慶應志望はどこまで?東進レベル別問題集の改訂版レビュー

受験生にとって定番の英語長文問題集、「英語長文レベル別問題集(東進)」の改訂版がついに発売されました。

初版は2007年だったため、実に16年ぶりの改訂です。

流石に古い英文も多くなってきたので心配していましたが、これで安心して受験生に進めることができるようになりました。

今回は、レベル別英語長文の改訂ポイントをチェックしつつ、慶應受験生がどこまでやればいいか紹介していきます。

レベル別英語長文のレベルは?

設定レベルは改訂前と変わっていませんが、目安とする偏差値や大学名がより詳細になりました。

画像はレベル4を参照

ざっくりまとめると以下の通りです

レベル別英語長文のレベル目安

  • レベル1:中学英語・英検3級合格
  • レベル2:高校入試・英検準2級合格
  • レベル3:入試基礎・英検準2級〜2級・偏差値50~56
  • レベル4:日東駒専・英検2級合格・偏差値55~62
  • レベル5:GMARCH・英検準1級受験・偏差値57~66
  • レベル6:慶應早稲田・英検準1級合格、・偏差値60~

このページを見ている方は、慶應大学や各難関大学を目指していると思いますが、

  • GMARCH志望ならレベル5
  • 慶應早稲田志望ならレベル6

ぐらいの認識で大丈夫です。

本題のタイトル、慶應志望はどこまでやればいいか?の疑問に答えると

現在の自分のレベルから始めて最終的にレベル6目指す

が結論です。

今の自分のレベルがわからない方は、カウンセリングでレベル診断も実施しておりますので、以下のフォームからご連絡ください!

レベル別英語長文の改訂版で何が変わった?

大きく変わったのは以下の3点です。

改訂版変更のポイント

  • 収録問題が最新の話題にアップデート
  • 構文解説が加わりレイアウトが変更
  • 音読動画が追加

収録問題が最新の話題にアップデート

初版が発行された時は最新のトピックでも、時代が経てば変化します。

以前は古典英文からの出題もありましたが、最近は1~2年前の英文から出題されることが多くなってきました。

時事ネタを抑えておくことも重要な入試対策になります。

レベル6を例に取ると、以下のようにテーマが刷新されました。

消えたテーマ追加テーマ
クローン技術ジェンダーギャップ
DNA分析テクノロジー病
電子取引の安全性顔認証

クローン技術やDNA分析などは、当時と比べれば普及した技術になりました。代わりに、顔認証など技術進化に伴う話題が追加されました。

追加問題は、全て2019年の入試問題です。

構文解説が加わりレイアウトが変更

以前は記号で説明されるだけでしたが、改訂版では構文解説の文章も一部加わるようになりました。

また全体的に文字が小さくなり、余白部分が多くなりました。

下記は新旧比較ですが、同じ英文でも余白量が全然違います。

好き嫌いあると思いますが、個人的にはページあたりの情報が多い方が好きなので良い改訂です。

左:改訂前 / 右:改定後(出題英文は同じ)

さらに、解説の語句リストも和訳右側にまとめられ、単語帳のように意味確認をしやすくなりました。

左:改訂前 / 右:改定後

赤シートで消して、語彙確認を一気に行えます。

音源ダウンロード&音読動画が追加

以前は付属のCDが付いていましたが、改訂版ではダウンロード形式になりました。

さらに、Youtube動画のリンクが付いており、チャンク(英語のカタマリ)ごとに発音を確認できるようになりました。

英文の音源は以前からついていたので本質的な変化ではありませんが、音読へ心理的ハードルを感じていた生徒にとっては良い変化になりそうです。

レベル別英語長文レベル6の変更点

ここからは、慶應志望者向けにレベル6の改訂ポイントをさらに具体的に見ていきましょう。

出題大学

問題は3題入れ替わりました。

大学で選ばれたというより、古いテーマを最新のテーマに変更した結果の印象です。

改訂版の5~7が新問題ですが、出題大学的にはほぼ同じです。

改訂前改定後
1 慶應 理工1 早稲田 教育
2 早稲田 教育2 上智 法
3 慶應 理工3 慶應 理工
4 上智 法4 上智 法
5 早稲田 教育5 九州大学
6 上智 法6 慶應 理工
7 上智 経済&理工7 慶應 経済
8 東京大学8 東京大学
9 東京大学9 東京大学
10 慶應 総合政策10 慶應 総合政策

