慶應医学部2026英語大問2解答解説と全文和訳:労働時間が減り自由時間が増えてなぜいつも忙しいと感じるのか?

慶應医学部2026年英語の解説です。

出題英文の概要

  • 著者:Oliver Burkeman(オリバー・バークマン)
  • 掲載媒体:BBC Future(2016年9月2日)
  • 原題:Why you feel busy all the time when you're actually not
  • 語彙数:950語程度

オリバー・バークマンは、英紙「ガーディアン」の元コラムニストで、心理学・自己啓発・哲学の交差点に立つノンフィクション作家として知られています。

代表作「限りある時間の使い方」(2021年)は日本でも40万部を超えるベストセラーとなり、「人間に与えられた時間は有限であり、だからこそ本当に大切なことを選ぶべきだ」という逆説的な時間論を展開しています。

私自身も大好きな本で、続編の「不完全主義 限りある人生を上手に過ごす方法」(2025年)と併せて、何度も読み返しています。

本文はその思想の原型ともいえる記事で、BBC Futureに2016年に掲載されました。

「忙しい」という感覚が実態ではなく認知の歪みに起因するという仮説を、経済学・心理学・行動科学の知見を組み合わせながら論じています。

医師や研究者に求められる「データと直感の乖離を見抜く力」という慶應医学部の出題意図を汲み取りながら、読み返したい英文です。

Why you feel busy all the time (when you’re actually not)

Overwhelmed? It can seem like we’re busier than ever, but that’s not quite true, says Oliver Burkeman.




設問の解答と解説

問題解答 解説
問1D下線部(1)の訳は「最も追い詰められた人々は、自分の気持ちを尋ねられてさえいないかもしれない」。調査に参加を断る人が多い理由が「忙しすぎるから」である以上、最も過負荷な人ほど調査から漏れている可能性がある。つまり実態はアンケートが示す数字より深刻だという含意。Dの「仕事に追われていると感じる人の数は調査が示すよりさらに多い可能性がある」が正解となります。
問2D空欄ア前後の文脈を確認すると、「忙しくなったのはやることが増えたから」という一般的直感を受けて、直後に「労働の総量は増えていない」という反論が続きます。逆接が必要なので、DのBut you'd be wrong(しかし、それは間違いだ)が最も自然です。
Cも迷いますが、労働時間が減ったわけではないので、「反対・逆」は言い過ぎです。
問3A下線部(2)はガーシュニーの発言で、過去50年間で男女の有償・無償労働の比率が変化した、という内容。これは性別役割に関する態度や実態が時代とともに変化してきた、ということを述べているので、AのAttitudes regarding work and gender have changed over timeが正解です。
問4例:Furthermore, the data also indicates that those who claim to be the busiest generally are not.

原文:What's more, the data also shows that the people who say they're the busiest generally aren't.
「さらに、データはまた、最も忙しいと主張する人々は概してそうではないことも示している。」の英訳。Furthermoreで「さらに」を処理し、those who claim to be the busiest で「最も忙しいと主張する人々」、generally are not で「概してそうではない」とまとめる。
問5農業や製造業が主流だったかつての時代、労働は確かに肉体的に過酷なものであったかもしれないが、それには一定の限界があった。obeyed certain limitsは「一定の制限に従っていた」が直訳で、文脈から「限界があった」としています。
問6B空欄イは知識労働の時代に移った文脈で、「以前は限界があったが、それは変わった」という意味が求められます。Bのthat's changedが正解です。
問7B空欄ウ和訳は「有限の人間が無限の量をこなそうとする結果として、圧倒感が生まれる」。論理的帰結として「必然的に」となるので、Bのinevitablyが正解です。
問8B空欄エは「すべてをこなすことは単に難しいだけでなく……」という文の締めで、直前の文脈から「有限の人間が無限をこなすことは不可能だ」という主旨に対応するBが正解です。物理的にではなく「数学的に不可能(mathematical impossibility)」。
問9C下線部(5)「そのような時間的プレッシャーが重くのしかかっている状態では、私たちが常に時計を気にして生活するのも驚くにはあたらない。」の意味として、Cの「重い時間的プレッシャーの下で生きることは、自然に人々を常に時間に注意を払うよう導く」が正解。
問10「忙しいという感覚」がもたらす皮肉な結果は、それほど急いでいない場合よりも、やるべきことのリストをうまく処理できなくなるということだ。the ironic consequenceという表現と、than if we weren't so rushedという仮定法の処理がポイントです。
問11(a) prey 
(b) impairing 
(c) prioritising/prioritizing 
(d) kicks 
(e) permit 
(f) apply 
(g) perceiving
(a) prey on the mind(心に取り憑く)
(b) impairing decision-making(意思決定を損なう)
(c) prioritise A over B(AをBより優先させる)
(d) a vicious spiral kicks in(悪循環が始まる)
(e) permit an hour(時間を与える)
(f) apply productivity to(生産性を〜に当てはめる)
(g) perceiving(認識することに)
問12A写真を投稿するためのものにするという考え方が「それ自体の○○となってしまった」という文脈で、本来の楽しみがSNS共有のための「負担(burden)」に変化が最適です。
問13例1:歴史的には、働かなくてもよいという自由こそが、富、成功、そして社会的優位の究極的象徴であったということ。

