慶應商学部2023年英語:全問解答と内容解説 / 移民受け入れ成功例としてのアメリカ
慶應義塾大学商学部の2023年入試の英語について、全ての解答と一部内容の解説をしていきます。
商学部2023合格最低点
商学部2023の合格最低点は
- A方式(数学選択)で237点、得点率59.2% 。
- B方式(地歴選択)で278点、得点率69.5%。
得点率に約10%の開きがありますが、問題の難易度だけではなく、募集人数が4倍違う(480人:120人)のも要因としてありそうです。
大問1:移民を受け入れ真の多民族民主主義を実現するアメリカ
- 題名:How Civil Wars Start: And How to Stop Them / 内戦はいかに始まるか、そして、どう止めるか
- 著者: Barbara F. Walter / バーバラ・F・ウォルター
- 文字数:900字程度
政治学者のバーバラ・F・ウォルター氏の著者がおそらく出典。
日本でも、2023年3月発売予定。
出題された箇所は、白人によって白人のために作られたアメリカ合衆国の中で、非白人が政治の中心になりつつある現状について説いています。
【問題文冒頭】
The Founding Fathers, who wrote the U.S. Constitution in 1787, could have created any political system they wanted. They could have appointed George Washington king, established an aristocracy, divided America's rich land, and made themselves lords. However, they were determined to create a democracy.
大問1:各パラグラフ要約
各パラグラフをざっくりまとめると以下の通りです。
- アメリカの建国の父たちは、その困難にもかかわらず、民主主義を導入した。
- ただ、その建国者たちは奴隷を所有し、富を持たない白人や女性が政治的な権力を持つとは思っていなかった。
- そんなアメリカは、真の意味での多民族民主主義を実行し、移民を受け入れながら繁栄する国づくりに挑戦をしている。移民を受け入れない国は、ゆっくりと滅びるだろう。
- 近い将来、アメリカをはじめ、カナダやニュージーランドといった英語圏では、白人は多数派ではなくなるだろう。極右政党は、白人支配の終焉を声高に叫び不安を煽っている。
- しかし、それは杞憂である。実際に、多民族政党が政権を握ったアメリカの多くの都市では、非白人の力が強まったからといって白人の力が弱まっていない。そのことを、多くの白人が実感している。
- 1998年に白人が少数派になってから、200%の経済成長を遂げたカリフォルニア州は良い成功例であるが、カリフォルニアでも最初の移行期は激しい抵抗があった。
- カリフォルニアには多くの課題があるが、それでも移民と多様性受け入れに関する先進的な政策モデルとなっており、未来の可能性を示している。
大問1:解答
問題 | 解答 |
---|---|
1 | 2 |
2 | 2 |
3 | 1 |
4 | 2 |
5 | 1 |
6 | 1 |
7 | 2 |
8 | 3 |
9 | 1 |
10 | 1 |
大問2:技術革新によってフードロスを減らす方法
大問2は2つの英文をミックスさせたものです。そのため出典も2つあります。
厳密ではありませんが、1~3パラグラフはこちら
- 題名:The Difference between Food Loss vs Food Waste and How to Avoid It
- 著者:Waste4Change
- 出典:https://waste4change.com/blog/the-difference-between-food-loss-vs-food-waste-and-how-to-avoid-it/
パラグラフ4以降はこちら
- 題名:Three smart ways innovation is helping reduce food loss and waste
- 著者:国連食糧農業機関 / Food and Agriculture Organization
- 出典:https://www.fao.org/fao-stories/article/en/c/1309567/
合わせて900字程度の英文でした。
【問題文冒頭】
Food loss and waste is a worldwide problem-one that has been worsened by COVID-19. The restrictions in movement and quarantine regulations caused by the COVID-19 pandemic have increased the levels of food loss and waste globally.
