慶應法学部 2021年 /シェイクスピアとヒップホップ

大問4:シェイクスピアとヒップホップ

大問4インタビュー問題の和訳が赤本に掲載されていないとのことなので、和訳例を紹介いたします。

インタビュー問題ですが、設問順に話が展開していきます。

元ネタ解説

フォルガー・シェイクスピア図書館のポッドキャストシリーズ「Shakespeare Unlimited」のエピソードの一つです。

イギリスの詩人、ラッパー、教育者であるAkala(アカラ)ことKingslee James Daley(キングスリー・ジェームズ・デイリー)へのインタビューを特集しており、彼がヒップホップを通してシェイクスピアの詩の relevancy(関連性)を伝えている活動について語られています。

このポッドキャストでは、Akalaが自身の活動「ヒップホップ・シェイクスピア・カンパニー」を通じて、2009年以来、コミュニティセンター、刑務所、移民や恵まれない地域にある学校などで、ヒップホップの手法を用いてシェイクスピアの詩を広めている様子が紹介されています。

このインタビューでは、Barbara Bogaev(バーバラ・ボガエフ)がAkalaに話を聞いています。

Akalaさんのご尊顔はこちら

この動画は本年の設問と関係ありませんが、「黒人イギリス人の歴史」など、社会問題等を積極的に発信しています。

英文全文和訳

(29) OK. Honestly, who's the best hip-hop artist of all time?

「正直なところ、史上最高のヒップホップアーティストは誰だと思う?」

5. Shakespeare for sure.

「それは間違いなくシェイクスピアだよ。」

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(30) Give me a break. He's an Elizabethan poet and playwright. He has nothing to do with hip-hop.

「冗談でしょ? 彼はエリザベス朝時代の詩人で劇作家よ。ヒップホップとは何の関係もありません。」

7. Everybody says that at first. I'll give you a line and you guess if it's from hip-hop or from Shakespeare. Ready? "I am reckless what I do to spite the world."

「みんな最初はそう言うんだ。じゃあ、一節引用するからから、それがヒップホップのものかシェイクスピアのものか当ててみて。準備はいい?『世間に仕返しをするためなら何でもする(直訳:世の中を恨むために、私は無謀な行動をとる)。』」

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(31) It's definitely hip-hop: very aggressive.

「絶対ヒップホップ、すごく攻撃的だし。」

1.Well, it's from Macbeth, one of the most famous Shakespearean tragedies.

「実は、これは『マクベス』の一節だよ。シェイクスピアの有名な悲劇のひとつなんだ。」

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(32) Is it? That sounds so modern.

「そうなの? すごく現代的に聞こえるけど。」

It does, doesn't it? Then how about this? "Maybe it's hatred I spew, maybe it's food for the spirit."

「だよね、そうでしょ? じゃあ、次はどう?『もしかしたら、俺が吐き出すのは憎しみかもしれないし、もしかしたら、それは精神のための食料かもしれない』」

spew:吐き出す

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(33) This time, I'll say it should be Shakespeare. Sounds old.

「今回はシェイクスピアかな。なんか古っぽいし。」

Ha-ha! It's the rapper Eminem.

「ハハ! それはラッパーのエミネムの台詞だよ。」

編集注:元ネタは「Renegade」英単語の意味は「反逆者」

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(34) So I got it wrong again.

「また間違えたわ。」

9. Don't worry. You're not the only one. You know, the English language has not changed as much as people believe. Actually we still use 95% of the words found in Shakespeare's famous works.

「気にしないで。君だけじゃないから。実は、英語って人々が思っているほど変わっていないんだよ。シェイクスピアの有名な作品に出てくる単語のうち、95%は今でも使われているんだ。」

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(35) I didn't know that. I know that even now we use many phrases taken from Shakespeare's works such as "green-eyed monster" for jealousy. Still, I don't see how the similarity of language makes Shakespeare the greatest hip-hop artist. Shakespeare's plays don't sound like hip-hop at all.

