早慶9学部全勝。赤本は何年分解けばいい?と聞く受験生が見落としている過去問演習の本質

土方三四郎

開智日本橋学園高校 (東京都・私立)
慶應義塾大学法学部
2021年入学(現役)

併願先
慶應:経済○・商○・文○
早稲田:商○・社学○・文○・教育○・人科○

家族の影響で目指した慶應大学

僕が慶應を目指したのは、行きたい学部があったり、「この人の下で学びたい!」と思う教授がいたりしたからではありません。

ぶっちゃけていっえば、慶應に対するこだわりもなく、大学については名前くらいしか知りませんでした。強いて言えば、中高で打ち込んだボクシングの強豪大学(中央大や拓殖大学)に入りたいな程度の認識でした。

じゃあなぜ慶應を目指したのかというと、それは義務感からでした。

僕の家族は、祖父達は東大、父は京大そして母は慶應という典型的なエリートばかりで、母は僕がそれらに見劣りしない学歴を手に入れることを望んでいました。

初めて親と大学受験について話したのは高1のころでしたが、そのころ母親の考え方は尖りに尖っていて「早慶未満なんてありえない」的な発言をよくしていました。(あくまでも個人の見解で僕自身は大学名より「大学でどう過ごすか」の方が重要だと思ってます) 

だから、とりあえず早慶を目標とし、その2つの中でもボクシングが強い慶應を第一志望にしました。

勉強を続けていく中で「ここまで勉強したんだから、どうせなら早慶に入りたい」と最終的には変わっていきました。

私の英語勉強法

英語は得意だったけど知識はなかった

僕は高2の春から2年間、増田塾という私立文系専門の塾に通ってました。

9歳から1年間アメリカに住んでいた帰国子女で、英語はそれなりにできました。学校で受けさせられる模試も、感覚で解けなかったものは一つもなく、高2の終わりには英検1級を取得できました。

一方で、大学受験において要となる文法の知識は0に等しく、入塾の時点でSVOCの存在すら知りませんでした(誇張ではなくマジの話)。

だから高2のうちはとにかく英語だけを勉強しました。塾の方針もありましたが、それ以上に自分の文法能力の無さに衝撃を受け、ひたすらインプットとアウトプットを繰り返して文法知識とその使い方の理解に努めました。

文法問題集は解答の根拠を言えるように

使っていた参考書は『UPGRADE英文法・語法問題』という問題集です。左側のページにある問題をノートに解き、答えの横にその根拠を書き出し、右側のページの解説と照らし合わせる、という方法で勉強してました。

特に重視していたのは根拠を書き出す部分で、これは他の教科にも言えますが、正しい根拠あるいは間違っている根拠が導き出せなければ、その事項を理解したということになりません。

問題集を何周もし、変な自信をつける受験生はよく見かめますが、何周もしていれば自然と回答は覚えてしまうので、大事なのは解答根拠がすらすらと言えるようになることだと思います。

受験英語は基礎が大事

慶應を受験する上で重要な長文読解の勉強法も方針は同じです。まずは、塾の教科書や『大学受験のための英文熟考』を使って、英文解釈で基礎を固めるところから始めました。

高2のうちはとにかく基礎しかやっておらず、赤本には一回も触れませんでした。その理由は後述します。

高3になってからは、基礎は最初の3カ月で洗い直し、その後は過去問演習をひたすらやっていました。

私の世界史勉強法

世界史を勉強するとはどういうことか

僕は世界史選択で、本腰を入れて勉強を始めたのは高3になってからでした。

勉強方法を大まかにいえば、テキストでインプットをし、問題演習を繰り返してアウトプットする感じでした。

よく言われることですが、世界史は(日本史もそうかもしれない)ただテキストや用語集、資料集を眺めているだけでは慶應には対応できません(というかそもそも覚えきれない)。知識を入れたうえでのアウトプットが必要不可欠です。

ここでいう「アウトプット」というのは「実際の大学受験の問題形式で演習をすること」を指します。よくある、自分の頭の中にあるストーリーを白紙に書き出すことではありません。