少ない順に

  • 早稲田1題
  • 九州大学1題
  • 上智2題
  • 東京大学2題
  • 慶應義塾大学4題

慶應が半分近くを占めており、その意味でも慶應受験生にオススメしやすくなりました。

語数やワード数

語数は改訂前が6078語、改訂版が784語増えて6862語です。

784語と言えば長文問題1~2題増えたぐらいに相当しますが、最近の英語の長文化に対応していると言えます。

レベル別長文6の出題語数

上記の図を見ると、新規追加された大問5~7が特に長文化の要因になっていることがわかります。

レベル別英語長文レベル6の後にやる問題集は?

このレベルが終わったら過去問を解くのがベストですが、強いて挙げるなら下記2つがオススメです。

英文が読めるけど選択肢で間違える

英文が読めるけど選択肢で間違える受験生は、ルールズ4がオススメです。

ルールズは、英語が得意な人の思考プロセスを身につけることを目的とした長文問題集です。

読解のプロセスだけではなく、選択肢から解答を選ぶプロセスまで、かなり細かく学ぶことができます。

本文は読めるけどなぜか問題が解けない、そんな人は是非使ってみてください。

長文頻出テーマや背景知識を増やしたい

長文頻出のテーマや背景知識を学びたい受験生は、ポラリスがオススメです。

ポラリスでは、最新の頻出テーマを演習を通して学ぶことができます。

英文のレベル自体はルールズ4とそこまで変わりませんが、それなりに難しい英文が収録されているので、残り時間と相談しながら追加するか決めて下さい。

レベル別英語長文レベル6改訂版の英文出典

ここからは、レベル別英語長文レベル6改訂版で出題されている英文の元ネタを紹介していきます。

レベル6は早慶向けには簡単すぎると言われることもありますが、全くの誤解です。

出典を見ればわかりますが、ネイティブがネイティブの知的層に向けて書いた文章です。

元ネタ自体決して平易に書かれた文章ではありません。

簡単すぎるという方は出典も掲載しておりますので、ぜひそちらもご挑戦ください!

1:ビクトリア朝の科学と価値観(早稲田)

  • 出題校:早稲田大学 教育学部
  • 題名:The Undiscovered Self
  • 作者:ジェームズ・パラディス
  • 語数:348字

出典はジェームズ・パラディスの「ニューヨーク科学アカデミー年報」のVol.360に収録されています。

学術誌に掲載された英文で、出版年度も1981年の古いので、堅め英文です。

3:日米関係の過去と未来(上智大学 )

  • 出題校:上智大学 法学部
  • 題名:
  • 作者:
  • 語数:348字

上智大学法学部からの出題ですが、現在出典確認中です。

4:自分を知ろう(慶應大学)

  • 出題校:慶應義塾大学 理工学部
  • 題名:The Undiscovered Self
  • 作者:カール・グスタフ・ユング
  • 語数:319字

心理学会の超大物、カール・グスタフ・ユングの著者「The Undiscovered Self 」から出題。

ユングは師匠のフロイトと共に、大学の一般教養でほぼ触れる心理学者の大家です。

さて肝心の内容については、こちらに本文を引用した記事があります。

Is Self-Knowledge Based On Theory?

