慶應商学部2024年英語:解答速報と一部解説

2024年2月14日に行われた、慶應義塾大学商学部一般選抜の英語入試問題の解答速報と一部解説を紹介しています。

あくまで速報ですので、間違い等に気がつかれた方は、ご一報ください。

大問1:責任のあるビジネス / 価値観主導型リーダーシップの世界史

  • 題名:A Higher Degree of Responsibility - On the history and potential of values-driven enterprises / より高い責任 - 価値観主導型企業の歴史と可能性について
  • 著者: Geoffrey Jones / ジェフリー・G・ジョーンズ
  • 単語数:850字程度

下記の通り、出題英文は原文を大幅に改変したもので、原文よりかなり読みやすくなっています。

【問題文冒頭】

On june 4, 1927, a crowd of 4,000 gathered for a ceremony to open the new Harvard Business School campus. This was the “roaring twenties,” a prosperous time for the United States.

【原文冒頭】

ON JUNE 4, 1927, a crowd of 4,000 gathered for a large ceremony to inaugurate the new Harvard Business School (HBS) campus, set apart from the historical Harvard campus in Cambridge across the Charles River in Boston. This was the “roaring twenties,” a prosperous time for the United States,

出典は、ハーバード・ビジネス・スクール経営史部門長ジェフリー・G・ジョーンズ氏の記事から出題。

内容を乱暴に要約すると「企業は自身の利益だけではなくて、ステークホルダー(利害関係者)関係者の利益も追求して、社会的責任を果たそうね」って話です。

著者は意外に日本にも縁のある方で、学習院大学や立命館大学の客員教授も務めています。

A Higher Degree of Responsibility | Harvard Magazine

On the history and potential of values-driven enterprises

今回のテーマをまとめた本もあり、タイトルは"Deeply Responsible Business: A Global History of Values-Driven Leadership"で「責任のあるビジネス:価値観主導型リーダーシップの世界史」ぐらいの意味です。

SFC環境情報学部2023年英語の大問3も似たテーマを扱っており、複数学部に渡る近時の過去問演習の意味を感じさせてくれる英文でした。

▶️環境情報学部 2023年 英語:解答解説と各問要約 / スタサプ、スタバ、イケてる会社にある魂

大問1:解答(確定)

問題解答
13
21
32
44
52
問題解答
64
71
81
94
103

大問1:各段落要約

  • 1927年のハーバード・ビジネス・スクール開校式にて、当時のドンハム学部長がビジネスリーダーたちへ社会的責任を求めるスピーチを行った。
  • ドンハム学部長のが求めていたのは、寄付金を増やすことではなく、責任あるリーダーシップのギャップを埋めることで「文明」を救うことであった。
  • ビジネスは数千年もの昔から存在しており、利益を生み出す以上の社会的貢献をビジネスリーダーに求める動きも同様に古くからある。逆に言えば、貪欲な商人や金融家も、常に存在してきた。
  • アダム・スミスは「国富論」の中で、自己利益を追求と自由市場を支持していた。しかし一方で、"異常な利益"を求める貪欲な投資家に対しては法的規制を促していた。
  • 21世紀になると、企業の社会的責任に対する要求は、アメリカの大企業の経営者の中でも論じられるようになった。
  • 企業のスキャンダルを見ると、これらの呼びかけが適切に対応されているかは疑問が残る。しかし、一方で社会問題に向き合う若い起業家も生まれている。
  • 歴史に目を向けると、社会貢献を目指した企業が必ずしも成功してきたわけではない。しかし、社会が大きな課題に直面している今、高い責任感は理想主義的な空想ではなく、未来への必須の道筋である。
ドンハム学部長:PHOTOGRAPH COURTESY OF HBS ARCHIVES PHOTOGRAPH COLLECTION: FACULTY AND STAFF, BAKER LIBRARY, HARVARD BUSINESS SCHOOL (OLVWORK374328)

