慶應商学部2025年英語:解答速報と問題解説 / 幸福とおしゃべりなレジ
2025年2月14日に行われた、慶應義塾大学商学部一般選抜の英語入試問題の解答速報です。
参考までにどうぞ。
大問1:7万4千年前の化石からわかる人類の適応力

- 題名:7万4千年前の化石の発見が驚くべき適応力を持つ人類を示す
Fossil Trove From 74,000 Years Ago Points to Remarkably Adaptive Humans - 著者:カール・ジンマー / Carl Zimmer (2024)
- 語数:850語程度
「ニューヨーク・タイムズ」の科学コラムニストであり、ピュリッツァー賞の受賞歴もあるサイエンスライターの2024年の記事から出題。
日本でも多くの人に読まれている「進化の教科書」シリーズの著者でもあり、出題英文も非常に読みやすい内容でした。
厳しい自然環境の中で人類はどうやってアフリカ大陸を出ることができたのか?
その鍵は、環境に応じて生き方を変える順応性にあったのではないかという話でした。
【英文冒頭】
In 2002, a team of researchers was working in northwestern Ethiopia when they came across chipped stones and fossilized animal bones - illuminating signs of a place where ancient people had once lived. After years of excavations, the researchers discovered that hunter-gatherers had lived there 74,000 years ago.
ちなみに、英文冒頭に登場するエチオピアはこちらで、英文内に登場するシンファ・メテマ1遺跡(shinfa metema 1)は北部タナ湖の近くにあります。
大問1:解答
問題 | 解答 |
---|---|
1 | 4 |
2 | 1 |
3 | 2 |
4 | 2 |
5 | 4 |
問題 | 解答 |
---|---|
6 | 3 |
7 | 1 |
8 | 3 |
9 | 2 |
10 | 4 |

大問1:和訳
同じ出典と思われる日本語の記事を見つけましたので、そちらを和訳の参考例として紹介いたします。
>>>人類は「青いハイウェー」でアフリカを脱出した?生息域を地球全域に広げた謎に新説
大問2:幸福とは何か?

- 題名:幸福の追求:徳と建国の父たち
The Pursuit of Happiness: How Classical Writers on Virtue Inspired the Lives of the Founders and Defined America - 著者:ジェフリー・ローゼン / Jeffrey Rosen (2024)
- 語数:700語程度
全米憲法センターの会長であるジェフリー・ローゼン氏の2024年の著書から出題。
どちらかといえば米国"上げ"の内容ですが、2025年の商学部の英文で1番興味深く読みました。
アメリカ独立宣言に記された「幸福の追求」という言葉が、建国の父たちにとって何を意味したのかを深く掘り下げた著書です。
ベンジャミン・フランクリン、ジョージ・ワシントン、ジョン・アダムズ、トーマス・ジェファーソン、ジェームズ・マディソン、アレクサンダー・ハミルトンの6人の建国の父たちの生涯を分析し、彼らが古代ギリシャ・ローマの道徳哲学から影響を受け、「幸福の追求」を短期的な快楽ではなく、生涯にわたる徳の追求、つまり「善く生きること」と捉えていたことを明らかにします。
【英文冒頭】
Today we think of happiness as the pursuit of pleasure. But classical and Enlightenment thinkers defined happiness as the pursuit of virtue - as being good rather than feeling good. Influenced by this way of thinking, the Founding Fathers of the United States of America ("the Founders"), who wrote the U.S. Constitution, believed that the quest for happiness is a daily practice, requiring mental and spiritual self-discipline.
彼らは、勤勉、節制、適度、誠実といった徳を重視し、自己改善と人格形成に努め、独立宣言では「全ての人間は平等に創造された」と謳い挙げました。
さわさりながら、アフリカ系アメリカ人を奴隷として所有し、その権利を認めなかったトーマス・ジェファーソンの逸話は、いまだに有名です。

大問2:解答
問題 | 解答 |
---|---|
11 | 1 |
12 | 4 |
13 | 4 |
14 | 3 |
15 | 1 |
問題 | 解答 |
---|---|
16 | 4 |
17 | 4 |
18 | 2 |
19 | 4 |
大問2:解説
(16) プラトンの比喩の意図を最もよく捉えているものはどれですか?
