた順です)

語句意味
draftsman /ˈdræftsmən/製図者、下絵・図版を描く画工 / draft(下書き・線を引く)+man。draw と同語源で「線を引く人」
mark a shift転換点となる、変化の画期をなす / landmarkが土地に「印」を残すように、 時代に印を残すイメージ。
take hold(考え・動きが)定着する、広まる
inspire wonder驚嘆の念を起こさせる
authenticity /ˌɔːθenˈtɪsəti/本物らしさ、真正性(空所23) / authentes は「自分の手で行う人」
inject A into BAをBに注ぎ込む、吹き込む(空所23)
devoid of〜を全く欠いた / voidは「空」、null and voidで「無効」。漫画ワンパンマンにも「虚空のヴォイド」が登場する。
empirical /ɪmˈpɪrɪkəl/経験に基づく、実証的な / 難単語だか、ターゲット1900(1581番)や必携英単語 LEAP(2281番)といった大学受験1冊目の単語帳に載るレベルになった。experienceやexperimentと同じ語源。
exercise domination over〜に対して支配を及ぼす / 支配系の単語は前日overを使いがちなのがポイント。
endow A with BAにB(性質・感覚など)を授ける、与える / ゴロは「遠藤さんに与える」
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大問2-2:Ant Agriculture 解答解説

アリと菌類の共生をテーマにした文章です。恐竜を滅ぼした隕石、菌を育てるアリの分業社会、そして農薬代わりに細菌を飼う習性の3段構成になっています。

元ネタは、2024年10月に学術誌Scienceに載ったスミソニアン国立自然史博物館の研究でしょう。

>>>Ants Farmed Fungi in the Wake of Dinosaurs' Demise 66 Million Years Ago

475種の菌類と276種のアリの遺伝情報から系統樹を作り、菌類栽培アリの起源が6600万年前、つまり恐竜を滅ぼした小惑星衝突の直後にまで遡ることを突き止めた論文です。

大問2-2:設問解説

正解は(26)2、(27)4、(28)1です。

(26) 正解 2 the timing was not a coincidence(この時期の一致は偶然ではなかった)

空所直後に「菌類は太陽光に頼らず分解物を養分とするため、隕石衝突後の暗い世界でもむしろ繁栄できた」とあります。つまり、「隕石衝突」と「菌類栽培の始まり」という二つの出来事が同じ時期に重なったのは偶然ではなく、環境の激変そのものが栽培化のきっかけになったという主張です。これに合うのは2です。

1 this mainly benefited other insects(これは主に他の昆虫に利益をもたらした)
3 this was dangerous for the ants(これはアリにとって危険だった)
4 the disaster killed off most fungi species(この災害はほとんどの菌類を死滅させた)

(27) 正解 4 have completely domesticated(完全に栽培化してしまっている)

空所直後に、進化の初期段階では野生下での繁殖を助ける農業だったのが、3000万年前の気候変化を境に、一部の菌種がアリの農場に「生存を完全に依存する」ようになったという記述が続きます。この変化を一語で言い表すのが、選択肢4のdomesticate(飼いならす、栽培化する)です。

1 are vulnerable to harm from(〜からの害を受けやすい)
2 often have trouble recognizing(しばしば見分けるのに苦労する)
3 must travel long distances to find(見つけるために長距離を移動しなければならない)

(28) 正解 1 have outperformed humans(人間よりも成果を上げている)

直前で「害虫は人間とアリ双方の農業にとって脅威」と述べ、空所を挟んで「化学殺虫剤は効果的だが、害虫はすぐに耐性を進化させる」「一方アリは害虫と共に進化する抗生物質産生細菌を持つ」と対比されます。

つまり人間の農薬が耐性という形で害虫に追い抜かれ続けるのに対し、アリの天然の防除法は害虫の進化に追いつき続けられる。この点ではアリが人間を上回っている、という結論に至るの1が正解です。

2 are damaging the environment(環境に害を与えている)
3 are difficult to study(研究しづらい)
4 have become pests themselves(害虫そのものになっている)

