慶應SFC総合政策2023小論文過去問解説 / 4つの課題文を繋ぐ「知の定義」と合格答案の作り方
本記事では、2023年2月に行われた慶應義塾大学総合政策学部(SFC)の小論文の解説を行います。
2023年の小論文は、「知とは何か」「大学は何のためにあるのか」という根源的な問いを通じて、受験生に知識の本質と社会への応用力を問うものでした。
「4つの課題文がバラバラで繋がらない」
「政策事例をどう書けばいいか分からない」
という悩む受験生のために、提示された4つの課題文をどう結びつけ、合格答案を作成するかを徹底解説します。
慶應SFC総合政策学部2023小論文の概要
2023年度の総合政策学部の小論文は、一見すると教育論ですが、膨大な知識とどう向き合い社会の中で使うか?という慶應生としての姿勢が説かれています。
SFCは、単に知識を持っているだけの人間を「問題解決のプロ」とは認めません。
過去の出題でも「実践知」が問われてきたように、知識を社会の中で具体的にどう活用するか?が常に問われています。
問われていること(出題意図)
問われていることは概ね以下の通りです。
- 比較の視点: 異なる立場の主張(ミル vs 経団連など)から、その共通点と相違点を抽出できるか。
- メタ視点: 読書=善など常識を疑う視点(バイヤール等)を、解答に取り込めるか。
- 社会への応用: 抽象的な「知」を、具体的な政策(AI、環境、コロナ等)に接続できるか。
後により詳細に出しますが、課題文をまとめると次の通りです。
| 文章 | 主な主張 | 学問・読書の捉え方 | 批判対象 | 知の機能 |
|---|---|---|---|---|
| ①ミル | 教養重視。知識の体系化と視野の拡大 | 人間形成のための一般教養 | 狭い専門主義 | 世界を多面的に理解する力 |
| ②経団連 | 実用重視。社会で役立つ能力 | 社会的価値創造のための資源 | 大学と社会の乖離 | 社会問題を解決する力 |
| ③ショーペンハウアー | 主体性重視。自分で考えること | 反芻による思考の深化 | 受動的読書 | 主体的思考力 |
| ④バイヤール | 批判的視点。知識の量より文脈理解 | 社会的規範・パフォーマンス | 知識所有主義 | 意味を理解し使う力 |
4つの課題文の要約と解説
4つの文章はバラバラではなく、全て「知」とは何か?について書かれています。
ただし、それぞれが「知」の定義や捉え方が異なります。その点をまとめ整理して、解答に反映させます。
要旨
- 文章1(J.S.ミル):大学教育の本質は、知識の体系化と幅広い視野の獲得。職業訓練の場ではなく、教養ある人間の育成を重視。
- 文章2(経団連):大学は社会・経済の変化に対応し、即戦力やイノベーション人材の育成を期待。企業が求める能力や資質(課題解決力、論理的思考力、学び続ける力など)を明示。
- 文章3(ショーペンハウアー):読書は他人の思考をなぞる行為であり、受動的な読書は自分で考える力を損なう。良書を選び、反芻し、自分の血肉とすることが重要。
- 文章4(バイヤール):読書にまつわる義務や偽善的態度を批判。読んでいない本について語ることの社会的タブーや、知的でありたいという社会的規範を指摘。
文章1(J.S.ミル):知は「視野を広げるもの」
立場:教養重視
- 大学は職業訓練ではない
- 知識の体系化により視野を広げる
- 偏見から自由になる
→ 知≒世界を正しく理解する力、人格形成
文章2(経団連):知は「社会で使うもの」
立場:実用重視
- 社会は変化している
- 必要なのは課題解決能力
- 学び続ける力が重要
→ 知≒問題を解決する力、社会で役立つ能力

文章3(ショーペンハウアー):知は「自分で考えるもの」
立場:主体性重視
- 読書は他人の思考を借りること
- 重要なのは自分で考えること
→ 知≒主体的思考
文章4(バイヤール):知は「理解して使うもの」
立場:批判的視点
- 知識の量そのものに意味はない、文脈理解が重要
- 「読んでいない本を語れない」という社会規範
- 知的であることの演技
→ 知≒意味を理解し使う力、社会的文脈の中にあるもの
4つの課題文の整理とまとめ
まず、提示された4つの文章を対立・補完関係で整理します。
文章1と2、文章3と4を以下の軸でまとめることができます。これは問1と問2でも軸となります。
- 「何を」学ぶか(内容論): ミル(体系的教養) vs 経団連(実践的スキル)
- 「いかに」学ぶか(方法論): ショーペンハウアー(主体的反芻) vs バイヤール(社会的規範・パフォーマンス)
それぞれの課題文を表にまとめると、以下ように整理できます。
| 文章 | 主な主張 | 学問・読書の捉え方 | 批判対象 | 知の機能 |
|---|---|---|---|---|
| ① ミル | 専門教育ではなく人間形成のための一般教養 | 広い視野を得るための手段 | 狭い専門主義 | 世界を多面的に理解する |
| ② 経団連 | Society5.0を担う人材育成 | 社会的価値創造のための資源 | 大学と社会の乖離 | 社会問題を解決する |