大問1:ざっくり全訳

  • 1927年6月4日、4,000人もの人々がハーバード・ビジネス・スクールの新キャンパス開校式に集まりました。これは「狂乱の20年代」と呼ばれる、アメリカにとって繁栄した時代でした。過去5年間、ニューヨーク証券取引所は驚くべき上昇を経験しており、富の集中は2000年代になるまで再び見られない水準に近づいていました。しかし、ウォレス・B・ドンハム学部長が行った短いスピーチは、お祝いというよりも警告の色が強かったです。科学の進歩は「幸福のための新たな可能性」を開いたと彼は述べましたが、それは「より高い責任感」なしには確保できないものでした。ビジネスリーダーたちは「社会意識」を発達させる必要があり、それに伴い「鋭い知性と広い視野」が求められます。さらに彼はこうも述べました。「もしもビジネスリーダーたちが、コミュニティ内の他のグループに対する責任感を持って、その力を適切に行使することを学ばなければ、我々の文明は衰退期の一つに向かうことになるでしょう。」
  • ドンハム学部長は、恵まれない人々への慈善活動に寄付金を増やすよう求めたわけではありませんでした。むしろ、彼が指摘した責任あるリーダーシップのギャップを埋めることで「文明」を救うように求めたのでした。学部長の重大な脅威に対する警告は、活況を呈していた1920年代においてはあまり注目されませんでしたが、彼の言葉は予言的でした。1929年末、ニューヨーク証券取引所の暴落は、アメリカだけでなく世界中で大規模な経済不況を引き起こし、その後の10年間は深刻な経済的・政治的影響を受けることになりました。
  • ドンハムは、利益を生み出す以上の社会的貢献をビジネスリーダーに求めた最初の人でも最後の人でもありませんでした。何らかの形のビジネスは数千年もの昔から存在しており、企業倫理や責任に関する疑問も同様に古くからあります。商人や金融家の貪欲さは、どの社会でも常に懸念されてきました。例えば、18世紀のイギリスで近代産業が登場した頃には、息を呑むほどの不正行為や道徳的失敗、そして派手な金融詐欺の事例がありました。欺瞞や裏切りは日常茶飯事でしたが、同時に社会意識を高めようという動きもまた存在したのです。
  • スコットランドの社会哲学者アダム・スミスは、金銭欲にまみれた慣行の破壊的な側面に対する懸念を退けたと考えられています。1776年に出版された『国富論』の中で、彼は、ビジネスパーソンが自分自身の利益を追求する場合、意図的に社会貢献しようとするよりも社会に貢献できることが多いと示唆しました。したがってスミスは、多くの個人にとっての自由市場を支持していましたが、"異常な利益"を求める貪欲な投資家に対してはそうではありませんでした。彼らの活動を抑制するため、彼は金利の法的規制を支持し、また著しい不平等に対する軽蔑の念も明らかにしました。「大部分の国民が貧しく惨めな社会は、決して繁栄したり幸福になったりすることはできない」と彼は述べています。
  • 21世紀になると、企業の社会的責任に対する要求は、迫りくる環境危機、社会的不平等、リーマンショック後の民主主義の危機などの文脈で頻繁に論じられるようになりました。世界最大の資産運用会社ブラックロックの最高経営責任者であるラリー・フィンク氏は、2018年のCEO宛ての年次報告書で、「企業は株主、従業員、顧客、そして事業を営むコミュニティなど、すべての利害関係者の利益を図るべきだ」と宣言しました。同様に、プライベート・エクイティ投資会社リープフロッグ・インベストメンツの会長ドミニク・バートン氏は、四半期報告書だけに執着し、他の重要な目的を見失っている企業の短期思考を批判しています。2019年には、アメリカの大企業の経営者団体であるビジネス・ラウンドテーブルの最高経営責任者181名が、"顧客、従業員、サプライヤー、地域社会、株主などすべての利害関係者の利益のために" 企業を運営することを約束する声明に署名しました。
  • これらの企業責任強化の呼びかけが、ドンハムの訴え以上に真摯に受け止められるかどうか疑問が残ります。現代のグローバルビジネスは利益追求に明け暮れ、政府や法制度を企業利益に奉仕するように歪曲させています。21世紀初めの数十年は、アメリカをはじめとする多くの国で、驚くべき一連の企業スキャンダルが起き、倫理的逸脱が繰り返されたという明白な証拠が数多くあります。しかし、オルタナティブなムーブメントの一部として、多くの若い起業家が環境問題や社会的不正義に取り組むことを約束しており、自分たちのビジネスモデルの中心に目的と社会的責任を置いています。
  • 民間企業の歴史には、様々な時代や状況で活躍した、高度な責任感を持つ経営者の実例が数多く存在します。しかし、これらは資本主義のような複雑なシステムを根本的に変革するための公式ではありません。むしろ、個々の努力がどのように責任感を高めようとして成功または失敗したのか、その理由を提示することで役立ちます。高度な責任感を持つ経営者も、一般の人間と同じように人間的な欠点を持っています。中には刺激的な人物もいますが、社会貢献を目的とした試みの中には、成功しなかったり持続可能でなかったりするものもありました。善意が必ずしも成果に繋がるわけではないことも、このような企業の歴史が示しています。利益追求と社会貢献の両立は決して簡単ではなく、時には相反する目標になることもあります。しかし、経済、環境、そして社会が大きな課題に直面している今、高度な責任感は理想主義的な空想ではなく、むしろ未来への必須の道筋なのです。

慶應専門塾GOKOについて

大問2:UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)について誰もが知っておくべきこと

  • 題名:Universal Basic Income:What Everyone Needs to Know
  • 著者: Matt Zwolinski & Miranda Perry Fleischer

【問題文冒頭】

A lot of confusion about the concept of a Universal Basic Income (UBI) results from people talking about it as though it were a single, precisely defined social benefit policy. It's more helpful to think of the UBI as a family of proposals.

