慶應経済2026年英語:解答解説と全文和訳 / フードバンク

2026年2月13日に行われた、慶應義塾大学経済学部一般選抜の英語の解説をします。

解答は順次更新していきます。(現在大問3まで)

前年から大きな変更はありませんでした。

他学部と比べれば圧倒的に語彙レベルも易しく、取り組みやすい難易度の英文です。

また、基本的には1段落ずつ読んで解答すればよく、その意味でもストレートな学力を問う形式でした。

  • 題名:フードバンクは重要な地域組織 / Food Banks Are Vital Community Organs
  • 著者:I. B. Kerenne (2025)
  • 語数:800語程度

大問1はフードバンクに対して肯定的な文章でした。

なお著者「I. B. Kerenne」は「I be caring ( 私は思いやりがある)」のモジり(pun)かもしれません。

内容は概ね以下の通りです。

先進国ではインフレ等の影響で生活費危機が深刻化し、政府に代わり「フードバンク」が困窮世帯を支える重要な役割を担っている。

食の貧困は子供の学力低下や健康悪化を招くが、人々は周囲への羞恥心から、社会的つながりがあっても自力で解決できずフードバンクに頼る現状がある。

一部では栄養不足や依存への懸念という批判もあるが、実際には多様な食糧の提供や、スーパーと連携した食品廃棄の削減、さらには家計管理等の自立支援ワークショップを通じて、単なる物資支援以上の価値を提供している。

フードバンクは、誰もが直面しうる困窮に対し、コミュニティの善意で支え合う道徳的社会の礎として不可欠な存在となっている。

大問1:解答と解説

問題解答語句・内容
(1)2goodwill
(2)2However,
(3)2due more to poverty...
(4)2four
(5)4This is by no means...
(6)1acquiring
(7)3disposing
(8)2cooperating
(9)3dependence
(10)2hence

設問3と5だけ解説します。

設問3

  1. 貧困と社会的つながりの欠如が、同程度に混ざり合ったもの
  2. 社会的つながりの欠如よりも、むしろ貧困によるもの
  3. 単に、幼い子供がいることと貧困の組み合わせにすぎない
  4. 主に、高齢であることと社会的つながりの欠如

「親しい親族や友人がいても(社会的つながりがあっても)、恥ずかしくて頼めないからフードバンクに行く」と説明されているため、「つながりがないから」ではなく「お金がないから」という選択肢2が正解となります。

設問5

  1. 両方の点において、フードバンクは合格点に達していない
  2. それは、誰も異論を唱えない点である
  3. 詳しく調査してみれば、このことは明白になる
  4. 決してそのようなことはない

直前で「フードバンクは多様で栄養のある食事を提供できていない」という批判を紹介し、直後から「実際にはパン、米、シリアル、さらには肉まである」と反論が始まります。したがって、前の批判を強く否定する選択肢4が正解となります。

大問1:全文和訳

【第1段落】

21世紀の幕開けにおいて、今日私たちが目にしているような貧困の広がりを、経済先進国で予測した者はほとんどいなかっただろう。しかし、2008年の金融危機、パンデミックによる景気後退、そして世界的なインフレの急増が「生活費危機」をもたらし、日々の最も基本的な必需品さえ購入するのに苦労する世帯が増え続けている。政府はもはや対処しきれていない。その代わりに、多くの世帯が今や他者の善意に頼るようになっている。それが、経済的に困窮している人々へ食料やその他の日用品を配布する非営利団体、すなわち「フードバンク」である。

【第2段落】

先進国における食の貧困は、子供たちの教育と健康に多大な影響を及ぼしている。人々は貧困を病気の原因にすることをあまりに恥じるため、研究者たちはこれまで、不健康と食の貧困の間の明確な関連性を立証できずにいた。しかし、この状況は変わりつつある。例えば、最近のOECD諸国の調査では、安価で栄養価の低い食生活が、平均寿命を縮める主要な要因として特定された。同時に学校の教師たちからも、空腹のせいで生徒の授業中のパフォーマンスが低下しているという報告がますます増えている。さらに、昼食代を払えないという恥ずかしさが一因となって、欠席者が増加する事態も起きている。