大問2-2:全文和訳

大意の箇所もあるので、参考までにどうぞ。空所に入る正解にあたる部分を太字にしています。

第1段落

6,600万年前に地球に衝突した小惑星は、大量の塵の粒子を大気中に放出し、太陽光を遮って「インパクト・ウィンター」を引き起こした。これによって、地球上の生物のおよそ4分の3が生存できなくなった。研究者たちは最近、ちょうどこの頃、一部のアリが食料源として菌類を栽培化し始めたことを発見した。研究者たちによれば、この時期の一致は偶然ではなかった。多くの他の生命体とは違い、菌類はエネルギー源を太陽光に頼らない。代わりに分解された有機物を養分としているため、小惑星衝突後の破局的な環境でもうまく生き延びられたはずだ。一方アリは、そうした環境の中で食料を探し回るのに苦労しただろう。広く存在していた菌類を食用に栽培することは、有効な解決策になったと考えられる。

第2段落

今日、科学者たちは200種を超える菌類栽培アリを認識しており、その中には多くのハキリアリの仲間も含まれる。これらの昆虫は植物から葉の断片を切り取り、地下の巣に持ち帰る。そこで葉を基質として使い、アリの主食となる菌類の庭を育てるのである。彼らの農業システムは高度に洗練されており、緻密な分業を伴う。注目すべきは、一部の種が栽培する菌類を完全に栽培化してしまっているという点だ。進化の初期段階では、これらのアリは菌類を保護し、野生下で繁殖させることに主眼を置いた農業を営んでいた。ところが、およそ3000万年前に地球の気候が寒冷化・乾燥化すると、高温多湿を必要とする一部の菌種は、アリの農場という管理された環境に生存を完全に依存するようになった。

第3段落

研究者たちは、ハキリアリの仲間が、菌類の餌となる植物を根絶やしにすることなく、持続可能な形で農業を成功させていると指摘する。彼らはまた、農場を害虫から守るために殺虫剤も利用する。害虫は人間の農業とアリの農業の双方にとって大きな脅威である。この点において、アリは人間よりも成果を上げている。人間が使う化学殺虫剤は、害虫による作物の損失を減らす上で非常に効果的な場合があるが、害虫はすぐに薬剤への耐性を進化させてしまうため、いたちごっこの様相を呈する。しかしアリは、害虫と共に進化できる抗生物質産生細菌を体内に飼っている。この天然の殺虫剤のおかげで、アリは作物を脅かす生物に対して常に優位を保つことができるのである。

大問2-2:単語熟語リスト

準1級レベルは極力排して、1級レベルで押させておきたい語彙をリストにしています。(出てきた順です)

語句意味
domesticate /dəˈmestɪkeɪt/飼い慣らす、栽培化する、家畜化する / domestic(家庭の)の動詞形なので「よそ者を家に入れて飼いならす」イメージ
decompose /ˌdiːkəmˈpoʊz/分解する、腐敗する / de(逆・分離)+compose(組み立てる)。組み立てたものをばらす、が原義。compose の反対
apocalyptic /əˌpɑːkəˈlɪptɪk/世界の終わりのような、破局的な / apocalypse(黙示録)の形容詞形
forage /ˈfɔːrɪdʒ/(食料を求めて)歩き回る、あさる / fodder(飼料)と同語源
amid /əˈmɪd/〜の真っ只中で、〜のさなかに / a(on)+mid(中間、middle)で「〜のただ中に」
cultivate /ˈkʌltɪveɪt/栽培する、育てる / culture(文化)と同じ語根で、土地を耕すように人の心を耕すのが culture
substrate /ˈsʌbstreɪt/基質、土台となるもの / sub(下に)+strate(敷く、strata地層と同根)
staple food主食 / stapleは「主要な・常備の」の意で、staple gun(ホチキス)の staple とは別語源
division of labor分業 / 労働(labor)の分割(division)
decimate /ˈdesɪmeɪt/壊滅的な打撃を与える / 古代ローマの「十人に一人を処刑する」処罰に由来し、本来は1割を失う意味だったが、今では大部分を失う意味で使われる。
uphill battle困難な戦い / 上り坂(uphill)を行く戦いのイメージ
harbor /ˈhɑːrbər/(思想・感情・生物などを)心や体の中に宿す / 「港」の名詞と同じ語で、抱え込む・匿うといった意味の動詞。
maintain the upper hand優位を保つ / トランプなどで手札(hand)が上(upper)にある

大問3-1:Déjà Vu 解答解説

デジャヴを科学がどう説明してきたか、その歴史をたどる文章です。フランスの心理学者が名づけた19世紀の話から、fMRIで脳をのぞく現代の研究までの変化を紹介しています。

