慶應理工2024年英語:解答解説と全文和訳 / アートの意味と6つのパンデミック
2024年2月12日に行われた、慶應義塾大学理工学部一般選抜の英語の入試問題に関して解説しています。
参考までにどうぞ。
慶應理工2024年の合格最低点
理工学部2024年の入試結果は次表の通りです。
科目ごとの細かい点数は非公開ですが、合格最低点が321点、64.2%の得点率でした。
参考までに2024年の募集要項の情報も記載しておきます。
英語の試験時間のみ90分となっている点に注意してください。
それでは、各大問の内容と解答をみていきましょう。
大問1:私と私たち
- 題名:IntraConnected:Mwe (Me + We) As the Integration of Self, Identity, and Belonging
- 著者:ダニエル・J・シーゲル / Daniel J. Siegel
- 文字数:650字程度
UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校:アメリカの超名門大学の一つ)医科大学精神科臨床教授、ダニエル・J・シーゲルの著書から出題。
コロナ禍を経た文章らしく、孤立した個人を周囲とどう関わらせていくかがテーマになっています。
法学部や文学部など、ゴリゴリの文系学部で出題されてもおかしくない、硬派な文章でした。
【問題文冒頭】
We live in remarkable times and face many challenges to our well-being that can often feel overwhelming and insurmountable. It's not uncommon these days to hear people describe a sense of despair and hopelessness when facing the social injustices and environmental destruction that surround us.
IntraConnected:Mwe (Me + We) As the Integration of Self, Identity, and Belong より「challenge and opportunity」
この本では、「Mwe(Me + We)」という概念を提唱しています。
これは、「私(Me)」と「私たち(We)」を統合した新しい視点であり、個々の存在が他者や社会との関係性を通じてどのように形作られるかを考察します。
シーゲル氏は、個々のアイデンティティが他者とのつながりによって形成され、真の所属感を持つためには自己と他者とのバランスが必要であると主張します。
ちなみに、著者ダニエル・J・シーゲル氏の著書の中には、日本語に翻訳されているものもあります。
日本のマーケット需要のせいだと思いますが、翻訳されているのは"子育て本"の類が多めになっています。
大問1:解答
*以下の解答は公式解答とも照合し、確定した解答です。
問1
- 1:1 contribute to
- 2:1 alter *alternativeのalter
- 3:2 kin-like *kin=血族
- 4:5 reverberation *反響・反響音
- 5:1 commotion *騒動・混乱
- 6:3 mainly
- 7:4 holistic
下線部4のconsequencesの意味は分かっても、そこからreverberationを答えさせるのはなかなか厳しいです。
同様に、下線部5のturmoilは知っていても、commotionまでおさえている受験生は多くないと思われます。
下線部7のholisticは、医療系の英文で"総合"ケアを示す単語として登場するので、今後のためにおさえておきたい単語です。
以上考慮して、7問中4問は確実に正解したい難易度です。
問2
- 8:5 overwhelming
- 9:4 hopelessness
- 10:5 responsible
- 11:3 destructive
- 12:2 marginalization
- 13:3 inadequacy
- 14:5 isolated
9番のhopelessnessを形で、12番の marginalizationを語彙力で落とす可能性があります。
それ以外は、内容が読めたら取れる設問になっています。
問3
- 15:1 across
- 16:3 over
- 17:5 with
- 18:4 toward
問4
when human activity is having devastating consequences for life
- 19:1 consequences
- 20:7 life
問5
- 21~24:1,2,5,8
大問1:全文和訳
概ね(ざっくり)ではありますが、以下のような文章です。
*読みやすさのために適宜改行しています。
第1段落
私たちは驚くべき時代に生きており、私たちの幸福に対する多くの課題に直面していますが、それらはしばしば圧倒的で、克服できないように感じられることがあります。今日では、社会的不正や環境破壊に直面して、絶望感や希望の喪失を感じる人々の話を耳にすることが珍しくありません。
しかし、この地球上の生命、人類、そしてすべての自然の歴史におけるこの困難な瞬間は、私たちが個人として、そして地球上の人間と自然の家族として、どのように生きるかを再構想する機会であり、成長のための集団的なインスピレーションとして役立つ方法を見つける動機ともなります。
語彙
- Overwhelming: 圧倒的な