| ③ ショーペンハウアー | 多読は思考停止を招く | 思考を促す手段(反芻が必要) | 受動的読書 | 主体的思考を生む |
| ④ バイヤール | 読書には社会的規範がある | 社会的実践・意味構築 | 知識所有主義 | 社会的文脈を理解する |
表の1番右側「知の機能」4つをまとめると、「知」についていい感じに定義にすることができます。
知とは、主体的に思考し、世界を理解し、社会の問題を解決する力である
or
知とは、主体的思考によって世界を多面的に理解し、社会の問題を解決する能力である。
せっかく作ったので、これはそのまま、問1の結論、問2(ア)の定義として使用しましょう。
問1の解き方(大学で何を学ぶべきか)
問1
文章1~4のうち、少なくとも3つに具体的に言及し、大学での学びにおいて重要だと考えるものについて600文字以内で論ぜよ。それぞれの文章の内容に賛成する必要はない。批判的検討は常に重要であり、反論も歓迎される。
問われているのは、大学は何を教える場所か、ではなく、大学は何を育てる場所かです。
引用した文章の単なる並列はNGです。
「Aという意見もあるが、Bの視点を加味すると、真の学びはCである」という論理構成を目指します。
解答プロセスと構成例
- 主張: 大学の学びを定義。
- 知の内容: ミルの「教養主義」と経団連の「実利主義」を比較。
- 知の方法: ショーペンハウアーの主体的思考を入れて、知識の量や用途よりも「質(反芻)」が重要であることを指摘。
- 結論: 大学での学びを「自律的思考を伴う体系知の構築」と結論づける。
問1解答例
*高校生が本番でも書けるレベルに調整しています。
問1解答例1
大学での学びにおいて最も重要なものは、知識を単に覚えることではなく、それを主体的に考え、社会に活かす力を身につけることである。
文章①でミルは、大学は専門的な職業訓練の場ではなく、人間形成のための一般教養を身につける場であると述べている。これは、知識を体系的に学ぶことで広い視野を持ち、物事を多面的に理解できるようになることの重要性を示している。一方で文章②では、大学は社会の変化に対応し、課題解決能力や創造力を持つ人材を育てることが求められているとされている。これは、知識を社会で活用する能力の必要性を示している。
しかし、文章③でショーペンハウアーは、読書によって知識を得るだけでは不十分であり、それを自分で考え直し、自分のものにすることが重要であると指摘している。単に知識を覚えるだけではなく、それを主体的に考えることで初めて意味のある知となるのである。
以上のことから、大学での学びにおいて重要なのは、知識を体系的に学びながら、それを主体的に考え、社会の問題を理解し解決する能力を身につけることである。大学は、知識を覚えるだけの場ではなく、自ら考える力を育てる場であると言える。
問1解答例2
大学での学びにおいて重要なのは、単に知識を覚えることではなく、それをもとに主体的に考え、社会の問題を理解し解決する力を身につけることである。
文章②で経団連は、社会の変化に対応するために、大学は課題解決力や創造力を持つ人材を育てる必要があると述べている。これは、知識を社会の中で活用する能力の重要性を示している。一方で、文章①でミルは、大学の役割は専門的な技術だけでなく、知識を体系的に学び、人間としての視野を広げることであると述べている。一見すると、これは直接社会の役に立たないようにも思える。しかし、幅広い知識を持つことで、物事を多面的に理解することができ、結果として社会の課題をより深く考えることが可能になる。このように、知識の体系的理解と課題解決力は、どちらも社会をよりよくするために必要なものである。
さらに、文章③でショーペンハウアーは、読書によって知識を得るだけでは不十分であり、それを自分で考え直すことが重要であると述べている。単に知識を覚えるだけではなく、それを主体的に考えることで初めて意味のある知識になるのである。
以上のことから、大学での学びにおいて重要なのは、知識を体系的に学びながら、それを主体的に考え、社会の問題を理解し解決する力を身につけることである。大学は、知識を覚えるだけの場ではなく、自ら考える力を育てる場であるといえる。
最後の段落は、その他の小論文でもそのまま使える結論文なので、暗記推奨です。
大学での学びにおいて重要なのは、知識を体系的に学びながら、それを主体的に考え、社会の問題を理解し解決する力を身につけることである。
問2の解き方(知の社会的役割)
問2
(ア) 社会における「知」として最も重要だと考える要素や役割を簡潔に示す。
(イ) 政策の具体的な事例を2つ挙げ、「知」がどのように活かされているか(または活かされていないか)を800文字以内で論じる。その際に、文章3or4に具体的に言及することが望ましい。
問2の解答プロセスと模範解答
問われているのは、知が実際の社会でどう使われているかです。
抽象的な「知」の定義を、具体的な政策に当てはめることが求められています。
以下の様な構成がオススメです。
① 知の定義
② 政策の例
③ 知がどう使われたか
