慶應法学部2023年英語:解答解説と各問講評 / TikTokはかくして日本で人気になったか?
この記事では、慶應義塾大学法学部の2023年入試の英語について紹介していきます。
全体分析
大問1で新形式が出題され、語数は増えて全体で2,000字程度でしたが、慶應法学部と考えれば全体としてはやや易〜標準の難易度でした。
大問2と大問4は苦戦する受験生が多いと思うので、よく復習してください。
法学部2023合格最低点
法学部2023年の合格最低点は、247点と252点でした。
順当合格を目指すのであれば、英語と歴史合わせて7割(210点)は取りたい年でした。
大問1:語彙問題
新形式の語彙問題。2語の共通部分を補って単語を完成させる問題。
他大学ではあまり見ない形式ですが、落ち着いて確実な単語から埋めていけば正解できるので、標準的な難易度と言えそうです。
大問1解答
問題 | 解答 |
---|---|
1 | 1 |
2 | 3 |
3 | 4 |
4 | 6 |
5 | 5 |
6 | 8 |
7 | 7 |
8 | 2 |
9 | 9 |
10 | 0 |
大問2:小説 / 難語類推問題 「不思議なランプ」
下線部の単語の意味を答える問題。
英検1級相当(やそれ以上)の語彙も含まれており、受験生が覚えるべき単語レベルを超えています。
そのため、単語の知識を問う問題ではなく、話の流れや品詞から"推測"する問題であると言えます。
【問題文冒頭】
Having inveigled his way into the old lady's home and confidence, John took advantage of her going into the kitchen to put the kettle on, to explore what lay behind the mysterious-looking door to his right.
受験生レベルでは単語を推測していくしかないので断定は難しく、7~8割の確信度で一つ一つの解答を作ることになります。
その意味で、やや難易度の高い問題でした。
大問2解答
問題 | 解答 |
---|---|
11 | 2 |
12 | 9 |
13 | 6 |
14 | 8 |
15 | 4 |
16 | 7 |
17 | 3 |
18 | 0 |
19 | 5 |
20 | 1 |
大問3:会話問題「成人年齢引き下げ」
高校生2人が成人年齢引き下げについて話している会話文問題。
特別難解な表現もなく、話の流れを押さえながら解答すれば解ける問題です。
慶法受験生的には、標準的な難易度といえます。
【問題文冒頭】
[Situation: high school students Hiro and Yuri strike up a conversation after class.]
Hiro: What do you think about the government having lowered the age of adulthood to 18?
Yuri: Well, it only came into effect a year ago, so it is a bit too early to tell really. Why?
大問3解答
問題 | 解答 |
---|---|
21 | 4 |
22 | 3 |
23 | 5 |
24 | 1 |
25 | 2 |
26 | 5 |
27 | 3 |
28 | 4 |
29 | 2 |
30 | 1 |
大問4:英国俳優ベン・キングズレーへのインタビュー
- 題名:: I LOVE THE NOW, IT IS ALL WE HAVE
- 話者:ベン・キングズレー / BEN KINGSLEY (2015)
- 文字数:700字程度
イギリスの俳優ベン・キングズレーへのインタビュー記事から出題。
質問に対して、回りくどい返答をしている箇所がいくつかあるので、そこは注意が必要です。
意外かもしれませんが、設問31~38の質問文は元のインタビューと同じ順番です。
順番を不自然と感じた受験生もいたかもしれませんが、大きな流れ自体は元ネタ通りです。
プチ解説
設問作成のために、元ネタから変更された箇所がいくつかありますが、一つ紹介します。
まず原文では、選択肢6の以下のマーカー部分が省略されています。
選択肢6
Yeah. Maybe exhaustion for no particular reason. I do have warning signs and I pull back. Usually it means that I am doing too much, you know.
設問36「Are there warning signs?」の解答は選択肢6ですが、残ったままだと即答できてしまうので、省略して難易度を上げたと推測されます。
同じく選択肢6から、「economical」が使われていますが、経済の話や自身を倹約家であると言っているわけではありません。
選択肢6
I am not being economical like I said earlier. If I become economical and just stick within the essence of the story and the character, then I’m not stretching myself too much. But it is a risk.
「役者としてやり過ぎてしまう」「役に入り込んでしまう」性格を、not economicalと表現しています。
最後に設問37から。設問37の設問は以下の通りですが、原文では「Marlon」の部分が省略されています。
設問37:Marlon Brando showed that you can give your best performances in extreme situations.