- Insurmountable: 克服不可能な
- Despair: 絶望
- Hopelessness: 無力感、希望のなさ
- Social injustices: 社会的不正義
- Environmental destruction: 環境破壊
- Motivation: 動機
- Reimagine: 再考する、再び想像する
- Collective inspiration: 集団的なインスピレーション、共通の刺激
第2段落
もし現在私たちが直面している困難が人間の心のせいであるならば、人間の心はこれらの状況を認識し、破壊的な道を建設的なものに変えるための行動を取る責任も負うことができます。
心は、帰属意識、アイデンティティ、そして自己を形作ります。自己を見るための心のレンズを明確にし、アイデンティティと帰属意識の理解を深めることができれば、私たちの生き方を変え、それによって私たち全員にとって、より個人的、社会的、そして地球的な健康を育む道を切り開くことができるかもしれません。
私たちが今、人類全体で経験している多くのグローバルヘルスの課題、つまり「パンデミック」と呼ばれるもの(パンデミックという言葉は、すべての人々に関わり、人類に影響を与えるものを意味します)は、「自己」に対する限られた、そして制限的な見方が原因であると提案しています。
語彙
- Blame: 責任を負わせる、非難する
- Awareness: 認識、意識
- Constructive: 建設的な
- Belonging: 帰属意識
- Clarify: 明確にする
- Cultivate: 育む、養う
- Pandemics: パンデミック、世界的流行病
- Limited and limiting view: 限られた、制限的な見方
第3段落
現在私たちが直面しているパンデミックの一つは、SARS-CoV-2という新型コロナウイルスによって引き起こされる感染症、COVID-19です。しかし、現在私たちに影響を与えているパンデミックは他にも多くあります。
今日、私たちが直面しているもう一つのパンデミックは、社会的不正義です。これは、社会的階層で下位に位置する外部のグループに対する内集団の支配から生じる非人間化と社会的排除を指します。
第三のパンデミックは環境破壊です。私たちは現在、人間の活動が地球上の生命と私たちを支える環境に壊滅的な影響を与えている「人新世」という時代に生きています。
第四のパンデミックは誤情報と社会の分断化です。インターネットの力によって、孤立した情報共有の自己持続的なバブルが作り出され、これが蔓延しています。
第五のパンデミックは注意力中毒です。これは、終わりなき比較や競争の状態に私たちの注意が引き寄せられ、その結果として不十分さ、劣等感、そして未完成感を感じることを指します。
第4のパンデミックに出てくる「self-sustaining bubbles (自己維持的バブル」とは、ある特定の考えや情報に固執し、それ以外の情報や意見を遮断することで形成される、閉鎖的で排他的なコミュニティのようなものを指します。エコーチェンバーとほぼ同意と考えてください。
語彙
- Dehumanization: 非人間化
- Marginalization: 疎外,周縁化,社会的無視
- Subordinate: 従属的な
- Social hierarchy: 社会階層
- Anthropocene era: 人新世, アントロポセン, アンスロポスィーン
*現在の地質学的時代を指す用語で、人間の活動が地球全体の地質学的および環境的プロセスに大きな影響を与えている時代 - Devastating: 壊滅的な
- Misinformation: 誤情報
- Polarization: 分極化,格差の広がり
- Rampant: 蔓延した
- Self-sustaining bubbles: 自己持続的なバブル
- Compelling states: 魅力的な状態
- Inadequacy: 不十分さ
- Inferiority: 劣等感
- Incompleteness: 未完成感
第4段落
そして、第6のパンデミックがあります。それは、現代の文化的な、あるいは一部の人々が西洋と呼ぶ、孤立した、分離されたアイデンティティ、すなわちソロセルフの視点です。この視点はおそらく西欧起源の植民地主義国家で生まれたかもしれませんが、現在は世界中に広まり、地理的な指標はもはやこの広範な文化的な自己の構築に適用できないかもしれません。
このソロ・セルフは、私たちが何者であるかという内面的で私的な側面だけでなく、私たちのアイデンティティの全体が他者、とりわけ「私と同じではない」他者、さらには他の人間以外の種から分離しているという概念であり信念です。
このソロセルフは、私たちの内面的、私的な側面だけでなく、私たちのアイデンティティの全体が他者から、特に「私のようではない」他者や他の非人間種から分離されているという概念と信念です。この過度に分化したアイデンティティと、それが生み出す帰属意識の欠如が、多くの苦しみの原因となっています。それは、内面的な混乱や硬直として、また私たちの生活における(=関係における)混乱として現れます。ここで「関係的」とは、身体的な内なる自己が他の人々や地球、自然全体とどのように結びついているかを意味します。
これらのつながりは、エネルギーと情報の交換パターンに関与しており、目に見える身体ほどはっきりとは見えないかもしれませんが、等しく現実のものです。ソロ・セルフとして生き、これらの重要だが目に見えないつながりを無視していると、私たちは自分のアイデンティティが主に肉体に中心になり、私のような人々とだけ関係的に結びついていると感じます。