本文に出てくる二つの研究を補足します。

2016年のスコットランドの研究は、セント・アンドルーズ大学のアキラ・オコナーによるもの。互いに関連する単語(bed, pillow, dream, night...)をわざと見せて、それらをつなぐ肝心の語(sleep)だけを伏せることで、人工的にデジャヴを起こす手法を編み出しました。

fMRIで見ると、活動していたのは記憶を司る海馬ではなく、判断を担う前頭部でした。ここからオコナーは、デジャヴを「脳の誤作動」ではなく、記憶の食い違いをチェックする健全な働きだと考えました。年配になるほどデジャヴが減るのも、この事実確認の機能が衰えるからだというのが2段落ラストの記述です。(また設問30の選択肢1が違う理由です。)

>>>This New Study Might Actually Explain The Weirdness That Is Déjà Vu

2012年のVR研究は、コロラド州立大学のアン・クリアリーの実験です。

彼女がデジャヴを起こす仮想空間を作るのに使ったのは、なんと人生シミュレーションゲームの「The Sims」でした。ゴミ捨て場や生垣の庭といった場面を作り、あとで空間配置だけがそっくりな別の場面を見せる。すると被験者は「来たことがないはずなのに見覚えがある」と口にしたのです。クリアリーはその後の研究で、デジャヴには「次に何が起きるか分かる」と予知はするのに、実際には何も当てられない、ということも明らかにしました。

>>>Déjà Vu May Feel Like a Premonition, but It's Not(Association for Psychological Science)

大問3-1:設問解説

正解は(29)3、(30)4、(31)1です。

(29) 正解 3 He was not experiencing déjà vu as it is understood today, as he lacked one of the key criteria that defines it.
(彼は今日理解されているデジャヴを経験していたのではなかった。それを定義づける鍵となる基準の一つを欠いていたからだ)

第1段落の後半が根拠です。今日のデジャヴは、①なじみ深いという感覚と、②その感覚が見当違いだと気づくこと、この二つがそろって初めて成立すると説明されています。ところがアルノーの患者は、自分の経験のすべてが過去の出来事の寸分違わぬ再現だと「信じ込んで」いて、初対面の場面すら以前に起きたと言い張りました。つまり彼には「その感覚はおかしい」という二つ目の気づきが欠けていた。だから現代的な意味でのデジャヴではない、とする3が正解です。

1は「治療前にアルノーと会っていたが思い出せなかったはず」という内容で、本文に記述なしです。
2は「過去の経験を思い出しにくかった」で、何もかも再現だと感じていた患者像と逆です。
4の「特定の状況でしか起きないので嘘だろう」も本文にないです。

(30) 正解 4 It supports the idea that experiencing déjà vu indicates a person's brain is functioning in a healthy manner.
(デジャヴを経験することは、その人の脳が健全に機能している印だという考えを支持する)

第2段落で、多くの神経科学者が「デジャヴは脳が不正確な記憶を修正しようとしている証拠であり、脳が正常に働いている印だ」という点で一致していると述べられます。2016年のスコットランドの研究は、脳が記憶を実際の経験と照合する内側前頭前皮質に活動を見つけました。これは「健全な脳が事実確認をしている」という見方を裏づけるので、4が正解です。

1は「脳のある領域が未発達だから若者に多い」ですが、本文は加齢とともに事実確認が不得手になるからだと説明しており、未発達という話ではありません。(ただ、初見で切るのは難しい選択肢です)
2.「経験を重ねるほど強烈になる」
3.「記憶の誤りを分類できないから起きる」

(31) 正解 1 experienced déjà vu more often when encountering spatial layouts that seemed familiar but which they could not recall.
(見覚えがあるように感じるのに思い出せない空間配置に出くわしたとき、デジャヴをより頻繁に経験した)

第3段落のVR実験の結果です。以前に置かれたことはあるがもう思い出せない場面と、配置が似た場面を進むとき、参加者はデジャヴを経験しやすかったとあります。これを言い換えた1が正解です。

2は「過去に見た空間と無関係な未知の環境で起きやすい」で、実験結果と逆です。
3の「見慣れた空間も未知の空間も同じくらい歩きにくかった」本文に記述なし。
4の「仮想空間より現実空間で報告が多かった」本文に記述なし。