【第3段落】

人々がフードバンクを利用する正確な理由を特定するのは困難だが、専門家は、それが社会的つながりの欠如よりも、むしろ貧困に起因するものであるということで一致している。幼い子供を持つ低所得世帯や、国の給付金に頼っている世帯は、家賃や光熱費を支払った後に残るわずかな金額では、栄養のある食事はおろか、空腹を凌ぐことさえ不十分であると痛感している。こうした人々には親しい親族や友人がいる場合でも、実際には食料品の援助を求めることは深い羞恥心を伴うため、結果としてフードバンクを利用することになる。高齢者もまた無縁ではない。家族や友人が近くにおらず、支援を受けられないまま一人で暮らす年金生活者が、時にお金が底を突き、こうした地域のサービスに頼らざるを得ないこともある。

【第4段落】

不幸な現実として、フードバンクは当面の間、存在し続けるだろう。2021年からの2年間で、アナリストは英国におけるフードバンクの利用率が50%増加したことを観測した。事実、配布された食料セット(フードパーセル)の数は、2021年の74万件から2024年には150万件近くまで増加した。同期間にフードバンクの数が40%増加したことを考えれば、これは驚くべきことではないのかもしれない。将来を見据えると、アナリストは2027年までに食料セットの配布数がさらに倍増すると推定している。そうなれば、2021年の数字をわずかに4倍上回ることになる。

【第5段落】

フードバンクが提供する食品の種類が明らかに不足しており、多様で栄養価の高い食事を提供できていないと批判する者もいる。しかし、決してそのようなことはない。 新鮮な果物や野菜が不足することもあるかもしれないが、フードバンクはパン、米、シリアルといった主要な主食に加え、果物の缶詰から、紅茶やコーヒー、チョコレート、インスタントラーメンに至るまで、多種多様な栄養源となる食品を提供している。さらに、新鮮な農産物ほどの贅沢品ではないにせよ、スーパーマーケットチェーンからの冷凍庫の寄付のおかげで、限定的ではあるが冷凍の肉や野菜を提供しているフードバンクさえある。

【第6段落】

食品廃棄の観点から見れば、フードバンクは企業に対し、不要になった、あるいは販売不能だが十分食べられる食品を処分する方法も提供している。大手スーパーマーケットは、その多くが売れ残って棚に留まることがほぼ確実であるにもかかわらず、過剰な在庫を仕入れることで悪名高かった。スーパーマーケットはこれまで、未使用の在庫の大部分を単に処分するという最も安上がりな方法を選んでいると非難されてきたが、地方自治体による法的努力が、スーパーマーケットに対し、その無駄なビジネス慣行を再考させ、地域のフードバンクと協力し始めるよう徐々に促している。こうして、食品廃棄物との広範な戦いにおける重要な転換点が印されている。

【第7段落】

反対派は、フードバンクが利用者の間で持続不可能な依存のサイクルを助長しているとしばしば主張する。しかし、フードバンクの運営者たちは、この点(依存の打破に向けた活動)を誇りにしている。今日のフードバンクは、単に食品を提供する場を超えて進化している。現在、彼らは利用者が自立することを目指し、さまざまなトピックのワークショップを提供している。これには、基本的な家計管理、多くの利用者が知らない可能性のある公的扶助(給付金)への意識向上、給付申請の手続きのサポート、さらには栄養や食生活に関するアドバイスなどが含まれる。

【第8段落】

要するに、フードバンクは「善」の源である。それらは、道徳的な社会の礎であるべき「コミュニティ精神」を体現している。フードバンクは政府の支援を必要とせず、政府の政策変更よりも長く存続することができる。ますます多くの世帯が生活費の高騰に対処できなくなっており、それゆえに、次に誰がフードバンクを必要とすることになるのかを問う必要がある。恵まれない人々を地域社会が支え続けることは極めて重要である。なぜなら、あなた自身でさえ、無料の食料を求めて列に並ぶことになるかもしれないのだから。

重要単語

  • vulnerable:脆弱な、困窮した
  • meager:乏しい、不十分な
  • foreseeable:予見可能な
  • for the foreseeable future: 当分の間
  • staples:主食、主要産物
  • nourishing:栄養のある
  • notorious :悪名高い
  • cornerstone :礎(いしずえ)、基礎
  • parcel:荷物、小包
  • tinned fruit:缶詰の果物
  • outlast:より長く続く、残る