また、ほぼ同じ内容の動画もありました。英語ですが、言いたいことは何となく伝わると思います。

ユングについてもう少し詳しく知りたい人は、彼を題材にした映画がちょくちょくあるので、息抜きがてらどうぞ。

4:わたし達とあなた達(上智大学)

  • 出題校:上智大学 法学部
  • 原題:Us and Them: A History of Intolerance in America
  • 作者:ジム・カーンズ
  • 語数:398字

こちらも3問目に引き続き上智大学法学部からの出題です。

出典はJim Carnesの「Us and Them: A History of Intolerance in America」です。

アメリカのおける不寛容の歴史とその心理を解説した本で、

  • 1660年:ボストンでクエーカー教徒の信仰を理由に処刑されたメアリー・ダイアー
  • 1838年:モルモン教徒ミズーリ州から追放
  • 1885年:ワイオミング州ロックスプリングでの中国人鉱山労働者の襲撃
  • 1890年:アラバマ州モービルでのKKK(クー・クラックス・クラン)の活動。
    1981年:ニューヨークのクラウンハイツで起きた暴動

など具体例を出しながら展開していきます。

本編はこちらからどうぞ。

5:男女の寿命は2032年に同じになる(九州大学)

https://www.theguardian.com/inequality/2018/feb/13/when-will-men-live-as-long-as-women-by-2032-say-experts
  • 出題校:九州大学(2019)
  • 原題:When will men live as long as women? By 2032, say experts
  • 作者:英国紙ガーディアン(記者名:Niamh McIntyre)
  • 語数:531字

イギリスの王手新聞社「ガーディアン」の記事から出題。

【英文冒頭】

In developed countries, the gender gap has long favoured women by one measure at least: life expectancy.

Throughout the past 100 years women have significantly outlived men, on whom war, heavy industry and cigarettes – among other things – have taken a heavier toll.

https://www.theguardian.com/

一般的には女性の方が長寿ですが、その差が2032年には無くなるかもしれないという話。

戦争なのか、不摂生なのか、攻撃性なのか、男性の早死神話を崩す興味深い話でした。

6:周期時間はテクノロジー病を治すか?(慶應大学)

Facebook CEOのマーク・ザッカーバーグ
  • 出題校:慶應義塾大学 理工学部(2019)
  • 原題:Is Cyclical Time the Cure to Technology’s Ills?
  • 作者:スティーブン・ナッシュ / Stephen Nash
  • 語数:574字

デンバー自然科学博物館の考古学者、スティーブン・ナッシュ 氏の2018年の記事から出題。

「長い歴史の中で、人類は周期的に時間を捉えるようになった。しかし、テクノロジーが進化して直線的になってる。」

的な方向で、現代社会を批評した内容でした。

【英文冒頭】

THE WORLD CHANGED dramatically on June 29, 2007. That’s the day when the iPhone first became available to the public.

Smartphone technology has allowed billions of people to enter and participate in a new, cybernetic, and ever more complex and rapid relationship with the world.

https://www.sapiens.org/culture/cyclical-time-technology/

江戸時代の農民を想像してほしいですが、かつて人生はループものでした。

夏前に苗を植え、秋になったら収穫、冬は家にこもって内職と手入れ、春になったら田植えの準備。

たま起こる冠婚葬祭のみが非日常で、それ以外は特に変わらない日常が続く。

紀元前3000年頃にシュメール人によって作られたと考えられているカレンダー

ところが、現代では(やろうと思えば)毎日を特別な日にすることができます。

そういった現状に対して、警告を鳴らすお話でした。

7:顔認証技術とプライバシー(慶應大学)

1984 (角川文庫)
  • 出題校:慶應義塾大学 経済学部(2019)
  • 原題:Facial Recognition Technology: the thin edge of the wedge
  • 筆者:ユー・シー・ミー / U. C. Mee
  • 語数:784字

慶應経済2019年の過去問から出題。

原題と筆者を一応書いていますが、最近の慶應経済はオリジナルの英文を出題してきます。

筆者のU. C. Mee(ユー・シー・ミー)は「You see me」(あなたが私をみてる)をもじったもので、出題者なりの洒落でしょう。

【英文冒頭】

Exactly 70 years ago, we were warned of a future where our every action would be watched over by the government. This was introduced by George Orwell in his novel Nineteen Eighty-Four, wherein the leader “Big Brother" seeks to control the characters' thoughts and behaviors by constantly observing them.