大問2:各パラグラフ要約
各パラグラフをざっくりまとめると以下の通りです。
- COVID-19の大流行による移動制限や検疫規制によって、フードロスと食品廃棄が世界レベルで増えている。
- 食品ロスは「小売業者、食品サービス業者、消費者を除くフードチェーンにおける食品供給者の決定や行動に起因する食品の量または質の低下」と定義されている。
- 食品廃棄物は、もともと人間が消費するために生産されたが、その後廃棄された、あるいは人間が消費しなかった食品のことである。
- 食料の生産、流通、消費の方法を改善するための新しく革新的な技術が日々開発されており、その例を紹介します。
- パンデミックの間、食品のロスや廃棄を解決するアプリの人気が高まりました。Too Good to Goは、1日の終わりに余った食品を割引価格で販売するプラットフォームを提供するアプリの一つです。
- 3Dプリント技術を活用して作られてた多目的木箱にとって、農作物を別の箱に移す必要を減らし、食品廃棄を大幅に減らすことができる。
- 革新的であることは、新しい技術ばかりではなく、伝統的な技術に対しても新しい方法を導入することで、フードロスを削減しています。
- FAOは第1回「食品ロスと廃棄に関する国際啓発デー」で、個人、企業、政府に対して行動を起こすよう呼びかけました。
- 世界には未だ飢餓に苦しむ多くの人がおり、ロスと廃棄を減らすことは、食品とそれに費やされた天然資源、労力、投資を尊重することを意味します。
大問2:全訳
参考までですが、全訳はこちら。
- 食品ロスと廃棄は世界的な問題であり、COVID-19によってさらに悪化している。COVID-19の大流行による移動制限や検疫規制は、世界的に食品ロスと廃棄のレベルを高めています。
- 国連食糧農業機関(FAO UN)は、『The State of Food Agriculture 2019』において、食品ロスとは、小売業者、食品サービス業者、消費者を除くチェーンにおける食品供給者の決定や行為によって生じる食品の量や質の減少を指すと述べています。食品ロスは通常、インフラの制限、気候や環境要因、また品質、美観、安全基準によって引き起こされる。食品ロスは、フードチェーンの生産段階、ポストハーベスト段階、加工段階において最も多く発生する。
- 一方、食品廃棄物はフードチェーンの末端で発生する。食品廃棄物とは、本来人間が消費するために生産されたにもかかわらず、廃棄されたり、人間が消費しなかったりした食品を指します。これには、廃棄される前に腐敗した食品と、廃棄されるときにまだ食べることができた食品が含まれます。食品廃棄物は通常、小売店や消費者レベルで発生し、品質、美観、安全基準を考慮する消費者や企業による決定によって推進されています。
- パンデミックにより、多くの国で人々の食糧安全保障と栄養が危機にさらされ、小規模生産者の生活が損なわれている今、私たちは食糧システムを再評価することが求められているのです。ひとつだけはっきりしていることは、この危機的な状況において、食料の損失や浪費は許されないということです。幸いなことに、食料の生産、流通、消費の方法を改善するための新しく革新的な技術が日々開発されており、食料システムをより良いものに変えています。ここでは、その例をいくつかご紹介します。
- スマートフォンがますます普及し、アプリは世界の多くの人々にリーチするためのシンプルで簡単な方法です。パンデミックの間、食品のロスや廃棄を解決するアプリの人気が高まりました。また、いくつかの国では、生鮮食品の物流、輸送、電子商取引を容易にするためのアプリの開発が始まりました。Too Good to Goは、多くの都市のショップやレストランに、1日の終わりに余った食品を割引価格で販売するプラットフォームを提供するアプリの一つです。
- FAOは、ポストハーベスト処理と食品加工の効率を高めるために、数多くの革新的な技術に取り組んできました。これらの新しいソリューションの1つは、3Dプリント技術を活用したものです。 FAOは、革新的な機器(FAO自身が国のプロジェクトで使用している機器)の3Dデザインをオンラインでオープンソースとして提供しており、ダウンロードして使用することができます。FAOの最も人気のあるダウンロードの1つは、農産物の輸送、取り扱い、保管、小売りのための多目的木箱で、農産物を1つの箱から別の箱に移す必要性を減らしています。この革新的なデザインは、基本的な木の素材を使用していますが、その結果、バリューチェーンに沿って廃棄される食品を大幅に減らすことができます。このデザインは、2年弱で13,000ダウンロードされ、スーダンやタイで広く使用されています。