- 魂の高貴な部分が理性を通して情熱的な部分をコントロールすべきである。
- 魂の高貴な部分と情熱的な部分が理性を導くべきである。
- 情熱が理性を通して魂の高貴な部分を導くべきである。
- 理性が魂の情熱的な部分と高貴な部分を導くべきである。
解答: 4
解説: プラトンの比喩では、御者(理性)が二頭の馬(情熱的な部分と高貴な部分)を操ることで、魂の調和を目指しています。つまり、理性が感情をコントロールすべきであるという考えを示しています。
(17) 筆者の幸福に関する見解を反映していないものはどれですか?
- それは日常生活における努力によって求められる。
- それは過去と現在で異なる見方をされている。
- それは徳のある生活を送ることで見出される。
- それはストア派が見落としていた概念である。
解答: 4
解説: 筆者はストア派の哲学を高く評価しており、彼らが幸福の概念を見落としていたとは述べていません。むしろ、ストア派の考え方が建国の父たちに影響を与えたと説明しています。
(18) 筆者の見解と一致するものはどれですか?
- 東洋の叡智の伝統は古代ギリシャ哲学に基づいていた。
- 建国の父たちは叡智の研究を西洋のものに限定しなかった。
- 建国の父たちは聖書を叡智と知識の源とは見なさなかった。
- 東洋の叡智とストア派哲学は共通点がほとんどない。
解答: 2
解説: 筆者は、建国の父たちが西洋の叡智だけでなく、東洋の叡智にも関心を持っていたと述べています。
(19) 本文の主題を最もよく表しているタイトルはどれですか?
- 幸福の追求:プラトンの御者が魂の願望をどのように表しているか。
- 幸福の追求:それが過去と現在の米国人にどのように適用され、関連しているか。
- 幸福の追求:数世紀にわたる西洋と東洋の思想の比較。
- 幸福の追求:古典的な徳の作家が建国の父たちにどのように影響を与えたか。
解答: 4
解説: 本文は、古典的な徳の概念が建国の父たちに与えた影響と、それがアメリカの建国にどのように関わったかを論じています。

大問2:全文和訳
大意としては以下の通りです。
現代では、幸福とは快楽を追求することだと考えられがちです。しかし、古典時代や啓蒙時代の思想家たちは、幸福を徳の追求、つまり「心地よく感じる」ことではなく「善くある」ことと定義しました。この考え方に影響を受けたアメリカ合衆国の建国の父たちは、幸福を求めることは日々の実践であり、精神的、霊的な自己鍛錬が必要だと信じていました。建国の父たちは、幸福の追求を、人格の向上を目指す生涯にわたる探求と捉えました。それは、理性を用いて非生産的な感情を抑制し、最高の自分となり、他者に奉仕することを目指すものです。彼らにとって、幸福には日々の徳の涵養が必要でした。スコットランドの哲学者アダム・スミスは、徳を「優れた称賛に値する人格を構成する心のあり方」と定義しました。彼らは、幸福の追求とは生涯にわたる学習者であること、人格向上、自己制御、繁栄、成長につながる日々の習慣を実践することだと信じていました。このように理解すると、幸福は常に獲得するものではなく、追求するものです。目的地ではなく、探求なのです。古代ローマの哲学者キケロは、「最高の幸福の探求は、その実際の達成ではなく、人間の富や名誉、肉体的な快楽をはるかに超える価値がある」と書いています。
なぜキケロの著作は、建国の父たちの幸福の理解にそれほど影響を与えたのでしょうか?それは、彼の著作がストア派哲学の基本をよくまとめたものであったからです。古代ストア派によれば、自由、平静、幸福を達成するためには、外部の出来事をコントロールしようとするのをやめ、代わりに自分たちがコントロールできる唯一のもの、つまり自分の思考、欲望、感情、行動をコントロールすることに集中すべきです。この意味で、ストア派哲学は仏教やヒンドゥー教を含む東洋の叡智の伝統と多くの類似点を持っています。「私たちの人生は心によって形作られる。私たちは考えるものになる」と仏陀は述べ、永続的な幸福を達成するためには、羨望、傲慢、怒り、短期的な快楽の追求といった利己的な衝動を制御する必要性を強調しました。ヒンドゥー教の叡智の文献は、マハトマ・ガンジーがよく引用したフレーズで、幸福に関する同様の教えを要約しています。「放棄して楽しめ」。言い換えれば、無私無欲に行動することによってのみ、私たちは自我に基づく感情(例:怒り、恐れ、嫉妬)を克服し、現在に生き、宇宙の自然法則と調和して生きることができるのです。