「それは知らなかった。確かに、今でも「嫉妬」を表す「green-eyed monster(緑目の怪物)」とか、シェイクスピアの作品から取られたフレーズがたくさん使われているのは知ってたけど、言葉が似ているからといって、シェイクスピアが最高のヒップホップアーティストになるわけじゃないと思う。シェイクスピアの作品は全然ヒップホップっぽくないわ。」

2. You think so? Read his poems and plays aloud, and you can understand what I mean. As a rapper myself, I have been experimenting with many forms of rhyme and rhythm. Throughout his entire career, Shakespeare was doing the same.

「そう思う? 彼の詩や劇を声に出して読んでみて。そうすれば僕が何を言いたいか分かると思う。僕自身ラッパーとして、いろんな種類の韻やリズムを試してきたけど、シェイクスピアも彼の生涯を通して同じことをやっていたんだ。」

編集注:"green-eyed monster"は慶應理工2024年大問3でも出題

慶應理工 2024年 大問3より

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(36) I know the rhythm he mostly used was the one that goes "dee-DUM, dee-DUM, dee-DUM, dee-DUM, dee-DUM"; five "dee-DUMS" or beats in one line.

「彼がよく使ったリズムは、“ターター、ターター、ターター、ターター、ターター”っていう感じの、1行に5つのビートが入るやつでしょ。」

8.That's right. And the beat is the rhythm of the human heart as well as of hip-hop. Shakespeare's rhythm does not only resonate with hip-hop, but also with our lives. That's why we can make Shakespeare's poems into perfect hip-hop.

「その通り。そしてそのビートは、人間の心臓の鼓動のリズムでもあるし、ヒップホップのリズムでもあるんだ。シェイクスピアのリズムは、ヒップホップだけじゃなく、僕たちの人生にも響いてくる。だからこそ、シェイクスピアの詩を完璧なヒップホップに仕上げることができるんだよ。」

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(37) Now I understand why you think he is the best hip-hop artist. It's easy to see how similar Shakespeare and hip-hop are once you get rid of your fixed ideas about them. But how about the themes or contents?

「これで君がなぜ彼を最高のヒップホップアーティストだと思うのか分かったわ。シェイクスピアとヒップホップがこんなに似ているなんて、固定観念を捨ててみれば簡単に分かるね。でも、テーマや内容についてはどうなの?」

0. Good point! Shakespeare dealt with social problems in his time as hip-hop artists do at present. Any good poet of any era employs similar themes and similar techniques to get across definite messages. Both of them are very political. Both of them are very powerful. That's why we hip-hop artists can learn so much from our great predecessor of 400 years ago.

「いい質問だね! シェイクスピアは当時の社会問題を扱っていたし、それは今のヒップホップアーティストも同じなんだ。どの時代の優れた詩人も、明確なメッセージを伝えるために似たテーマや技法を使っている。どちらもとても政治的だし、どちらもものすごく力強い。それが、僕たちヒップホップアーティストが400年前の偉大な先駆者から多くを学べる理由なんだ。」

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(38) We should call him Big Will Shake, maybe? And we listeners should stop putting things in boxes: Shakespeare for academics and hip-hop for street gangs.

「彼を“ビッグ・ウィル・シェイク”とでも呼ぶべきかな? それに私たち聴衆も、『シェイクスピアは学者向け』『ヒップホップはストリートギャング向け』なんていう固定観念を捨てるべきね。」

3. Shakespeare was for the ordinary people. Through his plays and poems, people learnt about the politics of their own times, and about their human emotions. Hip-hop can play the same role in conveying knowledge and communicating human feeling today.

「シェイクスピアは普通の人々のためのものだったんだ。彼の劇や詩を通して、人々は自分たちの時代の政治や人間の感情について学んだんだよ。ヒップホップも、知識を伝えたり人間の感情を伝えるという点では、今同じ役割を果たすことができるんだ。」

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GOKO編集室
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