大問3-1:全文和訳

大意の箇所もあるので、参考までにどうぞ。正解の根拠にかかわる箇所だけ太字にしています。

第1段落

デジャヴという言葉は、フランス語で文字どおり「すでに見た」を意味し、おそらく1870年代に造られた。これを用いたのが、フランスの心理学者フランソワ=レオン・アルノーで、彼はある患者が抱える症状を説明するのにこの語を使った。その患者は、自分が経験することのすべてが過去の出来事の寸分違わぬ再現だと信じ込んでいた。たとえばアルノーの記録によれば、初めてこの患者と会ったとき、患者は二人の対面が以前にも、まったく同じ状況で起きたと言い張ったという。今日では、アルノーがデジャヴと名づけたこの現象についての科学者の理解は進んでいる。それは、ある経験になじみがあるという感覚だけでなく、その感覚が見当違いだと気づくことも含む、と考えられている。言いかえれば、この現象を経験している人は、なじみ深いという感覚と、それが正しくないという認識との間で揺れているのである。

第2段落

1800年代後半、研究者たちはデジャヴと発作との間に明らかな関連を見て取り、それが脳機能の乱れによって起きるという仮説につながった。20世紀初頭には、神経科学者ワイルダー・ペンフィールドの実験によって研究が一歩進んだ。彼は患者の脳の特定の領域を刺激することで、なじみ深いという感覚を再現してみせた。より最近の研究は、デジャヴに関わる脳の領域をいくつか突き止めており、その中には記憶の貯蔵と想起に関わる海馬も含まれる。デジャヴの正確な原因はいまだ不明だが、多くの神経科学者は、見かけに反して、この現象は脳が不正確な記憶を修正しようとしている証拠であり、脳が正常に働いている印だという点で一致している。2016年、スコットランドの研究者たちはfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて、デジャヴの最中に脳のどこで活動が起きるかを調べた。彼らは、脳が記憶を実際の経験と照合する内側前頭前皮質に活動を見つけた。科学者によれば、記憶の誤りは自然なもので頻繁に起こる。記憶の形成と想起に欠かせない膨大な神経の複雑さを考えれば、それも当然だという。このことは、およそ3分の2の人が生涯のどこかでデジャヴを経験する理由の説明にもなりうる。また、若い人ほどデジャヴを頻繁に経験しがちな理由も説明できるかもしれない。年を取るにつれて、脳は事実確認が不得手になっていくからだ。

第3段落

デジャヴを引き起こしうる一つの要因が、ゲシュタルト類似性仮説によって説明されている。この仮説が前提とするのは、以前によく似た配置の空間にいたことがあるのにそれをはっきり思い出せない場合、ある空間の配置や物の並べ方がデジャヴを引き起こしうる、ということだ。2012年のある研究では、この理論を調べる研究者たちが、参加者にVRヘッドセットを使ってさまざまな仮想空間の中を歩き回らせた。その結果、以前に置かれたことはあるがもう思い出せない場面と似た配置の場面を進むとき、参加者はデジャヴを経験しやすいことが分かった。研究者たちは、デジャヴ現象の他の要因を突き止めるには、より多くの研究が必要だと強調している。

大問3-1:単語熟語リスト

出てきた順で掲載します。

語句意味
coin /kɔɪn/(新語を)生み出す、造語する / 「硬貨を鋳造する」coin から
reenactment /ˌriːɪˈnæktmənt/再現、再演 / re(再び)+enact(演じる・制定する)
identical circumstances全く同じ状況 / identical(同一の)+circumstances(状況)。circum(周り)+stance(立つ)で「周囲に立つ事情」
misplaced /ˌmɪsˈpleɪst/見当違いの、置き所を誤った / mis(誤って)+place
conflicted /kənˈflɪktɪd/相反する感情で揺れた、板挟みの / con(共に)+flict(打つ)
seizure /ˈsiːʒər/(てんかんなどの)発作 / seize(つかむ)の名詞形
disruption /dɪsˈrʌpʃən/混乱、途絶、乱れ / dis(分離)+rupt(破る、rupture/eruptと同根)。流れを断ち切る
hippocampus /ˌhɪpəˈkæmpəs/海馬 / hippoは「馬」。響きが可愛いので覚えやすい。カバの英語名「ヒポポタマス」ぐらい可愛い。それぞれ「海の馬」「河の馬」の意味。
medial prefrontal cortex内側前頭前皮質 / medial(内側の)+pre(前)+frontal(額の)+cortex(皮質)
cross-check照合する、突き合わせて確認する / cross(交差)+check。交差させて突き合わせるイメージ
shed light on〜を解明する、明らかにする / 「光を当てる」が直訳
adept at /əˈdept/〜に長けた、熟達した / adept は名詞で「熟達者」の意味
postulate /ˈpɑːstʃəleɪt/(証明抜きに)仮定する、前提とする / ラテン postulare(要求する)から。