建国の父の一人であるジョン・アダムズは、影響力のあるギリシャの道徳哲学者ピタゴラスが東方への旅でヒンドゥー教の師に学んだと言われていることを知り、興奮しました。晩年、トーマス・ジェファーソンとの書簡の中で、アダムズは幸福に関する古代の叡智の源としてヒンドゥー教の聖典について言及しました。建国の父たちにとって、幸福の追求には東西の叡智の伝統からの文献を読むことが含まれていました。常に聖書を拠り所としながら、彼らは感情的、精神的な鍛錬を通じて自己制御を達成する必要性に関する古代の叡智を抽出しました。
アリストテレスは、幸福を徳を持つこと、すなわち「卓越性に従った魂の活動」と定義しました。現代の言葉で言えば、「最高の自分であること」です。同様に、現代の社会心理学者は幸福を「感情的知性」に根ざしていると考え、それを「ストレスを軽減し、効果的にコミュニケーションを取り、他者に共感し、課題を克服し、対立を解消するために、自分の感情を肯定的な方法で理解し、使用し、管理する能力」と定義しています。
建国の父たちは、自己制御と感情的知性の探求を心理学的視点から捉え、アリストテレス、キケロ、その他の古代の文献を参考に、その探求を理性と情熱の劇的な闘いとして見ました。建国の父たちは、感情を欠くべきだと言ったのではありません。彼らにとって、感情は情熱と同義でした。彼らが言いたかったのは、感情を生産的な方法で管理すべきだということだけです。例えば、彼らはプラトンに触発されました。プラトンは、魂を三つの部分に分け、それを翼のある二頭の馬に引かれた戦車を操る御者の比喩で表しました。御者は理性を表し、一方の馬は魂の情熱的な部分を表し、地上の快楽に惹かれ、もう一方の馬は魂の高貴な部分を表し、神聖なものへと向かいました。御者の目標は、情熱的な馬と高貴な馬を同じ方向に引くように調整することでした。
語彙
- moderate: 抑制する、和らげる
- cultivation: 涵養、育成
- temper of mind: 心のあり方
- attainment: 達成、獲得
- tranquility: 平静、静穏
- arrogance: 傲慢、尊大
- renounce: 放棄する、断念する
- ego-based emotions: 自我に基づく感情
- distilled: 抽出した、蒸留した
- self-mastery: 自己制御、自己修養
- defuse conflict: 対立を解消する
- synonym: 同義語
- charioteer: 御者(戦車の操縦者)
- gravitated: 引き寄せられた
- align: 調整する、整列させる
大問3:敢えてのおしゃべりなレジ

- 題名:最後の人間らしい仕事:分断された世界で「つながり」を生み出す仕事
The Last Human Job: The Work of Connecting in a Disconnected World - 著者:アリソン・J・ピュー / Allison J. Pugh (2024)
- 語数:830語程度
バージニア大学の社会学者、アリソン・J・ピュー教授の最新の著書(の最後)から出題。
自動化が進む現代社会において、人間同士の「つながり」を生み出す仕事の重要性を説いた内容です。
【英文冒頭】
In 2019, a Dutch supermarket company started reserving some of its checkout lanes for those who wanted to stop and chat with the cashier as they paid for their groceries. Dubbed "Kletskassa," or "chat checkout," the new lanes were marked by a sign that read in Dutch: "the nicest checkout for when you are not in such a hurry." The move was a response to widespread loneliness, the store proclaimed on its website.
あまりに教科書的な主張のため深読みしたくなるかもしれませんが、ひねくれず素直に読んだ方が結果的に正解率が高くなる問題でした。
大問3:解答
問題 | 解答 |
---|---|
20 | 2 |
21 | 3 |
22 | 1 |
23 | 3 |
問題 | 解答 |
---|---|
24 | 2 |
25 | 1 |
26 | 1 |
27 | 2 |
28 | 1 |
29 | 2 |

大問3:解説
(25) 「as the checkout lane goes, so goes society」とはどういう意味ですか?