このソロセルフのパンデミックは、明らかに他の5つのパンデミックすべてに負の影響を与え、それらの根本的な原因となる可能性があります。もし、自己とは何か、私たちのアイデンティティと帰属とは何に基づいて構築してきたかが、私たちが現在直面している多くの問題の原因であるならば、私たちは今、このパターンを変え、より統合的な道を前進することができます。
- pandemic: パンデミック、世界的流行病
- isolated: 孤立した
- separate identity: 個別のアイデンティティ
- colonialist nations: 植民地主義国家
- solo-self: ソロセルフ(個人のアイデンティティを他者から分離して考える概念)
- differentiated: 分別された、区別された
- differentiated identity: 差別化されたアイデンティティ
- disconnection: 断絶、切り離し
- turmoil: 混乱、騒動
- relational: 関係的な、関係に基づく
- invisible: 目に見えない
- integrate: 統合する、一体化する
- integrative pathway: 統合的な道
大問2:芸術とは何か
- 題名:芸術とは何か / What Art Is
- 著者:アーサー・C・ダントー / C. Danto
- 文字数:700字程度
【問題文冒頭】
It is widely accepted that Plato defined art as imitation, though whether this was a theory or merely an observation is difficult to say, since there was nothing else by way of art in Athens in his time. All that seems clear is that imitation in Plato meant pretty much what it means in English: looks like the real thing but isn't the real thing.
What Art Is より
「芸術とは何か?」という受験英語としては定番のテーマについての英文です。
理系であっても人文系のテーマは押さえておけよ!とのメッセージをビシビシ感じる内容です。
元ネタの方では、meaning and embodiment、すなわち「意味付けと具現化」によって芸術は定義されると主張しています。
出題英文にも出ているように、プラトンの「国家」における芸術の定義から始まり、最後は20世紀の芸術家、アンディ・ウォーホルにまで触れていきます。
アンディ・ウォーホル自体は知らなくても、こんな↓感じのビジュアルイメージは見たことあるかもしれません。
もう少し詳しい解説を、第5段落の全訳に追加しています。
大問2:要約
As shown in his work The Republic, Plato regarded art and artists as of minimal significance to society. In his view, what artists created were mere imitations of the real world, which had no practical use. In contrast, philosophers reigned the realm of human intellect, who could educate and rule the public righteously. Far from the time of Plato, art today is no longer a mirror image of what we see. The definition of art given by Plato thus does not hold anymore, and people are questioning what art really is. In fact, in order to redefine the meaning of art, we need to take into account the art in the age of Modernism and thereafter, when artists stopped copying what they saw. Furthermore, art in recent times has turned away from such concepts as beauty and imitation, qualities that were believed in the past to be essential elements of art. Now anything seems feasible in art, and, according to many experts, no fixed definition is available. The author, however, argues that there must be an all-embracing definition of art, which can be found by examining the history of art. Art, for one thing, has the power to touch people's hearts.