大問3-2:Athenian Democracy 解答解説

古代アテネの民主政を私たちが理想として仰ぐようになったのは、実はかなり最近のことだ、という文章です。

本文の後半で引かれるオーバーとカルガーティの見立ては、2024年の論集「When Democracy Breaks(民主政が壊れるとき)」に収められた一章が元ネタです。

二人の主張をまとめると「アテネの民会には、その決定を縛る上位の仕組みが存在しなかった。僭主(せんしゅ)や富裕層の専横を防ごうとするあまり、民会そのものへの歯止めを用意しなかったことこそ、国家を支えきれなかった根本原因だ」といった感じです。

大問3-2あるあるですが、英語力以上に歴史の教養が問われている感じもあります。

そのため、先に歴史的な部分を補足します。

大問3-2:歴史用語と背景解説

本文を読むうえで背景を知っておくと効く三つの言葉を補足します。

プラスこの辺の背景知識を学べる動画を3つほど紹介しますが、個人的には小学館の漫画歴史シリーズが好きなので、それでもオススメです!該当は2巻です。

デマの語源のデマゴーグ

ギリシャ語の demos(民衆)と agogos(導く者)が合わさった言葉で、もとは「民衆の指導者」という中立的な意味でした。それが、理屈より感情に訴えて人々を動かす扇動家、という否定的な響きへ変わっていきます。

古代アテネでの代表格が、ペリクレスの死後に台頭したクレオンです。クレオン=デマゴーグの典型、と認識してOKです。

近現代で例に挙げるなら、1950年代に活躍し「マッカーシズム」という言葉も生まれた、アメリカのジョセフ・マッカーシー上院議員が好例かもしれません。「政府や軍に共産主義者が潜んでいる」的な発言で不安を煽りました。

ペロポネソス戦争

紀元前431年から404年まで、アテネとスパルタが戦った、ギリシャ世界を二分する大戦争です。名前は、スパルタの同盟国があったペロポネソス半島に由来します。

開戦まもなくアテネは疫病に襲われ、指導者ペリクレスを失いました(前429年)。その隙を突くように、クレオンのような扇動家が台頭します。戦争は前404年にアテネの敗北で幕を閉じ、民主政は一時的に転覆して、三十人政権と呼ばれる寡頭政に取って代わられます。

紀元前431年から404年まで、アテネとスパルタが戦った、ギリシャ世界を二分する大戦争です。名前は、スパルタの同盟国があったペロポネソス半島に由来します。

開戦まもなくアテネは疫病に襲われ、指導者ペリクレスを失いました(前429年)。その隙を突くように、クレオンのような扇動家(デマゴーグ)が台頭します。

本文が「デマゴーグが民会に承認させた破滅的な軍事的決定」と呼ぶのは、この戦争のさなかに起きたシチリア遠征(前415〜413年)を指すとみられます。慎重派の反対を、遠征の栄光と富をあおる演説が押し切り、アテネ史上最大の艦隊が送り出されました。結果は壊滅で、100隻を超える軍船と数千の兵を失い、ここが戦争全体の転換点になります。

戦争は前404年にアテネの敗北で幕を閉じ、民主政は一時的に転覆して、三十人政権と呼ばれる寡頭政に取って代わられました。本文にある「屈辱的な敗北によって民主政が一時的に転覆させられた」とは、この崩壊を指しています。

アルギヌサイの海戦

上記ペロポネス戦争末期の戦いで、前406年に起こったギリシャ最大級の海戦です。

アテネはスパルタ艦隊を破り、敵将(カリクラティダス)を討ち取る大勝利をおさめました。ところが直後の嵐で、千人以上の乗員を失います。

怒った民会は、勝ったばかりの将軍たちを死刑にします。この採決の議長を務めていたのが、ほかならぬソクラテスでした。彼はただ一人、違法な動議を採決にかけることを拒みますが、6人の将軍は処刑されました。