- レジレーンの傾向は社会全体の傾向を反映している。
- テクノロジーが発展するにつれて、レジレーンはますます増えている。
- 発展途上国の市民は、多くのおしゃべりレジレーンを必要としない。
- 人々がレジレーンを移動している間、社会は機能し続ける。
本文中で「as the checkout lane goes, so goes society.」という文は、単身世帯の増加、離婚率の上昇など、効率性や個人の自律性を重視する社会の傾向を反映していると解釈できます。 したがって、「レジレーンの傾向は社会全体の傾向を反映している」が最も適切な解答となります。
(26)they は何を指していますか?
当該文では「their work inching ever closer to that of machines, until in some cases it is not clear to themselves or to their customers how the tasks (26) they perform are that different from each other.」とあり、レジ係の仕事が機械の仕事に近づいていることが述べられていることから、(26) they はレジ係と機械の両方を指していると解釈できます。
(27) Redditのコメントがオランダのスーパーマーケットの革新的な取り組みに対する好意的なメディア報道に異議を唱えた理由として挙げられていないものはどれですか?
- 一般的に、オランダのスーパーマーケットは収益を優先する。
- この技術的な解決策はオランダの新聞によって推進された。
- ほとんどのオランダの買い物客はスムーズなレジに慣れている。
- オランダの買い物客は、目の前の列の遅延にイライラする傾向がある。
Redditのコメントは、オランダのスーパーマーケットが収益を優先していること、買い物客が効率的なレジに慣れていること、レジの遅延にイライラすることなどを理由として挙げていますが、オランダの新聞によってこの技術的な解決策が推進されたという話はしていません。理由は述べられていません。
(28) セルフレジによってレジ係が置き換えられることに関する著者の考えに一致するものはどれですか?
- この社会現象は、人間同士の交流の広範な衰退の一つの表れにすぎない。
- 歴史が示すように、この変革は地域レベルで逆転すると結論づけるのは妥当である。
- ノスタルジアの感覚は、多くの人々にとって人間同士の交流の最も重要な心理的利点の一つである。
- 機械はレジ係よりも効率的にタスクを実行するため、他の従業員が顧客と交流するための時間が増える。
本文中で、著者は食料品買い物の歴史的変革が温かい地域社会のつながりを奪ったと述べており、人間同士の交流の減少を懸念しており、セルフレジによるレジ係の代替を、人間同士の交流の広範な衰退の一つの表れとして捉えていることがわかります。
(29) 以下のタイトルのうち、本文の主題を最もよく捉えているものはどれですか?
- おしゃべりレジ:より効率的なショッピング体験に向けて
- おしゃべりレジ:買い物を通じた人間関係の創造
- おしゃべりレジ:ソーシャルメディアが私たちのショッピング体験をどのように形作ったか
- おしゃべりレジ:技術革新と進歩への障害
本文の主題は、セルフレジの普及による人間同士のつながりの喪失と、おしゃべりレジによるつながりの回復の試みです。したがって、「おしゃべりレジ:買い物を通じた人間関係の創造」が最も適切なタイトルとなります。

大問3:全文和訳
大意としては以下の通りです。
2019年、オランダのスーパーマーケットチェーンは、食料品の会計時にレジ係と立ち止まって会話を楽しみたい顧客のために、専用のレジレーンを設け始めました。「クレットカッサ(おしゃべりレジ)」と名付けられたこれらのレーンには、オランダ語で「急がない時のための、一番心地よいレジ」と書かれた看板が掲げられました。この取り組みは、広がりを見せる孤独感への対応策であると、スーパーマーケットのウェブサイトには記されています。「ささやかな試みではありますが、特にデジタル化と加速化が進む現代社会においては、非常に価値のあるものです」とウェブサイトは説明しています。しかし、そのすぐ隣では、デジタル化された世界がセルフレジレーンで猛スピードで進んでおり、顧客は誰とも言葉を交わすことなく、商品をスキャン、計量、袋詰めし、クレジットカードを挿入してレシートを受け取っていました。デジタル化されたスーパーマーケットでは、レジ係と買い物客の個人的なつながりは、ほぼ完全に失われてしまったのです。
食料品の買い物と、人と人をつなぐ仕事には、一体どんな関係があるのでしょうか?なぜ私たちは、こうしたありふれた日々のやり取りを気にかける必要があるのでしょうか?レジ係の仕事は、繰り返しの多い、厳しく管理された、決まりきった言葉を発するだけの仕事です。「袋はご利用ですか?」「ポイントカードはお持ちですか?」といった具合です。中には、1分間にスキャンできる商品数を計測され、ノルマを達成できないと叱責されるなど、できるだけ早く顧客を会計処理するようプレッシャーをかけられているレジ係もいます。こうしたやり取りの中に、人間関係を見出すことなどできるのでしょうか?
