受験に失敗して慶應進学した私が、今はよかったと思える理由
名前:Tさん
進学先:慶應義塾大学 総合政策学部
【併願先】
北海道大学:国際総合入試×
多摩美:帰国選抜×
慶應:総合政策○、環境情報○
日大:芸術学部○
年が明けるまで自分が慶應生になるとは考えたこともなかった
私が慶應を目指したと言っても、受験したのはSFC(湘南藤沢キャンパス)だけで、自分が慶應生になるとは年明けまで一度も考えたことがなかった。
SFCを受験せざるを得なくなったのは、秋の特別入試に大失敗したからだ。
北海道大学の国際総合入試
私は中学一年生の時から北海道大学の自治寮、恵迪寮に憧れを抱いていた。
そんな夢を叶えるために、秋の国際総合入試を突破することを試みた。
が、結果は不合格。(私は、国際バカロレアのディプロマを取得予定だったため国際総合入試を受けられた。)
*編集部補足:国際バカロレア
非営利団体「国際バカロレア」による大学入試資格試験。
日本では、インターナショナルスクールや、先進的な取り組みをしている高校などでも取得することができる。
オールイングリッシュの授業だったり、課題が大量で大変だったりとするが、海外の大学進学のチャンスを得ることができる。「バカロレア選抜」「バカロレア入試」「IB入試」といった名称で、日本でも入試に利用できる大学が増加中。
実は慶應でも実施していて「国際バカロレア資格取得者対象入学試験」という名称で、法学部の9月入試が行われている。
詳しくは下記の公式資料を参考。
国際バカロレア資格取得者(日本国内)対象入学試験 出願資格(募集要項抜粋)PDF
私が通っていた高校から北大の国際総合入試に出願した人は全員もれなく合格していた、だから、私は正直不合格を飲み込めなかった。
担任の先生やディプロマプログラムのコーディネーターの先生も驚いて、親身に相談に乗ってくれた。
ギリギリで準備した多摩美の帰国生入試
北大の不合格が分かったのが12月7日。
念の為出願していた多摩美の帰国生入試が、10日後に迫っていた。
過去2年間、帰国生入試で油画専攻に出願した人が0人と、よく分からない入試だった。
高校の美術の先生に協力してもらい、時間がない中で何とかポートフォリオと面接に持ち込むF30号のキャンパスを仕上げた。
当日試験会場に行くと、なんと帰国生入試は外国人留学生入試と合同で行われていた。
後日、志願者49人に対して合格者が3人というとんでもない超難関入試だったことが分かった。もちろん私は不合格だった。
全滅だ。人生オワタ。
さて、どうしよう。二校しか出願していない、全滅だ。人生オワタ。
私の勉強に全く口出ししてこなかった父親は、母親に「なんで塾に行かせなかったんだ」とか「なんでもっと併願させなかったのか」とか毎日怒鳴り散らかす。
コロナ禍で陰謀論にハマった脳筋は黙ってろ、と心の中で思いながらも、私は自室にこもってずっと泣いていた。
結局、色々な話し合いを経て、母親に勧められて興味を抱いた日芸放送(日大芸術学部放送学科)と、担任の先生に勧められた慶應SFCの二学部を受けることになった。
SFCを受験した消極的理由
実は私は共通テストの勉強を一切しておらず、申し込みすらしていなかった。
国際バカロレアのディプロマプログラム(IBDP)だったので、本当に共通テストの勉強を全くしていなかったのだ。(IBDPでも共通テストの勉強もしていい点を取る超人もいるが、私には到底できなかった)
だから、共通テスト不要で、私も解ける問題が出るとなると、SFCくらいしか選択肢がなかった。
年明けから受験まで現実逃避でふて寝
SFCの受験を決めたのが年明けで、受験まであと一か月くらいしかない。
だから、この一か月は死ぬ気で頑張ろう!、、、と思った。思ったには思ったのだけれど、実行には移せなかった。
半分くらい死んでいる状態だった。
11月のIBDPの最終試験で既に神経がすり減っていた上、特別入試の不合格が続いて、本当に何もできなかった。
SFCの過去問を解いたは解いたが、集中できなくてひどいもんだった。
現実逃避でひたすら寝た。
慶應受験当日の思い出
当日。試験会場は日吉キャンパスなので、特にワクワクすることもなく会場に向かった。
とにかくめちゃくちゃ人がいる。
番号に従ってみんなが自分の部屋に向かう。『イカゲーム』に出てくる赤い労働者たちみたいだ、となんとなく思った。
特に思い出はないのだが、トイレに行くときにイケてる子が結構いて嬉しかったのを覚えている。(多摩美の外国人留学生入試の中国人たちの方がよっぽどイケてたけど。そして、入学してみるとイケてる子たちが全然おらず、残念だった。)
一日目に家に帰って手応えがあったことを母親に伝えると、母親はホッとした表情を見せた。
SFC受験のアドバイス
結果は、総合政策学部と環境情報学部の両方が合格だった。
ただただ安堵した。
浪人はやっぱり嫌だという気持ちがどこかにあって踏ん張れたのだと思う。
これからSFCを一般受験する人に、役立つかは分からないが私なりにアドバイスをしたい。ちなみに私は両学部英語+小論文で受験した。
英語