重要熟語

  • cope with : ~に対処する、~をうまく処理する
  • immune to : ~を免れて、~の影響を受けない
  • by no means : 決して~ではない
  • dispose of : ~を処分する、~を捨てる
  • stand on one's own two feet : 自立する、独り立ちする
  • in sum : 要約すると、つまり

  • 題名:何かがおかしい フードバンクの受け入れがたい現実 / Something Smells Off: The Unpalatable Reality of Food Banks
  • 著者:Bill Thurman (2025)
  • 語数:750語程度

大問1の肯定的な見解とは対照的に、大問2ではフードバンクを「格差の象徴」「政府の責任放棄」として批判的に捉えています。

なお著者「Bill Thurman」は「Bill the man(政府に請求しろ)」のモジり(pun)かもしれません。the manはスラングで「権力者」を指します。

大問2:解答

問題正解選択肢
(11)4massive inequality
(12)4deal with an emergency
(13)2directly recommend
(14)3 or 5unusual or well-known
(15)2unconvinced
(16)4vast
(17)3unfortunate long-term results
(18)2free from
(19)3put off
(20)1improve the efficiency of
(21)4neither
(22)1I. B. Kerenne only

大問2:解説

1段落 設問 [ 11 ]

非常に豊かな国(GDP上位、億万長者が多数)でありながら、食料の万引きやフードバンクが増えている。これは富の偏り、つまり 4. massive inequality(巨大な不平等/格差) の結果であると述べています。

2段落 設問[ 12 ]
文中に「本来の目的は失業の急増や短期的な困難を抱える世帯を助けることだった」とあるので、元々は 4. usually set up to deal with an emergency(通常、緊急事態に対処するために設置されたもの) だったと推測します。

3段落 設問[ 13 ]
フードバンクの増加は「政府の無策」の結果に見えるが、実は「公務員が積極的にフードバンクの利用を促している」という実態が述べられています。したがって、2. governments directly recommend the use of food banks(政府が直接的に利用を勧めている) が適切です。

4段落 設問 [ 14, 15, 16 ]

[ 14 ] (3)unusualか(5)well-knownかで迷う問題です。4段落は、英語論文のあるあるの「一般論 → 具体例 → 結論」の構造をしています。

(一般論) 慈善団体は「フードバンクを増やせば貧困が減る」という誤解をしばしば利用する。→(具体例) そのような [ 14 ] ケースの一つが2021年に起きた。→(結論): この典型的なケース は、いかに慈善団体が問題を [ 16 ] に見せることで宣伝を求めているかを浮き彫りにしている。

の流れにあり、後半に"typical case"とあることから、その言い換えと推測して(5)well-knownとします。

[ 15 ] 誇張された数字に対し、疑いを持つ人々(Sceptics)は 2. unconvinced(納得しなかった/信じなかった)

[ 16 ] 慈善団体は宣伝のために、問題がいかに 4. vast(莫大な/広範囲な) であるかを主張したがる。

第5段落 設問 [ 17 ]  
保存の利く缶詰などは塩分や糖分が高いという「実用的な必要性」があるが、それは同時に 3. has unfortunate long-term results(不運な長期的結果をもたらす)。後の文で「将来的な健康問題」に触れていることから、その抽象文として推測します。

6段落 設問 [ 18 ]
フードバンクの支持者がよく言うメリットとして、政府の福祉につきものの官僚主義(面倒な手続き)が「ない」点。よって 2. free from(~がない/免れている) が入ります。

6段落 設問 [ 19 ]
最近のフードバンクは紹介状やIDなど複雑な手続きが必要になり、それが本当に助けを必要とする人々を 3. put off(やる気を削ぐ/遠ざける) ことになっている、という文脈です。

7段落 設問 [ 20 ]
ボランティアはフードバンクで働くより「政府へのロビー活動」をすべきだと言っており、政府は福祉制度を 1. improve the efficiency of(の効率を改善する/立て直す) 必要があると主張しています。文全体として、政府の責任を説いていることから予測します。