Universal Basic Income:What Everyone Needs to Know

ベーシックインカムについての議論が始まって久しいですが、新しい時代の社会保障として結論が出ていない側面もあります。

そんなベーシックインカムへの疑問について、法律と哲学の専門知識の著者が、あらゆる側面を概観する内容。

著者はサンディエゴ大学の哲学科マット・ツヴォリンスキー教授とミランダ・ペリー・フライシャー教授。

複雑な議論になりがちなテーマですが、簡潔でシンプルな回答に落とし込もうとする著者の意気込みが伺える内容でした。

UBI(ユニバーサル・ベーシック・インカム)自体は2021年の上智大学の英文に出るなど、今後も注目のキーワードです。

大問2:解答速報

問題解答
112
124
134
問題解答
144
152
164
171
183
194

大問3:2050年の世界

  • 題名:The World in 2050 - How to Think About the Future / 2050年の世界-未来をどう考えるか(*出典調査中 )
  • 著者: Hamish McRae / ハミシュ・マクレー(ヘイミシュ・マクレイ)

出典は調査中ですが、内容から察するに恐らく「The World in 2050」です。

書いたのはジャーナリストのハミシュ・マクレー氏。

氏は2022年のこの本まで、2000年以降、殆ど主要な著書がありません。そのため、消去法で「The World in 2050」が該当する本になります。

内容は未来予測系の類で、約30年後の未来を予測しています。

ハミシュ・マクレー氏のライフワークなのか、1996年にも2020年の予測を著書にまとめており、2020年には「その予想は当たっていたのか検証!」の企画が一部で盛り上がりました。

結果は、半分正解、半分ハズレ、ぐらいだった記憶です。

いずれにせよ、思いつきで適当な予測を立てるというより、現在のファクトから予測を立ててみようという姿勢の伺える著者の本でした。

大問3:解答速報

問題解答
204
214
223
232
問題解答
241
253
263
272
282
293

大問4

慶應では珍しい、短文の空所補充問題。

難易度は標準レベルでした。

大問4:解答速報

問題解答
302
311
324
332
問題解答
341
353
361

30:scarcelyとseldomの違いを問う設問かと思いきや、空欄直後に名詞が来るので形容詞と意味からlittleしか選べない問題。

31:draw on(利用する・参考にする)の意味を聞く問題。

32:代名詞が指す箇所を理解しているか試す問題。sculptor(スカルプター)は「彫刻家」

33:表面的にはanotherとdifferentの違いの問いだが、深読みするとanother・others・the other・the othersの違いを聞きたそうな問題。

34:仮定法の基本問題...と思わせて実は奥の深い問題

35:空所前の省略を補完しつつ正解する問題

36:"助動詞の過去形は過去を示すとは限らない"を問いたい設問

大問5

2023年7月のCNNのニュースが元ネタ。

政局のため、交通表記が国家を二分する論争になっている話。英文中に出てくる政治家も登場するので、元ネタの中にある動画も必見です。

How New Zealand's plan for bilingual road signs took an unexpected turn | Newshub

There has recently been public consultation on whether to include te reo Māori on 94 types of road signs.

以下の動画冒頭でも登場するニュースキャスターの口元に注目してください。

日本ではありえませんが、はっきりとしたタトゥーが入っています。これはマオリ族の伝統的なタトゥーで「モコ・カウアエ」と呼ばれるものです。

大問5:解答速報

語彙問題は慶應受験生なら標準レベルで、文脈問題は多少迷いつつも正解に辿り着けそうな難易度でした。

問題解答
371
381
391
402
411
422

38:マオリ族の1/4がニュージンランドの人口の5%に該当すると分かるか、論理問題。それがわかれば、5%×4×(38)=100%で答えがわかる。

39:語彙問題

40:語彙問題

41:文脈問題

42:文脈問題

大問6~8

大問6:解答速報

問題解答
433
442
453
461

大問7:解答速報

問題解答
arisen
bcontinue
cunderfed
dfacing
eadding
fdriving

大問8:解答速報

問題解答
adetection
bselection
cattack
dgrowth
econfidence

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