語彙・慣用句
- minimal significance: 最小限の重要性
- mere imitations: 単なる模倣
- reigned the realm: 領域を支配する
- righteously: 正義に基づいて、公正に、正しく、道義的に
- mirror image: 鏡像、そっくりな物
- hold anymore: もはや通用しない
- turn away from: 離れる、背を向ける
- feasible: 実現可能な
- all-embracing: 包括的な、全てを含む
- touch people’s hearts: 人々の心を動かす
要約問題和訳
プラトンは彼の著作『国家(The Republic)』で示したように、芸術や芸術家を社会にとって最小限の重要性しか持たないものとして捉えていました。彼の見解では、芸術家が創り出すものは現実世界の単なる模倣であり、実用的な価値はないとされていました。それに対して、哲学者は人間の知性の領域を支配し、人々を正しく教育し、統治することができる存在でした。
プラトンの時代から遠く離れた今日では、芸術はもはや私たちが見るものの鏡像ではありません。そのため、プラトンが与えた芸術の定義はもはや通用せず、人々は芸術とは何かを問い直しています。実際、芸術の意味を再定義するためには、モダニズム以降の時代の芸術を考慮に入れる必要があります。この時代に、芸術家たちは見たものをコピーすることをやめました。さらに、最近の芸術は、過去には芸術の本質的要素と考えられていた美や模倣といった概念からも離れています。
今や芸術においては何でも可能であり、多くの専門家によれば、固定された定義は存在しないとされています。しかし、著者は芸術には包括的な定義があるべきだと主張しており、それは芸術の歴史を調べることで見出すことができると考えています。芸術は、ひとつには、人々の心を動かす力を持っています。
大問2:解答
問1
- 25:5 remove
- 26:2 premise
- 27:5 vulnerable to
- 28:1 An attribute
- 29:1 dawn
- 30:1 accuracy
- 31:3 extinguish
- 32:1 consistent
下線部4(28)attributeは「attribute A to B」の形で動詞として覚えることが多いが、名詞で「属性」の意味がある。
下線部6(30)のfidelityは難しいかもしれないが、それ以外の語彙は内容から推測も可能で、全問とはいかなくても高い正答率を出したい。
問2
- 33:2 in order to
- 34:1 At best
問3
本文が読めていたらスムーズに解ける問題です。...がそれは理想論なので、先に要約を読み始めて、大意を掴んだ上で本文を読むのも手です。
問3→本文→問3→本文と、往復しながら内容を保管しましょう。
- 35:2 minimal
- 36:2 contract
- 37:3 righteously
- 38:1 hold
- 39:2 redefine
- 40:4 take into account
- 41:4 thereafter (その後)
- 42:4 turn away from(立ち去る、離れる)
- 43:2 essential
- 44:4 one
大問2:全文和訳
概ね(ざっくり)ではありますが、以下のような文章です。
*読みやすさのために適宜改行しています。
第1段落
It is widely accepted that Plato defined art as imitation, though whether this was a theory or merely an observation is difficult to say, since there was nothing else by way of art in Athens in his time. ~~
プラトンが芸術を模倣と定義したことは広く受け入れられています。しかし、これが理論であったのか単なる観察であったのかは、彼の時代のアテネには他に芸術と呼べるものがなかったため、断言することは難しい。明確なのは、プラトンの模倣は英語での意味とほぼ同じであったということです。すなわち、本物のように見えるが本物ではないという意味です。しかし、プラトンは主に芸術に否定的な関心を抱いていました。彼は理想的な社会、すなわち「共和国」を設計しようとしており、芸術が実用的な価値がほとんどないという理由で芸術家を排除したいと考えていました。