例2:働かなくてもよいという自由は、富、成功、そして社会的優位の究極の象徴であったということ。
下線部(7)について「余暇が名誉の証だったとはどういう意味か」という問いです。です。余暇を楽しめることが高い地位の証明であった時代があった、ということを40字程度でまとめます。
問14D錠前師の話から、客は「仕事が速く終わること」より「時間と手間をかけている様子を見ること」を求めていた、とわかります。Dが正解です。
問15例:Too often, we take a similar attitude not only toward others but also toward ourselves.

原文:Too often, we take a similar attitude not only to other people, but ourselves.
「あまりにも頻繁に」をToo oftenで処理し、not only to other people, but ourselvesで「他人に対してだけでなく自分自身に対しても」とまとめる。
問16例1:The fact that measuring our worth by busyness rather than results is irrational and makes no sense.

例2:It is pointless to measure our worth by time spent rather than by results achieved.
下線部(9)のthatが何を指すかを20語以内で英語説明する問題。直前の文脈「私たちは結果ではなく行動することに費やした時間で自らの価値を測っている」を受けており、thatはその「意味のなさ(nonsense)」を指します。
問17(自由英作文:解答例は下記参照)
When you feel too busy, how do you deal with it? Write about 80 words in English to explain what you do and why.
忙しいと感じたときにどう対処するかを80語程度の英語で述べる問題。自分の経験を具体的に書きます。

問17(自由英作文・約80語)

*一般的な高校生でも十分かけるレベルに調整しています。

例1

When I feel very busy, I first write down everything I need to do. This helps me see what is really important. Then I start with the most important task. I try not to worry about the others at that time. This way, I don’t waste my energy on small things. I also take a short walk when I get tired. Taking a break helps me think clearly and work better. (71 words)

例2

When I feel too busy, I stop for a moment and ask myself what I really need to do today. I have learned that not all tasks are as important as they seem. In the past, I tried to do everything quickly, but it only made me slower. Now I choose two or three important tasks and focus on them. I also accept that I cannot do everything. This helps me stay calm and work better.(76 words)

例3

When I feel busy, I make sure to have at least thirty minutes of free time every day. I believe that rest is necessary to do good work. If I study too much without a break, I become tired and make more mistakes. So I take a walk, read a book, or just relax without using my phone. I think rest should be part of my daily plan, not something special. This helps me handle stress better.(77 words)


全文和訳

大意は以下の通りです。

現代の生活についての事実の中で、誰もが忙しそうにしているということほど疑いようのないことはないように思われる。先進工業国では、多くの調査回答者が、家族や友人と過ごす時間を犠牲にして仕事に追われていると研究者に答えている。そして(1)最も追い詰められている人々は、自分の気持ちを尋ねられてさえいないかもしれない。ある独創的な2014年の研究によれば、人々が調査への参加を断る主な理由のひとつは……忙しすぎると感じていることだというのだ。

