慶應法学部:2025年スタートの日本史論述対策と史料読解のポイント
2025年から導入された慶應法学部の日本史論述問題(2題)について、出題意図と解法のポイントを整理します。
2025年大問3:空海と真言宗
200字論述。設問が長々と書いてありますが、最も大切なのは以下のマーカー部分です。
設問
史料AからCは、ある人物 (X) によって書かれた文献で、史料Aは詩、碑文、上表、啓、書簡、願文などが収められている漢詩文集、史料Bは同時代に活躍した僧侶に対する返書、史料Cは仏・儒・道を比較した物語形式の書である。また、史料DとEは、(X) の生涯と事績の一部が記されたものである。
史料AからEを読み、(X) が開いた宗教の名称とその特徴を簡潔に述べた上で、この宗教と朝廷の関係について、200字以内で説明しなさい。
それでは、解法を見ていきましょう。
史料と解法
大問3の現実的な解法は
- 史料から(X)が空海と特定する
- 空海と真言宗に関して知っていることをできる限り答案に入れる
です。
空海と真言宗については、用語集に書いてあることを記述するイメージです。
以下に史料の解説をしますが、史料Eで空海を特定するのが現実的です。
史料B:「風信雲書」から、空海が最澄に送った書簡集「風信帖」を読み取る。
史料C:仏教・儒教・道教を比較した書とあるので、これは空海の著作「三教指帰」と判断する。
史料D:「大日経」(大毗盧遮那経)を求め、入唐して長安青龍寺の恵果から密教を学んだ経歴 。
史料E:嵯峨天皇(弘仁の帝皇)から東寺(教王護国寺)を賜り、密教の(根本)道場とした。
ちないに、東寺は現存しており、京都駅の近くにあります。
真言宗の特徴と朝廷との関係
解答に(少なくとも)盛り込むべき内容やキーワードは以下マーカー部分です。
真言宗の特徴
大日如来を本尊とし、「三密」の修行による即身成仏や、呪術的な加持祈祷による現世利益を説く。もう少し言葉を足すと、厳しい修行の果てに悟るのではなく、神秘的な儀礼(加持祈祷)によって、この身のまま仏になり(即身成仏)、現世での災厄を払い幸福を得る(現世利益)。
朝廷との関係
密教が単なる宗教活動に留まらず、鎮護国家(国家の安泰を祈る)の役割を担い、天皇や貴族から篤い保護を受けた。特に、嵯峨天皇からは平安京の東寺を賜った。

大問3:解答例
名称は真言宗。空海が唐で恵果から密教を学び、帰国後に創始した。大日如来を本尊とし、加持祈祷や灌頂などの秘密の儀式を通じて現世利益や即身成仏を追求する点が特徴である。朝廷との関係では、空海が嵯峨天皇と厚い信頼関係を築き、国家鎮護の役割を担った。平安京の東寺を根本道場として下賜されるなど、真言宗は国家的な仏教儀式の中心として朝廷と貴族らの保護を受け、最澄の興した天台宗とともに平安仏教の主流となった。(199文字)
2025年大問4:享保改革と金融政策
設問
享保期において、米および諸色 (米以外の諸商品)の物価はどのような状況が続いていたか、また、その状況により旗本・御家人が経済的に困窮するのはなぜか。
そして、幕府は元文金銀の発行によって、旗本・御家人の経済状況を改善するために、どのようなしくみで物価調整することをねらったか。
次の (1)・(2) の文章と史料を読んだ上で、280字以内で説明しなさい。
大問4は大問3は知識でゴリ押せたかもしれませんが、大問4は背景知識や因果関係(今回は江戸の経済システム)を問う問題でした。
歴史の流れが重要なので、いわゆる論述対策をしていないと厳しかったかもしれません。
先に背景を解説します。
享保の改革と米価安
徳川吉宗は享保の改革で新田開発や農業技術の向上を推進しました。
その結果、米は増産され、米価は下落(米安)します。
一方、都市人口の増加と消費需要の拡大により、米以外の生活必需品(諸色)は価格が高騰しました。
つまり、享保期は「米安諸色高」の状況が続いたのです。
一般常識として押さえてほしいですが、供給が増えれば価格は下がり、需要が増えたら価格が下がります。
今回は、米の供給が増えたので米価は下がり、諸色の需要が増えたので価格が上がりました。
旗本・御家人が困窮した理由
旗本・御家人は、幕府からの俸禄を米(石高)で受け取り、それを売却して現金化し生活していました。
しかし、
- 売る米の価格は安い
- 購入する諸色の価格は高い
という状況下で、実質収入は減少し、支出は増加しました。
このため、旗本・御家人は深刻な経済的困窮に陥りました。
元文の貨幣改鋳とリフレ政策
この状況を改善するため、幕府は1736年(元文元年)に元文の貨幣改鋳を実施します。
一般的には、史料にも出てくる町奉行の大岡忠相らが将軍吉宗を説得したとされています。
旧貨幣より金銀の含有量(品位)を下げた貨幣を大量に流通させ、意図的にインフレ(貨幣価値の低下)を起こす政策でした。
特に、
- 銀の品位を大きく下げて金高銀安を誘導
- 銀建てで取引される大坂米市場の米価を引き上げ
することで、米価の回復と武士の収入増を狙いました。
これは現代で言うリフレ政策に近い発想です。
以上の流れを盛り込んで解答を作成します。
大問4:解答例
享保期は、新田開発や農業技術の発達によって米の生産が増え、米価が下落した。一方、都市需要の拡大で諸色は高騰する米安諸色高が続いた。俸禄を米で受け取り、貨幣に換えて生活物資を購入する旗本・御家人は、収入減と支出増の二重苦で困窮した 。これに対し幕府は、元文金銀の品位を下げて通貨流通量を増大させ、貨幣価値を下げて米価の引き上げを図った 。特に銀の品位を金より大幅に下げて金高銀安を誘導することで、銀建てで取引される大坂の米価を相対的に吊り上げた。これにより、金建ての江戸の物価高騰を抑えつつ、米価との均衡を回復させて武士の経済状況改善をねらった 。(270字)
慶應法学部:論述対策
200~300字の論述となりますが、過去問も少ないため、参考書+類似過去問で対策することになります。
参考書は論述対策なら概ねどれでもいいですが、敢えて一冊紹介するなら「“考える”日本史論述」です。
単なる暗記ではなく、歴史背景・因果関係・解答プロセスを意識して学習してください。
余裕があれば(他教科もあるので本当にあれば)一橋の過去問もオススメです。
400字程度の論述で、論述難易度は国内最高峰です。高地トレーニングとしてオススメできます。
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