この目標を達成するために、彼は人間の知識の地図を作成し、芸術を反射、影、夢、幻覚とともに可能な限り低いレベルに位置付けました。プラトンはこれらを単なる外観と見なし、芸術家が作り出すことができるもののカテゴリーに属すると考えていました。したがって、芸術家はテーブルを描くことができましたが、それはテーブルがどのように見えるかを知っているという意味です。しかし、彼らは実際にテーブルを作ることができたでしょうか?おそらく無理でしょうが、テーブルの見かけにどれほどの価値があったのでしょうか?(いやない)
語彙
- imitation: 模倣、まね
- observation: 観察、観察結果
- Republic: 共和国、プラトンの理想国家
- practical use: 実用的な価値、実用性
- map of human knowledge: 人間の知識の地図、分類体系
- appearance: 外観、見た目
- not likely: ありそうにない
第2段落
In Book Ten of The Republic, Plato's character – Socrates - suggested that if you want to imitate, nothing could be better for that than a mirror, which will give you perfect reflections of whatever you aim the mirror at, and better than an artist can usually achieve.~~
プラトンの登場人物であるソクラテスは、「国家」第10巻の中で、模倣するなら鏡に勝るものはないと提案しました。鏡は、向けたものを完璧に反映し、通常の芸術家が達成できる以上のものを提供します。だから、芸術家を排除しましょう。しかし哲学者たちは、プラトンが「イデア」と呼ぶ最高のものを知っています。ひとたび芸術家たちがいなくなれば、哲学者たちは教えを説き、堕落しにくい支配者として仕えることができるのです。
語彙
- Book Ten of The Republic: 『国家』の第10巻、プラトンの哲学対話集の10番目の巻
- Socrates: ソクラテス、古代ギリシャの哲学者
- perfect reflections: 完璧な反射、正確な映し出し
- philosophers: 哲学者、哲学を研究する人
- ideas: イデア、プラトンが提唱した理想的な概念、原型
- susceptible to corruption: 腐敗しやすい、腐敗の影響を受けやすい
第3段落
In any case, no one can deny that art as practiced consisted in imitations or capturing appearances. How different from the present situation!~~
いずれにせよ、芸術の実践が模倣や外見を捉えることにあったことは誰も否定できません。現在の状況とはいかに異なることか!「私は芸術とは何かというテーマへのアプローチに興味がある」と、私の友人である芸術家のトム・ローズは私的なメモに書いています。「この質問は、すべてのクラスやすべての文脈で出てくるものです」。まるで模倣が消え、何か別のものがその代わりになったかのようです。
では、芸術とは何でしょうか?芸術に関する喧々諤々(けんけんがくがく)の議論から分かるのは、彼の見解のため以外にプラトンを読むには、多くの非模倣的な芸術が存在しているということです。
最終文はまどろっこしい表現をしていますが、その主旨は、プラトンの芸術に関する見解を理解するためには、彼の理論だけを読むのでは不十分ということです。具体的には、現代の芸術には模倣的でない(非模倣的)作品が非常に多いため、プラトンの理論をそのまま適用することが難しいということを示唆しています。
よりシンプルに言い換えると
「プラトンの理論を現代の芸術に適用するのは難しい」
「プラトンの芸術論が現代の芸術の理解には十分ではない」
ぐらいのニュアンスが取れれば試験問題としてはOKです。
語彙
- cacophony: 騒音、不協和音、混乱、カカファニュ
- nonimitational: 非模倣的な、模倣しない