設問 [ 21, 22 ]

[ 21 ] 政府はフードバンクをもっと支援すべきだ。
4 (Neither)。著書1(Kerenne)は「政府の支援は必要ない(コミュニティでやるべき)」と言い、著書II(Thurman)は「フードバンク自体を解体して政府が福祉をやるべき」と言っているため、両者ともNOです。

[ 22 ] フードバンクは利用者に栄養のある食事を提供できる。
解答: 1 (Kerenne only)。著書1は肯定(多様で栄養豊富)、著書2は否定(塩分過多の保存食ばかり)しています。

大問2:全文和訳

【第1段落】

いかなる豊かな先進国であれ、フードバンクが存在しているということは、貧困層に極端な苦難を強いることを不当に許容している社会であるという証拠だ。例えば英国を見てみよう。一人当たりGDPが世界トップ10%に入り、150人以上の億万長者が存在する最も裕福な福祉国家の一つが、なぜフードバンクの増加と食料の万引きの増加に同時に見舞われているのか。米国も、平均GDPがさらに高く、より多くの億万長者を抱えながら、なぜ同様の事態に対処しているのか。これら両国は、巨大な格差がもたらす社会的帰結を如実に物語っている。

【第2段落】

フードバンクが最初に設立された当初、それらは通常、緊急事態に対処するために設置されたものであった。その目的は、失業率が急増した地域や、一時的な困難に直面している低所得世帯に食料を提供することだった。確かに、緊急のケースに備えて、外部の慈善団体や企業が小規模で限定的な数のフードバンクを設立することは合理的だ。しかし、不幸にも現実となったのはその逆、すなわち広大な「慈善産業」の誕生だった。フードバンクのような慈善団体の中心的な目標は貧困を打ち倒すことにあるはずだが、その数は増え続けている。これは矛盾ではないだろうか。

【第3段落】

過去20年間にわたり、先進国は積極的に福祉手当を削減してきた。その結果、フードバンクを含む慈善団体が困窮者を助けるために台頭した。フードバンクの増加は国家の不作為の結果であるかのように見える。しかし、実際には政府が直接的にフードバンクの利用を勧めているのだ。欧州やアジアの数カ国の報告によれば、公的職業紹介所の職員が、日々の食事に苦慮している人々に対し、日常的にフードバンクを利用するよう促しているという。貧困の負担を慈善団体に外注することは、間違いなく道徳的な破綻である。さらに、それは国民の「食への権利」を保障するという政府の義務を無視している。

【第4段落】

慈善団体がしばしば利用しようとする一般的な誤解に、「フードバンクを拡大すれば、食の貧困に苦しむ人の数が減る」というものがある。そうしたよく知られた事例の一つが2021年に起きた。ある大規模なフードバンクが、利用者が200万人に倍増したと主張したのである。懐疑的な人々は納得せず、この数字の詳細を求めたところ、その団体は数値を下方修正し、実際のユニークユーザー(実利用者数)は80万人に増えたに過ぎなかったと釈明した。この典型的な事例は、一部の慈善団体が、いかに問題が広範囲であるかを主張することで、いかに宣伝効果を求めているかを浮き彫りにしている。ある学術調査によれば、フードバンクの利用者は、切実に食料を必要としている人々のわずか4分の1に過ぎない。フードバンクを増やしても、深刻化する飢餓の解決にはほとんど役立たないことが強調されている。

【第5段落】

フードバンクが栄養価の高い食事を提供できるという考えは、精査に耐えうるものではない。フードバンクが要求するのは主に、保存料が大量に使われ、塩分や糖分が高い缶詰のような、棚持ちの良い(賞味期限の長い)食品である。明らかに、この傾向は実務上の必要性からくるものだ。しかし、それは不運な長期的結果をもたらす。実のところ、低所得世帯は、食材から調理するための設備やスキルもなければ、その時間やエネルギーも持ち合わせていない傾向がある。その結果、彼らはフードバンクの提供品を好むことになる。フードバンクは当座の飢えを和らげるかもしれないが、栄養バランスの取れた選択肢の欠如は、将来的に健康問題を引き起こし、医療サービスにさらなる負担を強いることになるだろう。