「Marlon Brando」と言われたところで多くの受験生が「誰だよ」感じでしょうが、めちゃくちゃ有名な往年の俳優さんです。
元記事の対象読者的には、「Brando」といえば「マーロン・ブランド」しかいないよね、ということで「Marlon」部分が省略されてるのだと思います。
マーロン・ブランドは、雑誌TIMEで「20世紀の最も影響力がある俳優のひとり」とされたアメリカの俳優で、名作映画「ゴットファーザー」で主演を主演もつとめた俳優です。
大問4解答
問題 | 解答 |
---|---|
31 | 3 |
32 | 7 |
33 | 1 |
34 | 4 |
35 | 2 |
36 | 6 |
37 | 0 |
38 | 5 |
大問5:TikTokが日本で成功したワケ
- 題名:: Attention Factory: The Story of TikTok and China's ByteDance
- 話者:マシュー・ブレナン / Matthew Brennan (2020)
- 文字数:1,000字程度
中国のネット技術とイノベーションを専門分野とするイギリス人作家、マシュー・ブレナン氏が2020年に出版した本から出題。
日本語版はこちら。
語彙は1,000字と多いですが、TikTokという受験生には身近で取り組みやすい話題でした。
慶應法学部としては平易で大意を掴みやすく、素直に読んで解答していけば良い、点数を稼いでおきたい問題でした。
【問題文冒頭】
When Chinese internet companies begin internationalization, they typically first look towards their backyard, Asia, home to over half the world's population. Many Asian countries share broad similarities with China, with mobile-first users who skipped the 1990's and 2000's Web 1.0 and 2.0 desktop internet eras.
大問5:各パラグラフ要約
各パラグラフをざっくりまとめると、以下の通りです。
*内容理解を優先して、一部大幅に意訳している箇所もあります。あくまで概要ということをご了承ください。
- 中国発のTikTokがアジア進出にするにあたり、日本が最も難しい市場であった。
- TikTokの初海外拠点はファッションのメッカ渋谷であったが、狭いシェアオフィスに5人ほどのチームからスタートした。
- TikTokはユーザーの顔出しを期待していたが、日本人はSNSで実名を使ったり顔出しすることに抵抗がある。
- 2つ目の課題は、中国の無名企業が優秀な日本人労働者を雇うこと。3つ目の課題は、日本人がアジアのインターネットサービスに対して慎重であることである。
- 東京チームはTikTokにふさわしいインフルエンサーを特定しアプローチすることに注力した。しかし、インフルエンサーはタレント事務所に所属しており、どの事務所も真剣に取り合ってくれなかった。
- 転機が訪れたのはタレントの木下優樹菜の事務所と契約に至った時であった。その後、さまざまなインフルエンサーをTikTokに迎え入れることができた。
- Tik TokがTwitterでプロモーションをした際に流した動画は、若者向けのダンスやリップシンクであった。TikTokが日本で成功を収めた主な理由は、他に似たようなコンテンツがなかったからだと言える。
- 顔出しを嫌う日本文化に対応するため、グループで参加できるチャレンジや、顔を認識しにくくするフィルターなど、自意識の低下や外見への不安を払拭する施策を用いた。
- TikTokジャパンが成功するにつれ、運営の決定権も北京本社から日本に移っていった。その後の広告戦略の効果もあり、2018年にはほぼ毎日テレビで取り上げられるようになった。
TikTokの歴史
本文では、時系列でTikTokジャパンの歴史が紹介されますが、記述されていない部分も含めて振り返ると以下の通りです。
<TikTokの歴史>
- 2016年9月:ByteDance(中国の企業名)が中国本土でDouyin(中国でのTikTokのサービス名)開始
- 2017年5月:日本でTwitterアカウント解説
- 2017年10月:日本でTikTokのサービスを開始
- 2018年10月:Avexと業務提携
- 2018年12月:新語・流行語大賞で「TikTok」がノミネート
こうしてみると、2018年が一気に流行した様子が伺えます。サービス開始してわずか1年の出来事で、信じられないスピードです。
Twitterアカウントも確認してみましたが、確かに2017年の5月にアカウントが開設されていました(運用を開始したとは言っていない)。
TikTokの日本での課題と対応
本文では、日本における課題が3つでてきました。
<TikTokの日本での課題>
- 課題1:ユーザーがSNSで顔出しをしない
- 課題2:優秀な日本人スタッフを雇えない
- 課題3:アジア発のネットサービスに対して慎重
課題1に対しては、グループで投稿する企画やフェイスフィルターで対応。確かに友達と一緒に出ている動画が多い印象で、実に巧みなマーケティングだと思いました。
課題2と3に対しては、とにかく実績を作り、その実績をもとに好循環を生み出していった感じです。
本文では、
- 木下優樹菜の事務所と契約→それを実績に他のインフルエンサーと契約
- 上記の実績をもとに大規模なマーケティングを実施、知名度を上げ、日本人スタッフも雇いやすくする
といった流れが説明されていました。
大問5解答
問題 | 解答 |
---|---|
39 | 2 |
40 | 3 |
41 | 4 |
42 | 4 |
43 | 2 |
問題 | 解答 |
---|---|
44 | 7 |
45 / 46 | 1 / 3 |
47 | 5 |
48 | 4 |
49 | 1 |
追記:2023年入試問題が掲載された赤本や青本が発売されました。詳細な解説がされていると思いますので、他年度も含めてぜひ紙面もご活用ください。
慶應は青本は多くはないので、せっかくなので青本をオススメしておきます。
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