まずは英語。私は帰国子女でもないし、英語にとても苦手意識を抱いていた。それでも合格できたのは、自分は英文が読めると自分自身に暗示をかけたからだ。
正直、分からない単語もあった。それでも、適当に読めているふりをして乗り越えた。
途中で止まらずに、それでも焦らずに、最後まで問題を解くことが大切だ。
小論文
そして、小論文。私はIBDPでエッセイを書くのには慣れていたので、特別何も意識せずに書いた。
強いていうならば、小論文の構成をはじめに考えてから書き始めることが大切だ。
もちろんパラグラフライティングで書くが、各段落のトピックセンテンスを、小論文を書き始める前に頭の中で決めておく。
そして、イントロダクションからコンクルージョンまで主張が一貫することを常に意識する。
環境情報学部の方の小論文は、文章を書くというよりも研究計画書をタイムラインに落とし込むという問題だった。
そこでも、自分で設定した研究の目的やゴールなどを一貫して書いた。
不合格だった入試をあえて分析してみる
慶應の合格体験記で他大学の不合格だった理由を分析するのはおかしいかもしれないが、しておきたいと思う。
北海道大学:国際総合入試
まず、北海道大学の国際総合入試は、堅苦しく真面目な面接が私に合わず、大学と相性が良くなかったのだと思う。
一次試験に出した書類は自分でも満足がいくクオリティで、試験も突破していたので、問題はなかった。しかし、問題は面接だった。面接は教員4名に対して私1名で、圧迫面接という感じだった。
私はせっかく札幌まで行くのだし、面接官と会話ができると思っていたが、実際は予想とまるで違った。
面接官が私に質問して、私が答えたら、それでそのトピックは終わりだった。
そのような面接のスタイルに慣れていなかったし、私に合っていなかった。全く手応えを感じられなかった。
多摩美術大学:帰国生選抜
続いて、多摩美術大学の帰国生選抜。
これは単に大学側が留学生や帰国生を入学させるのにかなり消極的なんだと思う。実技のレベルはかなり高かったので、49人が出願して3人しか合格しないのはおかしいと思った。
あとは、私が帰国生ではないのに帰国生入試を受けたからコンセプトと合わず落とされた可能性も否定できない。(それなら、大学側が帰国生だけ出願できるようにすれば良いとも思うが)
不合格が続いた当時は、私はなんて能無しなんだと自己嫌悪に陥っていたが、今では大学と考えが合わなかっただけだと考えられるようになった。
慶應に進学したのは失敗だったのか
私はこれまでずっと大学受験は失敗したと思っていた。
だが、この合格体験記を書きながら「もしかするとこれは失敗ではなかったのかもしれない」と思うようになった。
SFCに合格した時点で、家族だったり周りの人から、私の大学受験は逆転で成功だと言われることもあった。
私はずっと飲み込めていなかった。
例えば、高校の先生にSFCへの進学を伝えてもほぼスルーされ、大学の友達に国際バカロレアのディプロマを取ったことを伝えると「もっといいとこ行けたでしょ〜」なんて言われたことがあった。
このモヤモヤを解消するには「自分はこの程度なんだ」と受け入れなければいけないと思っていた。
けれど、今では全然違う考え方だ。
不合格は大学と相性が悪かっただけだし、慶應SFCはとっても良い学校だと思っている。
SFCに進学して良かったと思うこと
SFCに入るとSFC生としての自覚が芽生えるが、実はSFC生はSFC生である以前に塾生である。
なんとSFC生なら、慶應義塾大学のサークルに塾生として合法的に入れるのだ。ラッキー!
流石は慶應なので、すごい人たちとのコネクションがあるサークルも多い。
SFCからの裏口入サーを狙ってSFCを目指すのも全然アリだと思う。
あとは、SFCの気楽にやっていける感じが心地よい。空気が全然ピリついていなくて、気長に生きようと思わせてくれる。(キャンパスの悪臭で生きる活力を全て奪われることもしばしばあるが)
そして何よりも個人的に嬉しかったのは、念願の一人暮らしができたことだ。
実家はお金に余裕があるわけではないので、私立で一人暮らしはダメ、とずっと言われてきた。
けれど、私がSFCにしか受からなかったので、仕方なく一人暮らしをさせてもらえることになった。私にとってこれ以上のラッキーはないと思う。(私の学費を稼ぐために母親が働きに出たことには罪悪感を感じている)
とにかく両親と祖父母に感謝したい。
慶應を目指す受験生へメッセージ
スピっている私に言わせれば、大学受験の不合格は「縁」で、避けられない運命だったと思う。
私の大学受験について人に話すと、第一志望よりもSFCの方が全然良いよ!と言われることがよくある。
多分お世辞ではない。自分でも今ではそう思う。
自分が行きたいところが必ずしも行く運命にあるとは限らないし、行き当たりばったりで受験したところがとても合っている可能性だってある。
過去の自分に会えるなら、そんなに落ち込む必要はないと励ましたい。
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