④ 文章3または文章4と関連付け
⑤ 結論
政策例としては、
・新型コロナ対策(ワクチン開発)
・デジタル教育政策
・少子化対策
・気候変動政策
などですが、これ以外でも自分が知っている分野を使う様にしてください。
問2(ア)の解答例
知とは、単に情報を知っていることではなく、それをもとに物事を理解し、社会の問題を解決するために活用する思考の能力である。
or
知とは、あふれる情報や知っているべきだという社会的な空気に流されず、自分の頭で深く考え、世界の複雑さを理解した上で、社会の課題を解決していく力である。
問2(イ)の解答例
問2解答例1:新型コロナ対策
社会における「知」とは、単に情報を知っていることではなく、それをもとに現実を理解し、課題を発見し、その解決に役立てるための思考の基盤である。このような知は、社会のさまざまな問題に対応するうえで重要な役割を果たしている。
その具体例として、新型コロナウイルス感染症への対応が挙げられる。感染が広がった当初は、ウイルスがどのように感染するのかが十分に分かっていなかった。しかし研究者たちは、これまでのウイルスに関する知識をもとに分析を行い、感染経路や有効な対策を明らかにしていった。そして、その知識を応用することで、ワクチンの開発やマスクの着用、換気などの感染対策が行われるようになった。このように、既存の知識を活用して未知の問題を理解し、解決策を生み出すことは、知の重要な働きである。
この点は文章②の内容とも関係している。文章②では、社会の変化に対応するために、課題解決能力や創造力を持つ人材の育成が重要であると述べられている。コロナへの対応においても、単に知識を覚えているだけでは不十分であり、それをもとに新しい状況を考え、解決策を生み出す力が必要であった。研究者たちは既存の知識をもとに新しいワクチンを開発し、社会の問題を解決しようとしたのである。
また、このような知は個人だけでなく、社会全体の判断にも影響を与える。政府は専門家の知識を参考にして政策を決定し、人々もその知識をもとに行動を選択した。このように、知は社会が適切な判断を行うための基盤となっている。
以上のように、知とは単なる情報の集まりではなく、それをもとに現実を理解し、課題を解決するために活用されるものである。そして、そのような知を活用できることが、現代社会において非常に重要であるといえる。
問2解答例2:生成AIと脱炭素社会
第一の事例として、教育現場における生成AIの利用が挙げられる。現在、AIを使うことは、文章②で述べられているように、新しい価値を生み出すために重要な能力の一つとされている。しかしその一方で、AIを使えること自体が優れていることであると考えられ、使いこなしているように見せようとする傾向もある。これは文章④で指摘されているように、知識を持っているように見せることが重視される状況と似ている。AIが作った文章を自分で十分に考えずにそのまま使うことは、文章③でショーペンハウアーが述べたように、他人に考えてもらう状態と同じであり、自分で考える力を弱めてしまう。知が正しく活用されている状態とは、AIの答えをそのまま受け入れるのではなく、自分の知識と比べながら、その内容が正しいかどうかを自分で考えて判断することである。
第二の事例として、脱炭素社会に向けた環境政策が挙げられる。これは、気候変動に関する科学的な知識をもとに行われている重要な政策である。しかし一方で、環境に配慮しているように見せることだけが目的となり、その意味を十分に理解しないまま行動している場合もある。これは文章④で述べられているように、社会の中で知識を持っているように見せることが重視される状況と関係している。また、なぜこの政策が必要なのかを自分で考えなければ、表面的な行動にとどまってしまう。この点は文章③の、自分で考えることの重要性という指摘と関係している。
以上のように、社会の政策において知を活かすためには、知識を持つだけでなく、それを主体的に考え、その意味を理解したうえで活用することが重要である。このような知の活用によって、社会の問題を正しく解決することができるといえる。
合格答案を書くための重要ポイントまとめ
出題から考えて、SFCが評価しているのは、
- 抽象化能力 → 知とは何かを定義できるか
- 統合能力 → 複数文章をまとめられるか
- 応用能力 → 社会問題に接続できるか
ということがわかります。
また2023年の小論文では、大学の役割についてのSFCなりのメッセージも読み取ることができます。
つまり、大学とは知識を覚える場所ではなく
- 知識を使って考え
- 社会を理解し
- 問題を解決する力を育てる場所
だということです。
その辺を踏まえて解答には以下の要素を盛り込んでおくようにしましょう。
① 知識の習得だけでは不十分
② 主体的思考が必要
③ 社会問題解決に知を使う必要
④ 大学はその能力を育てる場
今回は以上です!
引き続き、慶應合格を目指して学んでいきましょう!
投稿者

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