かつて、食料品の買い物は人と人とのつながりで満ち溢れていました。それは、古代の人々が歩いた跡を示す化石の足跡のように、今はその影を見ることしかできませんが。セルフレジレーンの普及は、食料品買い物の経験から人間関係を奪い去ってきた長い歴史の、ほんの最新段階に過ぎません。そして、このプロセスは、労働者から消費者へと、より多くのコントロールと仕事を移行させてきました。
2023年、オランダのスーパーマーケットの「おしゃべりレジ」のニュースがソーシャルメディアのRedditに広まると、その反応は歓迎する人とそうでない人に分かれました。後者に属するあるユーザーは、「私はセルフレジをできるだけ速く済ませ、アイコンタクトや会話を避けるようにしている」とコメントしました。別のユーザーは、「私も!マスクとイヤホンがあればもっと簡単。セルフレジが嫌いな人もいるのは知っているけど、誰とも話さなくていいから最高」と返信しました。このような意見を持つのは、彼らだけではありません。例えばアメリカでは、スーパーマーケットでの会計の約30%がセルフレジレーンで行われており、2019年の23%から増加しています。さらに言えば、「レジレーンが進むように、社会も進む」と言えるかもしれません。景気が良い時は単身世帯が増加する傾向があり、多くの国では、高齢者などは可能な限り一人暮らしを選びます。同様に、好景気になると離婚率は減るどころか増加する傾向があり、経済的に余裕ができた人々が別れるのです。現代生活全般における孤独や孤立を心配するかもしれませんが、選択肢がある場合、多くの人は効率的で自律的な、孤独なライフスタイルを選ぶのです。
私自身について言えば、現状に特に不満はありません。とはいえ、ちょっとした社会的な交流がもたらす心理的なメリットを知った今、家族にはセルフレジを使わないように勧めるかもしれません。食料品買物の歴史的な変遷は、消費者が時間、お金、そしてコントロールを得るのに役立ちましたが、かつてはこの日々の活動の有意義な一部であった温かい地域社会とのつながりをも奪ってしまいました。一方、食料品店の従業員、特にレジ係にとっては、あらゆるものを数値化し、紋切り型のやり取りを繰り返すことで、人と関わる仕事が損なわれてきました。彼らの仕事は、機械の仕事にますます近づいており、場合によっては、レジ係自身や顧客でさえ、彼らが行っている仕事が機械とどう違うのか分からなくなっています。結局のところ、問題はセルフレジレーンによってレジ係が置き換えられること自体ではなく、そもそもそのような代替を魅力的にしてしまう、人間的な仕事の価値が失われていることにあるのです。
別のRedditユーザーは、オランダのスーパーマーケットの革新的な試みに対する好意的なメディア報道に異議を唱えました。「これまで説明されていないのは、少なくとも大都市では、ほとんどのオランダのスーパーマーケットのレジが非常に効率的であるということです」と、そのユーザーは指摘しました。「レジでの会計処理は、ほとんど言葉を交わすことなく、猛スピードで行われます。レジ係が迅速に処理しないと、後ろに並んでいる人々はイライラして怒り出します。オランダの商業全体では、サービスよりも効率性と収益性が重視されるのです…さらに悪いことに、これらのレジ係のほとんどはスキャン装置に置き換えられたか、置き換えられつつあります。私の家の近くのスーパーマーケットでは、9台のセルフレジを1人の従業員が監視しています。そのため、この「遅い」レジの「導入」は、スキャナーを使えない、あるいは使いたくない人のためでもあるのではないかと疑っています」。この観察者によれば、「おしゃべりレジ」は、買い物の機械化に適応できない人々を管理するために店側が必要とした措置を、「選択肢」と称して言い換えただけなのかもしれません。
大問4:文法語法問題
(30)は迷う問題でしたが、それ以外はいわゆる慶大レベルの文法や語法の知識で解ける問題でした。
7問中5問正解が目標の印象です。
大問4:解答
問題 | 解答 |
---|---|
30 | 2 |
31 | 4 |
32 | 1 |
33 | 2 |
問題 | 解答 |
---|---|
34 | 3 |
35 | 3 |
36 | 3 |
大問4:解説
(30) I find it questionable as to whether these students wrote their essays all by themselves.