実際の大学入試でどのように出されているのかを知ること、それが世界史の受験勉強だと思います。

一方で、演習ばかりやっていてもそもそもの知識が足りなければ対応できる問題の数は少なくなってしまいます。

慶應大学の文学部や法学部で問われる知識にはかなり細かいものが含まれるため、インプットにも多く時間を割きました。

世界史で使っていた参考書

使用していた参考書は『HISTORIA』『世界史 標準問題精講』『実力をつける世界史100題』などでした。

世界史は(好きだったこともありますが)とにかく時間と回数をかけて勉強しました。12月や受験直前期も、赤本に加えて上記の問題集での演習、テキストでのインプットは欠かさず毎日やりました

世界史にそれだけ時間を割けたのは、英語の学習でリードできていたおかげです。

私の小論文勉強法

苦手の小論文は要約対策に集中

僕は小論文が壊滅的に苦手でした。

今でもそうで、大学のレポート課題をやるのは苦痛以外の何物でもありません。この文章も結構きつい思いをしながら書いています。冗談です。

話がそれましたが、小論文の勉強法は、実際の入試問題を解いたものを講師に添削してもらう方式でした。慶應の文系学部はSFCを除きすべて受験しましたが、商学部以外の小論文には「要約」が要求されます。

自分の考えを述べる部分は大したことは書けないし、他の2科目と比べて差が付きにくいと塾で言われたこともあり、要約以外はあまり練習をせず、その分英語と世界史に時間をかけました。

小論文の書き方についてですが、講師一人一人によって方針が違うので、なるべく一人の講師に教えてもらう方がいいと思います。

慶應専門塾GOKOについて

過去問との付き合い方

過去問を解き始めたのは12月から

ここからは、赤本演習についてと、眠たくなった時の僕なりの対処法、そして受験生時代に苦労したエピソードについて書いていきます。

僕が赤本演習に手をつけたのは高3の12月頭でした。

それまで、授業で過去問に触れたことはあったものの、赤本を使った勉強が本格的に始まったのは12月からでした。これはかなり遅い方で、その理由は世界史にあります。

僕が通っていた増田塾では、通史が完了したのが大体11月ごろで、それを待って赤本演習を始めました。

周りではもっと早くからとりかかっていた人もいたし、塾の方針でも「第一次世界大戦の学習が完了して以降は赤本に取り掛かってもよい」となっていました。

しかし、赤本に収録されている過去問の数には限りがあるのに加え、基礎知識を仕上げる時間を最大限取りたかったため、赤本を始める時期が遅くなりました。

世界史過去問演習のタイミング戦略

通史を一通り学習した後の方が、赤本演習における自分の実力が測りやすいという考えもあります。ただ、この方法には過去問分析に割ける時間が少なくなる問題があります。

  • 通史後に過去問を解く:○実力が測りやすい / ×過去問分析の時間が短くなる
  • 順次過去問を解く :×未修範囲の問題を解くことになる / ○過去問に十分時間を割ける

僕は早慶で合わせて9学部受験しましたが、もう少し赤本に取り掛かる時期が遅かったら十分な対策ができていなかったと思います。

実際、12月以降は受験本番まで毎日赤本を解くことになりました。

受験する学部が少ない人、実力が高く学部ごとの問題形式への適応が早い人には勧められる方法ですが、たくさんの学部を受験する人や応用力が低い人にはお勧めできない方法です。

赤本は何年分解けばいい?と聞く人が見落としている過去問演習の本質

また、赤本演習で解く年数について、「志望校の過去問は何十年分も解けば解くほどいい」とよく言われます。これについては、僕はあまり共感できません。

赤本演習の捉え方の違いだと思いますが、基本的に赤本演習とは「志望学部の問題数・問題形式と自分の得意不得意を分析し、それに基づいて解き方・戦略を立てるプロセス」だと僕は考えています。

だから、自分がもっとも高得点をとれる解き方が確立できたなら赤本演習は3年分しかやらなくても問題はないと思いますし、出題傾向が異なる何年も前の過去問を解いてもメリットは大きくないと思っています。