指揮官を自ら葬ったアテネは、ほどなく敗北しました。

大問3-2:設問解説

正解は(32)3、(33)2、(34)3、(35)2です。

(32) 正解 3
Although it was not the first city-state to allow citizens to vote, it allowed more of them to do so than other city-states in the past.
(市民に投票を認めた最初の都市国家ではなかったが、過去のどの都市国家よりも多くの市民に投票を認めた)

第2段落が根拠です。クレイステネスの改革は「大胆だが決して前例のない一歩ではなかった」とあり、地中海の複数の都市国家がすでに参加型の統治を採り入れていた、と述べられます。そのうえで「アテネを際立たせたのは、財産資格を段階的に撤廃し、すべての自由な男性市民が投票権を持つまで、より広い層に力を与えた点」だと続きます。つまり「最初ではないが、より多くに広げた」。これを言い換えた3が正解です。

1は「コリントスやスパルタからの財政的・軍事的脅威ゆえに民主政を選んだ」ですが、両者は強豪として触れられるだけで、脅威が選択の理由だとは書かれていません。2の「知識人の地位が高かったから急進的な思想を受け入れた」、4の「同盟国から孤立するのを恐れた」も本文にありません。

(33) 正解 2
as support for the idea that political power should not be concentrated in the hands of one small group.
(政治権力は一つの小集団の手に集中させるべきではないという考えの裏づけとして)

第3段落で、抽選機クレロテリオンは評議会(ブーレー)の500人を無作為に選ぶ装置として紹介されます。その直後に「政治的責任が予測できない形で市民の間を巡れば、権力が一個人や少数集団に集中することはほぼ考えられなくなると、考案者たちは信じていた」とあります。クレロテリオンは、権力集中の防止する例として出てきています。よって2が正解です。

1の「人生の偶然性を政治に反映させる信念」は、偶然に頼る話ではなく集中を防ぐ話なので誤り。3の「ブーレーが民会より大きな権限を与えられた理由の説明」、4の「指導者を選ぶ制度に安定性が必要な証拠」も、本文の趣旨と合いません。

(34) 正解 3
Because of the nature of democracy, there will always be leaders who attempt to exploit majority rule to undermine rational policymaking.
(民主政の性質上、多数決を利用して理性的な政策決定を損なおうとする指導者が常に現れる)

第4段落でサモンズは「民主政はデマゴーグを生む」と述べています。本文も、アテネの体制が「情念をあおる説得的な演説で市民をなびかせ、理性的な判断を犠牲にする」ご都合主義の人物を生み出した、のです。民主政そのものが構造的にデマゴーグを生む、というのがサモンズの見方なので、3が最も一致します。

1「体制の欠陥ではなく財源不足が原因」、2「デマゴーグは敵国の策略で生まれた」、4「大半の市民は政治的決定に消極的だった」は、サモンズの主張と異なります。

(35) 正解 2
The structure of the system, which did not put limits on one element of the government, allowed democracy to go out of control.
(政府の一要素に歯止めをかけなかった制度の構造が、民主政の暴走を許した)

第6段落で、オーバーとカルガーティはアテネ民主政の「制度設計上の根本的な欠陥」を指摘し、その最たるものとして「民会を制約する仕組みの欠如」を挙げます。歯止めのない一機関(民会)が暴走を招いた、と述べている2が正解です。

1の「マケドニアに征服される方がましだと考えた市民が多かった」、4の「アルギヌサイ後の危機の深刻さを市民が理解しなかった」は本文に記述なし。3の「6将軍の裁判が連鎖反応を起こして軍事的敗北につながった」は話題としては登場しますが、この裁判は制度の欠陥の一例として挙げられているだけで、敗北の起点として語られてはいません。

大問3-2:全文和訳

大意の箇所もあるので、参考までにどうぞ。正解の根拠にかかわる箇所だけ太字にしています。

第1段落

古代ギリシャの都市国家アテネは、人類のもっとも息の長い政治的理想の一つが生まれた地として、しばしば称えられる。しかし、その民主政への敬意は比較的新しい現象だ。アテネの民主政は200年と続かず、その後何世紀にもわたって、知識人たちはそれを混乱した、見習うに値しないものとして退けてきた。実際、アテネの政治体制の実像は、今日しばしば称えられる美化された理想とは、鋭く食い違っている。