- for the sake of: ~のために、~の目的で
第4段落
My thought is that if some art is imitation and some art is not, neither term belongs to the definition of art as philosophically understood.~~
私の考えでは、もし一部の芸術が模倣であり、一部の芸術が模倣でないなら、どちらの用語も哲学的に理解される芸術の定義には属しません。ある特性が定義の一部であるのは、それがすべての芸術作品に属する場合のみです。モダニズムの到来とともに、芸術は映し絵から離れ、より正確には、写真が正確さの基準を設定したのです。
語彙
- property: (ここでは) 性質、特性。物事のもつ固有の性質や特徴を指します。
- definition: 定義、定義づけ。ある概念や用語の意味を明確に示すこと。
- philosophically: 哲学的に。哲学の観点から、深い意味や概念を追求するという意味。
- advent: 到来、出現。新しい時代や思想などが始まること。
- Modernism: 近代主義。19世紀末から20世紀初頭にかけて、芸術や文学などにおいて伝統的な価値観や形式を否定し、新しい表現方法を模索した運動。
- backed away from: ~から遠ざかる、~を避ける。
- mirror image: 鏡像、鏡に映った像。
- fidelity: 忠実度、正確さ、フィデリティ。
第5段落
There are degrees of fidelity in imitation, so Plato's definition of art remained in place, with little to argue about until it stopped capturing the seeming essence of art. How could this have happened?~~
模倣には正確性の程度の違いがあり、プラトンの芸術の定義は、芸術の本質を捉えなくなるまで、ほとんど議論されることなく残っていました。
どうしてこうなったのでしょうか?歴史的には、フランス、主にパリで起こったモダニズムの到来と共に、ある革命的な変化が起こったのです。私の考えでは、プラトンの定義よりも優れた定義を得るためには、より最近の芸術家に目を向ける必要があります。なぜなら、彼らは以前は芸術にとって本質的だと考えられていた特性、例えば美しさなどを、理論から取り除く可能性が高いからです。
マルセル・デュシャンは1915年に美しさを排除する方法を見つけ、アンディ・ウォーホルは1964年に芸術作品が実物と全く同じように見えることを発見しましたが、1960年代の大きな運動(フルクサス、ポップアート、ミニマリズム、コンセプチュアルアート)は、正確には模倣ではない芸術を作り出しました。
奇妙なことに、70年代には彫刻と写真が芸術的自己認識の中心をシフトさせました。その後、すべてが可能になりました。何でもありで、もはや芸術の定義が可能かどうかは不確かになりました。何でもが芸術であるわけではありません。
奇妙なことに、70年代には彫刻と写真が芸術家自身の意識の中心へとシフトした。それ以降、あらゆるものが可能となり、何でもありの状態になったため、芸術の定義がもはや可能かどうかが不確かになった。何でもかんでもが芸術と言えるわけではない。
内容プチ解説
1.マルセル・デュシャンの「レディ・メイド」
- 美の根絶: デュシャンは、既製品にわずかな手を加えるだけで芸術作品とする「レディ・メイド」という手法を確立しました。例えば、便器に「泉」というタイトルを付けて展示するなど、従来の美の概念を覆し、芸術の定義を根本から問い直しました。
- 1915年: デュシャンの「泉」がニューヨークの独立美術家協会展に出品され、大きな衝撃を与えた年です。
2. アンディ・ウォーホルの「ポップアート」
- 実物との同一性: ウォーホルは、コカ・コーラやマリリン・モンローなどの大衆文化のアイコンを題材に、シルクスクリーン印刷を用いて作品を制作しました。これにより、芸術作品が大量生産された商品のように、実物と全く同じになることができることを示しました。
- 1964年: ウォーホルの作品が広く知られるようになった時期です。
語彙
- eradicate: 根絶する、完全に取り除く。