出題形式が現行のものに変わって以降の年度の問題を、「試験の練習」のためにたくさん解くことは効果的だと思うし実際僕もやっていました。

とにかく赤本演習で重視していたのは、

  • ミスをした際に次以降はどう解けばミスが減るのか
  • 時間が足りなければ問題の優先度をどのように設定すべきか

など、受験本番で最大限点が取れるように解き方・戦略を改良していくことでした。

そうすれば自然と、自分の不得意な分野、時間をかけないと点数が取れない分野というものが見えてくる。

赤本演習はとにかく「頭を使って」おこなうべきで、間違っても「力試し」や、明確な目的なしでおこなってはいけないと思います。

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眠気との戦い

僕は、一般的に言う「ロングスリーパー」に分類される人だと思っています。受験生時代もそうで、特に受験終盤は非常に眠気に悩まされました。

4月や5月は、ボクシングでついた体力のおかげで、特に居眠り等することもなく1日13~14時間勉強することができていた。

しかし受験の長期的なスケジュールで、夜は22時まで塾があり平日は毎日学校がある中、体力はすぐに落おちてしまい、夏休み以降は頻繁に居眠りをするようになってしまった。

また、人間は体の構造的に、食後に眠くなってしまいます。眠いときにする勉強ほど効率とパフォーマンスの低いものはありません。

そこで僕は直前期からあることを心掛けるようにしました。

それは、休憩時間中・試験合間に仮眠をとることです。

試験本番もあえて寝る。戦略的睡眠のすゝめ

当たり前じゃね?と思うかもしれませんが、それでは自習中の自分や周りの姿を振り返ってみてください。スマホいじってる人、友達と談笑している人がほとんどではないでしょうか。

たとえ10分目を瞑っているだけでも、脳は回復し、よりよいパフォーマンスで目の前の問題に望むことができます。

実際の入試でそれが重要なことは当然ですし、普段の勉強においても、眠気と戦い頭をカクカクさせながら勉強するよりも圧倒的に効率がいいです。

僕は本番の入試でも試験会場で必ず仮眠をとっていました。

持病との戦い

また、僕は高3の夏休みごろから過敏性腸症候群に悩まされるようになりました。もともとおなかは弱かったですが、僕の場合は精神面や周囲の環境が大きな要因でした。

学校や家では特に問題ありませんが、塾の自習室で勉強している時はとにかくお腹の調子が悪く、オナラを我慢することに集中して勉強に集中できない悪循環に陥っていました。

「このせいで受験落ちたら笑えないな」と思いながら日々勉強していました。

過敏性腸症候群に限らず、受験生は体調を崩しがちなので、そういう時は無理せず休むべきだと思います。

僕は、毎日ヨーグルトを摂取したり、なるべく空腹の時間を作らないようにすることでおなかの不調に対処していました。

ちなみにこの不調は、僕の第一志望である慶應義塾大学法学部の入試で最悪の事態を引き起こすことになりますが、それについては次の章で書きたいと思います。

慶應専門塾GOKOについて

慶應受験の実況中継

受験当日の実況中継をする際に取り上げるのは、文学部・法学部の2つです。この2つは他とは違いイレギュラーが発生し、特に記憶に残っています。

2月15日 文学部

まずは2月15日、慶應義塾大学文学部の一般受験。この日はかなり雨が降っていいました。

受験生時代僕はリュックを使用してましたが、その日はチャックを閉め忘れて、大学についたところで財布を落としてしまいました。

幸い別の受験生がすぐに拾って渡してくれたので大事にはなりませんでしたが、今思えばその日はいろいろと集中力がかけていたのかもしれません。財布を落とした後、今度は受験票を落としてしまいました。雨の降るキャンパスで。

受験票はクリアファイルに入れて持ち運んでいましたが、ふと見ると受験票がありませんでした。急いで振り向くと、少し後ろに受験票が落ちていました。なんとか受験票紛失は免れましたが、受験の緊張の中、さすがに少し動揺してしまいました。