説明は単純明快だと思うかもしれない。今日私たちがこれほど忙しく感じるのは、やるべきことがずっと増えているからだ、と。(ア)しかし実際には逆のことが真実だ。近年のヨーロッパや北米では、有償か否かを問わず、人々が労働に費やす時間の総量は増えていない。子どもと過ごす時間が足りないと心配する現代の親は、過去の世代よりも実際にははるかに多くの時間を子どもと過ごしている。「過去50年間の見出しとなる変化は、女性が無償労働をはるかに多くやめ、有償労働をはるかに多くするようになり、男性はかなり有償労働を減らして、無償労働をずっと多くするようになったということだ」とオックスフォード大学時間利用研究センターのジョナサン・ガーシュニーは言う。しかし「労働の総量はほぼ完全に同じだ」という。(3)さらに、データはまた、最も忙しいと主張する人々は概してそうではないことも示している。

何が起きているのか。答えの一部は単純な経済学だ。経済が成長し、豊かな人々の収入が時間とともに上昇するにつれ、時間は文字通り価値を増してきた。どんな一時間も以前より多くの価値を持つため、私たちはより多くの仕事を詰め込もうというプレッシャーをより強く感じる。しかしそれは、私たちの多くが従事している仕事の種類にも起因している。(4)かつて農業や製造業が主体だった時代には、労働は確かに肉体的に過酷なものであった。しかし、そこには一定の限界があった。収穫は準備が整う前に刈り取ることはできないし、入手できる素材が許す量以上の製品を作ることはできない。

しかし経営コンサルタントのピーター・ドラッカーが「知識労働」と呼んだ時代には、(イ)それは変わった。私たちは「無限の世界」に生きていると、「Busy: How to Thrive in a World of Too Much」の著者トニー・クラベは言う。受信メールも、会議も、読むべきものも、追うべきアイデアも、常にもっと多くある。デジタルモバイル技術のおかげで、自宅でも、休暇中でも、ジムでいくつかのやることリストの項目を片づけることが簡単にできる。その結果、(ウ)必然的に、圧倒されているという感覚が生まれる。私たちはそれぞれ有限なエネルギーと能力を持つ有限な存在でありながら、無限の量をこなそうとしているのだ。私たちは職場でも家庭でも「すべてをこなす」という社会的プレッシャーを感じているが、それは単に非常に難しいだけではない。(エ)それは数学的に不可能なことだ。

(5)そのような時間的プレッシャーが重くのしかかっている状態では、私たちが常に時計を気にして生活するのも驚くにはあたらない。しかし心理学的研究によれば、このような時間意識は実際にはパフォーマンスの低下につながる(思いやりの低下は言うまでもない)。そのため(6)「忙しいと感じること」の皮肉な結果は、それほど急かされていないときよりもやることリストをうまくこなせないことである。経済学者のセンディル・ムライナサンと行動科学者のエルダー・シャフィールは、これを「認知帯域幅」の問題と表現している。金銭的であれ時間的であれ、欠乏感が心に(a)餌食となり、その結果として意思決定を(b)損なう。忙しいとき、人はより質の悪い時間管理の選択をしがちだ。こなせないような責任を引き受けたり、重要なことより些細なことを(c)優先させたりする。悪循環が(d)始まる。忙しいという感覚が、以前よりもさらに忙しくしてしまうのだ。

おそらく最悪なのは、この思考パターンが余暇の時間にまで広がり染み込んでいくことだ。生活がついに回復のための一時間か二時間を(e)許された時でさえ、私たちはその時間も「生産的に」使わなければならないと感じてしまう。「最も有害なことは、本来その基準とは無縁であるべき人生の領域に生産性を(f)当てはめようとする私たちのこの傾向だ」と、人気のアイデアブログ「Brain Pickings」を運営するマリア・ポポヴァは主張する。彼女は自分自身の趣味のひとつである写真でそれを実感した。「以前の生活では、プロ仕様のカメラを抱えてどこへでも歩き回っていました」と彼女は言う。「しかし今では、共有すること —— 写真を撮る理由はFacebookやInstagramに投稿するためであるという考えが、それ自体の(オ)負担になってしまったのです」。

忙しさという流行病の解決策が、21時間労働週の全面実施以外にあるとすれば、私たちの態度がいかに非合理的になってしまったかを明確に(g)認識することにあるかもしれない。歴史的に、富と成功と社会的優位の究極の象徴とは、働かなくてもよいという自由だった。(7)19世紀の経済学者ソーステイン・ヴェブレンが言ったように、真の名誉の証は余暇だったのだ。今や、高い地位の指標となっているのは忙しさだ。「社会の豊かな人々はしばしば非常に忙しく、そうでなければならない」とガーシュニーは言う。「あなたに『忙しいか』と尋ねられれば、私はこう答える。『もちろん忙しいよ。なぜなら私は重要人物ですから!』」