- Fluxus: フラクサス。1960年代にヨーロッパとアメリカで活動した芸術運動。既存の芸術概念を破壊し、日常的な行為やイベントを芸術作品とした。
- Pop Art: ポップアート。1960年代にアメリカで興った芸術運動。大衆文化や広告の要素を取り入れ、消費社会を批判的に描いた。
- Minimalism: ミニマリズム。1960年代にアメリカで興った芸術運動。極限まで単純化された形態や色彩を用いて、視覚的な要素を最小限に抑えた作品を制作した。
- Conceptual Art: コンセプチュアルアート。1960年代に興った芸術運動。作品の意味や概念を重視し、具体的な形態や素材よりもアイデアを優先した。
- feasible: 実行可能な、実現可能な。
第6段落
基本的に、主要な美学者たちは、芸術には包括的な特徴がないため、定義不可能であると決定しました。(定義できたとして)せいぜい、芸術は開かれた概念です。私の見解では、それは閉じた概念でなければなりません。芸術が何らかの形で普遍的である理由を説明する包括的な特性がなければなりません。
歌や物語において芸術が非常に強力な力であるように見えるのは、そもそもそれが芸術であることによるものです。精神を揺さぶるものとして、これに匹敵するものは本当にありません。もし芸術がすべて一体であると信じるならば、その理由が歴史を通じて見つけられることを示す必要があります。
語彙
- aestheticians: 美学者。美学を専門とする学者や研究者。
- indefinable: 定義不可能な。明確に定義することができない。
- overarching: 包括的な。全体を覆うような。
- open concept: 開かれた概念。明確な定義がなく、広く解釈される概念。
- closed concept: 閉じた概念。明確な定義があり、限定された解釈を持つ概念。
- universal: 普遍的な。全ての人や文化に共通する。
- stirring: 感動的な
- stirring the spirit: 精神を揺さぶる。感動や興奮を引き起こす。
- all of a piece: 一致している、同質
大問3:会話問題 / 男女の再会
後に挙げますが、熟語帳に載っていない慣用表現も多く、知識だけで解くには難しい問題でした。
なんとか文意を読み取り、正解を拾い集める必要があります。
内容的にもレベル的にも、受験生に読ませるには酷な話です。
問1:解答解説
- 45:3
- 46:3 jealousy
- 47:1
- 48:2 sounds familiar
45: "you're a sight for sore eyes!" の意味は、「会えてうれしい」「久しぶりに会えて元気が出た」です。これに似た表現として、③ "I'm so happy to see you" が正解です。
46: "the green-eyed monster" は嫉妬心を指す表現です。シェイクスピアの戯曲「オセロ」から来ています。これに最も近い意味は ③ "jealousy" です。
47: "reading too much into things" は「考えすぎる」「深読みしすぎる」という意味です。これに該当するのは ① "overanalyzing" です。
48: "rings a bell" は「聞き覚えがある」「ピンとくる」という意味で、② "sounds familiar" が正解です。
問1:全文和訳
日吉:わあ、会えて本当にうれしいよ!どれくらいぶりだっけ?6ヶ月?
矢上:正確には6ヶ月と1週間と5日。でも、誰がそんなの数えてるの?
日吉:(満面の笑みを浮かべて)それにしてもやっと着いたよ。で、どうやって大学に行く?タクシーを呼ぶ?
矢上:いや、スタンフォードが迎えに来てくれているわ。彼が親切に車に乗せてくれるって。
日吉:スタンフォード?誰だっけ?
矢上:スタンフォードよ。同じ研究室の仲間じゃない。いつも彼の話をしているわ。もしかして忘れちゃたのかもかもしれないわね。
日吉:...僕が心配するような相手かい?
矢上:言い方でわかるわ、「嫉妬するような人か」ってことでしょう?スタンフォードはあなたが心配するような人じゃないわ。彼は間違いなく友達カテゴリーよ。
日吉: ごめん、飛行機で十分に寝れなかったから、考えすぎたのかも。そう言われれば、スタンフォードって名前を聞いたことがあるような気がする。
矢上:(携帯の短縮ダイヤルを押して)待たせてごめんね、スタンちゃん!到着口の前にいるわ。車を回してきてくれる?