試験自体は問題なく解くことができましたが、試験中も焦ってパニックになっていたら、おそらく本来の実力を出すことは難しかったと思います。

2月16日 法学部

文学部の試験翌日2月16日、今後は法学部の入試です。電車の遅れで試験時間が大幅に遅れるというハプニングはありましたが、ここでは特に動揺はありせんでした。

英語は多少形式に変化があったものの、大まかな時間配分は崩さず試験を終えました。なんなら、普段よりも良い感触でした。

そして休憩をはさんで世界史の試験。ここで僕は誤った行動に出てしまいました。

これもアドバイスの一つですが、普段の勉強から、受験当日と同じ動きをオススメします。どういうことかというと、当日と同じ試験3科目の順番と時間、休憩時間で過去問演習をおこないます。

慶應なら、英語⇒選択科目⇒小論文で、間に10分ほど休憩(本番の休憩時間はもっと長いが、そこは短縮)をとるという感じです。

僕はいつも、10分の休憩で仮眠をとっていました。一種のルーティーンのようなものです。しかし法学部の時だけ、休憩中に世界史の細かい知識を最大限おさらいしておこうと、仮眠もトイレにも行かず用語集に食らいついていました。

これが最悪のコンディションをまねきます。

食事後だったため頭はぼーっとしていて集中できないし、何よりお腹の調子が非常に悪く、トイレにもいかなかったため、破裂寸前でした。

そのため、試験前の注意事項を説明している時、油断して伸びをした瞬間オナラが出てしまいました。

夏休み以降およそ7カ月我慢し続けていたのにも関わらず、それも第一志望の受験の最中に。

幸い、席が一番後ろで誰も音に反応しなかったために、精神崩壊は免れました。それでも恥ずかしさで心は折れる寸前でした。

結果的に合格することができたため今となっては笑い話ですが、世界史は思ったほど解けず、小論文もとても難しかったため、最悪の心境のまま、僕の慶應受験は終了しました。

慶應に入学して

大学には期待しない。大事なのは自分の過ごし方

正直「慶應のここが良くて、ここが悪い」と具体的に言えるポイントはあまりありません。自分自身の過ごし方次第で、大学の特性は良くも悪くもなります。

慶應義塾大学の強みの一つとして「三田会」の存在が挙げられますが、僕は一年生で就活に対する意識も知識も現時点ではないので、まだその強みを実感することは(当然ですが)ありません。

受験に対するモチベーションに水をかけたいわけではありませんが、正直なところを言えば、慶應でも他大学でも、できることにそこまで差はありません。慶應にいてできることは、たいてい他の大学でもできます。

サークル活動も授業の豊富さも、慶應が他の大学に圧倒的に差をつけて優れているとは思いません。学ぼうと思えば、慶應で学べることは他大でも学べます。

繰り返しになりますが、大学の良し悪しを決定づけるのは結局のところ自分自身の過ごし方なのです。

最後に

ここまで長々と合格体験記(という名目で少し趣旨から外れることも書いたが)を読んでくれてありがとうございました。

僕自身を客観的に見れば、早慶9学部全勝というこで大学受験における成功例のひとつだと思います。

ただ、だからといって僕のしていた勉強法やアドバイスが万人にとって最適解と言ったら、絶対にそんなことはありません。人それぞれ向いているものがあると思います。

その中で、この合格体験記が誰かの役に立つことがあれば幸いです。

また、当面の間皆さんのゴールが慶應義塾大学合格であることに変わりはないですが、それとは別に「大学に入ったらやりたいこと」は絶対に意識しておいた方がいいです。

これは受験全体に言えますが、例えば入りたい学部を決めるだけでもいいので、受験が本格化する前に一度考えてみてほしいです。

入学後にその目標は変わるかもしれませんが(実際僕はボクシングの強さで慶應を志望しましたが、大学入ったらやめて、学生プロレスやっています)、なにかしらビジョンが具体的になっていた方が、有意義な大学生活になるかと思います。

勉強面で最後にいう事があるとすれば、それは「頭を使って」勉強する事。これは赤本演習のところで書いた内容と一緒です。ただ惰性で勉強するだけなら誰でもできますが、いつか伸びなくなるパターンです。

僕の合格体験記は以上です。コロナ禍は相変わらずですし、共通テストは予測が困難という、受験生にとっては厳しい情勢が続きますが、頑張ってください!応援しています!

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