【第6段落】

支持者たちはしばしば、フードバンクは政府の福祉プログラムを特徴づける「官僚主義(煩雑な手続き)」から免れていると言う。確かに、政府の給付金申請の手続きを進めるのは時間がかかり、緊急の支援を必要とする人々にとっては、単に不可能なことでもある。しかし、正当な理由のない人々がフードバンクを悪用するのではないかという懸念もまた、特有の官僚主義的な問題を生み出している。現在、多くの大規模なフードバンクでは、顔写真付きの身分証明書、失業や給付金の証明、経済的困窮の証明に加え、医療機関や雇用センターからの紹介状を求めている。この複雑な手順は、真に助けを必要としている潜在的な利用者の意欲を削ぐ(遠ざける)には十分すぎるものである。

【第7段落】

慈善団体や企業が、緊急の社会問題に取り組む負担を負うべきではない。政府は国家の福祉制度を改善(再構築)する必要がある。フードバンクに時間を捧げている何千人ものボランティアたちは、その時間を地方政府や中央政府への福祉改革のロビー活動に充てたほうが有益だろう。私たちは、慈善的なフードバンクシステムと大手食品小売業者とのつながりを解体すべき段階に達している。政府はフードバンクを「地域の慈愛」を示す誇るべき源として称賛するかもしれないが、即座の国家福祉改革を伴わないのであれば、その言葉は空虚なものに過ぎない。

  • 題名:食品廃棄は皆の損失か?/ Food Waste: Everyone's Loss?
  • 著者:Mo Tyenigh (2025)
  • 語数:950語程度

大問3:解答速報

問題正解内容
(23)2interrelations
(24)4Surprisingly… straightforward
(25)1alarming
(26)3essential
(27)4fragile
(28)1does not always lead to...
(29)3twice as long
(30)1effectively
(31)4an excessively lengthy
(32)2cooperation to combat...
(33)2residence

全文和訳

【第1段落】

一般的な消費者は、スーパーマーケットへ買い物に行く際、食品が棚に届くまでの長く複雑な経路について考えることはほとんどない。むしろ消費者が重視するのは「コストパフォーマンス」、つまり最も手頃な価格で最高の品質を手に入れることである。しかし、消費者だけに重きを置きすぎるのは不十分だ。消費者は、政府や国際企業が結託して結果を決定する、グローバルな食料生産システムの影で行動しているのである。食品ロスや食品廃棄といった現代の主要課題の一つが浮かび上がってくるのは、まさにこれら複雑な相互関係 を通じてのことなのだ。

【第2段落】

食品ロスと食品廃棄の規模は、驚くべきものである。2019年の国連報告書によると、全生産食品のうち、収穫後から小売店に届くまでに失われる「食品ロス」は14%に達し、年間4,000億ドルという驚異的な額が無駄になっている。この食品ロスは、食品生産技術やグローバルな食料供給網の複雑な背景によるものだと考えても、無理はないだろう。驚くべきことに、その理由は比較的単純明快であり 、主に好ましくない天候に集約される。しかし、食品ロスは主要な問題ですらない。それを上回るのが、生産段階の後に小売業者や消費者によって廃棄されると推定される17%の食料品である。これは「食品廃棄」と呼ばれる。この廃棄の凄まじい規模は、読んでいて暗い気持ちにさせる。世界全体で年間、1兆ドル以上の価値がある13億トンが廃棄されているのだ。食品ロスと食品廃棄の結果、生産された全食品の約3分の1が、決して消費されることはないのである。

【第3段落】

さらに、食品ロスと廃棄からは、環境への甚大な影響も生じている。ある推定によれば、食料生産全体ですでに全土地利用の40%、淡水利用の70%を占めており、特に警戒すべきなのは、森林破壊の80%、全温室効果ガス排出量の30%を占めている点だ。これらは必要なことかもしれないが、地球環境がますます不安定になっている状況を考えれば、何一つ無駄にしないことが不可欠 である。国連の推計によれば、食品ロスと廃棄が温室効果ガス排出量の10%を占めている事実に、私たちは皆関心を持つべきだ。そして、これらの排出が、すでに 脆弱な 気候をさらに不安定にさせ、供給網を混乱させるだけでなく、作物収量に壊滅的な影響を及ぼしうる干ばつや洪水の可能性を高めているのである。