純粋な活動を重視することがいかに馬鹿げているかを理解するため、行動経済学者のダン・アリエリーが語った、かつて出会った錠前師にまつわる話を考えてみてほしい。キャリアの初期、その錠前師は「それほど上手ではなかった。ドアを開けるのに非常に長い時間がかかり、錠前を壊してしまうことも多かった」とアリエリーは言う。それでも人々は喜んで料金を支払い、チップまで渡した。しかし腕が上がって速くなると、料金に文句を言い、チップも渡さなくなった。家や車へのアクセスをより素早く取り戻せることに価値を感じるはずだと思うだろう。しかし彼らが本当に望んでいたのは(カ)錠前師が時間と労力を費やす様子を見ることだった。たとえそれが長い待ち時間を意味するとしても。

(8)私たちはあまりにも頻繁に、他人に対してだけでなく、自分自身に対しても、同じような態度を取ってしまう。私たちは達成した結果によってではなく、どれほどの時間を行動することに費やしているかによって自らの価値を測る。少なくとも一部には、そうすることが自分自身について良い気分にさせてくれるからこそ、私たちはめまぐるしい生活を送っている。控えめに言っても、これは意味をなさない。もし私たちがそれほど忙しくなければ、(9)それに気づくために立ち止まる余裕があるだろうに。

差がつく重要表現

第1段落:忙しさの現状と調査拒否の皮肉

  • indisputable: 疑いようのない、明白な
  • overburdened: (仕事などに)追われている、負担をかけすぎた
  • ingenious: 独創的な、巧妙な

第2段落:労働時間の統計とジェンダー

  • counter-intuitive: 反直感的な、意外な
  • paid / unpaid labor: 有償労働(仕事)/無償労働(家事など)
  • aggregate: 総計、合計の

第3段落:時間の経済的価値と仕事の変質

  • squeeze in: (無理に)詰め込む、割り込ませる
  • physically punishing: 肉体的に過酷な、身体を痛めつけるような(問5)
  • obeyed certain limits: 一定の限界に従っていた、限界があった

第4段落:知識労働と無限の罠

  • crank through: テキパキとこなす、機械的に処理する(脚注)
  • crank :クランクを回す、エンジンをかける、始める、活動のレベルを上げる
  • thrive: 成功する、繁栄する
  • overwhelmed: 圧倒された、余裕をなくした
  • finite: 有限の(infinite「無限」との対比)
  • mathematical impossibility: 数学的な不可能性

アドレナリンを出し続けないと死んじゃう映画「アドレナリン」の原題は「Crank」

第5段落:認知帯域幅と悪循環の心理学

  • ironic consequence: 皮肉な結果
  • cognitive bandwidth: 認知帯域幅(脳の処理能力の余裕)
  • prey on the mind: 心に重くのしかかる(問11a)
  • impairing: 〜を損なう、減退させる(問11b)
  • prioritising trifling tasks: 些細な仕事を優先すること(問11c)
  • vicious cycle kicks in: 悪循環が始まる(問11d)

第6段落:余暇の変質と生産性の罠

  • infectious: 伝染性の、蔓延した
  • recuperation: 回復、静養
  • pernicious: 有害な、悪質な(脚注)
  • devoid of: 〜を全く欠いている、無縁である(脚注)

第7段落:歴史的なステータスの逆転

  • social dominance: 社会的優位性
  • badge of honour: 名誉のしるし、誇り
  • indicator: 指標

第8段落:鍵屋の例と不合理な価値判断

  • absurdity: 不条理、ばかげたこと
  • putting in the time and effort: 時間と労力を費やすこと

第9段落:自己満足の多忙への批判

  • take a similar attitude: 同様の態度を取る(問15英訳)
  • frenetically: 熱狂的に、慌ただしく(脚注)
  • irrational: 不合理な、理にかなわない(問16関連)

設問に関わる重要語句・定型表現

  • What's more(問4英訳): さらに、その上
  • generally aren't(問4英訳): 概してそうではない(全否定を避ける表現)
  • ironic consequence(問10和訳): 皮肉な結果
  • not only toward others but also toward ourselves(問15英訳): 他人に対してだけでなく、自分自身に対しても

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GOKO編集室
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