- 革新的であることは、新しい技術ばかりではありません。単純な技術を新しい方法で使用することもできます。FAOのプロジェクトの多くは、伝統的な技術に挑戦し、新しい方法を導入することで、収穫段階での食品ロスを削減しています。例えば、多くのアジア諸国では、農産物の多くが輸送中に失われています。南アジアの3カ国におけるあるFAOのプロジェクトでは、果物や野菜の収穫後のロスは20~50%にのぼることがわかりました。この原因の多くは、農産物を保護できない包装にあります。バングラデシュでは、トマトは伝統的に大きな網袋で農場から市場まで運ばれています。そのため、トマトの多くは到着した時点で傷んでいます。この地域のFAOプロジェクトでは、代わりに大きな木箱を使うことを提案しました。これによりロスが大幅に減り、農家は生産物をより多く販売できるようになりました。FAOは、小規模農家のグループに木箱を提供し、輸送を含む食品取り扱いのベストプラクティスについて研修を行いました。農産物の品質と賞味期限の違いは非常に顕著で、スリランカでは現在、あるスーパーマーケットが農産物の品質を保証するために農家に木枠を提供しています。このようなシンプルで効果的な変化は、サプライチェーンにおけるハンドリングを劇的に改善し、地域の農家の収入と食料安全保障に大きな影響を与えることができます。また、消費者にとっては、食品の品質と保存性の向上に貢献することになります。
- COVID-19の期間中、農家も消費者も市場にアクセスできず、果物や野菜などの生鮮食品の多くが廃棄されました。 2020年9月29日は、第1回「食品ロスと廃棄に関する国際啓発デー」となり、FAOは個人、企業、政府に対して行動を起こすよう呼びかけました。この国際デーは、世界的なパンデミックの真っ只中にあり、現在の食糧システムのもろさや、食糧へのアクセスと入手の重要性を浮き彫りにする役割を果たしました。
- 地球上の多くの人々にとって、食べ物は当たり前のものです。しかし、慢性的に飢餓状態にある何百万人もの人々にとって、食料は保証されるものではありません。ロスと廃棄を減らすことは、食品とそれに費やされた天然資源、労力、投資を尊重することを意味します。食べ物の裏側を考えることで、私たちの食べ物が本当は何を意味し、どれほど貴重なものなのかが容易に見えてきます。
大問2:解答
問題 | 解答 |
---|---|
11 | 4 |
12 | 3 |
13 | 4 |
14 | 4 |
15 | 2 |
16 | 3 |
17 | 1 |
18 | 1 |
19 | 3 |
20 | 3 |
大問3:インフレの原因は何か?
- 出典:Debunking 4 Myths About Inflation 他
- 著者:ロバート・ライシュ / Robert Reich
- 文字数:950字程度
クリントン政権の労働長官、オバマ大統領のアドバイザー、ハーバード大学教授...、輝かしい経歴の経済学者、ロバート・ライシュ(ライヒ)氏の個人ブログから出題。
「みんなのための資本論」というタイトルで映画にもなった人です。
映画の予告編を見るだけでも、なんとなく主張が読み取れます。
本文の第1段落ではインフレに対して3つの主張をしていますが、元ネタは「4つの神話を暴く」という題で4つ目が続きます。
【問題文冒頭】
According to Robert Reich, Professor of Public Policy at University of California Berkeley and former U.S. Secretary of Labor, the truth about inflation is being covered up with countless myths. The following is a summary of his opinions from 2022.