語彙
- sight for sore eyes:珍しいお客、見るもうれしいもの。文字通り「痛む目を癒す光景」という意味で、会いたかった人に会えた時の喜びを表します。
- grinning from ear to ear:満面の笑みで
- green-eyed:嫉妬深い
- lose sleep over:~を眠れないほど心配する
問2:解答
- 49:9 wink
- 50:4 picked
- 51:8 third
- 52:5 serious
- 53:8 pop
- 54:7 play
- 55:6 mile
- 56:9 rest
- not get a wink of sleep:一睡もしない
- pick up on:~に気付く、理解する
- third wheel:3番目の車輪、余計な人、お邪魔虫
- play down:軽視する
- pop the question:プロポーズする
- not the case:事実と異なる
- I can see it from a mile away. : 百も承知だ
- have a good night's rest:一晩ゆっくり休む
問2:全文和訳
ようやくカリフォルニアに到着した。飛行機の中では一睡もできなかった。空港では矢上さんとスタンフォードが出迎えてくれた。いけ好かない男だ。
矢上さんが疑惑に気付いて、スタンフォードは友達だと言っていた。電話で親しげに「スタンちゃん」って呼んでたけどね!大学までの車内では、僕が邪魔者の気分だった。研究室の人たちの話題ばかりだ。
由々しき事態だ。すぐ行動しなきゃ。指輪をバッグに忍ばせている。プロポーズしていいタイミングかもしれない。現状を甘く見ていた。空港では深読みし過ぎと言ったけど、全然そんなことない(=予想した通り悪い状況だ)。
スタンフォードは友達で甘んじる男じゃない。1マイル先からでもプンプン匂うぜ(=そんなことは百くも承知だ)。とにかく、一旦寝よう。時差ボケのせいかもしれない。一晩ゆっくり休めば、物事がもっとはっきり見えてくるだろう。
大問4:空所補充 / 最新理系ワード
ブロックチェーンや、クラウドコンピューティング、グリーンメトリクスなど、耳慣れない専門用語が並んでいます。
理系なら知っておこうという大学からのメッセージだと思い、謙虚に受け止めたいところですが、難易度は高い問題でした。
「グリーンメトリクス」は検索しても日本語の説明は出てこないと思いますが、「カーボンフットプリント」で近しい概念を知ることができます。
大問4:解答
- 57:6
- 58:5
- 59:6
- 60:4
大問4:全文和訳
(1):ブロックチェーンは、取引を行い、ネットワークを保護し、データの有効性と起源を記録する新しい方法への技術的基盤である。
(2):クラウド・コンピューティングは、現代のITにおける拡張性のあるサービス・デリバリー・プラットフォームとなっている。
(3):ブレイン・コンピューティングは、神経疾患や傷害の影響を緩和するために、脳と機械をインターフェースする新しいアプローチを開発している。
(4):エネルギー消費量や大気排出量などのグリーンメトリクスは、社会経済的影響と相関している。
(1) ブロックチェーン: 分散型台帳技術の一種で、暗号化されたデータブロックをチェーン状に繋ぎ、改ざんが困難な記録システムのこと。
(2) クラウドコンピューティング: インターネット経由でコンピューティング資源を提供するサービス。
(3) ブレインコンピューティング: 脳とコンピュータを接続し、脳の活動を解析したり、外部機器を制御したりする技術。
(4) グリーンメトリクス: 環境負荷を評価するための指標。野球の「セイバーメトリクス」など、メトリクスが出たら「統計」の2文字をイメージしてみましょう。
大問5:和文英訳 / 村上春樹の「辺境・近境」
村上春樹の「辺境・近境」の一節を英訳させる問題。
故郷にたえず引き戻される人もいるし、逆にそこにはもう戻ることができないと感じ続ける人 もいる。
ポイント
・Some~, others~. :〜な人もいる、〜な人もいる。
・「故郷に引き戻される」は気持ちの話をしているので、「郷愁の念に駆られる」「故郷を懐かしく思う」「故郷への想いとらわれる」あたりで解釈する。
- Some are constantly driven by nostalgia, while others continue to feel that they can never return to their hometown.
- Some individuals are constantly driven by nostalgia, while others persistently feel that they can never return to their native town.
実際の試験は時間も限られているので、スペルの怪しい単語や込み入った表現は使わず、以下のようにまとめる。
- Some always remember their hometowns, while others believe they cannot go back.
- Some will always remember their hometowns, while others believe they can never go back.
- Some people are constantly drawn back to their hometowns, while others feel that they can never go back.
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