【第4段落】

これらの問題に対する解決策は、消費者の行動に焦点を当てる傾向があった。先進国で実施された調査では、教育水準が高いにもかかわらず、消費者は冷蔵庫や食料貯蔵庫を買い溜めしたいという欲求を示し、往々にしてすべてを消費できる能力を十分に考慮していないことが一般的に判明している。必然的に、この習慣は、特に乳製品、新鮮な果物、野菜といった一部の品目の賞味期限切れを招く。もちろん、消費者は無駄を避ける義務がある。しかし皮肉なことに、食品廃棄を意識していることが、 必ずしも責任ある行動につながるとは限らない 。いくつかの調査によれば、多くの消費者は食品廃棄問題を理解しており、その3分の2が懸念を表明している。しかし、同じ回答者たちは、より大きな問題については他人のせいにしがちであり、実際には自分自身の無駄な行動を疑う必要がある。

【第5段落】

食品廃棄と戦う一つの明確な方法は、食品が廃棄される基準を見直すことだ。日本の食品廃棄に関する「3分の1ルール」を例に挙げよう。例えば、製造から3週間で期限が切れるオレンジは、1週間以内に小売店に届かなければならず、そうでなければ廃棄される。製造業者や小売業者は鮮度のピークで製品を売りたいと考えているが、これらの高い基準は、製品が完全に安全に消費できるものであるにもかかわらず、膨大な量の無駄を生み出している。もし日本が、多くの欧州政府のようなより寛容な「3分の2ルール」を採用すれば、その同じオレンジは小売店に届くまでに 2倍の長さ の時間が与えられることになり、確実に無駄を減らせるだろう。

【第6段落】

同様に、小売業者は消費者の好みを形作る上で重要な役割を担っている。もし価格が安ければ、顧客は見栄えの悪い果物や野菜を購入するだろうか? それは一概には言えない。小売業者の多くは、公の場での主張とは裏腹に、見た目の完璧さに固執し、 事実上 、完全に食用可能な農産物の処分を促し、毎年何百万トンもの無駄を引き起こしている。これに対抗するため、一部のスーパーマーケットは、奇妙で素晴らしい形をした果物や野菜の割引コーナーを設けることで、いわゆる「不揃いな」農産物を買うよう顧客に働きかけている。ある大手スーパーチェーンの広報担当者は、これまでのところ売れ行きは芳しくないものの、不揃いな農産物も同様に栄養価が高いことを教えることで、顧客の習慣に影響を与える道徳的義務が小売業者にはあると認めた。

【第7段落】

期限表示の混乱もまた主要な懸念事項であり、全食品廃棄の実に10%を引き起こしている。これはuse by、best before、best if used by、sell by、expiration dateなど、無数の種類のラベルがあることを考えれば、驚くべきことではない。多くの顧客は、製品が安全に消費できないことを恐れて単純に捨ててしまい、政府に期限表示の標準化を求める声もある。しかし、信頼できる基準を策定するよう国家の立法者に求めるのは、 過度に長期的な プロセスとなる。政府とは対照的に、NGOは、食品表示の標準化に向けて協力するよう企業を説得することで、同じ目標をはるかに迅速かつ安価に達成することを目指している。

use by 消費期限
best before 賞味期限
best if used by 賞味期限
sell by 販売期限
expiration date 使用期限・有効期限

【第8段落】 食品廃棄に取り組むことは、 不確実な未来に対抗するための協力 を必要とする複雑な問題である。気候危機によってもたらされた不安定な天候パターン、社会不安、そして大規模な戦争に発展しかねない地政学的な紛争により、世界の食料生産が需要に追いつかなくなる可能性が高い。したがって、最大限の食料安全保障を確保するために、すべての利害関係者が金銭的利益に関わらず協力することが不可欠である。これらの来たるべき困難を粘り強く乗り越えることは、食品ロスや廃棄に対処するだけでなく、飢餓の克服、環境保護、および次世代のために健全な地球を保証することにも貢献するのである。

投稿者

GOKO編集室
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