First, inflation is not being driven by wage increases. Although wages have been rising, they have been rising more slowly than prices. Hourly wages grew by 5 percent in the past year - but prices rose by 8.6 percent. This means, when you adjust for inflation, workers essentially got a 3.6 percent pay cut over the previous year. Second, corporate profits are one of the main drivers of inflation.
真実その4として「インフレはバイデン大統領や民主党の政策の結果ではない。」と主張し、以下のようにまとめています。
物価上昇は賃金の上昇によってもたらされたものではない。パンデミック時の人々への連邦政府の援助によって引き起こされたのでもない。そして、民主党は非難される筋合いはない。インフレは、記録的な企業利益によって引き起こされている。
大問3:筆者の主張
ロバート・ライシュ(ライヒ)氏の主張をまとめると
米国のインフレは莫大な企業利益によってもたらされている、その対策のために、企業や富裕層へ厳しい政策を実施し、苦しむ国民へ富の再分配をしよう。
ということになります。
政府ができる経済政策は、突き詰めると、富をどこかから持ってきてどこかへ渡すことである。そのために法人税や所得税といった税が存在する。
普段から経済学などに触れていたら、主張は取りやすい英文でした。
大問3:パラグラフ要約
各パラグラフをざっくりまとめると以下の通りです。
- 第1に、インフレは賃金の上昇によってもたらされているわけではない。第2に、企業利益はインフレの主な要因の一つである。第3に、パンデミック時の政府による国民への支援は、経済を過熱させることはなかった。
- インフレの主な原因は、企業の記録的な利益である。企業はコスト増を消費者に転嫁し、コスト増以上の値上げをしているのである。
- 企業がなぜこのような事態に陥っている原因は、競争にさらされていないことに基づく。市場原理が働けば、企業は競合他社に顧客を奪われないように、価格を低く抑えるだろう。
- そんな企業が利益を何に使っているか。過去最高の自社株買いや余剰資金の貯蓄によって株価を押し上げ、富裕層はますます多くの報酬を得ている。
- アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、金利を上げ続けることによってインフレを抑制しようとしているが、問題の解決にはならない。では、本当の解決策は何だろうか?
- 1つは、独占禁止法の厳格な執行。もう一つは、物価高に苦しむ国民への直接の支援だ。
- 企業の自社株買いは再び禁止し、富裕層と企業に増税し、労働者には労働組合が必要である。
- 真の問題はインフレではなく、過去40年間における企業の力の増大と労働者の力の衰退である。この不均衡の拡大に対処しない限り、一般のアメリカ人は苦しむことになる。
大問3:解答
問題 | 解答 |
---|---|
21 | 1 |
22 | 4 |
23 | 3 |
24 | 2 |
25 | 1 |
26 | 1 |
27 | 4 |
28 | 4 |
29 | 1 |
30 | 3 |
お知らせ
大問4~8
大問4~8は解答のみ掲載します。
大問4:解答
問題 | 解答 |
---|---|
31 | 2 |
32 | 2 |
33 | 1 |
34 | 3 |
35 | 3 |
36 | 1 |
37 | 4 |
大問5:解答
問題 | 解答 |
---|---|
38 | 1 |
39 | 3 |
40 | 2 |
41 | 1 |
42 | 4 |
43 | 1 |
大問6:解答
問題 | 解答 |
---|---|
44 | 2 |
45 | 4 |
46 | 1 |
47 | 2 |
大問7:解答
問題 | 解答 |
---|---|
a | originated |
b | structured |
c | answering |
d | required |
e | exchange |
大問8:解答
問題 | 解答 |
---|---|
a | admission |
b | prevalence |
c | portion |
d | applicants |
e | harassment |
f | tolerance |
詳細な解説は赤本にも収録されていますので、他年度も含めてぜひ紙面もご活用ください。
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