これらの学生たちが自分たちだけでエッセイを書いたかどうかは疑わしいと思う。
「as to」は、ひとまとまりで前置詞句として機能し 「~について」「~に関して」という意味を表します。日常というよりフォーマルな場面での使用が多いです。
「as to」を使った英文例
- I am not sure as to what I should do.(私は何をすべきか確信が持てません。)
- There is some doubt as to whether he will come.(彼が来るかどうかについては疑問があります。)
- The police are investigating as to the cause of the accident.(警察はその事故の原因について調査しています。)
- As to your question, I will answer it later.(あなたの質問については、後ほどお答えします。)
- Scientists have developed a new theory as to the origin of the universe.(科学者達は宇宙の起源に関して新しい理論を開発しました。)
(31) All classes are held on this campus unless otherwise noted.
特に指示がない限り、すべての授業はこのキャンパスで行われます。
(32) My children need to brush up their Spanish before we start living in Mexico.
私の子供たちはメキシコに住み始める前にスペイン語を復習する必要があります。
(33) We were just out looking to see what we could find; we didn't think we'd find anything. But we found some big holes that looked like dinosaur footprints.
私たちは何か見つけられるか外に出て探していただけでした。何も見つかるとは思っていませんでした。しかし、恐竜の足跡のように見える大きな穴をいくつか見つけました。
(34) The modern and contemporary section in this museum offers an overview of nineteenth-century Italian art, followed by a presentation of several major figures of twentieth-century art.
この美術館の近代現代部門では、19世紀イタリア美術の概要が紹介され、続いて20世紀美術の主要な人物の紹介があります。
(35) After months of negotiations, the mayor has decided that money set aside for restoring nature is to be diverted into funding wage settlements for city workers. *
数ヶ月の交渉の後、市長は自然を回復するために確保されていたお金を、市職員の賃金協定の資金に転用することを決定しました。
(36) Why don't we talk to our team about the new project at the meeting next week?
来週の会議で、新しいプロジェクトについて私たちのチームに話してみませんか。
*talk以外は他動詞のため×
大問5:どんなことでも上手くなる - 最速でスキルを身につける12の格言
- 邦題:SENSE FULNESS どんなスキルでも最速で磨く「マスタリーの法則」
原題:Get Better at Anything: 12 Maxims for Mastery - 著者:スコット・H・ヤング / Scott H. Young (2024)
- 語数:270語程度
ウォールストリート・ジャーナルのスコット・H・ヤング氏の最新著書から出題。
なぜ人々が新しいスキルを学ぶのが難しいのかを探求し、進歩を可能にするためには3つの要素を満たす必要があると主張し、学習方法を改善するための12の格言を紹介した本で、日本でも発売されています。
2024年の慶應文学部も似たテーマを扱った内容で、アプローチこそ異なりますが、親和性を感じました。
この著者は「ULTRA LEARNING 超・自習法―どんなスキルでも最速で習得できる9つのメソッド」でも話題になった著者で、学習法や勉強法についての発信が多い方です。
興味あれば、受験勉強の箸休めに読んでみてください。
大問5:解答
問題 | 解答 |
---|---|
37 | 2 |
38 | 1 |
39 | 3 |
40 | 3 |
41 | 1 |
42 | 3 |
大問5:全文和訳
大意としては以下の通りです。
Separate from the worry about whether improvement and progress are possible is the worry that learning may soon be unnecessary. As I write this, sophisticated computer programs can now write poems, explain quantum mechanics, and illustrate pictures in any artistic style~~~
向上と進歩が可能かどうかという不安とは別に、学習がすぐに不要になるのではないかという不安もあります。今まさに私がこれを書いている間にも、高度なコンピュータプログラムが詩を書いたり、量子力学を説明したり、あらゆる芸術様式で絵を描いたりできるようになっています。それも、すべてオンデマンドで。このような技術の進歩が続けば、シリコンチップで簡単にこなせてしまうスキルを、わざわざ苦労して習得する意味は何になるのでしょうか?