第2段落

アテネの民主政は、孤立して生まれたわけではない。アテネが民衆による統治という実験に乗り出した時代、それは数多くのギリシャ都市国家の一つにすぎず、富めるコリントスや軍事的に優勢なスパルタといった強豪の隣で、目立たない存在と見なされていた。政治家クレイステネスが紀元前508〜507年にアテネで民主的統治を打ち立てたとき、この都市国家は大胆な、しかし決して前例のない一歩を踏み出したのだった。地中海一帯の複数の都市国家が、程度の差はあれ参加型の統治の形を採り入れており、その一部はアテネの改革よりはるかに早かった。アテネを際立たせたのは、財産資格を段階的に撤廃し、ついにはすべての自由な男性市民がアテネの民会で投票権を持つに至るまで、より広い層の市民に力を与えようとした点である。民会とは、主要な国事が議論され決定される場だった。

(より原文に忠実な訳:アテネを際立たせたのは、財産資格を段階的に撤廃していくことによって、より広い層の市民に力を与えようとする、その姿勢だった。ついにはすべての自由な男性市民が、アテネの民会、すなわち主要な国事が議論され決定される場において、投票権を持つに至るまで。

第3段落

アテネの体制の根底にあったのは、近代の民主主義と結びつけられる代議制への根深い不信だった。選挙を行う代わりに、アテネ人は評議会(ブーレー)に加わる500人の市民を選ぶ独特の仕組みに頼った。ブーレーは、どの議題を民会にかけるかを決める協議会である。ブーレーの構成は、古代の抽選機クレロテリオンによって決められた。黒と白の玉が管を通して落とされ、出てきた玉の色によって、どの市民が1年間務めるかが決まった。この仕組みを作った人々は、政治的責任が資格ある市民の間を予測できない形で巡っていけば、権力が一個人に、あるいは少数の集団に集中することは、ほぼ考えられなくなると信じていた。

第4段落

選ばれた一部の者だけが法を作り、正義を執り行うべきだという考えは、多くのアテネ人にとって受け入れがたいものだった。選挙という手続きは、社会の裕福な人々が財力を使って選挙結果を操作し、民主主義を装いながら自らの権威を固定化する仕組みを作る道筋だと見なされた。権力をくじで無作為に割り当てることは、単なる僭主政の拒絶ではなく、一握りの富裕な市民による支配が、一人による支配に劣らず危険だという認識でもあった。

第5段落

だが、公正で正しい統治体制を保とうとあらゆる予防策を講じたにもかかわらず、アテネは「デマゴーグ」と呼ばれる者たちの台頭を抑えられなかった。実際、古典学者ロレン・J・サモンズ2世が書いているように、「民主政はデマゴーグを生む」というのは、おおいにありうることなのだ。アテネの体制は、市民の願望と不安を巧みに操り、理性的な判断を犠牲にして情念をあおる、きわめて説得的な演説で市民をなびかせるのに長けた、ご都合主義の人物を、知らず知らずのうちに生み出した。大衆が統治に参加する仕組みは、感情や偏見、目先の欲望につけ込まれやすかったのである。

第6段落

たとえば、民会や陪審で公務に就くアテネ人には、共同体の利益のために稼ぐ機会を犠牲にしていたことから、金銭的な報酬が支払われた。ところがデマゴーグたちは、演劇の観覧や宗教的な祝祭への参加といったものにまで、市民が公費を負担するよう仕向け始めた。もっと悪いことに、デマゴーグたちは巧みに民会を誘導し、宿敵スパルタとのペロポネソス戦争のさなかに破滅的な軍事的決定を承認させた。その結果、屈辱的な敗北を喫し、アテネの民主政は一時的に転覆させられた。