As it happens, Orwell's vision of the future is mild in comparison to the one in store for us. Facial recognition technology is quickly turning the notion of individual privacy into a relic of the past.

冒頭で引き合いに出される「1984」は、スペイン内戦にも参加した英国人作家ジョージ・オーウェルの作品。

いわゆるディストピア小説の一つで、村上春樹氏を始め、その後の多くの創作物に影響を与えた傑作文学の一つです。

スペイン内戦(1936~39年)と書いたことから分かるように、オーウェル自信は戦中戦後の人物で、「1984」も1949年に出版された作品です。

その後、まさに1984年に映画化されました。

予告編を置いておくので、英文がより理解できるように是非みてみてください。

肝心の英文ですが、内容は「顔認証が悪用されるとこんな悪いことが起こる!」といった内容でした。

800字と長めの英文ですが、内容は慶應標準レベルなのでしっかり精読して何度も音読を繰り返してください!

8.灯台の思い出(東京大学)

The New Yorker, January 20, 1968 P. 26
  • 出題校:東京大学(2005年)
  • 原題:The Lighthouse
  • 作者:アルトゥーロ・ヴィヴァンテ
  • 語数:1,069字

8~9問目は物語形式の出題が続きます。

8問目は東京大学2005年の過去問から出題。

出典はイタリア系アメリカ人アルトゥーロ・ヴィヴァンテの「灯台」。

さらに出典を紐解くと、雑誌「The New Yorker」1968年1月20日p26に掲載された作品です。単体では販売されておらず、短編集の中に収録されています。

日本語で読みたい場合は東大名誉教授で翻訳家の柴田元幸氏がまとめた短編集に収録されています。

東大が灯台の問題を出題ということで、高度なギャグかと思いましたがたまたまでしょう。

子供が見る世界と大人が見る世界の違い、あるいはその中間を描いた良作で、隠れファンも多い作品です。

9. 語られなかったインド(東京大学)

  • 出題校:東京大学(2004年)
  • 原題:The Shadow Lines
  • 作者:アミタヴ・ゴーシュ
  • 語数:1,076字

9問目は東京大学2004年からの出題、出典はインド人作家アミタヴ・ゴーシュの「シャドウ・ラインズ - 語られなかったインド」です。

元々は1989年に発表された作品で、インド文学の最高峰サーヒトヤ・アカデミー賞も受賞しました。

日本人にとってはとっつき難い題材ですが、英語の勉強をしながら良質な文学作品を楽しめると思えば一石二鳥の教材です。

日本語版も2004年に発売されています。インドの歴史や文学に興味がある方にはオススメです。

10.実践社会学入門読本(慶應大学)

  • 出題校:慶應義塾大学 総合政策学部(2004年)
  • 原題:Down to Earth Sociology
  • 作者:ジェームズ・M・ヘンスリン / James M. Henslin
  • 語数:1,392字

現時点で販売されているのが14版なので、なかなか売れている本です。

原題の「down to Earth」「現実的な」「地に足ついた」的な意味で、タイトルをあえて訳すると「実践社会学」や「社会学入門読本」あたりになりそうです。

本文はグーグルブックスで確認できました。以下の部分をご参照ください。

チャプター2「What Is Sociology? Comparing Sociology and the Other Social Science」からの引用で、p12の後半「The Example of Juvenile Deliquency」からの出題です。

一つ前の版も確認しましたが、表紙が毎回イケイケな若者達です。

この問題は「慶應の英語」にも収録されています。複数回引用されているのは、それだけ良問の証明になります。

精読した後に、音読しながら何度も読み直してください!

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