実際、技術の変化が加速する中で、古い能力が陳腐化する一方で、新しい学習の必要性も生まれてくる可能性があります。紙の発明は、記憶力を低下させるとソクラテスに批判されましたが、その結果、一人の人間が一生かけても覚えきれないほどの知識が爆発的に増加しました。情報技術は、以前には存在しなかった新しい仕事を生み出す一方で、他の仕事をほとんど無意味にしてしまいました。
デビッド・オーターらの論文によると、2018年に人々が就いていた仕事の約60%は、1940年には存在していなかったそうです。21世紀のテクノロジーは、タイピストや電話交換手の必要性を減らしたかもしれませんが、同時にソフトウェア開発者やビジネスアナリストの需要を急増させました。
過去の技術動向に基づくと、人工知能の進歩は、さらに新しい学習の必要性を高めるだろうと推測できます。とはいえ、未来、特に未来の予測は困難です。そのため、将来の世代にとって具体的にどのようなスキルや知識が重要になるのかを予測することは避けたいと思います。しかし、学習のプロセスと、それをより効果的にする方法についての洞察は、今後ますます重要性を増していくでしょう。決して、その逆ではありません。
出典:スコット・H・ヤング著「どんなことでも上手くなる:習得のための12の格言」
語彙
- inference (名詞) - 推論
- undermine (動詞) - 損なう、弱体化させる
- on demand - 要求に応じて
- the rise of - ~の出現
- end up as - 最終的に~になる
大問6
大問6:解答
問題 | 解答 |
---|---|
43 | 2 |
44 | 4 |
45 | 1 |
46 | 4 |
大問7:ヒーロー型リーダーはもう古い

- 題名:5つの目的志向型リーダーシップの原則
5 Principles of Purposeful Leadership - 著者:ヒューバート・ジョリー / Hubert Joly (2022)
- 語数:160語程度
アメリカの家電量販店大手「ベストバイ」元CEOの記事から出題。日本で言えば、ヤマダ電機やビックカメラの元社長の記事的な感じです。
従来の「ヒーロー型リーダーシップ」はもはや時代遅れであり、現代の複雑なビジネス環境には「目的志向型リーダーシップ」が必要だと説いています。
ちなみに、目的志向型リーダーシップとは、自己の利益ではなく、周囲の人々や社会全体に貢献することを重視するリーダーシップです。
2023年の環境情報大問3も企業精神の話であり、親和性が高いです。
>>>慶應SFC環境情報2023年英語:解答解説と英文要約 / スタサプ、スタバ、イケてる会社にある魂
大問7:解答
問題 | 解答 |
---|---|
a | supposed |
b | making |
c | revered |
d | avoiding |
e | saves |
f | utilizing |
大問7:全文和訳
大意としては以下の通りです。
Growing up, I always supposed successful leaders could figure out all the answers on their own. Being smart-and making sure everyone knew it-seemed to be their most striking attribute. The best schools were assumed to lead to the best jobs, which produced the best leaders. Early in my career, the masses not only revered but even worshiped prominent business leaders for their intellect, strategic sense, and hard-charging style.~~~
子供の頃は、成功するリーダーというのは、あらゆる問題の答えを自分ひとりで見つけ出すものだと思っていました。そして、賢いこと、さらにその賢さを周りに知らしめることが、リーダーの最も重要な資質であるかのように見えました。一流の学校を出て、一流の仕事に就くことが、一流のリーダーへの道だと考えられていたのです。
私の社会人生活が始まった頃は、傑出したビジネスリーダーたちは、その知性、戦略眼、そして強引なまでの行動力によって、人々から尊敬され、崇拝さえされていました。彼らは、誰も気づかないリスクを回避し、会社を危機から救う天才だと考えられていました。しかし、このような、すべてを知り、一人で会社を救うヒーローのような、権力や名声、お金に突き動かされるようなリーダー像は、もはや現代にはそぐわないのです。
当然のことながら、現代の人々は、これまでとは異なるタイプのリーダーを求めています。それぞれの会社が独自のリーダーシップの形を必要としていますが、私たちが会社を立て直すために作り上げ、現在戦略的に活用している理念をお伝えしましょう。
語彙
- suppose: 思う、仮定する
- attribute: 特性、属性
- prominent: 著名な、顕著な
- revere: 尊敬する、崇拝する
- intellect: 知性、知力
- strategic: 戦略的な
- hard-charging: 強引な、精力的な
- infallible: 絶対に正しい、間違いのない
- utilize: 利用する、活用する
大問8:実用マクロ経済学ガイド

- 題名:実用マクロ経済学ガイド
A Practical Guide to Macroeconomics - 著者:ジェレミー・B・ラッド / Jeremy B. Rudd (2024)
- 語数:200語程度
アメリカの経済学者の著書から出題。確認中ですが、おそらく「A Practical Guide to Macroeconomics(実用マクロ経済学ガイド)」が出典です。
学術研究に使用される経済指標と、政策立案者が使用する指標には大きな隔たり、この理論と実践のこの乖離は政策立案と経済学の専門職にとって問題であると主張し、学術研究を政策に関連付けるために必要な要素を説いています。
大問8:解答
問題 | 解答 |
---|---|
a | attention |
b | expansions |
c | announcement |
d | consumption |
e | definition |
大問8:解説
(a) Measures of the level of real economic activity have two primary characteristics. Over time they trend upward, but on occasion they swing noticeably, declining before eventually recovering and then continuing more or less along an upward march. These fluctuations are called business cycles, and they have occupied the time and ( attention ) of economists since the early nineteenth century.