*note:デマゴーグが民会に承認させた破滅的な軍事的決定=シチリア遠征、アテネの民主政は一時的に転覆させられた=三十人政権と呼ばれる寡頭政

第7段落

アテネ民主政の終焉は、しばしば、勢力を増しつつあったマケドニアという国家の手による軍事的敗北の結果だと言われる。アテネはペルシア帝国の圧倒的な軍事力を打ち破るのにギリシャの力となり、自らの帝国を築き、今なお強い影響力を持つ芸術と哲学の文化を切り開いてきた。だが、その政治体制は途方もない弱点を抱えていた。スタンフォード大学のジョサイア・オーバーと、キングス・カレッジ・ロンドンのフェデリカ・カルガーティによれば、アテネ民主政は「制度設計上の根本的な欠陥」に苦しんでいた。彼らが挙げるもっとも明白な欠陥の一つは、民会を制約する仕組みが欠けていたことである。これはデマゴーグが歯止めなく振る舞うのを許しただけでなく、次のような事件も招いた。アルギヌサイの海戦で生存者を救助する義務を怠ったとされる6人の将軍を、民会が、確立された法手続きを明白に破って、処刑に処したのである。

第8段落

こうした制度上の欠陥があったために、財政危機や軍事的敗北が起きたとき、この都市国家にはそれらに対処し生き延びるだけの制度的な安定性がなかった。アテネ人は、一貫した規則も、堅固な制度も、正義もない社会に生きることになった。民衆の声がしばしば暴徒の叫びと化す社会であり、その結果として弱体化した国家は、敵に持ちこたえることができなかったのである。

大問3-2:単語熟語リスト

出てきた順で掲載します。

語句意味
reverence /ˈrevərəns/崇敬、畏敬の念 / revere(敬う)の名詞形。
dismiss A as BAをBとして退ける、一蹴する / dis(離す)+miss(送る)。
emulation /ˌemjuˈleɪʃən/模倣、手本にすること / unworthy of emulation で「見習う価値がない」
popular rule民衆による統治、人民支配 / popular は「人気の」より前に「民衆の(people の)」が原義
unremarkable /ˌʌnrɪˈmɑːrkəbl/目立たない、平凡な / un+remark(able)。「わざわざ言及remarkするほどでもない」
assembly /əˈsembli/集会、(古代アテネの)民会 / アベンジャーズ、assemble!
multitude /ˈmʌltɪtuːd/多数、大群 / multi(多)+tude(状態)。a multitude of で「無数の〜」
statesman /ˈsteɪtsmən/政治家 / state(国家)+man。politician より敬意のこもっている感じ
allotment /əˈlɑːtmənt/割り当て、くじによる配分 / allot(割り当てる)の名詞形。lot(くじ)
consolidation /kənˌsɑːlɪˈdeɪʃən/統合、(権力の)集中 / con(共に)+solid(固い)。固めてひとつにする
repugnant /rɪˈpʌɡnənt/嫌悪を催させる、受け入れがたい / 発音はリグナント、語源はpugn(戦う)、pugnacious(好戦的)
under the guise of〜を装って、〜の名の下に / guise(見せかけ、装い)。disguise(変装)
entrench /ɪnˈtrentʃ/固定化する、(地位などを)確立する / en+trench(塹壕)。塹壕を伸ばして守りを固めるイメージ、ちなみにトレンチコートも塹壕で着てた紐付きコートが由来。
tyranny /ˈtɪrəni/専制、暴政 / tyrantの名詞形。ウルトラマンの敵やバイオハザードにも「タイラント」がいる
demagogue /ˈdeməɡɑːɡ/扇動政治家、デマゴーグ / ギリシャ語 demos(民衆)+agogos(導く)。民衆をあおって動かす者。日本語の「デマ」の語源はドイツ語だけど、さらにその語源。
sway /sweɪ/(心・世論を)動かす、なびかせる / もとは「揺らす・揺れる」。心を揺さぶってなびかせるイメージ。hold sway over 〜 で「〜を支配する・影響力を持つ」
humiliate /hjuːˈmɪlieɪt/恥をかかせる、屈辱を与える / ラテン humus(土)から。humble と同じで「地に伏させる」
instrumental in〜に大きく貢献した、〜の立役者となった / instrument(道具)
vulnerability /ˌvʌlnərəˈbɪləti/脆弱性、弱点 / ラテン vulnus(傷)から
execution /ˌeksɪˈkjuːʃən/処刑、死刑の執行 / executeの名詞形。sequence と同じ語源、sequ(たどる)から
allegedly /əˈledʒɪdli/申し立てによれば、〜とされる / allege(主張する)

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GOKO編集室
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