「occupy one's attention」で「~の注意を引く」「~を占める」という意味になります。ここでは「これらの変動は景気循環と呼ばれ、19世紀初頭から経済学者の時間と注意を占めてきた」という意味になります。
(b) In the United States, the identification of its recurring business cycle peaks and valleys--that is, its many ( expansions ) and recessions--is handled by the National Bureau of Economic Research (NBER), where a sub-committee studies monthly indicators of real activity in order to identify turning points in the series.
「expansion」は「拡大」「拡張」という意味で、ここでは「景気循環の頂点と谷、つまり多くの拡大と後退の特定は、全米経済研究所(NBER)によって処理される」という意味になります。「many」と複数形で呼ばれていることから、複数形の「expansions」が適切です。
(c) Because this sub-committee waits until such turning points are clearly discernible, the public ( announcement ) of these dates typically comes well after a turning point is reached.
「announcement」は「発表」「告知」という意味で、ここでは「この小委員会は、そのような転換点が明確に識別できるようになるまで待つため、これらの日付の公表は通常、転換点に達してからかなり後になる」という意味になります。
(d) The indicators currently used by the NBER to identify the dates of business cycles include real personal ( consumption ), total industrial production, real wholesale and retail trade sales, and two measures of employment.
「consumption」は「消費」という意味で、ここでは「NBERが景気循環の日付を特定するために現在使用している指標には、実質個人消費、総工業生産、実質卸売および小売売上高、および2つの雇用指標が含まれる」という意味になります。
(e) The rationale for using multiple indicators reflects the NBER's ( definition ) of a recession, which is a significant downturn in real activity that is spread throughout the entire economy.
「definition」は「定義」という意味で、ここでは「複数の指標を使用する根拠は、NBERの景気後退の定義を反映しており、それは経済全体に広がる実質活動の重大な低迷である」という意味になります。
大問8:全文和訳
大意としては以下の通りです。
実体経済活動の水準を示す指標には、主に2つの特徴があります。1つは、長期的に見ると上昇傾向にあること、そしてもう1つは、時折目立った変動を見せ、下降した後、最終的には回復し、再び上昇を続けることです。こうした変動は景気循環と呼ばれ、19世紀初頭から経済学者たちの時間と関心を惹きつけてきました。
アメリカでは、景気循環の繰り返し発生する山と谷、つまり景気の拡大と後退を特定する作業は、全米経済研究所(NBER)が担っています。NBERの委員会は、毎月の実体経済活動の指標を分析し、景気循環の転換点を特定しています。しかし、委員会は転換点が明確に認識できるようになるまで待つため、転換点に達してから公表されるまでに時間がかかります。
NBERが景気循環の日付を特定するために使用している指標には、実質個人消費、工業生産、卸売・小売売上高、そして2つの雇用指標が含まれます。複数の指標を使用する理由は、NBERの景気後退の定義、つまり経済全体に広がる実体経済活動の著しい落ち込みを反映しているためです。
語彙
- measures: 指標、対策
- characteristics: 特徴
- trend: 傾向
- occasion: 場合、機会
- fluctuations: 変動
- occupied: 占有された
- recurring: 繰り返し発生する
- valleys: 谷
- National Bureau of Economic Research (NBER): 全米経済研究所
- sub-committee: 小委員会
- indicators: 指標
- discernible: 識別可能な
- rationale: 根拠
- recession: 景気後退
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